何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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GGC/別世界の幼馴染

 GGC初日の発表を色々な所見て回り、そういったゲームを作るのも一興か、とクリエイター魂に火が付き徹夜でゲームを作っていた。

 

 オフライン環境ゲーム制作ツール“ゲームのたね”と和人が呼称しているそれはデータ軽量化を目的としたVRゲームツクールとでも言えばいいソフトウェアである。

 アクセルリングを発明してからは“そうだ、これ作ろう”という思い付きのみで軽率に並行作業でゲームを作るという人間離れしたことを始めている。

 

 

 “ゲームのたね”で大まかな形を作って、自宅で再編集。

 情報強度を上げてから自作AIに細部の補完を投げる。

 誰もクリアしていないゲームができるまでの簡易的なプロセスである。

 

 GGC期間中は会場とホテルの往復のみだという八葉夫妻の元を訪ねたのがGGCの3日あるうちの2日目の朝だ。

 

「ちょっとおもちゃ作ったので遊んでみませんか」

 

 VR機器開発者としてリィンの反応速度が気になってしまった和人はボスラッシュ跋扈なやばいゲーム

【Fate/セイバー編】をリィンにテストプレイを頼んだ。

 

 俺の組んだNPCと戦うゲーム、と言ったらリィンはノリノリでプレイしてくれた。

 

 流石に全滅されることはなかったが、それでもいい試合するリィンマジでやべぇと今回の記録を今後の戦闘の参考にすることにした。

 反応速度は人間の限界超えてるとおもいました(小並感)

 

 果たしてまともに戦えるようになる日が来るのかコレ。

 ゲーマー的には絶対なってみせるんだけども。

 

 超次元的なゲームを作ったとはいえ、あっさりゲームのシステム理解して自分のフィールドに持ってくのまじこえぇ。

 

「和人は自分でゲームをリリースしないのか?」

「次から次に作ってしまうので管理とか無理なので」

「いやいやいや、戦闘狂リィンがここまで目きらっきらさせるゲームって一体何よ!?」

 

 和人は自尊心が満たされたのでGGC2日目のGH:Cの観戦に向かった。

 

 

 

 〇

 

 

「あ、妹の友達の深澄さん、だったかな」

「は、はい」

「お隣失礼大丈夫かな」

「私一人なので、どうぞ」

 

 会場に着き、関係者席として用意された座席の一つに和人が着くとそこには見知った顔が居た。

 

「今日はGH:C?」

「はい。格ゲーが好きなので」

 

 深澄さんは格ゲーが好きらしい。

 1人みたいなので特に気にすることなく話しかけてしまうことにした。

 

「お兄さんも格ゲーがお好きなんですか?」

「基本オールジャンルなんでも、今日はアレのセッティングした関係で招待されてね」

 

 そう言って和人は会場中央に並べられた3台のVRチェアある方を指さす。

 

 

「star rain側の、ですか」

「全一ニッコリの反応速度つよつよマシーン」

「……爆薬分隊(ニトロ・スクワッド)大丈夫なんでしょうか」

「どうだろ。うちもスポンサー側で魚臣選手の方にシルヴィア選手のモーションをプロったゲームあげたからそれをどこまで攻略できたか、なんてね」

「両方関与、されてるんですね」

「それなりの立場になると柵ってやつが付いてくるものだよ」

 

 そんな話をしているとGH:Cのデモムービーが始まった。

 

 シャンフロエンジン、やっぱりNPCの出来がいいな。

 NPCは積極的に手に掛けたくない派の和人としては巻き込まれる様子にほんのちょっぴり心が痛んだ。

 

「やっぱり長物使いはランゾウか、カスプリか…選択肢少ないな…」

「長物が好きなの?」

「はい、大鎌とか、鎖鎌とか好きです」

「マイナー過ぎてプレイできる作品が限られるタイプだ」

「ええ、シャンフロでも友人の鍛冶師に作って欲しいとお願いしてるところですね」

 

 格ゲーというジャンルで今ではレトロゲームなんて呼ばれている作品でも鉄拳とかそっち系が先行しまくって、キャラものとかロボゲーが結構少ない印象だ。

 今回のGGCではロボゲーの発表無かったし。

 

 格ゲー……プレイヤーとアバターの対格差による違和感を感じさせないのはシャンフロエンジンの強みだ。

 それを習って最近は高身長の人が露骨に等身が違うキャラでもプレイできるようなシステムを組むことが出来た。

 と言うか妹がルルロールをやりたいとか言う無茶振りをしてきたのもほんのちょっぴり関係するかもしれない。

 アニメキャラって手足が長くてボディが短い、俗に言うモデル体型がデフォみたいなところあるし。

 

「やっぱりシャンフロプレイヤー多いんだね」

「ええ、ファンタジー系でまともにバグらないのがシャンフロくらいしかないので…あとボリュームが」

「ああ…」

 

 シャンフロレベルのサーバー組まないとオンゲであのボリュームは厳しいんだ…

 ユーザーが満足するレベルのグラもデータ馬鹿重いから。

 

「お兄さんもシャンフロされてるんですか?」

「3週間くらい前に初めてね。ゆるーくエンジョイしてるよ」

「エリアボスとか詰まってたらお手伝いしますよ!」

「はは、ありがとう。でも今の所詰まるようなところはないかな」

 

 エンジョイ勢だからね、と和人は笑う。

 なお、この男今回のアップデートで解禁されたレベルキャップ解放前のカンスト勢である。

 また、完全独占ユニークを抱え込んでいる。

 

「鍛冶師とか…人手に困ったらうちのクランの人に声かけますのでお気軽に呼んでくださいね」

「ありがとう」

 

 この男、割と軽いノリで神匠から武器を貰ったり強化してもらっているがそのすごさを理解していない。

 

 

 そうして今回のGGCのメインイベントとも呼ばれるGH:Cのお披露目と言う名のデモンストレーション試合が始まる。

 

No Face(ノーフェイス)No Name(ノーネーム)、ポテトさん、あれ魚臣選手が居ませんね」

「みたいだね」

 

 周りでも爆薬分隊は何時からコスプレ集団に?なんて声が聞こえる。

 その中でノーネームと呼ばれた女性が、魚臣選手は今現在トイレとお友達になっているという。

 

「とい・・・れ?」

「おそらく、スポンサー絡みでどっかの試合に引き抜かれたかもしれないね」

「え、そんなことあります?」

「スポンサーも一枚岩じゃないからね」

 

 和人は今朝方、社員経由で魚臣選手の“必ず勝ちます”との連絡を貰っている。

 ノーノ―コンビは、彼の秘策……だろうか。

 

 シルヴィア選手までに間に合うのかな、彼は。

 

 

 そんな思いで観戦を始めた和人は二試合目で「鬼!外道!」と思わず叫んでしまうとは思いもよらなかった。

 

 

 

 〇

 

 

 

「魚臣選手……」

「アレは、ちょっと笑ってしまいましたね」

 

 GH:Cのお披露目イベント後、その席で思わず額に手を置いてしまった。

 

 シルヴィア選手にギリギリ、ドット残しでケイオスキューブを手にしたことで勝利した魚臣選手が、その後の選手にストレート負けしたのを見てしまったからである。

 

「よし、延長なし。消す」

 

 そう言って和人は携帯端末を操作し彼に渡したソフトを入れた端末がインターネットに接続され次第デリートされるプログラムを起動した。

 正確には今回用意した接続プログラムのアクセスキーと言った所だが。

 star rainに勝利するようならぜひともお遊び要素まで完全クリアを目指してくれと言った所だが、この様を見てしまったので和人はそう行動に移した。

 

「……何をされたのでしょうか」

「対シルヴィア選手用のプログラムのインターネット経由削除?」

「そんなことできるんですか」

「我、VR博士ぞ」

「あっ……」

 

 と言うかVR機器だけではなくてソフトの方も手を出されていたんですか、と深澄さんが質問してきたのでそれなりに、と答えておいた。

 

 とりあえず深澄さんが遊びに来た時用に格ゲー、長物ありで作っておこう。

 

 

 

「ミト、ちょっといいかな?」

「え、あ、ひゃ!?ツ、ツーベルクご夫妻…」

「あ、昨日の」

「昨日の!?」

 

 

 席に長居するのもアレだ。

 ホテルに荷物を取りにいって帰ろう、キリトは席を立ちあがると深澄さんに声が掛かった。

 

 それは昨日ぶつかってしまった金髪の女性と、そのそばに居たもう一人の金髪だ。

 

 深澄さんをおそらくPNで呼んで、彼女もまた彼らを呼んだので顔見知りなのか。

 

「お二方、ちょっと一緒に食事でもいかがでしょうか」

「?」

 

 和人は顔見知りの深澄さんを誘ったものかと考えたが、なぜかそこに自分もまきこまれていた。

 誘う理由はなくないか、と和人が困惑していると女性は実に端的に話し始めた。

 

「前世について少し話がしたい。良いだろうかキリト」

 

 彼女は和人を妹にすらまだ知られていないPNであるキリトの名を呼んだ。

 ……彼女は俺の元ネタを知っているのか。

 

 これもまたいい機会かと腰を上げた。

 

「……ホテルに荷物を置いたままなんだ、それを取りに行っても構わないか」

 

 彼女が肯定したことにより、和人は連絡先を交換し少し席を離れた。

 

 

 

 

「あの、お二人とも目線が怖いのですが」

「随分親し気に話をしていたみたいだったからね」

「友達のお兄さん!友達のお兄さんなので!」

 

「リーファの?」

「確か、恋バの暴走で面識があるんだったか」

「あ、恋バで定着してる……いえ、リーファさんとは面識がありますが、こちらの世界の彼の実妹です」

 

「……マ?」

「マジです」

 

「キリトも両親が生きていればそう言うこともあるだろう」

「まぁ、僕にも妹居るしそう言うこともあるか」

 

 

 

 〇

 

 

 

 和人に突然降って来た前世の邂逅。

 それはホテルと最寄りの駅の間に存在する個室の居酒屋にて開催された。

 

「つまり、原作の特殊な状況下で幼馴染だった、と」

 

 ツーベルク夫妻と呼ばれたアリス・ツーベルクとユージオ・ツーベルクは早々に彼に原作の情報がない事を察すると、だいぶ遠回しに原作のキリトとの関係値を説明した。

 

「それは私も原作の知識がそれなりにあるので確かかと」

 

 また、個室の居酒屋には深澄さんも来ていた。

 ……彼女も知っていたのか、となると妹も?となったが彼女は原作には登場しなかった存在だという。

 まぁ、原作は原作、今世は今世だ。

 

 深澄さんは家が割と自由主義で、ツーベルク夫妻にタクシー代集るので大丈夫だと参加した。

 ツーベルク夫妻も未成年に金を出させるつもりはない。それに誘ったのはこちらだ、とそれをあっさりと了承していた。

 

「それで一応聞かせてもらうが、俺は俗に言う主人公キャラであることは他作品の転生者と会って知っているが、デスゲームに参加してクリアしないとやばいとかはないんだな?」

「それは一切ないね」

「この世界ではそのゲームソフト自体が世に出てきていないし、原作でそのゲームソフトの開発者である男もいつも進捗がだめだと嘆いている」

 

 ……和人は絶対デスゲーム殺すマンなので、仮に存在するとしたら自分の全権限を使ってぶち壊していただろう。

 それに関してはとても安心した。

 

「ま、今日は原作の幼馴染見つけてテンション上がっちゃったから声かけましたってだけなんだ」

「だいぶ不審に思っただろう。すまなかった」

「構わないさ、万が一やばい状況になったら護衛の人出てきてヤバい事になってただけだから」

「……マジ?」

「ああ、これでもVR博士と呼ばれるくらいには多方面から保護されると同時に雁字搦め食らってる身だからな。少なくとも国外旅行できない程度で、今は緩く護衛が見えない程度についているだけだ」

「た、大変なんだね」

 

 とりあえず、飯だ。と気持ちを切り替え居酒屋メニューを楽しむことにした。

 

「ツーベルク夫妻はGGCで日本に来日か?」

「アリスで構わない。好みのゲームが向こうになかったから日本に帰化して今は日本に住んでいる」

「僕もユージオで。それに中身は前世日本の風土になじみ切った日本人だからね。こっちの方が暮らしやすいんだ」

「なるほど。海外だとおま国ゲーがすごいらしいからな」

「本当にそれ」

 

 ツーベルク夫妻、アリスとユージオはかなりのゲーマー夫妻だというらしい。

 

「となると深澄さんと出会ったのもこっちのゲームか?」

「いや、転生者掲示板……いわゆる転生特典と言うやつで転生者には必ずくっ付いてくる機能があって、それでだな」

「原作で顔を知っていて、掲示板で交友があったから、つい?」

「現実では完全に初対面です」

 

 転生者掲示板、転生者掲示板。

 キリトはうっすら記憶を探る。

 

「CEROが12指定で、他の転生者と接触して互いに前世を打ち明けることで解放されるシステムなんだ」

「ん、ああ。あれか」

 

 キリトはユージオの説明でようやく思い出した。

 キャスターと会話している際にそんな言葉が流れてきたような気もする。

 

「……もしかして機能解放しているけどまだ使っていない感じかな」

「そうだな。なんか厄ネタの気配を感じてすっかり忘れていた。とりあえず半年ROMっておいた方がいいだろうか」

「掲示板には同じ原作に登場するキャラクターしかいないから、その言い方は悪いが内輪のノリがすごい」

「とりあえず……小出しでやっていって慣れていくのはどうかな」

 

 そもそも使うかどうかは個人の自由だし、と彼らが言うのでそれに同意した。

 ……まぁ、リアルだと人と交友する幅狭いからな。

 柵が大変多い。

 

「と、とりあえず私たちでシャンフロやりませんか?」

「え、シャンフロやっているのかい」

「幕末でも構わないぞ」

「アリスステイ」

 

 どこか少し深澄さんが慌てたように話をずらしたので、掲示板にはひとまず触れないことにしよう。

 ……やっぱり厄ネタがあるのか?

 キリトは己の直感を信じて、彼らと仲良くなってから掲示板に参加するかどうかを決めることにした。

 

「幕末……ああ、幕末で言うと彼女Yuukiと言うプレイヤーも同じ作品の子なのか?」

「キリト、幕末やってたんだね」

「ああ、小柄な長髪で片手剣使いの幕府側なら恐らくそうだ」

 

 幼馴染が、幕末に汚染されていく!とユージオの心を知ってか知らずか、和人は話を進める。

 

「彼女の13連撃に繋がるまでの11連撃に身に覚えがあってね、やはり彼女もそうなんだね」

「――ちょっと待ってください。お兄さん彼女の13連撃まで見たんですか!?」

「え、うん。その後天誅したけど」

「キリト、一応聞いておくが幕末のPNは豆太郎か」

「そうだけど」

 

 そうキリトが言うと全員が一斉に目線を逸らした。

 

「……不味った?」

「その、昨日もYuukiを刎ねただろう?」

「……シャンフロの強い剣士にボコられてつい」

「ファストフードのドライブスルー感覚で天誅されたと今掲示板で大変暴れている」

「…しばらく見るの止めておこう」

「それがいい」

 

 後日シャンフロを共にプレイすることが決まり、その日は解散となった。

 

 なお会計争奪戦はキリトが勝利した。

 

 

 〇

 

 

 翌日

 

「失礼します、私はGHレーベル日本支社の日野と申します」

「はぁ……」

「博士、ぜひGH:Cのコンテンツとして博士のキャラ実装しませんか!」

「あ、そういう時間無いので」

「そこをなんとかぁ!」

 

 なんかstarrainがやらかしたらしくGHの関係者が来た。

 

 そういや口止め忘れてた。




・ツーベルク夫妻

「会計、負けたな」
「負けたね」
「次は私たちが出すという口実が出来たので良しとしよう」

「あれ、そういえばキリトはなんで知ってたんだろう」
「ん?何がだ」
「ユウキの13連撃が11連撃がベースだってこと」
「……そういえば身に覚えがあると言っていたな」
「キリトとのシャンフロ、楽しみだね」


・またしても何も知らない明日奈さん☆
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