何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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Q.何でこんなに誤字報告受けてるのに推敲とかしないの

A.推敲はいつでもできるが今浮かんだアイデアは今しか書けないから
 嘘です、単純に気が付かないバカです。

誤字報告感謝です。


幕末

 土曜日

 

 

 語り手の不足したオタクに捕捉されたため、機械のシステムについてのトークに花を咲かせ、楽器オタクとはエレキギターのハンダの成分割合トークが始まった結果、解放されたのは日がすっかり上る頃。

 

 和人はログアウトし、VRチェアでそのまま寝た。

 

 和人が使用しているVRチェアは完全なるワンオフ。

 体型の採寸からリクライニング時の身体負荷までレクトの膨大な研究データをもとに計算された最適な人間工学に用いられたものだ。

 

 レクトが和人に企画を持ち込む際に弊社のVR採寸技術を、と売り込みのためにテストとして作ってもらったものだ。

 

 中身は次世代機に搭載予定の物を色々突っ込んでいるVR機器マニア生唾ごっくん仕様である。

 

 夏先だと言うのに蒸れを感じないシートの通気性の良さに感動しつつ、アナログ時計の長針と短針が頂点をさしているのを見て、だいぶ自堕落生活だと恥じた。

 妹に健康的な生活をしろと言っておいてこれでは示しがつかない、と。

 

 

 キッチンの冷蔵庫を開けると、自分では面倒で用意しないサラダと、最近妹がはまっているらしいドレッシングを取り出し、少しかけた。

 サウザンドドレッシング、だっただろうか。

 トマトと小エビと葉野菜の組み合わせがどうしてこうもおいしいのか。

 

 サラダをもしゃついてエスプレッソマシーンで珈琲を……珈琲豆が切れていた。

 

 しゃーなしとパントリーから缶コーヒーを取り出し、飲む。

 BOSS派ジョージア派、色々と派閥はあるだろうがカムラに置かれた自動販売機がコカだったのでジョージアばかり飲むようになった。

 

 ストレートなブラックよりもエスプレッソに砂糖をぶち込んでグイっといくのが糖分とカフェインを同時に摂取できてよい。

 尤も修羅場っている時以外は積極的にカフェインを取ろうとは思わず、カフェインよりもブドウ糖の方が脳が働く気がするとラムネをボリボリしている。

 

 真登香はお嬢様学校の交友関係で気が付けば紅茶党になってしまっている。

 実家の両親は緑茶党。

 したがって和人宅の珈琲マシーンは和人のみしか使わない。

 嗜好品の補充まで妹にさせる気はないので自分で買いに出かけることにした。

 

 

 和人が出かけるのは基本車。

 都内では電車の方が楽なのだが身バレする可能性を減らして損することはないため、ちょっといい外車に載っている。

 何故外車かって?

 ボディーフレームが国産よりも固い。

 

 自身の身を守るか、事故の衝突相手のことを優先するかの違いでどちらが優れているのか、と言う話ではなく奇襲を受けた時の生存率の話だ。

 

 防弾仕様だったりするのでドアが重いのが難点。

 燃費もゴミ。

 都内で排ガス上等な排気量のはずだが最近の技術は凄いため都の排ガス規制基準にはギリギリ適応していると言う。

 

 都内で車を飛ばす必要性などある訳もなく、スペック上280㎞/h出るスペックも只のカタログだけの数値になっている。

 技術屋としてはハイエース的なものが欲しかったのだが、妹をハイエースする姿はお嬢様学校の生徒に見つかるとまずいと没になった。

 

 外車なら妹をお嬢様学校に迎えに行くことがあっても何ら不自然じゃないしな!

 

 

 

「あ、兄さん。ずいぶんと遅い寝起きみたいだったけど買い物?」

「ああ、真登香。ちょっとコーヒー豆買いにな」

 

 気持ちお高めの商業施設にあるコーヒー豆の問屋に行くため、適当なパーキングに車を止め、歩いていると真登香と遭遇した。

 

「なんか適当に紅茶も見繕ってよ」

「分かった。店員のおすすめ適当に包んでもらっとく」

「よろしくね、っと。あ、こちら私の親友の深澄さん。さっきばったり会ったの」

「は、ははは初めまして真登香さんのクラスメイトの兎沢深澄です」

 

 ばったり会った兄にさらっと注文してくる妹の隣にいる初めましての顔にどちら様と言う表情を浮かべると紹介してくれた。

 

「そうか、初めまして。真登香の兄の鳴坂和人です。ちょっとめんどくさい性格の妹ですが仲良くしてやってください」

「は、はい」

「ちょっと兄さん私そんなにめんどくさくない」

「だからちょっとって言ったんだろ。遅くならない内には帰れよ」

「はーい」

 

 あの外面は真面目に被る方の妹があそこまでフランクに接しているので相当気を許しているのだろう。

 

 兄と違って交友関係が有りそうで和人は少しほっとした。

 

 ……あれ、直葉と出かけるといったが花でも摘みにいっていたのだろうか。

 

 

 妹の交友関係に水を差さないマンな和人はクールにその場を去った。

 

 

 

 〇

 

 

 

「……ねぇ、真登香」

「どしたの深澄さん」

「お兄さん、ってあの鳴坂博士、だったんだ」

「え、うん。私がお嬢様学校に通い始めたきっかけって兄さんが発明家として見いだされ始めたからセキュリティ上の関係だし」

「……そっか」

「別に隠してたわけじゃないんだよ?」

「できればもう少し早く言ってもらいたかったな、真登香!」

 

 深澄はこの愉快犯な友人をどうにかしてやらねばならぬと頬をぷにぷにした。

 化粧もなくこの小柄な守りたくなる保護欲マシマシ美少女の美肌にやや嫉妬を覚えた。

 

「はぁ、なんとなくあんたへの上流階級どものアクションが腑に落ちた。別に知ったからといって何か変えるつもりもないから安心しなさいこの小動物」

「しょ、小動物じゃないもん」

 

 少しあーバレちゃった、どうしよとうっすら困惑の表情を浮かべている親友の頬をもみ込みながらそう言うと、安心したように彼女はふにゃっと笑う。

 この人たらしフェイスがッ!

 

 深澄は今後の心労に備え今日はやけ食いすることにした。

 

「どうしたの真登香…とミt――深澄さん」

「あ、スグ姉。さっき兄さんとばったり会ってねー」

「―――スゥ」

「察した?」

「察したわ」

 

 そんな会話をしているとお花摘みから帰って来た直葉が真登香の頬をひたすらモチモチしている光景に何事かと聞けば、真登香のセリフですべてを察した。

 

「え、何この状況」

 

 直葉に続いてミトの待ち人である結城明日奈もその場に来たことで、真登香はスッと失礼しましたと退散。

 直葉はそれを追いかけた。

 

「―――何でもないわ」

 

 ミトはその内直接会えるだろとたかを括って黙っておくことにした。

 

 そして、ある種のキーキャラとなった真登香に嫌われているが大丈夫かコイツ、ともなった。

 

 ミトの経験上、無関心になっていないならどうにか巻き返せそうとひどく楽観的な対応であった。

 間の悪い事、とやや憐みさえ感じた。

 尽く二択を外している感が否めない。

 

 明日奈は知らず知らずの間にキリトの攻略がハードモードからベリーハードに突入していることなど気が付かなかった。

 

 

 〇

 

 

 

 遅めの昼食でカツ屋の期間限定メニューを食べ、帰宅した。

 たまにジャンクなものが食べたくなる。

 

 店内で焙煎されたばかりの珈琲豆をグラインダーで極細挽きし、エスプレッソを楽しんだ。

 大学生の頃に父から進学祝いに貰ったエスプレッソマシーンは数年経過した今でも愛用品だ。

 

 ジャンクなものを食べた後の珈琲は妙にうまい。

 口の中のアルカリ性だの酸性だのがかかわってきてそれを中和することでーみたいな話を聞いたことがある気がしたが、美味いものは美味い、と完結。

 

 

 昨日自作AIシステムにぶち込んだ企画書がメールで届いていたので、中身をブラッシュアップし、実現可能な部品と、運用の工数等の積算……は営業部にぶん投げ中身の検討を少し進め、再びゲームを始める。

 

 今日は辻斬・狂想曲:オンライン。

 

 妹は“性格の悪い運営のアタオカゲー”と称していたが、HPの紹介文を見る限りそんな雰囲気はない。

 

 リィンに負けたのが悔しいから在野の剣士を切り伏せたいとかそういう訳じゃない。

 

 刀使いとの戦闘経験を積むため、ダウンロード版をインストールし通称幕末にインした。

 

「【維新】か【幕府】ねぇ…」

 

 ログインし、プレイヤーネームをシャンフロとは変え、【豆太郎】に。

 このゲームでは何かにプレイヤーネームを引っ張られることはなかった。

 さっきコーヒー豆を買ったからとか言う浅い理由だ。

 長期間ログインする予定もないし。

 

 二つの派閥の選択を求められる。

 

【維新軍】に所属した場合は基本となる刀剣系スキルとは別に他に鉄砲を武器として使用可能に。

 

【幕府軍】の場合は刀剣系スキルにボーナスが付与され、刀剣オンリーの戦いならスペック上は維新軍を上回ることが出来る

 

 重火器は、ハンドガンくらいが好きな豆太郎は幕府軍を選択した。

 

 幕末の鉛玉って当たり判定あるのだろうか。

 

 GGOにてNPC戦で対物ライフルの弾丸をフォトンソードで切り伏せた経験のある豆太郎は飛来物の切断チャレンジを試みることを心に決めた。

 

 

「welcome天誅!」

「ログボ天誅!」

「はい、切り返し」

 

 ああ、これは頭天誅していらっしゃる。

 

 “性格の悪い運営のアタオカゲー”の発言になんとなく察しを覚えつつ、視界を開けて初手切りかかってくるユーザーの首を刎ねた。

 

「うおっ、こいつ何故ログボ天誅に対応してやがる!?」

「頭幕末の復帰勢か!?」

「今はじめたてだ、切り捨て御免」

「ま、待ってくれ、せめて質に流し――」

「何言ってるか分からん、首出しな」

 

 ナチュラルボーン幕末野郎だ!

 と失礼な言葉を受けつつ、キリトの辻斬が始まった。

 

 

 ログボ天誅を退け、彼らのドロップアイテムからなんか使いやすそうなアイテムを拾い、刀を交換した。

 

 

「そこのお兄さん中々いい動きするね、天誅!」

「気のせいだ、首置いてけ」

 

 ログインユーザー狩りをしようとしていた視界に入ったメンツを片っ端から切っては武器の耐久値をみてとっかえて切ってを繰り返していると幕府側の制服と思しき召し物を羽織った少女に切りかかられる。

 

「んー、ほんとに新規ユーザー?」

「あんな振りのデカい上段なら対処は出来るだろ」

「普通それが出来ないから、プレイヤーの第一関門って言われるんだけど」

「そうなのか」

 

 ナチュラルに剣を交えながら彼女――Yuukiを切るため、ギアを一つ上げた。

 

「おっ、良い動き」

「どうも」

 

 はやい。

 豆太郎が感じたのはその一言だ。

 VRチェアのリミッター切ってない自分の最高速度にあっさり到達してるんじゃないかと言う反射速度だ。

 

「俺、まだこのゲーム初めて30分も経ってないんだけどッ」

「ナイスな幕末精神。でもここで主張を通せるのは切った側だけなんだよッね!」

「なら斬るしかないなッ!」

 

 ログインユーザー狩りしてるような連中との実力はまるで別物だ。

 

「――ッ!?」

「楽しくなってきたから僕のオリジナル見せてあげる!」

 

 彼女の剣を捌いていくと、彼女は一歩距離を取った。

 

 独特なフォーム、それを豆太郎――否、キリトは知っていた。

 

 ALOでスキルモーション調整時にふと浮かびながらも登録をやめたモーションだ。

 そうか、彼女がこのモーションの持ち主か。

 登録なんてもったいない事をしなくて正解だった。

 

 豆太郎も一歩下がり構える。

 

「――行くよ!」

「来い!」

 

 彼女の11連撃――

 

 モーションは突きオンリー。

 5連、5連で十字を描くように突き、その中心線上に置くような鋭い突き。

 

 ―いや、13連撃だ。

 

 最後に2度、斬りのモーションが入った。

 

 首を薙ぎ、縦真っ二つに切り下ろす、そんなモーションだ。

 おいおいおい、豆太郎はあのスキル連撃が自分の想像の先をいったことに驚きを隠せない。

 

 まぁ、最後までモーションが見たいから受け流したのだけど。

 11連撃までは知っていたから捌くことが出来た知識的チートだな。

 

「うっそー」

 

 避けられると思っていなかったらしく、最後の一撃まで捌いたことへの驚愕のセリフだったらしい。

 お陰で隙が出来た。

 

 最後のモーションで地面と平行にぴったりついた刀を左足で踏んで右足で本人を蹴り飛ばす。

 

 このまま追撃しなければまた、来るだろう。

 

「武器は質屋に――」

「質屋知らねぇや」

 

 浮いた彼女に向かって人力ヴォ―パルストライクで突き切った。

 ‥…めっちゃドロップアイテムあるじゃん。

 モシカシテ上位プレイヤーだったりする?

 

「絶剣ちゃん斬るとかやるね君、天誅」

「アブなッ!?」

 

 何この無差別切りかかりゲー!

 

「豆太郎君かぁ、私の一撃を避けるとは面白いじゃない」

 

「同軍に切りかかられたと思ったら今度は敵軍かよ!」

「日本の夜明けは近いぜよッてね!」

 

 白髪ロングで忍者の様な上着と言うには肩があまりにも出ている。

 

 そして申し訳ない程度の新選組と思われる維新の的な白の羽織。

 

 タッパはデカい。

 170はありそう。

 つまりリーチは長い。

 

 さっきのYuukiとやらのリーチで考えたら即死だ。

 

 

 いうなれば昨日のリィンさんとの戦いくらいの感覚でいないといけない訳だ。

 

 だがその前に一つ言いたい。

 

「そしてなんだそのスケベなズボン!太ももの外側部丸見えじゃねぇか!」

 

 豆太郎のツッコミにいつの間にかわらわら集まったプレイヤーから

 “お、俺らに言えなかったことを平然と言ってのけるッ!”

 “そこに痺れる”

 “あこがれるぅ!”

 などと聞こえたような気がした。

 

「わお、男の子な発言。もっと見る?」

 

 ナチュラルな発言しつつ切りかかる、これが幕末か!

 最初っからトップスピードじゃないとこの人切れない。

 一歩踏み込んだとは思えない距離の詰めかたをしてくる彼女の袈裟切りを避ける。

 避けたはいいが、返し刃の速度が尋常じゃない。

 

 綺麗に左腕を狙われ、これは避けられない。

 

 

 

 四肢欠損によるバランス崩壊まで積んでるのこのゲーム、マジかよ。

 

 ま、片手あるなら抗える。

 

「ボディ行けたのに片腕のみとはちょーっと意地が悪いんじゃないですかね」

「なんか急に勿体なくなっちゃって」

「なれんバランスなので文句は言わないでくださいねッ!」

 

 こちとら何万回片手剣スキル振るっていると思ってやがる。

 

 さっきのトドメでヴォ―パルストライク見せたから他の手合いの方がよさそう。

 

「見よう見まね、疾風!」

「―――へぇ」

 

 昨日リィンさんに食らった疾風で首を狙う。

 

 すると彼女の眼が猛禽類の様に獲物を見る目に変わった。

 

 あっ――この人アレか?

 リィンさんの姉弟子だろうか。

 昨日ぼそっと言ってた気がする!

 シズレナさんね、覚えた。

 

「完成度高いね。でも、本物はもっと早いの!」

「知ってます!」

 

 そして彼女は昨日見た疾風とほんの少しだけ違う疾風を見せてくれた。

 必死に逸らしても武器破壊されちまったよ。

 

「やっぱ、弟弟子の方か」

「ええ、昨日リィンさんに、負けて経験積みにこのゲーム始めたんです」

「じゃ、姉弟子にも負けとこうか」

 

 豆太郎は片手白羽取り成功させるにはステータス差に負け、失敗しかち割られた。

 

 

 〇

 

 

「おのれ豆太郎!」

「ウェ!絶剣がリスポーンしてやがる!」

「誰かが倒したってことか!?」

 

 

「あ、ごめん。そいつ食べちゃった(きっちゃった)

「おのれ悪銀!」

「私は白銀の剣聖。間違えないで天誅!」

 

 

「おもしろいの見つけちゃったな」

 

 




・PN:シズレナについて

 リィンの姉弟子(23)

 納めている流派がリィンとはちょっと別物。
 ビジュがとてもつよいためリアルではモデル活動で稼いでる。
 天音永遠とは別の雑誌の専属モデル。
 担当はトールズの人。
 あんな美少女が幕末でスパンスパンしているわけないやんと言うのが一般幕末プレイヤーの認識。
 本人はキャラメイクがめんどくさくてリアルの容姿のままプレイしている模様。
 担当に怒られるので、違うよー別人だよーと言っている。すっごい棒読み。

 幕末適正◎

 豆太郎累計討伐回数21回
 
 豆太郎はおもしれ―奴認定を受けた。


・和人リアルファッションについて

 幼い頃から自分で服を選ぶと黒ばっかりになるため、身内のファッションセンスに頼っている。

 現在も秋から冬にかけて黒いコートを4着くらい持っている。

 22歳和人はベータテストの顔をほんの少し幼くした状態。髪型もベータテストの気持ちチャラいやつ。
 体格は健康のため適度なトレーニングをしているのでもやし感はない
 身長は172cm
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