【完結】 この街にはヒーローが居ないみたいなので俺が代わりに助ける事にする   作:LEIKUN0227

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第30話 不幸と幸運 [日風side]

 

 

 

─────

 

日風「うっ…ぁ…!」

 

足は地に着かずプラプラとぶら下がっていて、

骨は怪人が力を入れていく度に軋む音を立てている、

怪人は掴んでいるそれ(日風)の反応を楽しんでいるのか、

少し力を抜いては力を入れて嬲っている。

 

日風「カハッ…痛い…辞め…っヒュアッ!?」

 

怪人が再び力を入れると、

日風の骨が折れ、

その折れた骨が内臓に刺さった様だ、

日風は口から吐血してしまい、

痛みで涙がこぼれ落ちる。

 

日風「ハァー…ッァ…う…あ…」

 

《ギャルルルルルル!》

 

怪人は握ると鳴く玩具(日風)を面白く思ったのか、

鳴き声をあげて歓喜している。

 

日風は潰れかけの肺でかろうじて呼吸をしている、

今の彼は怪人のさじ加減で死ぬか死なないかという窮地に立たされている、だが、そんな彼を救おうとする者は誰も居ない、

この会場にいた人々は─1人を除いて─逃げるか、

そして死んでしまったからだ。

 

日風「だ…れか…ァ…ダす…」

 

怪人が握る力を強くする、

《ミシミシ》と更に骨が軋む音を立て、

日風の顔が苦痛により歪んでいく、

「誰か助けて」

その言葉を声に出したいというのに、

肺が圧迫されてしまって上手く呼吸が出来ず、

声を出す事が出来ない。

 

だが、その意思を汲み取ったのか、

それとも私怨なのか、

怪人に対して物を投げ付けた者が1人居た、

物を投げ付けた者は身体中のありとあらゆる箇所の骨が砕けており、

その場から動けていない、と言うよりも動けない。

 

その存在…置き引き犯は唯一使える右手を使い体を起き上がらせて、

右手で物を投げ付けた様だ。

 

その投げた物は放物線を描いて怪人の後頭部に直撃し、

それが怪人の怒りを買ってしまった。

 

手にしていた玩具をその場に落とすと、

両腕でひび割れた地面を踏み荒らして、

倒れている置き引き犯の前に立ち、

そして…

 

怪人は置き引き犯に対し、

両手を豪快に叩きつけた、

周囲の地面は衝撃で砕け散り、

辺りが静まり返る。

 

日風「あっ…」

 

日風は「あっ…」と声を漏らし、

先程まで生きていた男を踏み潰した怪人を見ていた。

 

また1人死んだ、助けれなかった、

助けてもらった人を助けれなかった、

何も出来なかった、

僕は無力だ、

人一人だって救えやしない。

 

そう日風は助けられなかった事を後悔と絶望を抱き、

理想を口にするだろう。

 

日風「なんと…か、しないと…僕が…止めないと…力…あの怪人…をぉ…何とかする力が…あ"ればぁ…」

 

日風には何の力もない、

ヒーローに助けてもらう弱者、

弱虫で気も弱い、

怪人を前にしても逃げ出さず、

置き引き犯の男を助けようとする"勇気"はあったが、

力が無ければそれはただの無謀である。

 

日風は幸運にも怪人が手を離した事により、

先程よりも呼吸がしやすく、

片膝立ちする事が出来ている、

もう少ししたら立ち上がる事も出来るだろう。

 

日風「…!」

 

逃げ出すなら今、そう、

逃げるには充分可能な状態であった、

だがそれをしなかった、

日風は落ちていた物を見て、

ある可能性を見いだしたからだ。

 

日風はそれを拾い上げる、

それは先程まで生きていたあの男が怪人に投げた…"鞄"であった、

特徴的な赤と黒の少し汚れた鞄、

怪人にぶつかった際にチャックが壊れたのか、

鞄は開いており、

中に入っている物が見え隠れしている状態だった。

 

日風「量産型…マッハドライバー…!」

 

それが目に映り、

この状況を打破出来るかもしれない物が見えていた事は、

日風にとってこれ以上無い位の幸運だろう、

それを腰に宛てがうとそのドライバーが装着される。

 

日風は幸運だった、

鞄のチャックが壊れた際に飛び出していたと思われる1冊のノート、

そこに所有者の名前がフリガナ付きで書かれており、

和廻音(ヤマトネオン)

と書かれていた、

それが本物の量産型マッハドライバーだと裏付けたのだ。

 

ドライバーを装着した日風は特状課キーを装填し、

変身しようとするだろう。

 

そんな時一瞬の浮遊感を日風と目の前に"居た"怪人は感じ取った─

 

 

 

 

 

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