何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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勢い

 

 翌日。

 

 在宅ワークじゃい、と自宅で亀になっていた。

 

 サーバーの構成規模とプラモの読み取り関係から1から建物立てるとの連絡を貰った時は頭を抱えた。

 

 主要都市の交通の良い駅から然程離れていない場所の土地確保に動くという。

 昨日の今日でフットワークが軽すぎる。

 

 本店を東京に、支店を全国に数店舗……あれ、まだ構想決まり切ってませんよね。

 お前ならやれるだろう?

 

 やるけどさぁ…

 

 昨今の建築事情は文明の発展、シミュレーション技術の発展をもって建材の進化が著しい。

 その進化の一端であるシミュレーションシステムと精密加工機器の開発に携わっている和人の懐もそれに比例する。

 

 建築現場ではロボットがそれなりに活躍し、労災は昔よりずっと少ない。

 少子高齢化の人材不足は厳しく、それに伴ってと言った所。

 

 ロボの動かせる基礎環境を用意するにはまだまだ人の手が必要で、ガテン系の軽作業は即金のバイトとして未だ根強い。

 遠隔システムで建築重機に入って操作する、みたいな。

 作業の段取りを組み上げるシステムがまだ未熟なのだ。 

 

 あるいは政治的方面から土木系から人の仕事は消えなさそう。

 只仕事はずっと楽になっているはずだ。現場監督の業務量以外は。

 

 人のミスから自分のミスの割合が多くなり、建築現場の高学歴化の兆しもあるとかないとか。

 

 大会の会場作るなら地方都市のギリ交通が叶うくらいの所にでっかいドームも夢があると思うんですよね。

 そう零したら後が大変そうなのでやめておいた。

 

 そもそもVR・ARの強みって小規模な土地の有効活用だからね。

 

 UESが電子爆走している中、現実との折衷やらされる身にもなってほしい。

 基礎組めば後は他の天才たちがどんどん発展させてくれるからいいんだけども。

 

 そこら辺の思い付きを彬茅にぶん投げておけばうまいことしてくれる、本当に助かる。

 ……彬茅社長と会うこと以外は。

 

 

 和人の気持ち的にはメインとしてはVR関係の研究。

 サブと言うか柵案件が現実でのVRを応用した技術進歩だ。

 

 ベースを作りぶん投げる、良い感じにやって貰えて助かる。

 故に自分の時間をどうにか捻出できている訳だ。

 

 

 自分の所に金貯め込み過ぎても政府に経済循環させようや…と圧を掛けられるので興味の湧いた企業の株にぶん投げてるんだけど、なんでそんなにいい感じに進歩するん?株主として技術提案はするんだけども。

 懐が豊かだなー(棒)

 

 ――なんて言ってるけど、大半は自作のAIシステム群に投げてるんですけどね。

 非常時に自分で後処理できるくらいの規模観に収めたい、納めたいのに…。

 

 そんな訳でアリサの連絡をした土地のいくつかは自分が噛んでる案件だったので好きにしてとGO出した。

 

 え、あれ彬茅の子会社持ちの施設の一角も狙っている?

 避けといて貰えると俺の胃に優しい。

 

 まぁ、対応するのはアリサたちなので好きにすればいいと思う。俺は動かんぞ(投げやり)

 

 

 〇

 

 

「自宅なのに休んでいる気がしないとは」

 

 これが在宅ワークの欠点か、と切り替えの難しさを感じた。

 

 始業式を終え、しれっと和人宅にいる真登香が美味そうにアイスを食べているのを見た和人は吹っ切れて夏っぽい事がしたくなった。

 

 9月上旬ともなれば多少は海辺の喧騒は落ち着き空いてくるだろう。

 

 そう言えばなんか国の案件で沿岸整備システム作った関係で、なんか土地買う流れになってプライべートビーチ勢いで作ったんだっけか。

 

 気分は……酒の好み的に日本海!

 

「真登香、俺はちょっと日本海で旨い魚と酒を浴びたくなったからちょっと出かけてくる」

「それちょっとの規模感かなぁ」

 

 カムラのスケジュールを確認しても数日は自由出来そうだったので数日別荘に引っ込むことにした。

 多少のわがままは聞かせられる立場ぞ。

 

 自動運転の普及により、車での長距離移動が容易になった現代。

 交通事故は限りなく0に近づいている。

 その指揮を執ったの先代の彬茅社長らしいんですけどね‥…。

 

 数台ある自分の車の中から長距離移動を苦にしない乗り心地に全振りした自動運転車両に乗り込み新潟へ向かった。

 夕方には着くか、いい店探さないとなぁ…。

 

 

 

 〇

 

 

 寿司と日本酒で気分をリセットした和人は翌日朝早くに目が覚めたため、海岸沿いで釣りをすることにした。

 

 正直釣りを現実でしたことはなく、昨日の疲労をぶつけるように釣りキチリィンにアドバイスを貰うため連絡を入れた。

 

 え、近くにリィンの知り合いがたまたまいる?

 

 釣り沼に引きずり込むことに定評のある男?

 

 釣り入門者がいるというなら優しくするのは当然の務め? 

 

「キミがリィン君の言ってた釣りをしたいという子かな!」

 

 あまりにもエネルギッシュ。

 釣りが趣味ですと一目で分るような風貌の男性。

 リィンに言われるがまま指定されたポイントに向かうと陽務仙次(ひづとめ せんじ)と名乗る男がいた。

 

 

 釣りはいいぞおじさんの彼に促されるまま、彼に釣り竿を持たされ投げ方のレクチャーが始まった。

 ‥…流れがあまりにもスムーズ。

 いつの間にかライフジャケットまで着ていた和人は、趣味人の領域に引きずり込む速度があまりにも早すぎると驚愕した。

 

「なんというか想像する釣りって感じがするだろ!」

「そうですね、自分がやったことあることと言えば小学生の時にするめで沢蟹くらいで、ここまでしっかりしたのは初めてですね」

「そりゃいい」

 

 あまり多くは語らず、ただ必要な情報だけを投げてくるし、こちらに取捨選択を任せてくる。

 これは、プロだ。

 趣味人のプロだ。

 

 たまに雑談を交えつつ、陽務さんの家庭は代々趣味人の家系と言う話を聞いた。

 なんでもご先祖さんが星のことがあまりにも好きで、それを生業にし始め陽務と言う苗字になったとかなんとか。

 

 昆虫大好きな奥さんと、ゲーム大好きな息子さんと、服が大好きな娘さんがいるそうだ。

 

 一族揃ってプロなのか…

 

 ここまで自由にやっても人並みにやれてるのは支えてくれる家族あってのもんだと彼は豪快に笑った。

 

 それはちょっとわかるかもしれない。

 

 そう思いながらゆっくりと登っていく日を浴びながらゆっくりと釣りを楽しんだ。

 

 

 

 戦果はボウズだったが、楽しい経験だった。

 陽務さんに何か礼を、と言ったが釣りが少しでも好きになってくれりゃそれでいい、とあまりにも趣味人の鑑の様な事を言われてしまったので、せめて息子さんのお土産にでも、と釣りをしながらアクセルリングで作成したゲームソフトを渡した。

 釣りゲーじゃなくて自由度高めの格ゲーであるが。

 彼の息子の趣味は知らないが、お土産のネタとしては十分だろう。

 

 彼は「ありがとよ」と笑い、その場を後にしていった。

 

 趣味人とはこうありたい、和人はそう思いながら、空のソフトも減ってきたと呟きつつ、どこかで飯を食べて東京に戻ることにした。

 

 

 陽務仙次は帰宅後、釣り沼にハマりそうな初心者に貰ったとソフトを息子に渡した。

 息子は怪訝そうな顔をしながらそれを試した。

 業務用VRチェアを導入してから出番のなくなっていたヘッドギアを使用し、一応ウィルス等に注意するためオフラインでだ。

 

 結果、仙次は息子から拝まれながら肩を揉まれ戸惑う羽目になった。

 

 仙次の息子の睡眠時間は少し減り、ライオットの消費が増えた。

 

 

 〇

 

 

 家を24時間とちょっと空けた和人は冷蔵庫に土産の魚類を入れ、なんかおいしいらしいプリンも冷蔵庫に入れておいた。

 妹はゲーム中らしい。

 

 紹介してくれたリィンにもボウズだったがそれなりに楽しかった、と連絡を入れ再びシャンフロ。

 紗音からのフレンドになろコールはスルーしたが、アリスからひと狩り行こうぜのメッセージには乗った。

 

 

 現実の時刻は午後4時。

 

 ゲーム内も同じように日が沈み始めたくらいだった。

 ……このゲームも夏は日が長く冬は短いとかあるのだろうか。

 キリトはそんなことを考えながら集合場所であるフィフティシアの洋館へ向かった。

 

 建物は立派でクランメンバーの数も多いのだろうか。

 

 尋ねるようにその門を潜ると、目に入ったのは盾に十字と月桂冠。

 これが彼らのクランマークなのだろうか。

 

「やぁようこそキr―――またアーチャー化が進んだね」

「成り行きでな」

 

 結局キリトは女性アバターから元のアバターに戻ってからも赤交わる魔術師の装備を使い続けていた。

 身元がバレるのが不味いというセリフは、裏を返せばボロを出さない限り強い変装効果があると言うことだと飲み込んだ。

 

「赤い弓兵、キリト…しかも男の娘スタイル、これは今年の有明が厚くなるわね」

「何をする気だ何を」

「ナニを」

「やめんか」

 

 ライトブルーの髪色に、キリトと同じ弓兵らしい女性はだいぶオタクエンジンかかっているらしい。

 アリスに拳骨を食らった。

 

「ほら、キリトくん困ってるから押さえて押さえて」

「そういう所だぞー」

 

 そして次に現れたのは金髪ポニーテールの女性。

 どことなく身に覚えが…?

 

「あ、私直葉。こっちではリーファだから、そこんとこよろしく」

「ああ、スグか。よろしく」

 

 なんか覚えのある動きだと思ったら従妹でした。

 もしかしなくてもこのクラン癖強い?

 

「ああ、ごめんなさいちょっと心のエンジンの調子が。私はシノン、超遠距離専門よ」

「ああ、よろしく」

 

 癖の強い人はシノンさん。

 

「んで、私がこのクランの鍛冶師のリズベットよ」

「よろしく」

 

 さらに奥から出てきた桃色よりは赤に近い髪色の人がリズベットさん。

 

「じゃ、これどうぞ」

「お、おう?」

 

 そう言ってリズベットさんに2本の剣を貰った。

 

「あー、簡単に言うと原作時空だと私はあんたの鍛冶師やってたの。だから原作のあんたの装備目指して作ったのがそれよ」

「おお、ありがとう何か礼を」

「別に気にしなくても――あ、5000万マーニでいいわよ」

「おう、わかった」

「冗談よ、冗談!ほんとに出すな馬鹿!」

「理不尽では?」

 

 キリトは懐から5000万マーニを取り出すが、受け取り拒否された。

 だが、レアアイテムも特にある訳でもないので1000万マーニを渡した。

 渡したら渡したで何とも言えない表情になっていた。

 

 くっ、このSTR重視感のある重い剣不思議と馴染むやんけ。

 

 [エリュシデータ]と[ダークリパルサー]ね…。

 

 アインクラッド第50層ボスのLAではなかっただろうか[エリュシデータ]。

 原作の俺はLAもぎ取るマンだった…?

 

 この重さなら良く馴染むから素体でアインクラッド二刀流作ってしまおうか。

 

「後はミトあたりを呼ぼうとしたのだが、ミトは友人と奥古来魂の渓谷で鎌ドロップ周回中だ」

 

 そんなアリスの言葉と共にとりあえず外に出るか、と促され6名…ではなく、5名で回ることになった。

 リズベットは基本クランの鍛冶場に籠って作業をしているという。今回もそれに倣ってお留守番とのこと。

 

 

 シャンフロの町と町の移動は毎回ボス戦が発生する。

 それを回避できるのは転移魔法くらいらしい。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

 そのセリフで座標移動門(テレポートゲート)が作成される。

 ……移動魔法持ちってもしかして結構いらっしゃる?

 紗音も使えるって言ってたし、エマさんも使えるし。

 

 キリトは圧倒的サンプル不足で誤解しているが、きわめてレアである。

 

「そういえばどこ行くんだ?」

「面白いもの見に」

 




黒狼VS旅狼の試合の観戦…?

※8月末→9月上旬に修正しました

クタ終了で夏休み終わるの忘れてた()
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