日輪の半龍人   作:倉田 創藍

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ここでは初投稿になります。読んで頂ければありがたい限りです。


また「小説家になろう。」と「カクヨム」にて同作を連載投稿しております。


現在両サイトにて投稿されているものとこちらに投稿するものは少々文体が違う場合があります。


こちらへは定期的にある程度纏めて更新していく予定です。


33話 ヌシのいる村と不穏な気配 (虹耀暦1286年12月:アルクス14歳)

 『黒鉄の旋風』との合同依頼を請けることになったアルクス達6人一党、通称”鬼火”の一党は現在ちょっと大きめの幌馬車を借りて都市から北西方面に移動中だ。

 

「その、ドラッヘンクヴェーレ?って村はあとどれくらいなんですか?」

 

「もう少ししたら見えてくる。ここの丘を少し下ったとこだ」

 

 アルの質問に『黒鉄の旋風』頭目レーゲンが答える。馬車はもう少しで丘を登り切るところだった。

 

「ま、村って言ってもギリギリ街じゃないってくらいの規模はあるんだけどね」

 

 同じ『黒鉄の旋風』副頭目のハンナが補足する。彼らの内何人かは行ったことがあるらしい。

 

「街にはしないんですか?」

 

 ラウラが疑問の声を上げた。観光地ならゼーレンフィールンほど発展させずとも多少開発して集客を狙った方がいいんじゃ?と思ったのだ。

 

「観光客が来るのは村としてはありがたいけど、開発で湖―――不忍大沼(しのばずのおおぬま)に棲んでるヌシがどこかに行っちまったりしたら寂しいし嫌だから過度に開発してほしくないんだとさ」

 

 御者台で暖かそうな格好をしたヨハンが後ろに声を投げかけて答える。

 

「随分親しまれてるのね、そのヌシって」

 

 魔物をありがたがるなんて人間にしては珍しい。凛華が率直な感想を溢した。

 

「元々不忍なんて言われてるくらいには目立つ大きな沼だったらしくてね」

 

 ハンナがそう言うと、ヨハンの双子の妹エマが経緯を語り始める。

 

「その沼を頼って出来た村があったんだって。で、まだ帝国が出来る前、戦争中だね。

 

 その村も他の街みたいに戦火に呑まれそうになって、村民達も『もうだめだ』って諦めかけてたとき、沼のヌシが出てきて兵士を撃退したって話があるんだ。それから沼はずっと大事にされてきたそうだよ」

 

「へぇ~、なんかあったかい話だねえ」

 

 エマが話し終えると、シルフィエーラが感想を述べた。魔物との共生や心を通わせるという話は魔族には多いが人間には少ない。

 

「だな。で、そこのドラッヘンクヴェーレの周りに魔獣が増えてきたって?」

 

「のようだな。六等級が十名以上というのは村の防衛も考慮してその数にしたんだろう」

 

 マルクガルムと森人剣士ケリアが依頼内容に話を戻す。

 

「そんなにいるの?周りは森で囲まれてるって話だけど大型でも出たのかしらね」

 

 ケリアの恋人であるプリムラは不思議そうな顔をした。

 

「森人基準じゃねえぞ。お前らの囲まれてるは俺らで言えば樹海ん中だからな」

 

 レーゲンが訂正する。ドラッヘンクヴェーレは一応きちんと道に接している。大沼がある関係上周囲に樹木が多いというだけだ。

 

「確か・・・牙猪より餓狼の数がやたらと多いんだったな」

 

 受付嬢からは詳細な内容としてそう聞いた。ソーニャは思い出すように言う。

 

「大型は少ないって話だったね」

 

「あいつらは食べらんないから微妙だわ」

 

 エーラと凛華がそう言うと、

 

「そだね。今回は土産はなしかなぁ」

 

 残念そうに返すアル。食べられない癖に荒らすだけ荒らしていく餓狼は正しく害獣だ。

 

「お前らにとっちゃただの弱い獲物なんだろうけどな。俺がガキの頃は怖かったもんだぞ」

 

「病気持ってたりするしね」

 

 苦笑いを浮かべるレーゲンにハンナが同意する。動きの素早い餓狼に噛まれるのは割と危険だ。

 

 そのまま食い殺される可能性もあるし、噛まれて逃げ切れたとしても病原菌を持っている。子供が襲われれば、助からないことの方が多い魔獣として有名だ。

 

「危ないってよりは面倒な魔獣って認識だな。そっちの二人もそんな感覚じゃねえの?」

 

 マルクがそう言うと、

 

「まあそうだな」

 

「樹や草たちが手伝ってくれるから正直脅威じゃないわね」

 

 ケリアとプリムラは頷いた。『精霊感応』がある森人には体重の軽い餓狼はかなり楽な相手だ。牙猪の方が止まらない分厄介と言える。

 

「ふぅっ。にしても今日は冷えるな。辺り一面雪だらけだぜ」

 

「冷えたんなら交代する?こっちアルクスが火を浮かべてくれてるから暖かいよ」

 

「そうしようかな」

 

「じゃ交代ね――――ってうわっ寒っ!」

 

「おぉ、こりゃ暖けえや」

 

 双子がそんな会話と共に御者台と荷台を交代した。ラウラはぷかぷか浮いているアルの蒼炎を見て微笑んでポソッと呟く。

 

「やっぱり”鬼火”ですね」

 

「ラウラ?」

 

「ふふっ、冗談です。でも”鬼火”ならいいじゃないですか?」

 

「良い意味じゃなくなかった?」

 

 楽しそうな隣の少女へアルはジト目を向けた。

 

「今のアルは龍焔を使えないんだから甘んじて受け入れるしかないわよ」

 

 そんな2人のやり取りを聞いて凛華がクスクス笑う。

 

「龍焔とはどんな炎なんだ?普通の炎ではないのは語感からなんとなくわかるが」

 

 ソーニャは疑問に思ったのか率直に訊ねてきた。

 

「炎龍人族の使う超高温の炎だよ。見た目は・・・白っぽい炎かな?アルは結構早い段階から使えるようになってたみたいだけど」

 

「当時でも属性魔力として撃ち出せば高位魔獣の表面くらいなら焦がしてたわよ。雷撃と混ぜれば吹っ飛ばしてたわ」

 

「撃ち出すっつーか、全部投げてたけどな」

 

「癖なんだからしょうがないじゃん」

 

 エーラを筆頭にした龍焔の解説にラウラとソーニャは興味津々である。『黒鉄の旋風』は高位魔獣の表皮くらいなら焦がしていたという言葉に素直な驚嘆を示していた。

 

 ”魔法”を使う高位魔獣はそこいらの魔獣とは比べ物にならないほど魔力への耐性が高い。倒せる人間の武芸者だっているが、属性魔力だけで傷をつけたり吹き飛ばしたりできる人間はそう多くない。

 

「今は使えねえのか?」

 

「封じちゃってるから最後まで解除しないと龍気も龍焔も使えないんですよ。解除したら暴走しちゃいますけどね」

 

 レーゲンの問いにアルはアッサリとそんな回答を寄越す。現状では実質使用不可であるということだ。

 

「炎が蒼くなったのはそれからよね?」

 

「ただの炎じゃ凛華達の属性魔力に太刀打ちできないし、威力も明らかに落ちてたからね」

 

 凛華の問いにアルは頷いた。蒼炎はいわば苦肉の策。しかし里を出る頃には当たり前になっていた。今では普通の炎を出した時の方が違和感を感じるくらいだ。

 

「蒼炎でも龍焔の方がまだ上なんですか?」

 

 ラウラの質問にアルは難しい顔で考え込む。

 

「んー、今は~・・・当時のと変わんないくらいじゃない?使い出した頃は龍焔の方が全然上だったけど」

 

「それで当時と変わらないくらいなのか」

 

 ソーニャの驚くがアルは苦笑した。

 

「炎龍人の血を受け継いではいるからね。その代わり桶いっぱいの水出すのにラウラ達の2万倍くらい魔力が必要だよ」

 

「極端だなぁ」

 

 話を聞いていたヨハンは途方もない倍数に呆れたような表情を浮かべる。全属性が等しく扱える人間からすればあまりに馴染みのない話だ。

 

「魔族なんてそんなもんさ。苦手な属性はとことん扱えねえからな」

 

 マルクはさも当然といった顔でそう言って幌に背を預けるのだった。

 

 

 そうこうする内に御者を務めていたエマが後ろへ呼びかけてくる。

 

「見えてきたよー」

 

「んお、寒っ・・・お!あそこがドラッヘンクヴェーレか」

 

「へぇー!なんか不思議な感じの村だね!暇があったら見て回ろ!」

 

 幌から顔を覗かせたアルとエーラが声をあげた。

 

 馬車から見えるドラッヘンクヴェーレは街や都市のように立派な防壁があるわけではないが、村というには少々華やかさが過ぎる。

 

 かと言ってド派手というわけでもない。何だか不思議な雰囲気を醸し出していた。

 

 アルの顔の上にひょっこりと頭を出した凛華は、村の奥の澄んだ湖を見つける。

 

「あれが不忍大沼ね。確かにちっとも忍んでないわね」

 

「大沼っていうより湖ですね」

 

「確かに。でかいな」

 

「名付けた時は沼っぽかったんじゃねえか?」

 

「だんだん広げたのかな?それともそのヌシってのが大きくなってって沼が湖になったとか?」

 

「それありそうだねえ~」

 

「知ってそうな人に聞いてみるのもありね」

 

 寒いのを無視して、幌の外へ顔を出したまま感想を述べる6人。

 

「ふふ、こういうとこは歳相応ね」

 

 ハンナはそんな彼らを眺めて微笑ましそうに笑うのだった。

 

 

 ***

 

 

 ドラッヘンクヴェーレについた『黒鉄の旋風』と”鬼火”の一党は促されるまま依頼者である纏め役の前にいた。村長のような役割を担っている家だ。

 

「ようこそ、おいでくださいましたな。外は寒かったでしょう。ささ、まずは茶でも」

 

 好々爺といった具合の纏め役は穏やかな顔を向けてそう言う。年明けを覚悟していたところに三等級と五等級の一党が組んできてくれたのだ。

 

 有難いと思うのは当然だった。

 

 二党は優しそうなご婦人が持ってきた蜂蜜入りと生姜の入った甘い茶を礼を言って呑む。帝国の冬はこれが主流だ。特に仕事で酒が呑めない者などには重宝されている。

 

「温かいお茶をありがとうございます、助かりました。早速ですが、依頼について詳しい話を伺っても?」

 

 手慣れた様子のレーゲン。まずは依頼内容と相手方の主張が正しいかを確認するのが出来る武芸者というものだ。少なくともレーゲンの先輩はそう教えてくれた。

 

「ええ勿論。ここ一カ月ほどですな、餓狼の群れが出没するようになりまして。通常であればうちの猟師たちが狩ってくれるのですが、数が多すぎると報告が。

 

 詳しく聞いてみると数頭の餓狼の群れがいくつか集まって大きな群れを作っているようでして。うちの村には子供もおりますし不忍大沼へのお客さん方もいらっしゃいますから危ないということで依頼を出したと、こういった具合でございますな」

 

 纏め役の言葉にレーゲンは頷く。詳細な内容と相違ないようだ。チラリとアルに視線を向けた。

 

 ―――――お前から聞いておくことはないか?

 

 という視線だ。レーゲンの視線を受けたアルは、おもむろに問う。

 

「餓狼の群れ、で合ってますか?他に大型の魔獣や牙猪なんかはいますか?」

 

 ラービュラント大森林に通じている森林には大抵牙猪が生息している。

 

「猟師が獲ったとは聞いておりますが、例年通りのようですな。大型の姿も見ておらんそうです。不忍大沼にいるヌシがおりますので、元々あまり近寄ってはこんのですよ」

 

 アルの認識票を見た纏め役は少々驚きながらもきちんとした返答を返す。アル達の若さで個人四等級はこういう反応をする方が普通だ。

 

 協会の定める等級と言うのは伊達や酔狂で与えられるものではない。

 

「なのに餓狼の群れだけは出てきた、ということですね?」

 

「ええ。観光客の中には不忍大沼のヌシが呼んでいるんじゃないか?などと口さがないことを言う者もおりますが、有り得ません。代々ここに住んできた私の一族達ですら一度として害を受けたことはありませんからな。かくいう私も昔溺れているところを助けてもらったこともあるくらいなのですよ」

 

 纏め役は憤懣やるかたないといった表情で饒舌に語った。ヌシとやらのせいだと言われたことは相当腹に据えかねることだったらしい。

 

 そのとき、コツコツと纏め役の家の窓を夜天翡翠が叩いた。上から村を見てきたのだろう。

 

「三ツ足鴉?群れておらんようですが」

 

 纏め役は不思議そうな顔を浮かべる。人間も襲うことがある三ツ足鴉だが、自分より大きな生物に襲い掛かることはほとんどない。

 

「ああ、使い魔なんですよ。窓を開けても良いですか?汚させたりはしませんから」

 

「え、ええ。そういうことでしたら」

 

 アルの問いに纏め役は躊躇いながらも応じた。一応魔獣なのだ。不安そうな顔を浮かべている。

 

「カアッ!」

 

 カラリとアルが窓を開けると夜天翡翠は彼の左肩に翔び乗ってきて嬉しそうに鳴いた。

 

「おかえり翡翠。どうだった?」

 

「カァッ!カァカアッ」

 

「楽しかったみたいだね」

 

「カアッ!」

 

 夜天翡翠は楽しそうにアルの頬へ身を寄せる。背中の革鞄はもうすっかり馴染んだようだ。

 

「いやはや驚きました。それにしても美しい羽毛ですな」

 

 主に甘えているようにしか見えない魔獣に纏め役は「ほう」と感心したような表情に変わった。

 

「ええ、名前の由来にもなってるんですよ」

 

「そうでしたか。あなた方からヌシへの警戒心のようなものを感じられないのはそういった理屈があるのでしょうな。武芸者の方もたまに寄られますが、やはり皆さんお仕事柄少し怖い目を向ける方もいらっしゃるのですよ」

 

 纏め役はかなりヌシへ情熱を持っているらしい。

 

「ハハ、魔獣と魔物の区別もつかないのはまだまだ素人の武芸者ですよ。それにここの話は有名ですからね。ところで我々はここで防衛すべきでしょうか?それとも森の方へ分け入るべきでしょうか?」

 

 レーゲンは話を戻すべくそのように訊ねた。

 

「群れがどこにおるか我々も知りませんでな。森の方・・・とも言い切れんのです。ですから防衛をして頂いて、現れたら討伐と群れの追跡を行っていただきたいと思っております」

 

 非常に合理的だ。纏め役側も年明け前に一度村の猟師たちや衛兵の真似事をしている者たちにそうしてもらおうと思っていたのでスラスラと言葉が出た。

 

「なるほど・・・了解しました。そっちもいいか?」

 

「ええ、問題ありません」

 

 レーゲンが問えば、アルは仲間の顔を見ながらそう返す。

 

 するとそこへ、ドンドンと家の戸を叩く音が響いた。領主館の屋敷なんかとは違って多少広いだけの平屋だ。

 

 居間の方で暖炉の前にいた老婦人は編み物を置いて戸へ向かう。

 

 そこには荷物籠を担いだ中年の商人がいた。腹も軽く出ている。

 

「こんにちは、奥さん。ああ、旦那さんもどうも。冬場ということで生姜茶なんて持ってきたんですがご入用じゃありませんか?あったまりますよぉ~」

 

 にこやかに商人が言うと、

 

「生姜茶ですか。少し頂こうかしら。あなたも呑みますよね?」

 

「ああ、頂いておきなさい」

 

 纏め役に確認を取った老婦人は向き直って問うた。

 

「おいくらでしょう?」

 

「ひと缶で九ダーナと九百九十九ケントってとこです」

 

「あら意外とお安いのね」

 

「はは、そりゃこの時期こいつぁ売れますからね。お安くしとるんですよ。それじゃあ毎度!」

 

 そんな会話を交わしている。商人はアル達を見ると、目を丸くしてその後呼びかけてきた。

 

「そちらの武芸者の方々も、手前は宿の方におりますんで、何かご入用があればどうぞ!」

 

 そう告げた後、老婦人ににこやかな笑みを送って帰って行く。

 

「今の方は最近ここに来られるようになった商人でしてな。なかなか商売上手な方なのですよ」

 

 纏め役は微笑んで教えてくれた。

 

「そのようですね。さて、では我々は宿の方を取って仕事の準備をしに行くとしましょう」

 

 レーゲンはそう言って立ち上がる。

 

「ああ、でしたら鹿の角が表に飾ってある宿へどうぞ。あなた方がいらしたとお聞きした時に部屋を空けておくよう頼んでおります。ああ、それと三日分の滞在費はこちらで持ちますよ」

 

 やたらと親切な纏め役にレーゲンはキョトンとした。

 

「よろしいので?」

 

 紛れもなく好待遇だ。理由に心当たりは、ない。

 

「ええ、まさか年が明ける前に来られるとは思っておりませんでしたから。それに三等級と五等級の一党の方々とも思っておりませんでな。こちらの気持ちです。それにここだけの話、他の村に較べてもこのドラッヘンクヴェーレは収入が豊かでして」

 

 纏め役は悪戯っぽく微笑んだ。命には代えられないし、ここはヌシのおかげで観光客も多い。気持ち良く仕事をしてもらえるなら滞在費くらい安いものだ。

 

 ―――――さっきの商人よりよっぽどやり手だな。

 

「なるほど。では、ありがたく」

 

 レーゲンは経験豊富な武芸者らしく、軽く頭を下げて席を立ち、アル達も倣うように出るのだった。

 

 

 纏め役の家を出てすぐのこと。アルの袖をエーラがくいくい引っ張ってくる。

 

 うん?と見れば、レーゲンの方にはケリアとプリムラが近寄っていた。

 

「どしたの?」

 

「あの商人の人、歩いたとき剣みたいな音させてたよ。帷子みたいな音もしてた」

 

 耳のいいエーラは敏感に聞き分けていたようだ。

 

「へっ?ほんと?」

 

 間抜けな顔をして問い返すアル。そのまま親友の方を見れば、

 

「俺の鼻も金臭さは感じてたぜ。ただそういうもんかと思ってた。血の匂いもさせてなかったからな」

 

 とマルクは返した。一応見過ごしてやった、という顔をしている。

 

「えっ、じゃああの生姜茶―――」

 

 ラウラが慌てて纏め役の家を仰ぎ見た。

 

「いや。毒みてえな臭いはしなかった。たぶんちゃんとしたもんだろうぜ」

 

「どういうことなのかしら?見た目はどこにでもいる商人のおっちゃんって感じだったわよね?」

 

「うむ。そう見せたいとか?・・・わからん」

 

 凛華とソーニャはうーんと腕を組んで首を捻る。

 

 アルはこちらに歩み寄ってくるレーゲンへ訊ねた。

 

「そっちも同じような報告ですか?」

 

「おう、そっちにゃエーラ嬢ちゃんがいたんだったな。こっちもあのおっさんからケリアとプリムラが妙な金属の()()を拾ったらしい」

 

 森人の3対の耳が聞いている。彼が商人でないというのは、おそらく間違いないだろう。

 

「どういうことなんでしょうね?」

 

「聞いて逃げられるのも面倒だし、明確な何かがあるわけでもねえ」

 

 つまり何もわからないということ。顎を擦るアルは左眼を細めて

 

「・・・キナ臭くなってきましたね」

 

 とボヤいた。

 

「すまねえな。単に数が多いだけだと思って呼んだんだが」

 

 レーゲンが謝るもアルは首を横に振る。参加すると決めた以上その責任は自分達にある。それに――――。

 

「慣れてますよ。とりあえずは、」

 

「おう、宿に荷物置いて、猟師達から話でも聞いてみるか」

 

 アルの言葉を引き取ったレーゲンは一つ頷いて見せ、宿の方を向く。

 

 

 ”鬼火”の一党と『黒鉄の旋風』の12名は、年明け前のそう難しくもない仕事のはずが妙な風向きになってきた、という厭な予感に顔を顰めるのであった。




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