"この時期といえば...、そうクリスマス!"
シャーレの執務室の中で、さながら子どものようにワクワクしている先生。
この時期は子どもへのクリスマスプレゼントになるであろうおもちゃがセールになっている。
"もちろん、KAITENシリーズのおもちゃだって例外ではない!!"
フハハハ!!と悪役かの如く笑う先生。年末であることも含め、疲れている先生にとってこの時期はテンションがあがるものらしい。
だが、しかし。
お金が...ない。歳末のボーナスを当てにしようか?いやいや、盆でさえボーナスがなかったんだ、歳末のボーナスがある保証はどこにもない。それに、アレを買うお金も残しておかないといけないよね。
"ここは、虎の子を引っ張り出すしかない!!"+100,000円。
数分もしないうちに先生は某ザラスにおもちゃを買いに行った。
セールで安くなっているとはいえ、買いまくっていたらすぐお金がなくなりそう。
とりあえず、クリスマス限定版を買うとするか。-19,800円。
残金は約8万といったところか。ここでユウカに出くわせば叱られるのは自明...。
"まあ、そんなことないか。"
と、意気揚々と某ザラスを出るところまでは良かった。
店を出た瞬間、その視線は先生に突き刺さった。
"誰かに見れらてる?"
数時間前、シャーレ執務室前
今日はクリスマス・イヴ。当番ではないけれど私はシャーレに来ていた。
年末に溜まりに溜まった仕事に追われる先生を手伝おうと思って来たに決まっている、他意はない絶対に。
頭の中の変な考えはしまって、執務室に入ろうとした時だった。
"もちろん、KAITENシリーズのおもちゃだって例外ではない!!フハハハ!!"
急に発せられた先生の声に驚くユウカ。
ドアに耳を当てて聞いてみれば、クリスマスに乗じておもちゃを買いに行く模様。
迷った。いつも忙しそうに過ごしている先生を思うと、ダメ、とは言えなかった。
"ここは、虎の子を引っ張り出すしかない!!"
!?
虎の子を引っ張り出す?これは先生が無駄遣いしそうな予感がしますね。
ただでさえお金がない様子なんだから無駄遣いしないように声をかけないと、クリスマスぐらい散財させてあげたっていいじゃない、と2つの気持ちに揉まれるユウカ。
結局、先生を尾行してあまりにもお金使いが荒かったら注意しよう、という結論になり今に至る。
じーっと先生を見つめるユウカ。
"誰かに見られてる?"
ッバレた?
"気のせいかな"
セーフ...。
そうして先生について回ること数時間。
どうやら先生の様子がおかしい。最初に某ザラスで買い物をしてからというもの何も買っていない。
かくなる上は、女性向けのプレゼントを売っている店を見て回っている。
ものすごくモヤモヤする。自分以外の誰かのために買っているんだろうな、と思うと嫉妬が止まらない。
気づけば先生のもとへ走っていた。
「先生、クリスマスを理由に無駄遣い、してないですか?」
"ユユユユウカ...、無駄遣いはしてないよ。これはちゃんとした計画の上での出費だよ。"
無駄遣いを諌めるなんていうのはただの口実、本当は誰かへのプレゼントを買おうとしているのを止めたかっただけ。
「聞いてましたよ、虎の子、引っ張り出したんですよね?」
"どうしてそれを知っているんだい?"
「ええと、それはですね...。」
"だいたい察しはついたよ。それはそれとして、クリスマスだから多めに見てくれると嬉しいな。"
「はあ、仕方ないですね。いいですよ。」
本当はよくなんてない。
"あ、そうだ。よかったらユウカもついてくる?"
先生と一緒にクリスマスデート、と普段なら浮かれていたんだろうけど、今回は違う。
「そうですね...、遠慮しておきます。」
"私としてはユウカについて来てもらえると嬉しいんだけどな。"
「女性へのプレゼントを買うんですよね?それなら女性である私が一緒にいたほうが選びやすいとか、そういうことですよね?遠慮しておきます。」
気づけば、先生の前でユウカは涙を流していた。
"ユウカ?大丈夫?...じゃあないよね。"
ユウカは声を押し殺して泣いたままだった。
"あ、あの...私、なにかしちゃったかな?これと言った心当たりがないんだけど...。"
「き、気にしないでください。私個人の問題なので。」
困ったような顔をする先生。理由もわからず泣き始めてしまったんだから当然か。
"そうは言われてもね、目の前で泣いている子をそのままにはできないよ。"
先生のそういうとこが好きだけど、嫌いだ。
「そうやって好きでもない人に優しくするの...なんなんですか?勝手に期待して、勝手に失望して、こっちは大変なんですよ!」
"・・・。"
先生は黙ったまま、そっと私を抱きしめてくれた。
「ッ⁉️先生?」
先生はユウカの目を見てゆっくりと口を開いた。
"それはね、ユウカが大事な生徒のうちの一人だからだよ。"
「私が聞きたいのはそういうことでは...。」
"まあまあ、落ち着いて。もちろんユウカが大事な生徒一人っていうのもあるんだけどね、『私』個人としても、大事な人だからさ。"
「はえ?」
先生の急な告白に変な声が出てしまった。
さっきの泣き顔から一点、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにするユウカ。
「そ...その、なんで私なんですか?」
"ちょっと照れるな...。まあ、その、仕事終わらなくて困っていたら、頼んでなくたってユウカが手伝いに来てくれてたし、お金のこともユウカがその...、しっかり管理してくれてたし、なにより、当番を募ったときに一番最初に来てくれたからさ。"
先生の一つ一つの言葉が嬉しかった。だからこそ、さっき先生が買おうとしていたものが心にひっかかる。誰に向けて?なんのために?少しの期待を込めて聞いてみることにした。
「さっきの、プレゼント?を買おうとしていたの、あれはなんだったんですか?」
"ユウカに何か買おうと思ってさ。いつもお世話になってるし、これからもずっと一緒にいれたらいいな、とか思ったりしてさ。クリスマスに贈り物したら気づいてくれるかな〜とか思ったりもして。"
先生は顔を隠しながらボソボソと喋った。耳が真っ赤になっていることから察するに赤面しているのだろう。
"そ、それで、ユウカが一緒に来てくれると何がほしいか分かるかな〜と思いまして...。はい。"
「そういうことだったんですね。だったら早く言ってくださいよ。」
ユウカの顔は涙で濡れてこそいたが、とてもうれしそうな顔をしていた。
「それなら、先生、貴方をください。」
"私でいいのかな?ユウカにはこれからもいろんな出会いがあると思うんだけど。"
嬉しさと心配が半々になって顔をする先生、もちろん私の答えは決まっている。
「もちろんです、『私でいいのかな?』じゃないですよ。先生だからいいんです。」
少し照れくさそうにするユウカ。
"そっか。それじゃあ、これからも末永くよろしくね。"
もう一度強くユウカを抱きしめて先生が言った。
「こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」
"それじゃ、このお金は私の趣味にっ...⁈"
ユウカは先生に口づけをしてその言葉を遮る。
「プハッ、ダメですよ。消費は計画的に!ですよ。」
"だったら、これから一緒にご飯に行くって言ったらどうなるのかな?"
「もちろん、行きますよ。」
至極当然と言った具合に悠然としている。おもちゃはダメでも食事はいいらしい。
"今日はユウカとデートってことにしよう!"
幸せそうな2人が街の中へと歩いて行った。。。
なんでだろ、血涙が...。
体操服からのパジャマですか、、、石がないっすよアロナ先輩。