誤字脱字あったらごめんなさい。イロハSSです。
ざあざあと雨が降る中、校門へと歩く二つの影。
「先生、今日はありがとうございました。気を付けて帰ってください。」
校門まで一緒に歩き、イロハに見送られる先生。
”どういたしまして、イロハ。今度はシャーレに手伝いに来てくれたら嬉しいな。じゃあね。”
ニコっと笑いながら、イロハに手を振る先生。
「考えておきます。って、先生...あなたって人は今日も傘を差さないんですか?」
と、傘の中から声をかける。
”少しだけだったけど校門までイロハと相合傘できたし、傘がなくてもいいことってあるんだな~。”
苦笑いをしながらそそくさと帰ろうとする先生。
「待ってくださいよ。ほら、これ。私の傘です。学校に呼びがあるので私の心配はいいですから。」
差し出された傘をしばし見つめ、
”大丈夫だよ。こう見えて私、雨には強いから。”
と謎なことを言って帰ってしまった。
「風邪ひいても知らないですよ...。まあ、風邪を引いたら私が...。」
ーよくじ~つ~
怠い、怠い、怠すぎる。5徹とは比べものにならないほどの倦怠感。それに、この暑苦しい感じは...。
ピピピピ ピピピピ
熱を測ってみると、体温計の数値は39.7℃を示していた。風邪ひくなんていつぶりだろう?
”これはどうしたもんかな~...。とりあえず体は動くし仕事するしかないか...。はあ、ガンバロ...。”
フラフラとしながら朝の諸々の支度をすませ、机につく頃には息も絶え絶えになっていた。
”ハァハァ、思ったよりキツイな。これ、普通に死ぬかも...。”
コンコン
「入りますよ~。」
今日は当番はいなかったはずなんだけどなぁ...。誰か手伝いに来てくれたのかな、ラッキー。
って、風邪移したらダメだよね。今日は帰ってもらおうかな。
ガチャ
「先生、もう仕事始めちゃってるんですか。」
来客はイロハだったようだ。
昨日あんなことを言っておいてこのザマは正直恥ずかしい。風邪をひいたことは隠そう!!そうだそうしよう。
"まあね。今日は珍しく朝から快調でね。今日は1人で大丈夫だから、イロハ執務室の外で適当にくつろいでていいよ。そう、これはまさしく絶好のサボりチャンスだよ。"
決まった!!これで私の矜持は保たれ、イロハに風邪を移さずにすむ。
「『今度はシャーレに手伝いに来てくれたら嬉しいな』、これ誰が言ったか覚えてます?」
私は少し意地悪な言い方をした。先生が風邪をひいているのを知っていて、私に風邪を移すまいと気を使っていると知っていて。そして、昨日あんなことを言っておいて風邪をひいてしまったのを必死に誤魔化していると知っていて。
”たしかに、そうは言ったけど...。また今度で大丈夫だよ。”
「私は今日、先生を手伝うためにシャーレにきました。隙あらばサボろうとする私が、です。こんな機会めったにないですよ。それを追い返そうって言うんですね?」
やっぱり私は意地悪だ。こう言ってしまえば先生が断れないと知っていてこんなことを言ってしまうのだから。
”分かった。だけど、最近なにかのウィルスが流行ってるらしいから、これ、マスクをつけてくれるかな?”
誰が聞いたって分かるような嘘をこんな真剣な顔で言う所も愛らしい。
そうして、私は先生の様子を伺いながら仕事を手伝っていた。時折、フルフル震えたり、鼻を噛んだり、やけに暖かいものばかり飲んだり。本当に風邪をひいているのを隠す気があるのかと不思議に思うくらいだった。でも、そんなところも彼らしく、また愛らしいのだ。
”イ...イロハ、実は私...。”
ついに腹をくくったのだろう。先生は、己の隠し事を伝えようとしてくれているのだろう。
「愛の告白ですか?」
ここでもやはり、少し意地悪をしてしまう。皆の前に立って仕切っている先生も、仕事に一生懸命な先生も好きだが、こうやって困った顔をする先生も好きだ。
”ゲホッゲホッ...。そそそそそうではなくてね、実は私風邪引いてるんだ。ハハハ”
ばつが悪そうに私からは視線をそらしている。
「うまく隠していたつもりかもしれませんが、バレバレでしたよ。言いましたよね?風邪を引きますよ、と。」
叱られた子供のようにシュンとなる先生。どんな意地悪をしてやろうかと気持ちがはやるが、今の彼は病人。労わってあげるべきだ。
”ハイ。傘を借りて帰るべきでした。”
「分かったならいいんです。今日の仕事は終わりにして回復に努めましょう、先生。」
”そうしようか。”
仕事を切り上げ、先生をベッドに押し込む。
介抱ってなにをすればいいのか、という疑問はあったが、定番はご飯を作ってあげることだろうということで、
「先生、ご飯はお粥とかでいいですか?」
と声をかけてみたが、
・・・。
返事がない。様子を見に行ってみると、少し目を離した間に先生がぐっすり眠っていた。
「寝てます?」
スース―と寝息を立てながら眠る先生を眺めること数十秒。
先生が起きる気配がなかったのでほっぺをツンツンしてみると思いのほか柔らかく、しばらくずっとツンツンしていた。
「こうして見ると、案外子供っぽいですね。」
今、こうして先生の寝顔を独占できている私はどんな顔をしているのだろうか。きっと今までにないほどに蕩けた顔をしているのだろう。さきほどから体が暑い。きっと私に先生の風邪が移ったのだろう。
「病人同士、仲良く暖をとりましょう。」
そう言って先生の眠るベッドの中に潜り込み、世界一愛しい人の腕の中で私は眠りにつくのであった。
Fin
もう片方のSSもじきに書きます。