日輪の半龍人   作:倉田 創藍

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ここでは初投稿になります。読んで頂ければありがたい限りです。



また「小説家になろう。」と「カクヨム」にて同作を2~3日に1度投稿しております。


こちらへは定期的に更新していく予定です。


第1部 少年期・1章〈異世界への転生編〉
0話  甦る死の記憶


 都内近郊のコンビニ。

 

 緑褐色のMA-1を着た男――長月は、隣の革ジャンを着た友人へ「やってられん」と愚痴を零した。

 

「せっかくのツーリングでこれだよ。こう寒いんじゃ、走れたもんじゃない」

 

 午前10時を過ぎているというのに、空はどんよりと暗い。1泊2日のツーリング計画は、この悪天候では台無しだ。

 

「しゃあない。とっととゴールの温泉に行こうや。雨が降ってないだけマシさ」

 

「直行かぁ……」

 

 渋る長月だったが、指先も千切れそうな寒さに、結局は折れた。

 

「わーったよ、目的地直行な。ルート決めようぜ、コーヒーでも飲みながら」

 

「おけ。あ、俺はロイヤルミルクティーで」

 

「その訂正は要らねえ」

 

 他愛もない会話を交わし、買い物を済ませた2人は、スマホを片手に店外の駐車場へ向かった。

 

 2台並ぶバイクのタンクが鈍色の空を映している。

 

 ふと、1台の軽トラが目に入った。店の入り口近くに、バックで駐車しようとしている。

 

(気持ちは分かる)

 

 長月がそんな益体もないことを考えた、その時。

 

 ブィィィィィ――ン!

 

 耳に突き刺さる、異常に高いエンジン音が。

 

 そして、次の瞬間。

 

「は……?」

 

 軽トラがタイヤ止めを乗り越え、猛烈な勢いで加速した。

 

 その先には、スマホに目を落としたまま歩く友人の背中。

 

「斎藤ぉ!!」

 

 長月は咄嗟に全力で友人の身体を突き飛ばした。

 

 直後、『グシャッ、メキャッ』という悍ましい音が、身体の内側から響く。

 

 巨大な重機にでも握り潰されたかのような、未体験の圧力。

 

 景色が明滅する。

 

 地面に転がった長月の視界に、不自然に折れ曲がった己の腕が映った。

 

 袖口からこぼれるホットコーヒーが……熱くない。違う、熱を感じない。

 

「長月っ! 長月ぃっ!? おい車どけろ! どけろっつってんだ!!」

 

 斎藤の絶叫が聞こえたが、何枚もの襖で仕切られたかのように音も遠い。

 

 軽トラは、長月を巻き込んだままコンビニの店内にまで突っ込んでいた。

 

 カヒュー……コシュー……。

 

 と、掠れた雑音が、自分の呼吸音らしいと理解するのに長月は数秒掛かった。

 

「――っ! ――!」

 

 涙ぐんだ友人が赤黒いスマホ片手に何か叫んでいる。が、もう理解できない。

 

(ああ……悪ぃ、やっちまった)

 

 せっかくの休日を、凄惨な事故現場に立ち会わせてしまった。

 

「……あ゛んま゛、気にずんな゛よ」

 

 長月は人の良い友人へ、最期の手向けを絞り出した――が、言えたかどうか。

 

 しかし、言ったことにして意識をふっと手放す。

 

 こうして、長月という男は呆気なく命を落とした。

 

 

 * * *

 

 

 よく知っている声がする。

 

「アルっ!? アル!! アルクス!! 大丈夫か!?」

 

 ゆっくり眼を開くと、紫紺の裾長外衣(ドレスローブ)を纏う妖艶な美女が、アルクスの頭や頬に手を当てて心配そうな顔をしていた。

 

 こちらも顔が青褪めている。

 

 悠然と構えている彼女の姿しか知らぬアルクスは、紅い瞳をパチパチさせて面食らいつつ、頭をこくこくっと頷かせた。

 

 途端、紫紺の妖艶美女は安堵したようにホッと笑みを浮かべる。

 

「あんな無謀な真似をするとは思わなんだぞ。効果が二乗されて吹き飛ばされたのじゃ。ま、じゃがもう安心せい。儂とっておきの『治癒術』掛けたからの。

 

 ――む? まだぼーっとしておるようじゃが、本当に大丈夫か? どこか変なとこがあるかの? やっぱりもう一度術を掛け――」

 

 と、捲し立てる美女――否、()()()()を遮って、()()()()思い出したアルクスはこう告げた。

 

「ししょう。ぼく、前世のきおくがあるみたいです」




今回が導入部となります。



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