霊夢を殺した最凶妖怪の逃走劇.... 作: 俺は人間をやめるぞぉ!
かめーーとあららさんの好きな物語を感想で教えてくれると嬉しいです!!
どこで間違えたのか分からない。
何を間違えたのか分からない。
全部間違いだったのかもしれない。
何が正しくて、何がおかしくて。
それが分からない。
分からないから俺は今、ここにいる。
「...はぁ...はぁ、はぁ」
荒い呼吸を、絶え間なく行う。
肉を抉るキショイ感覚が掌から離れない。
鉄臭い、ドロッとした液体が足元まで流れてきて、思わずたたらを踏むとピチャピチャと音を立てた。
「...やっちまった」
無意識に出たのは、後悔と絶望がブレンドされたような震え声。
俺は今...人間を殺した。殺しちまった。
殺したくはなかった...けど殺さなきゃ、殺されるのは俺の方だったから...殺すしかなかった。
「.....あ、ァァ」
月明かりが平等に照らす下界のとある森の河辺の、小石の敷き詰められた冷たい地面。そこに横たわる肉の塊。
紅い巫女服に包まれたそれは、博麗の巫女だった物だ。
俺がこの手にかけてしまったのは...博麗の巫女だったのだ。
「何でだよ...畜生ッ!!ふざけるなッ!!俺が何をしたってんだ!!!俺はただ生きようとしただけだろうが!!生きるために人を食うしかなかったんだ!!好き好んで人間を殺してた訳じゃねぇ!!!それなのに...どうして俺を...お前は退治しようとするんだ....ッ!!」
理不尽だと思った。分かっていた。害されたなら抵抗するのが当然だってことくらい。
でも俺は叫ばずにはいられなかった。
この理不尽な世界に怒鳴らずにはいられなかった。
「巫女を殺しちまった...俺は終わりだ」
博麗の巫女。この幻想郷に必要不可欠な存在。それを手にかけた俺は...報復は必然だろう。
クソが...死にたくない。
怖い。
こんなところで、嫌だ。
「...隠さないと」
そうだ、隠すんだ。
この事実がバレなければ...いい。それだけのことだ。簡単だ。
俺が殺したなんて誰も分からないように。死体をこの世から消し去るんだ。
でも...どうやって?
「...そうか」
分かった。
簡単なことだった。
「食えっちまえばいいのか」
・・・
「...霊夢の奴、今日もいねぇのな」
人気の消えた神社の縁側に腰をかけながら、足をパタパタと遊ばせる。
ここんとこ最近、霊夢の姿を見ていない。
神社にいないのは勿論、人里、紅魔館、白玉楼...何処にもいやしない。
「んー、どこ行ったんだろアイツ。賽銭入れたら現れそうな気もするが」
なんて言ってみたはいいものの、そんなことをする気は毛頭無い。
「なー、紫ー、いるかー?」
適当に、声を飛ばしてみる。アイツなら何か知ってるなかもしんないからな。
すると私の声を呼応するように、背後に気配が現れる。
背と首を反ってその方を見ると、案の定そこには良い歳して未だに若作りに励む女の姿があった。
「...あら魔理沙ご機嫌よう...なんて言えるほど私はご機嫌じゃないけどね」
「いつにも増して険しい表情をしてんな、更年期か?」
「.......」
「...冗談じゃんかよ」
こりゃマジで機嫌悪いな...霊夢絡みか?
「なぁ紫、最近霊夢の奴の姿が見当たんねぇんだが、その様子だと何か知ってるのか?」
「.....」
しかし、私の質問に紫は力無くかぶりを横に振る。
「はぁ、それがまったくなのよ...あの娘、何も言わずに消えちゃうもんだから、私も躍起になって探してたとこよ」
「お前ですら見つけらんねぇのか?」
「えぇ、お手上げよ」
マジか...紫が見つけらんねぇとなると考えられるのは...
本気で霊夢が誰にも見つからないよう隠れているのか...それか、
「...いや、」
私は脳裏によぎった考えを四散させる。
アイツに限って、そんなことあるはずないからな。
「んじゃ、足しになるかは分かんねぇけど私の方でも探してみる」
「えぇ、是非頼みたいわね」
嘆息する紫から視線を切って、空を見上げる。
「ったく...世話のかかる親友だぜ」
私は無理矢理口端を吊り上げるようにして...呟くのだった。
・・・
「おや魔理沙いらっしゃい。ツケでも払いに来たのかい?」
雑多な店内に入ると、その店の店主である森近林之助が嫌味を含んだ声音で呟いた。
「あぁ、そうだな」
「だと思ったよ、じゃあ今すぐ回れ右して帰れ...え?」
「なんだよ、鳩が豆鉄砲食らったみたいな面して」
「ちょちょちょ、待ってくれ。まさか今、
「おいおいなんだよこーりん。その言い方じゃまるで私がツケを払わない不義理者じゃねぇかよ」
「いやそれが霧雨魔理沙だろう!?」
「ったく、お前は乙女心を分かってないな。...例え嘘でも女の子は褒めとくもんだぜ?」
なんて言いながら、私は現金の入った袋をこーりんに差し出した。
こーりんは躊躇気味にその袋を受け取ると、過剰なぐらい慎重に中身を確認した。
「あ、うん、ちょうど...いや、少し多くないかい?」
「遅れた分の利息だ」
「そ、そうかい、じゃあ受け取らせて貰うよ...にしても一体何があったんだ魔理沙。熱でもあるんじゃないだろうね」
「結構失礼だよなお前って...まぁその、実は聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと?」
「最近、霊夢の奴を見てないか?」
私は率直に問いを投げた。
するとこーりんは、少し考えるような素振りをして、
「...いや、見てないね。霊夢がどうかしたのかい?」
「いやぁ、別にこれと言ってって訳じゃねぇよ」
「...そうかい?」
...こーりんは知らないか。
んじゃ次はアリスのとこにでも。
・・・
「...見つからない」
多少難航するとは思っていたが、まさかここまで影も形を追えないとは....
半日以上、幻想郷中を走り回って霊夢を探した。
けど、誰もアイツの居場所を知らなかった。
「そりゃ、紫で見つけられねぇもんを私が1日で見つけられねぇかもだけど...ほんっと、どこほっつき歩いてんだ??」
結局、最初の魔法の森に私は戻ってきていた。
ただただ考えを巡らせながら、歩く。歩き続ける、
普段なら無意識に飛び掛かってしまうような珍しいキノコが目に入っても、興味すら湧かない。
...もしかして私は...焦ってるのか?
さっきから妙に胸の中が苦しい。変な汗が流れて、口内に唾が溜まる。
「だ、だから霊夢に限ってそんなことねぇんだって...」
嫌な考えを無理矢理振り払う。
だってアイツは...博麗の巫女だぞ?この幻想郷で群を抜いて強い奴だ。
そんなアイツが...あぁ、そうだとも。有り得る訳がない。
「...はぁ」
日が沈んで、どんどん視界が悪くなる。
「今日はもうここまで...か?」
そう、帰宅が視野に入ったその瞬間だった...ふと生温い風に乗って、鉄臭さが流れてきた。
やけに鼻腔に絡みつくそれに、私は眉根を寄せる。
「...こりゃ、誰か死んでるな」
妖怪に襲われた人里の人間だろうか。少なくとも、ここ2週間以内の出来事だろう。
人食い妖怪はもう立ち去っているだろうが、食われた人間の残骸は残っているかもしれない。
「誰にも知られず腐るよか...せめて弔ってやろう」
私はそう思い、臭いのする方へ歩を進めた。
・・・
「...あれ?」
予想外にも、そこに生々しい死体が転がっている訳ではなかった。
綺麗さっぱり平らげられていたらしい...じゃあ、この臭いはどこからだ?
スンスンと臭いを嗅ぎながら、私はその出所を探す。
「...あ?」
すると私は草むらの中で、とある物を発見した。
「...お祓い棒だ」
血に濡れたお祓い棒。
キョトンとしながら、考える。
これは...誰のだ?
なんだか凄く...見覚えがある。
これはそう、アイツがいつも持ってた....
「...はッ!?」
何、言って。
いや、おかしいだろ。
なんでここに...霊夢のお祓い棒が落ちてんだ?しかも...血塗れで...
「意味、分かんねぇって、いやいや」
そんなこと、起こるはずない。
だって、霊夢だぞ?
こんなのただの...質の悪い冗談...だよな?
「しゅ、趣味が悪いぞ....」
ふらふらと後退りをして、足が覚束ないのが分かった。
「あ、はぁ...はぁ、はかッ」
信じたくない、現実が、襲ってきて、どうしようもなくて、過呼吸になる。
「れ、れい...れいむ、ッ霊夢。は、あ、が...ひゅー」
途方もない、気持ち悪さが込み上げてきた。
「は、うぶっ...ぼぇッ!!!」
胃の内容物が、競うように喉をせり上がり、私は耐えきれず吐き出した。
気持ち悪い。
キモチワルイキモチワルイキモチワルイ。
「ぉえ、げぇッ...はぁ、ひぅ...げええぇぇぉ....」
私は胃の中身がなくなるまで...吐瀉物をぶちまけた。