また「小説家になろう。」と「カクヨム」にて同作を2~3日に1度連載投稿しております。
現在両サイトにて投稿されているものとこちらに投稿するものは少々文体が違う場合があります。
こちらへは定期的にある程度纏めて更新していく予定です。
イスルギ・凛華という鬼人族とシルフィエーラ・ローリエという森人族は共に隠れ里で育った魔族である。彼女らの後ろをついてくる人間の少女ラウラとソーニャは彼女ら2人と同年代だが、そこには大きな隔たりが存在していた。
それは文化である。特にその入浴文化は大きく異なる。
魔族には「この種族はこれ」といった入浴文化はない。環境によって好む者もいれば好まない者もいる。大きな大衆湯屋が
ちなみに元日本人の魂を持つアルクスや狩人の特性を持つがゆえ自他の匂いに敏感なマルクガルムも入浴が好きである。最もその2人は面倒になったら川に飛び込むくらいの雑さも兼ね備えてはいるが。
とはいえラービュラント大森林を移動中、『
あれやこれやと時短で入浴槽を作ってみたり、場所を変えてみたり、ドラム缶風呂染みた何かを作ろうとしたり。
移動が楽になって最終的に行き着いたのは水場近くで地形を利用して造る簡易岩風呂だった。
故郷の湯に浸かるという文化をそのまま取り入れた形だ。アルとマルクの男性陣は露天風呂を、凛華とエーラの女性陣は星見風呂を毎夜楽しんでいたりする。
この星見風呂というのは裸が見えるのはマズいだろうと仕切りについて試行錯誤するアルに、風で葉っぱを密集させて
最近は彼らのもう1羽の仲間である三ツ足鴉の名と掛けて夜天風呂などと呼んでいる。
では翻ってラウラとソーニャの入浴文化と言えば入浴という行為そのものは当然ある。
しかしそれはバスタブに入って体の汚れを落とす、所謂ところの
隠れ里の住人たちが強烈に持っている”風呂”という感覚はないのだ。
△▼△
何が言いたいのかと言えば文化の違いというのはこういう場面においてなかなか面倒な溝になるということである。
鬼娘と耳長娘2人は岩風呂の近くに来てすぐ、
「お、広いと思ってたけどサマになってるね~」
「疲れててもこういうとこは気が利くのよね」
慣れたように駆け寄っていく。ラウラとソーニャはポカンと口を開けた。
川べりに岩で作られた浴槽があり、湯気が漂っている。周囲は木々に覆われていてどこか非現実的な光景だった。
「あっ!ねえ凛華、風呂の外にまで岩を敷いてくれたみたい!ほんとに気が利くなぁ」
その声に釣られ下に視線を下げればどうやったのか、まっさらな断面を晒す岩が風呂の周囲を囲んでいる。人一人なら簡単に乗るだろう広さだ。
アルとしては不格好だったがタイル代わりである。浴槽から出てすぐに土や砂に乗るときの不愉快さは半端ではない。
断面にちっとも砂や苔がついていないのは川から水を引くときにデカい岩をアルがくるくる回しながら浮かべ、マルクガルムが『
凛華とシルフィエーラへの気配りにあふれる仕様に2人は上機嫌だ。
「ここなら洗ってすぐ浸かれるわね!」
同性のラウラが見惚れるほどに凛華が綺麗な笑顔を浮かべ、エーラも機嫌よく笑う。
「うん!上がる時はあっち側使お」
「そうしましょ。あんたたちも洗ってあげるから脱ぎなさいな」
そう言うと2人はさっさと服を脱ぎだした。気後れしながら脱ごうとしていたラウラはすぐに悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってください!どうして全部脱ぐんですか!?」
「お二方とも・・・・その、なんだ。大胆過ぎないだろうか?」
ソーニャも堅苦しく苦言を呈す。
人間の少女たちの目前で一糸纏わぬ姿を晒す凛華とエーラはキョトンとした顔を浮かべた。白い肌の鬼娘と濃い小麦色の肌をした森人は同性であってもドキリとする。
おまけに2人ともスラリとした体躯に女性らしい部分もしっかり現れていた。自覚は薄そうだがどう見ても美少女だ。
ラウラとソーニャはどこか奇妙な世界に迷い込んでしまったのではないかという錯覚すら覚え始めた。
「うん?ああ、大丈夫だよ。あの二人は来ないし、ほら、葉っぱで覆ってるから」
「風呂入るからに決まってるじゃない。脱がずにどうするのよ?」
あっけらかんと言う魔族の少女2人。この感覚は正直正しい。彼女らは”風呂”に入ろうとしているのだから。
しかしラウラとソーニャからすればおかしい。
確かにいつの間にか岩風呂ごと自分たちを覆いつくすような
そもそも屋外で、風呂で、全裸になるというのに抵抗があるのだ。
「そうかもしれませんけど――――」
「日が陰ってきてるし寒いのよ。もう面倒くさいから脱がしちゃうわよ」
「きゃあっ!?」
「ほらソーニャもだよ」
「ま、待ってくれ!私は自分で脱ぐ、脱ぐから手を放して!」
大袈裟に騒ぐ人間の少女2人にかったるくなった凛華とエーラがさっさと脱がせにかかる。彼女らは早く体を洗って湯に浸かりたいのだ。
「うぅ、同じ女性とはいえ無理矢理脱がされるなんて・・・」
「さっきから大袈裟なのよ」
サッパリ切って捨てる凛華。ラウラは羞恥で真っ赤になった顔でがっくりと肩を落とした。
「私まで・・・自分で脱ぐって言ったのに・・・・」
「肩の怪我まだ完治してないから手伝ったのに酷い言われようだよ」
ソーニャの矢傷は、エーラが治癒術を使ったことでもうほとんど塞がっている。痕はまだ残っているし、ひきつれは起きてしまうがそこまでの支障ではない。
しかし今は傷口が赤くなってしまっている。恥ずかしくて血流が昇ったらしい。
手で胸と局部を隠していた2人はやがて開き直ったのか「ええいっ」と岩風呂の縁に手を掛けた。
「浸かればいいんですよね?」
少々つっけんどんなラウラ。しかし凛華がぴしゃりと止めた。
「ダメよ。体流してないでしょ?汚れた体で湯舟に浸かるなんて何考えてんの?ほらエーラを見なさいな」
そう言われてラウラが見たのはいつの間にか持っていた木桶でザバザバと頭からお湯をかけ流すエーラの姿だ。気持ち良さげに贅沢にお湯を使っている。
―――――あれいいな。
ソーニャは心中で呟く。
「まったく・・・人間ってお風呂入らないの?汚いわよ?」
腰に手を当て、魅惑的な体を惜しげもなく晒す凛華が呆れ返った。ラウラとソーニャは心外だと言う顔で猛抗議する。
「ち、ちがっ!文化がっ!文化が違うんです!大体私たちはあんまり浸かるとかそういう文化はなくて!」
「湯舟はその、汚れを流すものというか・・・ええと、とにかく風呂はある。ただ浸からないだけで―――」
エーラに手渡された木桶を借りてザバザバと艶やかな黒髪に引っ掛けながら凛華は納得したような表情を浮かべた。
「ふぅん。父さんが人間の女は香水臭い、きっと風呂に入ってないんだって言ってたけどそういうことだったのね。お湯に浸かると血行が良くなって体の老廃物を汗として流してくれるのよ。匂いの元とかも一緒に流してくれるんだから、これからはちゃんと浸かんなさい」
日本のお母さんみたいなことを切々と説く凛華。
ラウラとソーニャは再度顔を赤くした。
―――――それは臭いということだろうか?
「うう、私一応貴族令嬢と同じ立場なのに・・・」
裸に剥かれ間接的に臭いと言われたラウラは精神的に折れた。
確かに馬に乗って必死に駆けていたのだから汗は掻いていると思ったがここまで言われるなんて。
「私ももしかして臭いんだろうか・・・香水の類はつけないが」
胸甲をつけている自分はラウラより遥かにマズいんじゃないか?とソーニャは慌てた。
普段は焼けることのない白い二の腕やお腹をぺたぺた触り不安な表情を浮かべる。
そこへエーラが無自覚に言葉の
「あ、うちにはマルクがいるからあんまり香水はつけないでね。索敵できなくなっちゃう」
臭いのはまあしょうがないけど・・・。
そんな言い方にラウラは堪らず待ったをかける。
「・・・ちょっと待ってください。私たち臭かったですか?」
「か、彼は臭いと言ってたのか?」
ソーニャに至っては青褪めた。一応自分とて女だ。
落馬から助けてもらった時点で臭いとか思われていたら恥ずかしくて悶死してしまう。
「マルクはそういう失礼なことは言わないわ」
凛華の回答はグレーを極めていた。マルクは女性に直接臭いと言うような
「だね。距離を取るくらいで」
フォローなのかトドメなのかわからないことをエーラが告げる。
「距離までは取られなかったと思うが・・・くぅ」
―――――結局わからないじゃないか。
ソーニャはプルプル震えた。
「・・・・ぐすっ」
ラウラに至っては半泣きである。
「いつまで突っ立ってるの?流してあげるからしゃがみなさい」
「うぅぅ・・・はい」
「もいっこ桶作ったからボクも手伝うよ」
「た、頼む」
バシャバシャとお湯をかけられる人間の少女たち。特に脂ぎっているわけでもないその髪を鬼娘と耳長娘にお湯で散々梳かれ、全身をこれでもかと流される。
そんなに臭かっただろうか?と2人は本気で傷ついた。
しかし何のことはない。魔族の少女2人にとって夜天風呂が聖域というだけである。
***
もういいだろうというお許しを貰ったラウラとソーニャは湯気の立つ岩風呂へ恐る恐る足を伸ばす。さっきザバザバやられてわかったが2人にはちょっと熱いのだ。
そもそも入浴などささっと済ませるものという認識が強いだけに浸かるという感覚に対する違和感が凄い。
故国の温泉にも行ったことがない2人には無理もない話だった。そちらはそちらでこの岩風呂とはまた趣向が違う。
ラウラが全裸に驚いたのも、温泉は水着で入るものという認識があったからだ。
「ゆっくりでいいわよ」
「はぁ~極楽ぅ~」
既に湯舟でまったりしている凛華とエーラは顔を緩ませてほこほことした表情を浮かべている。
ソーニャはその様子に「ままよ!」と言うような顔で湯舟に身体を沈めた。
「ふっ、うぁ・・・あ゛ぁ゛ぁぁぁ~」
肩まで浸かり乙女とは思えない渋い声を上げる少女騎士。
「そ、ソーニャ・・・そんな声出したらはしたないでしょう」
見かねたラウラが注意するもあまり効果がない。早く来いと言わんばかりに、
「ラウラ様、気持ちいいですよ」
とのたまう。ラウラは拗ねたように口を尖らせた。
「様はやめなさい。姉妹のように育ってきたのに堅苦しいじゃないですか」
「それならば、そちらも敬語はやめて頂きたい。寂しいでしょう」
一理ある。ラウラはしょうがないと言うように頷いた。
「そう・・・ね。どうせ国元へは戻れないでしょうし、昔のように話そうかしら」
「うん、それはいいから早く浸かるといい。温まる」
「おざなり過ぎじゃない?」
姉か妹かわからぬ従者の言に従ってラウラは肩まで岩風呂に浸かる。
「んっ・・・ほぉぁ~」
気持ちがいい。じわりと疲れが湯に溶けていくような未知の感覚に声を上げるラウラ。最もソーニャほど豪快ではないが花も恥じらう乙女としては充分に恥ずかしさを覚えるそれであった。
しかし、それすらどうでもいい。疲労が抜けていくままに任せる。たまに吹いてくる風がまた心地良い。
「これは・・・気持ち良いですね」
「ふふ、そうでしょ?」
凛華は自慢げにニコニコ笑う。
「こればっかりはアルに任せるのが一番だからね~」
エーラもふにゃあっとした緩い笑顔を浮かべていた。
「妙に凝るのよね」
「ボクらはありがたいけどね~、特に今日は気合い入ってるし。後でお礼しなきゃ」
「そうね・・・・戻ってきたときはだいぶマシな顔はしてたけど、やっぱりやつれてたわ」
凛華とエーラは正直なところ、神殿騎士との戦闘についてもう気にしないことにしている。人を殺めたこと自体には己に怯えたし、震えもしたがこういう事態になる覚悟は既に済ませていた。
凛華とエーラ、そしてマルクから言わせればアルが背負い込み過ぎているのだ。
本当に嫌なら何の強制力もない頭目の言葉など無視している。神殿騎士共の命を奪ったのは自分たちの決断でしかない。
アルとて頭では理解している筈だが、殺人の衝撃が強すぎて処理しきれていないのだろうと彼女らは考えている。
だからこそ、いつものアルに戻ってもらうために癒すのだ。
そんなことを考えていた凛華とエーラにラウラが話しかける。
「あの・・・先程は本当にありがとうございました。お陰でソーニャも良くなりましたし、聖国の手の者に捕らわれずに済みました」
「感謝する」
「別にいいわ。判断を下したのはアルだし」
ラウラとソーニャは凛華のドライな返答に本音を見て取った。
「アル、さんでしたか?その・・・彼は大丈夫でしょうか?私たちのせいで―――」
酷い顔をしていた黒髪の青年を思い出して心配そうな顔をするラウラに被せるように凛華は告げる。
「決めたのはアル。従ったのはあたしたち。あんたたちは唯のきっかけよ」
そちらのせいではない。そもそも武装して多勢で襲ってくる方が圧倒的に悪い。
凛華の発言を噛み砕けばこういう意味だ。
「そだね、君らのせいにするのは違うかな。たとえ君らを庇わなくても厄介な事になるのは目に見えてたもん」
エーラの援護も的確だった。あの場で神殿騎士の言うことを聞いたところで見逃された保証など、どこにもありはしない。
「だから言いっこなし。あと、アルじゃなくてアルクスよ」
「あ、ごめんなさい」
勝手に愛称を使うなとピシャリと言う凛華にラウラは思わず平謝りした。エーラはそれがおもしろかったのかケラケラ笑って揶揄う。
「あははっ。凛華~?ヤキモチ?」
「違うわ。あれでもあたしたちの頭目なのよ。そんな気軽に―――」
「うん、もうわかった」
頬を紅潮させた鬼娘がゴチャゴチャと言葉を連ねるがエーラはサクッと遮って畳みにかかった。
「わかってないわ」
だが、鬼娘は食い下がる。普段が堂々としている代わりにこういう時はしつこい。
「もぉ~メンドくさいよ~」
エーラがザブザブと凛華から離れていく。ラウラとソーニャはその光景から何となく彼ら4人の関係を察するのだった。
***
そのまま体を洗う流れとなったので、エーラ印の石鹸で隅々まで体を綺麗にし再度浸かる。この時点でそこそこ時間が経っていたので、凛華が水を流し入れ、エーラが『
『埋火』とは炎属性魔力の適性が著しく低い魔族が使う魔術だ。凛華やエーラはアルがいないときだけこの魔術で火を熾す。
ちなみに人間にはあまり知られていない。適性の低い属性など皆無な人間にはこの程度の火を熾すのに魔術を使う必要がないからだ。
「ねえ、君らこれからどうするの?」
「どうとは?」
エーラが不意に問うと、ソーニャが訊ね返す。耳長娘は水とお湯が混じっている場所を手でかき混ぜながら問い直した。
「これからどこに行くの?
「ああ、そういう意味か。ラウラ?」
答えてもいいか?と目で問うてくるソーニャにラウラは自分が言うと制する。
「まずは帝国に入ろうかと。あそこなら聖国が無闇に出入りできませんから。父からもそう言われてるんです。帝国のどこか目立つ都市で暮らすようにと」
「ふうん。当てはあるの?その目立つ都市って」
「私も詳しくは知りません。帝都には有名な魔術学校や女子学院があると聞いたので、そこに入れればいいなと。勉強しなければいけないのでしょうけど」
その言葉に凛華が反応する。
「帝都ならあたしたちと目的地は変わんないわね」
「ボクらはそこの魔術学校を受験しに行く途中なんだよ」
短過ぎる凛華の言葉をエーラが付け足して補足した。
「「えっ?」」
人間の少女たちは目を丸くする。
「うん?」
「魔族なのに魔術学校へ行くのか?」
「あら、悪いかしら?」
凛華が鋭く訊き返した。
「あ、いや・・・そういう意味じゃないんだ。ただ、先ほども簡単に魔術を扱っていただろう?魔族はそういうのが得意な筈なのに今更必要なのかという意味で聞いたんだ。気に障ったのなら謝る、すまない」
素直に謝るソーニャから誠意を感じたのか、凛華は然して気に留めず説明する。
「必要っていうか外に出る条件なの。それにあたし達で簡単に扱ってるってアルはどうなるのよ?」
「そうだね~。ボクらが戦闘に使う魔術はアルが創ったのしかないもんねぇ」
エーラは思い返すように夜空を見上げた。空の端はまだ微妙に明るい。
「魔術を創った?そんなこと出来るのは魔導師だけだってお父様から―――」
「事実だから疑われても困るよ」
ラウラの驚愕にエーラはのんびりと返す。
「そんなことどうでもいいのよ。で、どうするの?ついてくるっていうならたぶんアイツは止めないわよ?」
凛華の本題はこれだった。
これからどうするのか?追手が来てるかもしれないなか、また2人で逃げるのか。それとも――――――。
ソーニャをチラリと見たラウラは、しばし沈黙し、やがて口を開いた。
「それは・・・・・私があなた方全員に直接頼みます。こちらの事情も何もかも話したうえでついて行ってもいいか、アルクスさんに許可を取らせて下さい」
既に一度、彼らを危険に晒している。利用するだけ利用するような真似は人の道に悖る行いだろう。
ハッキリ言ってラウラとソーニャからすれば命の恩人。不義理はしたくない。だから利より義を取ると決めた。ソーニャも同意するように頷く。
もしダメだったとしても絶対に2人で生き延びてやる。ラウラはそんな強い目をしている。
「ふぅん」
「へぇ」
事情を包み隠す気もなく、取りなしも求めないラウラの答えは凛華とエーラのお気に召す回答だった。
「そ、じゃあちゃんと言いなさいな。聞いたげるから」
「だね!もうちょっと温まったら出ようか!」
凛華の不敵な笑みとエーラの天真爛漫な笑顔に2人は目をパチクリさせる。今の今まで本来の彼女らの笑顔は見せていなかったことに気付いたのだ。
ラウラとソーニャはなんとなくほっとしたような暖かい気分に包まれた。受け入れてもらえたような、そんな気分だ。
夜風となりつつある涼やかな風が彼女らを優しく撫でていく。それはポカポカと暖かな4人には大変心地の良い風だった。
☆★☆
その頃のアルとマルクはと言えば――――。
「へっくしっ!なんか、四人とも長くない?」
くしゃみをひとつして不安げなアルは親友へ言ってみた。しかしマルクは天幕を敷いた上に寝っ転がり呑気に返す。
「あれだろ、靴とか洗ってんだろ?凛華もお前と似たようなとこで戦ってたし」
動く気ゼロである。
「あー・・なるほど。あんまり遅いから声掛けに行こうかと思ってたよ」
「ぶっ飛ばされるぞ」
やめとけやめとけと手を振るマルクにアルも頷いた。
「だから迷ってたんだよ。やめとこう、今ぶっ飛ばされたら明日はたぶん動けないし」
そう言ってアルも焚火を挟んで向かい側にゴロンと寝転がる。
よくよく考えてみれば魔力の反応に乱れがないし、変な気配も感じない。杞憂だったなと呟いた。
聞こえている筈のマルクは沈黙で返す。男同士特有の沈黙が漂うがいちいち気まずくなるような間柄でもない。
アルとマルクはだんだん冷えてきた野営地でしょうもないやり取りを交わすのだった。
評価や応援等頂くと非常にうれしいです!
感想も受け付けておりますので是非ともよろしくお願い致します。