日輪の半龍人   作:倉田 創藍

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「小説家になろう」に最新話を、「カクヨム」にて同作を章ごとに、こちらへは定期的に更新していく予定です。


20話 新たな門出(虹耀暦1287年7月:アルクス15歳)

 帝国を興した初代皇帝は幼少期より兎角自由気ままな性格だったそうだ。

 

 決して怠惰というわけではない。

 

 ただ当時の王族にしては珍しく、地位に拘らない人付き合いをしていたと記録されている。

 

 それゆえにか、大戦を終え、新たに帝国を築いても、あっちこっちにフラフラと出歩いて回り、そこいらの屋台や酒場に顔を出して何食わぬ顔で酔っ払い共と世の中の不平不満を煙草の煙と共に吐き出していたそうな。

 

 世を治める側が何を言うか、と思うだろう。

 

 しかしながら何でもかんでも思った通りにはいかないものだ。

 

 あっちを立てればこっちが立たず。

 

 どうしたって恩恵に与れない者は出てくるというもの。

 

 そんな苦い思いを抱えた者達すらどうにかあの手この手で掬わんと悪戦苦闘し続けたのが初代皇帝である。

 

 ゆえにその人気はいまだ衰えることはない。

 

 そしてその初代皇帝が家臣にあれやこれやと忠言、苦言を呈されて、ようやく、渋々建設したのが皇居。

 

 その周辺に出来上がっていったのが今の帝都である。

 

 都市面積そのものは武芸都市とそう変わらないが、人口密度はそのおよそ3倍。

 

 充分に都会と呼べるだろう。

 

 東西南北と皇居がある中央区で5つに区分けされ、武芸者協会も帝都だけはそれぞれの区に一つずつ支部が存在する。

 

 これは人の多い帝都で武芸者が仕事にありつけないという事態を回避する為の施作だ。

 

 そのおかげで帝都にいる武芸者数は常に1位と呼べるほど多いのに、各区の支部に出入りする人数は芸術都市並に少ない。

 

 また常に1位と言われることが多いものの厳密にはそうではなく、夏季は帝都が、冬季は武芸都市が多くなる傾向にある。こちらは単純に気温の影響だ。

 

 武芸都市の方が帝都より南にあるから。単純明快な理屈。

 

 帝国の冬がその人口密度による温室効果では凌げない寒さをしているということの裏返しとも言えるだろう。

 

 

 

 そんな帝都の武芸者協会・帝都南支部の訓練場の一角にアルクスとマルクガルムはいた。

 

 時刻は訓練場が閉められる20時前数分、と云ったところだ。

 

「そォら、よっ!」

 

 手加減されたマルクの蹴りがアルの腹に炸裂した。

 

 幾ら手加減されていると言っても【人狼化】を使った状態の蹴りだ。

 

 その衝撃は小さくない。

 

「ふぐぅっ!?」

 

 蹴り飛ばされたアルがゴロゴロと転がっていく。

 

「また剣気消えてたぞ」

 

 人間態に戻ったマルクが声を投げかけると、

 

「まーじかぁ。はぁ……手前(てめえ)の血もロクに御しきれないなんざ、情けねえったらありゃしねえや」

 

 バッと上体を起こしたアルが溜息をつきながらぼやいた。

 

 その緋色の瞳に浮かぶ瞳孔は金色(こんじき)に縁取られている。

 

「アル、口調」

 

「おっといけねえ」

 

 軽く舌を出す。

 

「戻ってねえぞ」

 

「つったって、どっちが本当かわかんなくなってきちまったんだよ。――この状態だと、どうにも荒っぽくなっちゃっていけないね」

 

 アルが深く息を吐き出しながらそう言っている途中で、金色の縁取りがスウッと消えていく。

 

「戻ったぞ」

 

「お、ホントだ」

 

「ほれ、そろそろここも閉まるだろ。今日はこんくらいにしとこうぜ」

 

 マルクがそう言ってアルに手を差し出した。

 

「そうしよ。やっぱ半端になっちゃうなぁ」

 

 その手を握ってよっこらせっと立ち上がらせてもらったアルが再度ぼやく。

 

「そんなに難しいのか? ”闘争本能の限定解放”って」

 

 俺にゃサッパリわかんねえ。とマルクが言うと、

 

「そらマルクや凛華は常にそれで戦っても問題ないから、わかんないかもしんないけどさ。俺は怖くて二年前くらいから、こないだまでその戦い方封印してたし。六道穿光流と噛み合ってんだか噛み合ってないんだか、上手くノッてるときもあるけどズレる時はもうグッチャグチャになるんだよ」

 

 アルは肩を竦めてそう返した。

 

 二人が行っていたのはアルが最近己の裡にどうにかこうにか見出した”龍人族の本能”――その限定的な解放の訓練である。ちなみに体感で解放しているのは二割ほど。

 

 しかし、たった二割でも”限定解放”と六道穿光流が、つまりは剣術とのすり合わせが行えていないのか未完成状態。

 

 ゆえに剣気を常に発し、更に”限定解放”を行ったうえでマルクと地稽古を行っていたのだ。

 

 先ほど吹き飛ばされたのはその剣気が途切れ、本能寄りになった為。

 

 常にその状態で闘い続けてきた人狼族(マルク)元々半端な龍人族(アルクス)が煮え切らぬ戦い方をすれば、敗北を喫するのは後者であるというのは自明の理であった。

 

「そのグチャグチャな部分をついたからな。格上か同等と()る時は剣でいった方が良いぞ」

 

 マルクの態度は知らない者が見れば辛辣、知っている者が見れば真摯といった具合だ。

 

 当然本人も受け取り手も後者として会話は進む。

 

「やっぱ、そうだよねぇ~……」

 

 アルが肩をがっくしと落とす。

 

 見出した光明が新たな試練に変わるとは誰が予想できようか。

 

「ま、そう焦んなよ。とりあえず飯食おうぜ」

 

 さっさと脳内を夕飯に切り替えてマルクはそう言った。

 

 それほど容易に克服できる問題ならアルが隠れ里の外に出る必要はない。

 

 もっと長い目が必要なのだということはマルクもよくわかっている。

 

「んだな~」

 

「あ、そういやどうなんだ? ほれ、取り調べ。ここ二、三日はお前だけ行ってたろ?」

 

 二人で支部の食堂へと抜けながらマルクが問うてくる。

 

「言い方。”聴取”だよ、”聴取”。そろそろ終わるんじゃない? まーったく……鉄道憲兵隊だの、普通の憲兵だの、記者だの、協会だのあんなにワサワサ群がられちゃ堪ったもんじゃないよ」

 

 アルは気疲れを起こしたような顔で不平をぶちまけた。

 

 劇団所属、北部の貴族家三女クラウディアを誘拐すべく引き起こされた”魔導列車襲撃事件”からすでに1週間と数日。

 

 あの騒動は帝都どころか帝国中を激震させたらしく、連日のように呼び出しを食らっては、『やれあの時はどうだった』だの、『襲撃者一味は自分の所属がどこか別の国だとか言っていたか?』だの、『もう少し詳しい状況を教えてくれ』だの、と時間を浪費ささせられていた。

 

 依頼者のオスヴァルト・ディヒターと協会のおかげで、記者からの取材はシャットアウトできているものの、憲兵相手には詳しく説明するしかなく、ろくに帝都の観光もできやしない。

 

 そもそも8月初頭に実施される〈ターフェル魔導学院〉の受験に来たのだ。

 

 寮もあるという話だが、ラウラとソーニャがいるし、武芸者として活動する以上拠点(ホーム)を借りた方が融通が利く。

 

 そちらも探さなければならないので時間はあまりないのだ。

 

 5日間は一等車側と三等車側で分断されていた際の話を乗務員達の話と合わせてする必要があったので、『紅蓮の疾風』も含めて全員で出向いたが、ここ数日はその必要もないということでアルと『紅蓮の疾風』だけで出向いている。

 

 残りの5名と1羽は物件探しだ。

 

 オスヴァルトが「あの報酬でワタシ達の感謝の気持ちが表せたと思えないわ」と言ってくれたので、すかさずアルが交渉して、”鬼火”の一党は適した物件が見つかるまで、『紅蓮の疾風』は劇団の公演期間中は劇団所有の屋敷の部屋を借りることが出来た。

 

 帝都で舞台公演をする際に劇団員達が泊まる屋敷だそうで部屋は有り余っているそうだ。

 

「そうかい。ま、お疲れさん」

 

「ん。そっちは? 良さそうな物件は見つかった?」

 

 労ってくるマルクにアルは問い返す。

 

「それについちゃ報告があるぜ。資料貰ってきたから飯食いながら見せるさ」

 

 楽しみにしてな。と、マルクは返した。

 

「了解。順調なようで何よりっと四人はどこかな?」

 

 アルがきょろきょろ首を巡らしていると、

 

「アルー、マルクー、こっちだよ~」

 

 シルフィエーラが食堂の席から手をブンブン振ってみせる。

 

「いたいた」

 

「腹減ったぜ」

 

 女性陣4名が確保している丸い卓に二人はササッと移動した。

 

「カアー」

 

 夜天翡翠が「おかえりなさーい」と言うように鳴いてすかさずアルの左肩に跳び乗ってきた。

 

「良さそうな物件、見つかったんだって?」

 

 アルは席につくなり、口を開く。

 

「ええ、幾つか目星をつけてきたわ」

 

「物件情報も貰って来たよ~」

 

 左右の凛華とエーラがそう返すと、アルはキョトンとした。

 

「え、目星? ってもう見つけたの? 見に行き始めてまだ二日だろ?」

 

「うむ、二手に分かれて探しに行ったのだ。候補物件は三つあるぞ」

 

 ソーニャが軽く胸甲を叩く。

 

「三つも? こんな都会なのによく二日で見つけられたなぁ」

 

 駅と協会と憲兵本部にしか行ってないアルは魂消たとばかりに目を真ん丸にした。

 

 そこに料理が運ばれてくる。どうやら時間を見越して先に頼んでいたらしい。

 

「ええ、これです。学院から近い順に並べてます」

 

 ラウラはそう言って物件情報の載った紙束を渡してくる。

 

「ありがと。学院の近くから探してきたのか、なるほどね」

 

 アルは料理に口をつけながらササッと目を通す。

 

 紙束には3軒の借家について家賃、間取り、部屋数、月々の家賃が載っていた。

 

「一番遠くても学院から徒歩十五分くらいってとこだよ~」

 

 エーラがのほほんと補足する。

 

「最初の二つは昔から学院生とか、女学院生がお金を出し合って借りてきた家だそうだから古かったけど、手入れはしっかりされてたわよ」

 

 お上品に料理を取り分けながら凛華も追加情報を述べた。

 

 どうやら彼女はその二軒を見てきたらしい。

 

「一番最初のとこは個人部屋が少し狭かったですね」

 

「そうだな、たぶん同性同士で借りてきたところなんだろう」

 

 ラウラとソーニャがそのように話し合う。

 

「三つめはボクとマルクで見つけてきたとこだね~」

 

 エーラはお行儀悪くチョイチョイと肉叉(フォーク)で資料を指した。

 

「おう。そっちはちょっと前まで武芸者が拠点の家にしてたとこらしい。面子が結婚だの引退して店やるだので一党を円満解消したから管理商会に売ったんだと」

 

 そう言ってマルクが骨付き肋肉(スペアリブ)にかじりつく。

 

「随分豪気な一党だなぁ。家持ってたなんて」

 

 帝都で家を買うって土地とか上屋とか結構高いんじゃないの?

 

 そんな意味を込めてアルが呟くと、

 

「あ、一党で買ったんじゃなくて両親が他界した一人暮らしの武芸者のおうちだったんだってさ。いつの間にか拠点になっちゃってたけど、楽しい思い出が詰まった家を取り潰すのは寂しいからって」

 

 エーラが「なんか良いよねぇ、そういうの」と言いながら説明した。

 

「部屋も最初の二軒よりは広いぜ。ちっさいけど中庭ついてたしな」

 

「へぇ、そりゃ良いかもね」

 

 アルは乗り気になった。もう『そこで良いんじゃね?』と喉まで出かかったところで、

 

「その代わり最初の二軒より家賃は高いけどな」

 

 マルクが現実を叩き込む。

 

「……そりゃ、悩むねぇ」

 

 アルは「うぅ~ん」とモソモソ潰した芋(マッシュポテト)を口にして、紙束を矯めつ眇めつする。

 

「とりあえず、この三軒に絞って皆で一回見に行きましょって話になってるわ」

 

 それで良いかしら? と聞いてくる凛華に頷いていたアルは、

 

「それで良いと思う――ってあれ? そういや借りるのに条件とか言われなかった? 保証人とか敷金とか」

 

 借りるうえでの留意点に思い至って、はたと止まった。

 

「敷金はどれも最初の月に家賃二か月分だったぞ。保証人の方も心配いらない」

 

 しかしソーニャは「問題ない」と妙に自信ありげに言ってくる。

 

「え? 心配いらないってどゆこと?」

 

「カァ?」

 

 彼女の態度に主従は揃って首を傾げた。

 

「ディヒター卿が管理商会に話を通してくれたんです」

 

「ディヒター卿が?」

 

 どういうことだかよくわからなず、ラウラに鸚鵡返しする。

 

 すると――

 

「昨日ボクら見に行ったんだけど、ほらボクらこの国の武芸者じゃないじゃん?」

 

 と、エーラ。

 

「うん」

 

「あんまり良い顔するとこなくってな。つってもこっちが申し訳なくなるくらい低姿勢で、断られたんだけどよ」

 

 と、マルク。

 

「まぁ、流れ者の三等級が急に家貸してくれって来たらそうなるか……?」

 

 わからんでもない。アルはそんな顔をした。

 

 慈善事業でも何でもないのだからそれはそうだろう。

 

「それで困ってたらディヒター卿が『ワタシの出番ね』って言って今日行った管理商会に連れて行ってくれたのよ」

 

 と、凛華。

 

「身元は自分が証明するからって言ってくれたんです」

 

 と、更にラウラが結んだ。

 

「マジか。トビアスさんに一筆もらおうかと思ってたけど、そこまでしてくれたの?」

 

 なんだか申し訳ないなぁ。と、アルがぼやく。

 

「ま、あの事件のことちゃんと評価してくれてるっつーことにしとこうぜ」

 

 返そうにもすぐに返せそうなアテのねえ恩だろ。とマルクが言ったことでアルも「そりゃそうか」と切り替えた。

 

「んじゃとりあえず明日は呼び出しなさそうだし、皆で物件見に行こうか」

 

 アルが夜天翡翠に切り分けた(ステーキ)をやりながらそう締めると、

 

「うーい」

 

「「はーい」」

 

 と魔族組が返事を返す。

 

 しかし、ラウラとソーニャは沈黙を返した。

 

「うん? どした?」

 

 アルがコテンと首を傾けて、丁度向かいのラウラに問うと、

 

「あ、あの、アルさん、その…………あの、先にこれを」

 

 と言って、丁寧に畳まれた紙切れを渡してきた。

 

 その面持ちはやたらと緊張している。

 

 隣のソーニャも似たような表情でゴクリと息を呑む。

 

「二人ともどしたの?」

 

「なぁにこれ?」

 

 凛華とエーラに覗き込まれながらアルは手渡された紙を開く。

 

「「あ……」」

 

「依頼票か」

 

「……なるほどな」

 

 それは出会った頃にラウラが出した長期依頼の依頼票だった。

 

 内容は帝都までの護衛依頼。報酬は移動や宿泊にかかった経費。

 

 条件はアルを頭目とした一党にラウラとソーニャが臨時加入すること。

 

 これが指し示す事実は、”鬼火”の一党には書類上ではラウラとソーニャは正式な一党面子には入っていないということ。

 

 そして、もう一つ重要な事実。

 

 それは依頼が達成されたということ。

 

「あの……皆さんのおかげで、私とソーニャは無事帝都に辿り着くことが出来ました。あの時は夢でだってこんな未来を見ることはありませんでした。

 でも私達は、無事で、ここにいます。あの時より、身体も、心も強くなれました。だから、まずはありがとうございます」

 

 ラウラは緊張しつつも心からの感謝を込めて頭を下げる。

 

「私からも、感謝する。あの時落馬した私を助けてくれてありがとう。その後も何くれと親身になってくれて、共に戦ってくれて心強かった。ありがとう、四人とも」

 

 ソーニャも胸甲を叩いて微笑みながら頭を下げた。

 

「ラウラ……」

 

「ソーニャも、そんな改まって言わなくても」

 

「いいえ、ケジメなんです」

 

 眉を八の字にさせた凛華とエーラにラウラはようやっと微笑む。

 

 ここからが本題。ラウラは緊張に唇を舐めて口を開いた。

 

「それで……その、依頼票が受理されれば、私達は――」

 

 ”鬼火”の一党でなくなる。口にしてしまうことすらラウラには躊躇われた。

 

 それが堪らなく嫌だ。

 

 ここまで強く思ったことはない。

 

 まだ共に在りたい。学院に行くなら、共に在っても良いはずだ。

 

 だがそんな後ろ向きな気持ちで、ズルズルと未練のように引き摺って彼らとの付き合いを、縁を――そんな気持ちで繋がっておきたくない。

 

 だから、ケジメをつけなければならないのだ。

 

 前向きに彼らと共に在る為に。

 

 屈託なく笑い合う為に。

 

 この陽だまりにいさせて欲しいと、願わなければならないのだ。

 

 しかし、拒絶されたら?

 

 依頼だからとすげなく返されたら?

 

 あるはず……ない。そう思いたい。だがどうしようもなく考えてしまう。

 

「私達は――」

 

「待った」

 

 ラウラが震えそうな声で紡ぎかけた言葉をアルは遮った。

 

「アル、さん……」

 

「……アル殿」

 

「その先は俺が言おう」

 

 そう言ってアルは二人へその強い光の灯った瞳を向ける。

 

 ビクリとラウラが肩を震わせ、ゴクリとソーニャが唾を呑んだ。

 

「って言うより、もうその返しは決めてるんだ」

 

 しかし、対照的に彼はふにゃっと笑う。

 

「え?」

 

「決めてる?」

 

 少女達が戸惑う。

 

「うん。依頼を終えたらラウラとソーニャは俺達の一党から外れることになる」

 

「……はい」

 

「……そうだな」

 

「そこで、四等級の術師と同じく四等級の剣士二人に質問――……いや、お願いがある」

 

 少女達が「へ……?」 と驚き、魔族組がフフッと嬉しそうに笑った。

 

「俺達と、正式に一党を組まないか? こう言っちゃなんだけど、魔族の俺達に合わせられる後衛の術師と盾が使える剣士は貴重なんだ」

 

 アルはそう言って悪戯気にニッと笑う。

 

 一瞬ポカンとしたラウラとソーニャは徐々に意味を理解すると、嬉しそうな笑みを浮かべていき、

 

「はいっ! これからもよろしくお願いします!」

 

「ああ! よろしく頼む!」

 

 弾けるような声で返答を返した。

 

「ああ、これからもよろしくな」

 

 アルがニッコリ笑うと、途端に人間の少女達は脱力する。

 

「緊張しました……」

 

「うむ、やはりこういう緊張は戦闘とは別物だな」

 

「もう! 急に改まってびっくりしちゃったじゃん!」

 

「そうよ! 今更仲間じゃないなんて言うわけないでしょ?」

 

 ぷんぷん怒り出すエーラと凛華にラウラとソーニャは「考え出すと怖くって」「すまんすまん、やはり不安でな」と返す。

 

「フッ、予想してたのか?」

 

「そりゃね。マルクだってそうだろ?」

 

「まーなー。急にボーッとしたり、変だったからな」

 

 アルとマルクはそう言い合って楽し気に笑った。

 

 今更「じゃあ依頼終わったから、今後はそれぞれ頑張ろうぜ」なんて言うはずがない。

 

 共に潜り抜けてきた死線は数知れず、共に過ごしてきた時間ももう相当になる。

 

 魔族組にとっても彼女ら二人は立派な仲間なのだ。

 

「カアー、カアカァッ」

 

「お、そうだったな。忘れてたよ」

 

 三ツ足鴉がファサっと羽毛を擦りつけてきたことでアルは指をパチンと鳴らす。

 

「? 何を忘れてたんですか?」

 

 嬉しそうに頬を上気させたままラウラが小首を傾げる。

 

「うん。これも決めてたんだ」

 

 アルはそう前置きすると、

 

「正式に六人一党になったし、一党名を決めようってさ」

 

 またもや悪戯気にニッコリ笑って提案した。

 

「それ良いわね!」

 

「ボクもさんせーい!」

 

「お、とうとうか。てか、こんにゃろう、これ待ってたんだな?」

 

 魔族組が愉快そうに笑う。

 

 ラウラとソーニャは顔を見合わせて、

 

「私も賛成です!」

 

「姉に同じだ!」

 

 破顔するのだった。

 

 

 

 それから優に2時間。

 

 普段よりも更に口数の多い6人は楽しそうに話し続け――

 

 そうしてほぼ丸一年越しに、ようやく正式な一党となった”鬼火”の一党改め『不知火(しらぬい)』として活動することが決定するのだった。

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