何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

28 / 94
感想誤字報告感謝

作中9月です。
つまり誰の誕生日か分かるよね(ニッコリ



あのタコを刺身にしたい

「夏休み終わったから、実家戻るね」

 

 今まで通りちょこちょこ様子は見に来るけど。そう聞いたのは数日前で、妹の2学期の始業式も和人が新潟に行ってる間に終わった。

 

 そうか、9月か。

 

 9月で気がつく。

 

 9月16日は婚約者(仮)の誕生日である。

 

 和人は身内の祝い事絶対祝うマンなので急いで16日に仕事入れたらブッコロと社内閲覧可能予定表に入れ、紗音に電話を入れる。

 

『どうしたの電話なんて珍しい』

「唐突に悪いな」

『いつでもウェルカムだよ』

「突然だが16日の予定は?」

『ここ数年と同じように開けてあるけど』

「今年も紗音の誕生日祝いたいから16日丸一日くれ」

おっふ

 

「婚約者(仮)だが責務くらい果たさせてもらうぞ」

『え、っとじゃあ来月の7日は私に頂戴』

「分った、開けとく」

 

 そんだけだ、と和人は電話を切った。

 来月の7日も仕事空けとかねぇとな……

 

 この男祝い事はしっかり祝いたいタイプである。

 サプライズとかそう言うのはしない。

 祝う気持ちが本人の迷惑になるなら潔く引き下がる。

 

 ただ、電話を切る直前大きな音がしたが大丈夫だろうか。

 

 

 

 

 見栄を切ったはいい。だが、ぶっちゃけた所贈り物の準備を何一つしていないのだ。

 

 例年は大体紗音に「開けておいて―」と言われ「一日甘やかしてね」と自宅でだらだらしてケーキ作ってのんびりするのが恒例と化していた。

 その頃和人は大学の研究や妖怪論文書けに襲われる激務で丸一日開けるのが結構難しかったので、昨年に至っては睡魔に負けてしまった。

 比較的自由を手に入れた今年はしっかり祝いたい。

 

 なによりうっかり寝落ちして抱き枕されるのは回避したい!

 

 従妹と妹は春生まれなので学校のイベントごとと絡めたような祝い方になっていたのが申し訳ない。

 両親は……元気でいてくれればいいと笑ってくれるが、自由気ままにやらせてもらってる分、年に一度の誕生日くらいは感謝を伝えねばならない。

 昨年は温泉旅行送ったっけか。

 

 真登香はイベントごと近くなると自分でこれが欲しいと強請ってくれるので贈り物のセンスの怪しい兄としては有難いんだがなぁ…。

 

 さてはて、昨今の成人は18歳になってはいるものの刑事責任等の法律なんかはまだまだ20歳が基準。

 今年19歳の紗音に酒を送る訳にも行かんし、どうしたものか。

 

 一週間後に迫った婚約者(仮)への贈り物を探す、それが和人の急務となった。

 

 

 

 〇

 

 

 

 キリトの現実での交友は非常に狭い。

 会社関係か、大学関係。同年代の友人と呼べるのは片手で数えるくらいの範囲だ。

 

 絡み酒のめんどくさい大学時代の翻訳家は世界を飛び回ってるし、女への贈り物を女に相談するのもなんか不誠実な感じがして和人の中で選択肢に入らなかった。

 負けヒロインの私に当てつけですか、と適当な居酒屋で面倒なモンスターと成り下がるのでやはり除外。

 

 妹は安パイか?いや、邪推する可能性がなくはない。

 現状婚約者(仮)なのであって、それがほぼ正式と化しているとしても線引きをしっかりしたい。

 正式なものでない限り、年頃の女子の情報拡散能力を馬鹿には出来ない。

 そう思ってかれこれ数年は続いているこの関係は今日まで秘匿されている。

 

 一応、両親にはこんな関係の人がいますと話はしているが、秘匿しねぇとやばいレベルのお相手と口止めしてるから大丈夫だとは思うが。

 

 

 とりあえず、一言でまとめると和人のそう言った関係で相談できる相手は非常に少ないと言うことだ。

 

 

 故に消去法でこうなる。

 

「……俺は一番の大外れだとおもうのだが」

 

 情報の秘匿性とクソ真面目で同年代の既婚者、そこそこ面倒ごとに巻き込まれているのでちょっと迷惑かけても良いだろうという関係値から選ばれたのは八葉燐。

 PN:リィンの中の人である。

 

 ツーベルク夫妻?

 転生掲示板で何か面倒なことが起きそうな気配を感じたので除外。

 

 これまた情報の秘匿性のある料亭に呼び出し、相談を開始した。

 

「と言うのか婚約していたのか」

「(仮)だ」

「……一般的にその(仮)は意味をなさないしイチャラブの材料にしかならないと思う」

「うるせぇ」

 

 ある種のリィンの正論に和人はキレ、酒を追加した。

 

 

 

 少し酒攻撃を進めすぎ、まともな会話ができないと困るとほどほどにセーブすることに。

 両方ともそれなりに酒は強い方なので、ただのじゃれあいにしかならなかったが。

 

「それで贈り物、か」

「未成年の女性への贈り物って鬼門すぎないか」

「分かる」

 

 かといって酔いが回らない訳ではない。

 

「そこまでの関係値の女に消え物はキレられるぞ」

「まじか…」

「成人した時まだ彼女だったアリサに酒贈ったらぶん殴られた」

「おお…」

「アクセサリーはアクセサリーでファッションに合わせにゃならんと何と言うか難しい」

 

 適度に酔いが回り口が少し軽くなったリィンのアドバイスは思いのほか効く。

 消え物は一緒に消費できるサブくらいに考えろ、と。

 きこんしゃつよい(こなみかん)

 

「婚約してるならアレだ、婚約指輪と別の重ね付けできる指輪で良いんじゃないか」

「なるほど…?」

 

 あれ、そういえば婚約指輪も贈ってないな?(仮)だし。

 

 正式に決まってない相手に贈るなど独占欲的な風味が見れて一体どうなんだ。

 そんな思考でなんやかんや贈っていない事実を思い出した。

 

 逆説的に言えば、仮にこのまま関係が進んだとして将来的に贈りたい婚約指輪にあうデザインの指輪を送ればいいという事か…?

 端的にこの時点でキリトも酔い始めていた。

 

「指輪のサイズを測るのは鬼門だ。まぁ、察して狸寝入りしてくれるが」

「指のサイズは知ってる」

「……」

「なんだその目は!」

 

 だって義肢の身体バランスの計測は定期的に行ってるから!

 

 和人はなんでコイツさっさと結婚しねぇんだというような目線に耐え切れず、手元の日本酒を一気飲みした。

 

 

 

「ヤバい、記憶が薄い」

 

 和人は基本翌日まで酒の残らないタイプの酒の強さをしている。

 

 翌日目を覚ました和人は不祥事起こしてねぇよな、といつも以上に冷静な思考で自身のログを漁ることにした。

 念のため装備していたアクセルリングにはそこら辺の記憶能力を搭載している。

 いわば見た夢を忘れないようなレベルのすっ飛んだ記憶のバックアップも行えるのだ。

 

 自宅の自分のベット、大丈夫、大丈夫なはずだ。

 

 そうして確認した自分の行動記録。

 何を思ったか贈る指輪を自分で削りだしてやろうと大変お高いアクセルリングの根幹をなす金属と同種のものを発注していた。

 それ以外は至って普通のバカトークだったし、帰宅時に問題は何もなかった。

 

 概ねセーフ!

 

 とりあえずリィンには迷惑をかけたと連絡を入れ、向こうからも久しぶりに箍が外れたと謝罪と返答を貰った。

 アリサからは主人が迷惑をかけました。それはそれとして定期的に酒の場に連れ出してヨシ、との連絡を貰った。

 ……何も言うまい。

 

 ただ、ログに残るリィンの言葉に和人は「納得できるだけの時間を用意するのも一つの形だろ」とポツリ呟きながらエスプレッソマシーンを起動させた。

 発注したものは仕方あるまい、とセーフハウスに置いた加工機器のメンテナンスの予定を考えた。

 

 

 〇

 

 

 キリトは新大陸行のことを考え始めた。

 

 フィフティシアの港で西に向かって影も見えぬ新大陸のことだ。

 

 マーニ積んでどうにかなんねえかな。

 キリトはそんなことを考えながらふと思い立つ。

 

「踏氷渡海真君!」

 

 また最高に馬鹿なことを思いついた。

 踏氷渡海真君、それはとある前世のゲームキャラクターに着いたあだ名だ。

 能力を簡潔に言うと凍らせることのできる能力。

 

 初期配布キャラで空を飛ぶ能力の低いうちは重宝された。海上や町下の堀の水上を移動するために活用され、時には超長距離の海すら足場を凍らせて渡ろうとするプレイヤーが居たほどだ。

 

 もちろんこの男はVR化して棚にしまってる。

 紗音は帝君の岩を降らせるのにドハマりしていたのを思い出す。

 

 そんな都合よく氷結能力を有した技があるのかって?

 ない。

 

 【木の葉流:水面走り】

 

 氷結がなくても渡れればいいのさ。

 

 木の葉流:水面走りは原作設定通りチャクラ、すなわちMPに依存する。

 そしてキリトには[アヴァロンの鞘]と言う自動回復アイテムを有している。

 

 

 リキャストテストしてないけども

 

 

「とりあえず、一度はやるよね、水面ダッシュ!」

 

 

 キリトは基礎ステータスも盛ってくれる[赤交わる魔術師]を一式装備。アヴァロンの鞘もくっつけて、おもむろに水面へ駆け出した。

 

 人間の見る水平線って確か4㎞位だっけか。ちらりと後ろを振り返り、フィフティシアが見えなくなったところで[リュカオーンの夜]疑似改宗を開放。

 月の魔力獲得時に行える疑似改宗は月の光を受け続けている限り回復効果を得る。

 

 さっきまで襲ってきたモンスターたちがぴたりと攻撃をやめた。

 ……威圧効果もオンオフされるんですか。

 

 キリトはそのまま爆走を続けた。

 

 

 

 おおよそフィフティシアから60㎞地点くらい。

 代り映えのしない光景に飽き始めていた。

 

 視界に何にもない海。

 

 これが海上漂流した人間の気持ちかもしれない。

 

 そんなことを考えていたせいか少し気が抜けていたらしい。

 

「あ」

 

 海中から延びた触手にからめとられ、海中に引きずり込まれた。

 

 

 [ユニークシナリオ:深淵のおつかい]を開始します。

 

 

 キリトはある種初めての溺死を疑似体験する羽目になった。

 

 

 

 [ユニーククエスト:深淵のおつかい]

 

 クリア条件:雷輝の冥王の分身体を満足させよ

 

 

 キリトは呼吸のできる水中と言う不思議な空間で目を覚まし、目の前のウィンドウの文字を読み端的に理解する。

 

 これ蛸にこき使われてるだけだ、と。

 

 

 やっぱあの蛸刺身にしてやる。

 

 

 〇

 

 

 

 ラビッツに居た時になんとなく放置プレイをかまされたエムルちゃんにクターニッドについて聞いてみた覚えがある。

 

 海の中に都市があってそこがヤババババでしたわ、とのこと。

 

 分からん。ただここはルルイアスとは別の土地かもしれない。

 

 キリトは自分がどこか闘技場のようにも見える円形のフィールドの端っこにいるようだ。

 そんな情報しかないし、目の前のウィンドウはタコのおつかいを指しているしで訳が分からない。

 

 そう、訳が分からないのだ。

 

 その円形のフィールドの対角にバチバチと放電しているヤバ気なシャチの亜種みたいなモンスターが戦う気満々であることが。

 

 〈雷輝の冥王:分体〉に遭遇しました。

 

 あのー、その体のあちこちに生えてる結晶体素敵ですねー

 

「って、水中でいきなり電撃ブッパとか水ポケでもしませんけど!?」

 

 不思議と地上と同じような感覚で動けることに感謝し、背中からポコポコモンスター生み出すシャチ亜種を満足させなければいけないクエストをしばくことにした。

 [リュカオーンの夜]疑似改宗切れるの地味にきついぞ。

 

 

「時間かけてると即死だろコレ」

 

 突っ込んでくるならカウンターさせてもらうんだけど、どうにも奴は固定砲台。

 背中から無限に湧いてくる変な生物をむしゃりながらこちらにその生物を仕掛けてくる。

 

 ‥…海中なのに変なにおい?

 

 フェロモン的なので指揮している?

 

 

 匂い系なら花を咲かせられる俺にも分があるような気がしてきた。

 

【霞】5m圏内にランダムな花を咲かせる。

【杜若】発動者に接する水中に花を咲かせる。特定時間で花は増殖する。

【菖蒲】発動者に接する地面に花を咲かせる。特定時間で花は増殖する。

【紫陽花】発動者に接する地面に花を咲かせる。食べると状態異常を発生させる。

【カーネーション】ランダムな色の花を咲かせる。色によって効果は変わる。

【八葉一刀流:神気合一】自己バフ

 

「花にまみれていきましょうか」

 

【高速詠唱】及び【剪定[花]】

 

「アインクラッド二刀流はまだできてないんだ。だから左右の剣で、別々にスキル載せるね」

 

 詠唱込みのスキル【剪定[花]】

 

 ちょっとこれが曲者で、声にMPを載せて吐き出し続けるという変則的な方法になる。

 

「―――」

 

 つまり歌いながら意識してスキル使って、花も乗っける!

 

 バカの所業と言う事さ!

 

「―――」

 

 しっかりリズムに乗せていないとMPが途切れてなかなかのクソシステム。

 これに高速詠唱を積むメリットは効果の倍増。スキルのリキャスト実質無視。

 組み合わせのバグみたいなことが起きている。

 

 シンフォギア的なことした覚えはないですけどねぇ!

 

「―――」

 

 しかもこのスキル奇襲できないってクソですよね。

 

 抜け道として征服人形に魔力まとわせて歌ってもらってもあり‥…マクロスかな。

 

「―――」

 

 腹立つことに歌ってる時のMP消費がアヴァロンの回復速度と一緒なんですよね。

 つまり歌い続ける限りスキルブッパできるアタオカ仕様ってこと。

 邪魔されて歌が止まるとリキャストタイムが使った分全部のせで襲い掛かってくるからこれ使い始めたら倒しきるまで歌い続けないといけないんですよ。

 後の難点?スキル発動する瞬間花に触れないといけないことかな。

 

 こんなの完全に花の魔術師専用のアタオカスキルです、本当にありがとうございます。

 

 だから固定砲台から飛んでくるゴン太ビームも全力で避ける。

 【螺旋大樹】自身に向かってくるものに対して裏を取る移動スキル。

 これのお陰で実質的に避けまくってる。

 

「―――」

 

 何この雑魚ども、キリがないんですけど。

 

 ここに【剣舞[葬送]】も積んじゃうし、【桜花】も使っちゃう。

 

「―――」

 

 そろそろ一曲目終わるから、あたりもだいぶ花だらけになってきたぜ。

 

 ライブ終わりまでに討伐できるかな。

 

 とんでくる雷撃避ける系アイドルって需要有ります?

 

 うっわ、あの生えてくる生物だんだんこの攻撃に耐性持ち始めてるんですけど?

 

 

 

 ミニアルバム歌い終えるころには円形上のフィールドは花に埋もれた。

 紫陽花以外の花を全部桜花に変更、質量アタック準備。

 最悪あの生えてくる生物を一時的にでも切り離せればヨシ。

 

「―――」

 

 前世のお陰でレパートリーだけは中々異常な数あるんですよ。

 

 見栄え的には女性アバター化した方がいいんだけど、いい加減男性アバターで攻略しないとやってらんないよね!

 

「―――」

 

 

 シャチもどき知ってるか?

 

 

 剣舞(つるぎのまい)積んだ攻撃は馬鹿クソ強いぞ。

 

 【剣舞[葬送]】はステップ踏んだ数×倒したモンスターの数だけ倍率アップする。

 

 無限に湧き出すもんな、お前の背中からモンスター。

 最初は一体に4撃入れないと倒せなかったが、今では一振りで二体屠れる。

 

 アヴァロンの鞘のお陰で武器の耐久値回復できるから便利だよね。

 

 だからどんどん倒す速度上がってるんだわ。なんか有利耐性取られてるみたいなのにな。

 

 どれだけ倒したか教えてやろう。

 

 7曲歌い終わって約30分。

 切り殺した数は288体。

 

 そろそろお前を確殺できるんじゃねぇかな。

 

 【桜花】で邪魔な生産モンスターを花びらの質量でどかす。

 

 

 【華ノ太刀・緋薔薇】二刀流仕様。

 

 

「特別ステージにご来場ありがとうございました」

 

 

「アンコールはねぇけどな」

  

 

 シャチもどき的なモンスターならカイオーガ的なしおふきで潰してくるとかなくて助かったぜ。

 

 ……自分の持ってるスキル最大限使えるのってもしかしてこの水中だったら笑うんだが。

 

 ポリゴンになって消える〈雷輝の冥王:分体〉を見て、キリトはとても疲れた。

 

 スキルメタで勝てたようなものである。

 

 奴が稼働して雷撃以外の攻撃出力してたら確実に負けてた。

 

 

 ……あれ、クエストクリア表示でねぇ。

 

『感謝。我クターニッドである』

「うおっ!?」

 

 気が付くと背後に簡単デフォルメされた這い寄る混沌的な人間の胴体に足が蛸の不思議な何かが居た。

 

 サイズ感的に60㎝ちょっとで、なんかきもかわいいに分類されそうな姿だ。

 

 思わずスクリーンショットを取ってしまう。

 

『中々にキュートな容姿だろう』

「あ、はい」

『貴殿に似た古き友のアドバイスだ』

 

 ……ここでもキャスターかよ!?

 キリトは本当にあのキャスター7つの最強種にがっつり絡んでるじゃねぇかと頭を抱えた。

 話を聞くのに正座して聞いてしまってるキリトはそのまま土下座の体制に移行して頭を抱えたい気分だった。

 

『奴は、変異種は私をもってしても危険な存在。故に海上にいた貴殿に手伝いを願った』

 

 ……あれですか、キャスターの後継者ならアレどうにかできるやろって引きずり込まれたってことですか。

 

『貴殿よ、力を示せし人よ。ルルイアスの危機を救ったことに、その旅路の一助を授く』

 

 報酬フェーズ…?

 

「あ、それならルビーの機能の改修をお願い―――」

『それはならぬ』

「え、えぇ…」

 

 やっぱり魔法少女形態といてもリスポーンしないと女のままじゃないですかヤダー!

 しかもなんで少し食い気味なんだよ。

 

「ならせめておまけして」

『……良いだろう』

 

 かんたんくたーにっど君は大量の海賊の財宝的なモノを魔法陣から取り出し目の前に。

 触手を伸ばして腕輪にしては太いリングと杯を手に乗せてきた。

 

 [アクセサリー:クターニッドの環]を入手しました。

 [アイテム:虚偶の聖杯]を入手しました。

 

『また、頼むやも知れぬ。さらばだ』

 

 かんたんくたーにっど君は幾重の魔法陣に包まれて消えた。

 

[ユニーククエスト:深淵のおつかい]をクリアしました。

 

[称号【お使いのプロ】を獲得しました]

[称号【海底都市の防人】を獲得しました]

[称号【海底都市名誉市民】を獲得しました]

[称号【深淵会合(くたーにっどフレンズ)】を獲得しました]

[称号【一攫兆金(トリリオンゲッター)】を獲得しました]

 

 クリア表示が出ても、うん。

 

 どうやって帰ればいいの。

 

 

 ポツンと闘技場のようなところに放置されたキリトは虚空…否、海底に叫びたい気分になった。

 

 手に残るのは右手のリングと左手の杯。

 

 これも厄ネタな気がするんだよなー。

 特にこのリング。

 名称的にも[リュカオーンの夜]に似た効果持ってるくさくない?

 

「誰かにあげるのが正解な気g―――ちょっとまてなに、なんか触手生えてきたえ、ちょ、ま!」

 

 右手のリング、クターニッドの環が突然融けて体に這い始めた。

 

 触手プレイは流石に勘弁願いたいんですけども!?

 

 

 

 

「だめだ、触手に侵された」

 

 なんか全身触手まみれになった気分のキリトは自分の視界に映る素肌部分に魔力回路的な幾何学のラインが走っているのを確認した。

 あ、よく見たらラインのデザイン蛸の触手だこれ。よく見ないと分からないけど!

 

 ……へそ出しファッションに淫m――死痛の隷属的な刻印は流石にキャラから作り直すところだった。

 

 セーフか?

 

 キリトは激戦でおかしくなっていた。

 

 おとなしくアクセサリーの説明文を読むことにした。

 [リュカオーンの夜]と同じでどうせ外せないんだろ?そんな半目になりながら、説明のウィンドウを開いた。

 

 

 [クターニッドの環]

 

 深淵の盟主に認められし者に渡された証。

 

 最強種が預ける力の一端を行使するための物。

 

 魂に刻み込まれたその証は解くことはできない。

 

 かつて友に渡した紋章が不評で有ったため改修された。

 

 

・プレイヤー以下のレベルのモンスターは全力で逃走を選択

 

・水中での行動制限の無効化

 

・海上及び海中に接触時:疑似改宗状態[深淵]となる

 

・装着した時点でアクセサリースロットを一つ消費する(取り外し不可能)

 

・一部NPCに対して畏怖をもたれる。

 

・疑似改宗状態[深淵]ではない時このアクセサリーはガーターリングとなる。

 

 

 ……やっぱ外せないじゃん。

 

 キリトはこれで陸海空の便利移動手段がそろってしまったことのすごさにはまるで気が付いていない。

 

 そう思いながら触手が這いずり回る感覚で床ペロしていたキリトは起き上り〈雷輝の冥王:分体〉の素材回収に一歩踏み出した。

 

「うおっ!?」

 

 一歩踏み出して分かった。

 

 コレ、水中都市の移動人権アクセサリーだ!

 ここにキリト以外のシャンフロプレイヤーが居たなら「そんな訳ねぇだろ」とキレたはずである。

 

 

 普通の踏み込みと水中を泳ぐようなウェーブを自由に切り替えられる。

 

 ちょっと楽しいかもしれない。

 

 水中移動時、これはモーション研究捗るなぁ。

 キリトは内なるゲーム開発キチを開放しかけながら、アイテムを回収した。

 

 [雷輝の冥王の触手]

 [雷輝の冥王の精霊核]

 [雷輝の冥王の結晶]

 

 ……なんかレアリティ高そう。

 

 あっちのヴァッシュに見せてこよ。

 

 

 アイテムの取り残しがないかを確認し、疑似改宗状態[深淵]で海底都市を脱出、海上へ向かった。

 

[称号【深淵からの生還者】を獲得しました]

 

[称号【海人】を獲得しました]

 

 なんか今日一杯称号貰えるなぁ…

 

 海上へ躍り出たキリトは海面に手をついてよじ登るという不思議な状態で、なーんにもない海上でぼけっと空を見つめる。

 

 ……コレ、海上で疑似改宗状態[深淵]と疑似改宗状態[夜襲]が被ったらどうなるんだろ。

 

[称号【二つ星の証明】を獲得しました]

 

 同時発動できるんですか、そうですか。

 

「‥…流石にウェザエモンまである訳ないよな」

 

 キリトは全力でフラグを踏んだことに気が付かなかった。

 

 マップを開き、また西へ向かい数十分。

 夜襲の効果で視界に入る影の間をワープできることに気が付いてからは凄い速度で移動を開始。

 

 暗い夜の中、新大陸と思われる海岸へ足を踏み入れた。

 

[称号【踏水渡海真君】を獲得しました]

 

「やかましいわ」

 

 




・おや、明日奈さん貴方も誕生日9月なんですね。
 色んなパターン考えましたが和人の誕生日までに遭遇できなかった場合、本時空では敗北。番外編へ出荷いう運びに…

・新大陸と旧大陸の距離について

 船の移動距離を時速5ノット
 時速換算すると1.852㎞/hらしい。
 仮に船での実働が6日間(144h)は止まらず事動いたとして1333.44㎞
 7日間フルで動いたとしても1555.68㎞

 ……ラビッツのある島は九州くらいで7割が水没、だったか。
 九州のタテのサイズは約330㎞、の三割約100㎞程と言うことになる。
 東京を中心として西北東に掛けて沼津、甲府、前橋、宇都宮、水戸くらいの距離感。

 作者曰く完璧な旧大陸地図(読者作成)の前線拠点とフィフティシアの縮尺ラビッツのある島を100として合わせるとザックリ計算で200㎞あるかないか……分らん!

 旧大陸の実際のサイズは北アメリカだけどプレイアビリティの関係でゲーム内では狭い。
 とか言ってた気がするので、距離を1/5すればいい感じの距離感なのではとこの作中では採用することにした。

 本作では1333.44㎞の1/5 266.7㎞を新大陸と旧大陸の最短距離とします()
 その理論で行くとセカンディルからサードレマの直線距離約70㎞弱を爆走したレジギガス爆誕するけど大丈夫そ?
 そんだけ広けり処理落ちしないようにサーバービル何本か経つわ。

 それに対してアインクラッド君一層の直径言ってみようか10㎞?小さいね。
 でもそれが100層あるんじゃい?ごめんて。
 でも上に行くほど規模回小さくなるから…

 ラビッツって東京駅から和光市くらいまであるってこと?
 でかいな()10分の1で良い気がしてきた。
 
 なおこの距離の出番があるとは言っていない。

・〈雷輝の冥王:分体〉

 かんたんくたーにっど君に行動阻害されていたのでアホほど固い固定エネミーを雑魚狩りしながら切りコロ案件。
 ……背中から生えてくるヤツ倒すのも普通てこずるんだけど、フィールド形成うまくいったのが勝因ですかね。
 ゴン太ビーム、原作主人公インベントリアに逃げ回避していたと言うのに…
 後衛の姿か?これが。
 
・うきうきしゃのんちゃん

 平静を取り繕っているつもりだが電話がかかってきた瞬間心拍数は壊れかけた。
 電話を切る直前浮かれすぎて転んだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。