俺に取り憑く妖怪が鬱陶しすぎる   作:シキDX

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思ってたより長くなってしまった……


第四話 河童と鉄棒(♯6)

 

 雷獣による妖怪化の影響か身体能力がどんどん上がっている。

 

 定期的にぬ〜べ〜の手伝いのもと体力テストを行なっているのだが最近の記録は小学生の域を超えており高校生レベルにまでなっている。

 

 もちろんこれは喜ぶべきことではない。このまま、妖怪化が進めば俺の自我はなくなり封印から解けた雷獣が内側から俺の肉体を乗っ取ってしまうだろう。そうなれば奴が何をするのかなんて考えたくもない。

 

打倒雷獣の為にもより霊能力の修行を頑張らなくてはならない。

 

 ちなみに、実際の体育の授業では目立たないように周りに合わせている。ぬ〜べ〜クラスならば問題はないだろうが力をセーブすることに慣れることで日常生活に支障が出ないようにしているのだ。

 

明日は確か鉄棒のテストがあったはずなので気をつけなければ。

 

 *

 

 「――というわけで鉄棒のテストを始める」

 鉄棒のテスト当日……まあそこまで気張るものでもないが。

 

 今日のテストは逆上がり。俺は去年からすでにできているので問題はないができない人にとっては地獄の時間だな。

 

「まず手始めに先生がお手本を見せてやろう!」

 

 ぬ〜べ〜が意気揚々と実演しようとするが。

 

「えっ!?先生、鉄棒なんてできるの!?」

 

「俺、除霊しか能のない霊能者おたくだと思ってたよ」

 

 みんなの辛辣な反応に思わずぬ〜べ〜はズッコケてしまう。

 

 除霊の時はかっこいいのだが普段が結構抜けてるのでこんなイメージを持たれても仕方がない。

 

「お前らな~~~っ!」

 

 ぬ〜べ〜は鉄棒を片手で握り、そのまま凄い勢いで回転し始める。

 

「学生時代『鉄棒ぬーちゃん』と呼ばれた俺の実力、見せてやる!片手大車輪!トカチェフ!」

 

「すげえ‼︎」

 

「カッコいー!」

 

「意外だ!あの先公にこんなさわやかな一面があったとはっ!」

 

 次々と繰り出す大技を見てクラスのみんなは口々に驚きの声をあげる。

 身体能力が高いのは知っているが、まさかここまで器用だったとは……。まるで体操選手みたいだ。

 

 みんながぬ〜べ〜を尊敬の眼差しで見ていると、ぬ〜べ〜のポケットから紙のようなものが何枚か飛んできた。

 そのうちの一つを俺はキャッチする。

 

「なんだこれ……‼︎?」

 

 なんとぬ〜べ〜のポケットから飛んできたのは夜の仕事のチラシだった。

 ……マジで?

 ぬ〜べ〜にこんな趣味があったとは正直信じたくはないが動かぬ証拠は手元にある。

 

 ぬ〜べ〜が一通りの技を披露し終わり華麗に着地する頃には。みんなの尊敬の眼差しが軽蔑に変わっていた。

 

「ぬ〜べ〜流石にこれは教育者としてどうかと思いますよ」

 

 俺は拾ったチラシを先生に差し出す。

 

「なんじゃいこりゃ〜〜!」

 

「誤解だ―っ石川先生から借りたものでとーぜんこのチラシも……」

 

 ぬ〜べ〜は必死になって弁護するがみんな聞く耳を持たない。まあ日頃から律子先生に鼻の下伸ばしてるから仕方ないような気はする。

 

「先生のくせにジャージを忘れたりするからよ!」

 

「いーさいつかきっとわかってもらえる」

 

 ぬ〜べ〜は少し投げやりになりながらもテストを続ける。

 

「次、栗田まことくん」

 

 呼ばれたのはお河童頭が特徴のまことだった。

 妙に顔が青いがどうしたのだろうか。

 

「先生……やっぱり鉄棒やめた方がいいのだ」

 

「へ⁉︎」

 

 みんながまことの突然の言葉に驚く。

 

「この鉄棒には、河童がいるのだ……昨日1人で練習してたら、出たのだ……祟りがあるかもしれないから…」

 

 まことは怯えながらそう言うが

 

「まこと~~~!ウソつくんなら、もっとマシなウソつけよ~!」

 

 みんなはそれが嘘だと思い笑い始める。だがぬ〜べ〜は全く逆の反応を見せる。

 

「……わかった。今すぐ鉄棒を使用禁止にしよう!」

 

 もちろんクラスのみんなからは不満の声が溢れるが

 

 「危険があるとわかった以上、放っておくわけにはいかない。みんなも今日から鉄棒に近づくな!予定変更!今日の体育はマラソンにする!」

 

「「え〜っやだ〜っ!」」

 

 突如鉄棒からマラソンに変わってしまった。

 

 鉄棒禁止は流石にやりすぎなんじゃないかとは思うがまことが言っていたことには少々引っかかるものがある。

 

 たとえ嘘だとしても鉄棒と河童なんて全く関係ないものを使って騙そうとするだろうか?ここまで変な嘘だと逆に本当のような気がする。

 

 俺はまことが言っていた言葉について考えながら校庭を走った。

 

昼休みになり時間が空いたので俺は図書室で河童について調べていた。

 

 ぬ〜べ〜に妖怪について色々教わってはいるがまだまだ知識が浅い。河童のようなメジャーな妖怪ぐらいは頭に入れておこうかななんて考えていると後ろから声をかけられる。

 

「大輝くんも僕の話信じるのだ?」

 

 話しかけてきたのはまことだった。どうやら俺が河童についての本を読んでいたのに気づいたらしい。

 

「まあな。なんというかお前の言ったことは嘘じゃない気がするんだよ」

 

「本当?」

 

「ああ、勘だけどね」

 

 色々と調べてはいるのだがこれといった情報はまだ手に入っていないのだ。

 

「……もうやめておいた方がいいのだ。このままだと大輝君まで馬鹿にされちゃうのだ」

 

 まことは優しいな。

 

「大丈夫、俺はこれは俺のためでもあるから。それに、周りの目なんて気にしてたら自分のやりたいことなんてできないしな。もっと気楽に行こうよ」

 

 俺は気弱になっているまことを励ます。

 

「……うん!ありがとうなのだ!」

 

 まことは納得したのか図書室から出て行った。

 とりあえずもっと情報を集めなければ。

 

『……まだ河童なんぞのことを調べておったのか?暇じゃのうお主』

 

 突然さっきまで寝ていた雷獣が精神世界から語りかける。

 

『ずっとそのままではつまらんし……そうじゃ!お主にいいものを教えてやろう』

 

 なんだろうか、河童のことかな。

 

『……一旦河童から離れよ。妾が言いたいのは雷獣の力の話じゃ』

 

 どうやら妖怪化のことらしいとりあえず人気がないところに移動しておくか。

 

 *

 

『うむ、準備は整ったようじゃな』

 

 俺は学校の中でも人通りの少ないところに来ていた。

 

『お主も気づいておるじゃろうが喜ばしいことにお主の肉体には順調に妖気が馴染んできておる』

 

 喜ばしくはないが、肉体が変化しているのは事実だ。

 

『ここまで馴染めばあれができるのではないかと思ってな』

 

 あれとはなんだろうか

 

『電撃じゃよ今のお主ならできるはずじゃ。試しにやってみるがいい』

 

 電撃……はいい思い出がないな。毎回寝る時に嫌がらせで雷獣に電気を流されるからな。おかげで今日も寝不足だ。

 

『む!ちょうどいいあの時の電撃を流される感じを思い出しながら身体に力を込めてみよ』

 

 ちょっと癪だが言われた通りにやってみる。

 すると、身体からバチバチと音が鳴り、青白いスパークが出てくる。

 

「でっ、できた!」

 

『よし、それで良い。力の込め方を変えれば電撃を使う場所も変えられるぞ』

 

 試しに腕のみにに力を集中させてみると腕から電気が流れてくる。

 何というか雷獣がここまで丁寧に教えてくれるの違和感ありすぎて気色が悪いな。

 

『気色が悪いとは何じゃ。お主に死なれては困るから教えておるのじゃ。妾はまだ死にたくはないからのう』

 

『そもそも妾には電撃が効かんからこれを教えたところで不利益はえんからのう』

 

まあそんなところだとは感じてはいたが相変わらずムカつくな。

 

『それはともかくお主は河童探しに戻らなくても良いのか?そもそもどこまで調べがついておる』

 

 今のところわかったことといえば

 ・皿が乾くと弱体化する

 ・相撲が強い

 ・尻子玉を抜いてくる

 ・腕が伸びる

 ・屁で飛ぶ

 ・水神が零落した存在

ぐらいだろうか。

 

『使えん情報ばかりじゃな』

 

 何も言い返せないな

 

『河童は知っての通り元水神、何ができてもおかしくはないであろうな。例えば何もないところから水を出したり、壁を通り抜けたりな』

 

水を出すと言われても鉄棒のあたりに水があった形跡なんてないし、壁を通り抜けられたとしても壁がなくては何も……ん?通り抜ける?

 

「そうか‼︎下だ!地面なら通り抜けられる!」

 

 まさか地面に逃げているのか?だとしたら鉄棒の下に何かあるはず……現地調査でもしてみるか。

 そう思いながら俺は鉄棒に向かって行こうとするが――

 

「うわあ――っ」

 

 鉄棒の方向から悲鳴が聞こえてくる。

 この声はまさか、まことか⁉︎

 俺は急いで鉄棒のある場所向かうとそこには地面から出てきた河童に引き摺り込まれそうになっていたまことがいた。

 

「――っ⁉︎まことを離せ!」

 

 俺はまことを助けようと身体能力が上がった肉体をフルに活用して近づきなんとかまことの腕を掴むが凄まじい力で引っ張られる。これが河童の力なのか……正直言ってあまり長く持ちそうにない。

 

「大輝〜〜っ!大丈夫か‼︎」

 

 まことの悲鳴を聞きつけてきたのだろう広が駆けつけてくれたみたいだ。

 

「ぐっ……ごめん……もう無理」

 

「……わかった!ぬ〜べ〜を呼んでくる!」

 

 そういうと広は急いでぬ〜べ〜の元へと向かう。

 これ以上引っ張るとまことが危ない……仕方がないこうなったら俺も一緒に下に行くしかない。

 俺はそのまま力を抜きまこと共に地面の中へと引き摺り込まれてしまった

 

 *

 

 気づくと俺とまことは真っ暗な場所に立っていた。

 腰までの深さの水があった為2人ともびしょ濡れだ。

 

「くっ暗いのだ……懐中電灯とか持っていないのだ?」

 

「いや……流石にそんな都合のいいものは持っていないな」

 

ここまで暗いと何があるのかさっぱりだ。何か照らすものはないかと2人で悩んでいたが俺は雷獣に教えてもらったことを思い出す。あれなら光るので使えるのではないかと思ったが体が濡れていてはまことに被害が及んでしまう。一応濡れていない場所はあるが……いやなりふり構ってはいられない。

 

 とりあえず俺はその部分に力を入れて電気を発生させるせる。

 

「わあ!明るくなったのだ……ん?なんで頭だけ光らせてるのだ?」

 

「き、聞くな……そっとしてくれ……」

 

 そう、ここに落ちてきた時なんとか頭だけ濡れていなかったのだ。

 くそっ!頭だけとかかっこ悪すぎるだろ!それに……

 

『ギャハハ!傑作じゃ!まるで陽の光で輝く禿頭みたいじゃ!』

 

「禿げてねーわ!フサフサだし!出鱈目言うな!」

 

 やっぱり鬱陶しい奴が反応してしまった。

 

「……いきなり何を叫んでるのだ?」

 

「あ、ごめんこっちのはな――⁉︎」

 

 困惑させてしまったまことに謝ろうと振り返ると、まことの後ろにはあの河童がいた。

 

 俺は咄嗟にまことの腕を掴み大きく飛んで後退する。

 

「俺たちをこんなところに連れてきてなんのつもりだ!」

 

 河童に問いかけてみるといきなりこちらに腕を伸ばす。

 

「うわあ!」

 

 俺はそれを避けることができたがまことは伸びた腕にあたり尻餅をついてしまう。

 

「大丈夫か!」

 

「うんなんとか大丈夫――ああ!う、上を見るのだ!」

 

「え、上?――あれは!」

 

 何と鉄棒の下には不発弾があったのだ。少しの衝撃でも爆発しそうだ。そりゃ河童も必死に止めようとするわけだな。

 

 とりあえず一旦脱出してぬ〜べ〜に伝えなくては。広が呼びに行ったはずなのでもしかしたらこの地下に既にいるかもしれない。そう思っていると奥から光が見える。おそらくぬ〜べ〜だ。

 

「お――い!ぬ〜べ〜こっち!」

 

「大輝!まこと!無事だっ……なんで頭だけ光ってるんだ?」

 

「そ、それはいいから……」

 

 ぬ〜べ〜が懐中電灯持ってるし頭の光も消しておこう。

 あと、広は俺を見て笑うな。

 

「それよりぬ〜べ〜上を見るのだ!」

 

 ぬ〜べ〜はまことの言葉を聞き懐中電灯を上に向ける。

 

「不発弾!校庭の真下にこんなものが……」

 

 ぬ〜べ〜達が驚いていると突然頭上からドスンドスンという音が鳴り響き始める。おそらく誰かが鉄棒を使い始めたのだろう。

 

「!上は鉄棒か……地盤がもろくちょっとの振動でも崩れやすくなってる……爆発するぞ!」

 

「ぬ〜べ〜!このままだと上にも被害が!」

 

 壁や地面が崩れ始め不発弾が落ちそうになり俺たちは焦り始める。

 

「一か八かだ!」

 

ぬ〜べ〜はそう言うと左手に手を掛ける。

 

「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光!我が左手に封じられし“鬼”よ!今こそ、その力を…示せ!」

 

 左手の手袋を外し鬼の手が顕になる。

 

「この手は霊体!現世のものは突き抜ける!ここからはなれろ――‼︎」

 

 ぬ〜べ〜は鬼の手を伸ばしてそのまま鬼の手だけを地面から出す。

 

 さっきまで鉄棒をしていた奴らは逃げたのか揺れが収まるが、地下の崩壊は止まらない。

 ぬ〜べ〜は俺と広、まことを抱えて水の中に潜る。

 そして、不発弾がカチッ!という音が鳴った後とてつもない爆発を起こした。

 

 *

 

 不発弾が爆発した後なんとか逃げ延びた4人は学校の明神沼にいた。

 

「よ……よく助かったもんなのだ」

 

 奇跡的に助かったことにまことは驚く。

 

「ああ、あいつが引っ張ってきてくれたんだ」

 

 ぬ〜べ〜が指差した先にはあの河童がいた。

 

「あの爆弾から子供達を守る為に、鉄棒をやらせまいとしてたんだな」

 

「いい妖怪なんだね、君は…」

 

 それを聞いて河童はニヤリと笑い水の中に消えていった。

 

「よし!とりあえず学校に戻るぞ!あの爆発で怪我人が出たかもしれないからな」

 

 そして、俺達はずぶ濡れのまま学校に戻ることになった。

 

 ちなみにあの爆発で怪我人はいなかった。

 




余談:
雷獣は知識マウントをとって優越感に浸りたい為聞くと色々教えてくれます。

提案やアドバイス、質問などはこちらにどうぞ、リクエストでもOKです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=322936&uid=404295
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