何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
だいぶゆるふわなことを言っているので後ほど修正入ると思います()
「JGE開催直前、隆盛を極めるVR業界の若き開発者に聞く今後の展開。パスで」
「パスは、出来そうにないんです」
「やだよなんでこんなクッソ忙しい時期にこんなめんどくさい案件熟さなきゃいけないんですか」
ARスポーツを極一部の関係者公開から数日。
10月に突入したと言うのにまだ日差しがキツイ。
秋は一体どこに行ったのだろうか。
カムラの営業部長が目の前に着き、どうにかこうにか話を進めようとしてくる。
なんでも、UESの継久里博士が「何で私がそんなことしなきゃいけないのよ」と断ったらしい。
JGEの運営としてはどうしてもそこら辺の目玉記事が欲しい。
では、天才二人の対談形式とかどうでしょう、と提案し極めて渋々「鳴坂博士の了承が取れれば」と了承したとのこと。
事実上の拒否だろ。おい。
「コレ、俺が断らないと後で睨まれる奴じゃん」
「……その、UESの宣伝部長の木兎夜枝様からどうにか受けて貰えないだろうか、とのお話が来てまして」
「ヘイト対象になりそうなの俺なんだけど」
「そう言われましても…」
「数日前にクソデカい仕事したじゃないですか。ちょーっとインタビュー断るくらいの利益出してると思うんですよ」
「それは、そうなんですけども」
とりあえず、ARスポーツ事業の関係で数期先まで確実にカムラにもたらされるであろう利益を盾に拒否することに。
「その、継久理響十郎様からも“本件を受け入れて頂ければあの件は今後一切触れないこととする”と…」
「……事実上の圧力じゃねぇか」
「一体何されたんですか?」
「殴り込み」
「え?」
「何でもない。大学時代のちょっとしたヤンチャですよ」
7日以外にしてくれ、と和人は肩を落としながら答えた。
あんときはあんときで技術上の譲歩とか色々しただろうに、金持ちはこれだからめんどくさい…。
精算できるものはさっさと精算しておきたいものだ。
〇
「本日は本当に、本当によくぞ来ていただきました!」
10月6日金曜日。
和人は指定された時間通りにUES、ユートピア本社に足を運んだ。
指定された時間の15分前、会社のエントランスを潜るとピシッとスーツを着こなした眼鏡のインテリ系ビジネスマンに綺麗なお辞儀をされた。
たしか、この人が……
「失礼いたしました。私弊社の宣伝部長を務めております、木兎夜枝と申します」
「これはご丁寧に、カムラの技術顧問の鳴坂です」
スッと名刺を差し出されたので滅多に使うことのない名刺入れを取り出し、名刺を出す。
「鳴坂博士の名刺、レアですね」
「初めて刷った名刺を増刷していないので、持ってる人は少ないんじゃないでしょうか」
今の所名刺を使った所と言えばカムラの役員周りと株式会社レクトの関係者、それと彬茅関係くらいか。
カムラを絡めた仕事の持って行き方をされればカムラの名前が入った名刺を出すし、完全に趣味的な付き合いからの派生だとカムラの名前のない完全にプライベートの名刺になる。
カムラのはシンプルで昔ながらの名刺で、プライべートな奴はちょっとした技術を入れた薄い金属板だ。
左角の折れ線で折ると趣味サーバーにアクセスできるゲームソフトになるやつ。
気が付く人がいるかどうかは知らんけど。
プライベートな名刺とか多分片手で数えるくらいしか出してないんじゃないか?
最初の一枚は紗音に持って行かれたけど。
後は妹とゼムリアのリィンとアリサくらいか。
レアと言えばレアかもしれないが、レアリティで行くと財閥総帥とかそこら面の名刺の方がよっぽど欲しい人いるだろうに。
「既にJGE本部広報の記者がいらしていますので応接室へご案内します」
……昔殴り込んだときのダメ―ジが…。
そん時この建物できたばっかだった気がするぅ…。
〇
「久しぶりね」
「ああ、お久しぶりです。継久里さん」
応接室に着くと芋ジャーのイメージが強かった継久里創世がレディーススーツで堂々と椅子に座っていた。
その少し離れた所になんか冷や汗の凄い40代くらいの男性。
あぁ、取れ高焦って色々質問して素気無く対応されたうえで何らかの脅しを食らったか。
なんというか切れてからのリアクションがクソガキ感すごいんだよなぁ…。
「あ、鳴坂博士でしょうか。私JGE運営本部広報のm「後にして」」
「継久里…」
JGE広報の人がこちらに挨拶をしようとしてきたので名刺を取り出そうとすると、継久里キャンセル。
それをみて木兎夜枝さんは頭を抱えた。
「サッと形式上のもんお出ししてその後の会話の方が変な邪魔もねぇだろ」
「……そうね」
……そんな神を見るような目を向けないでもろて。
木兎夜枝さんの心中をお察しします。
「改めまして、鳴坂です。事前の通達の様に写真撮影はNGです。そう、その胸ポケットのペン型の小型カメラとネクタイピン、眼鏡のフレームに積んでいるもの、立った時の音から靴もか、全部破棄してくださいね?」
「――コヒュッ」
クッソ珍しい組み合わせだとは思うし取れ高的なモノ期待してるんだろうけど、こっちも身バレには気を付けているんでね。
ま、8割ブラフ。よくある手法で昔やられたからざっと上げてみたら見事に釣れた。
やった奴は彬茅経由で対処して頂いたし、ネット上に俺及び身内の写真が移った瞬間その画像削除するAIシステムが泳いでるから大丈夫だと思うけども。彬茅社長は公に顔割れしてるから気にしない。
大前提として今かけてる眼鏡が映っていればそれがモザイクになるんだけどね。
「――失礼ですが、別室で身体検査して頂けますね」
「は、はい…」
ほんとにあんのかよ、JGE人選考えた方がいいんじゃねぇの?
俺の中で信用度いくつか下がったぞ?
40代くらいの男性、名前は知らんは内線で呼び出された社員にドナドナされていった。
「……よくわかったわね」
「滅多にインタビューとかそう言うの受けない質なので、警戒はするよ」
「とりあえず通信関係は遮断してあるからそこは安心して頂戴」
「そりゃどーも」
継久里にぎょっとした目を向けられたが、警戒の一種と言うことで。
やっぱ通信系の遮断とかあるのね。
「さて、邪魔なヤツいなくなったから色々聞きたいことあるんだけど」
「一応、JGEの仕事はこれで熟した扱いで良いなら」
「そこらへんはこの眼鏡に投げてるから追って連絡があると思うわ」
「継久里、言い方ってものが」
「うっさい」
……木兎夜枝さんマジ大変そう。頑張って。
こういう時他人ごとって気が楽でいいな!
「えー、鳴坂博士盗撮等の確認がされましたらあの方は送り返し、正式な抗議文を出しますのでその後文面等での質問等を行わせて頂く場合があると思いますのでご了承ください」
「分りました。こちらからもJGEに文句は言っておきますんで最低限のページ数を稼げる程度には対応します」
「そう言って頂けると大変助かります」
うぅ、これが話が通じる方のVR博士……と木兎夜枝の感動を全く知らない。
「で、話し始めていい?」
「自由過ぎる……」
木兎夜枝が万が一の場合に備えてストッパーとしてこのまま在させて頂きます、といい数年ぶりの談義が始まった。
「まず、どうよ私の世界」
「あそこまで馬鹿みたいに重いデータ処理をまともに熟せているのに感動した。歩けばしっかりと足跡は残るし水の濡れの変化、基本的な身体領域はそのままに速度の反応性の処理も見事だ」
「でしょー」
「俺自身も度々ハード側からの処理問題を潰していたがイベントフラグ進行にプレイヤーの知識量を図るようなものもあったな」
「その件は助かったわ、貴方が読み取りのための電気信号値を限界ギリギリまで下げるんだものフルダイブの技術は維持してるけど細かい所の指定調整は助かってる」
「その件は俺のやらかしだからちゃんとやる。NPCの武器職人の生成関係もそこら辺利用してたりするのか」
「ええ、そうね」
まずさっそく、と言わんばかりに継久里からの質問が飛ぶのでそれを返す。
「一つ気になったんだが、とりあえずあの世界に地球と同じ元素は存在するのか?」
「設定的にある、けど」
「じゃ、パラメトロンが作れる。金属は結構豊富みたいだし……電気と酸化鉄が有れば磁石が作れる、極論ファミコンくらいの計算処理とプログラミングならゲーム内で数年ありゃ作れるってことだ。」
「……え?」
「つまりプレイヤーメイドで0からロケット作れそうだな」
流石に時間かかりすぎるからやりたかねーし、現実的ではないけどな。
一つ疑問が解消してよかった。
さらっととんでもないことを言ってのける和人に、継久里創世は目が点になった。
継久里創世の作り上げたシャングリラフロンティアで0から文明を作れるかを考えた、と?
あくまで設定上のそれだ。
惑星移住として無理なく未来の文明を組み込む設定は考えた。
だが、元素反応まで作成されているのか、と彼は創世に問うた訳だ。
幼少の頃ハイファンタジー世界では産廃能力と呼称した転生特典の一項目は[・VR及びAR等の電子工作等々の作成技能]広義で考えると元素の集合体さえあれば文明0からVRを作成するまでの大本の基盤さえも作成を可能とする。
一人ではどうあがいても無理だけど。
「ほー?」
そんなさりげない発言が設定厨にとんでもない刺激を与えた。
確かにコンピュータの祖たるものはそれでできるだろう、と。
「どこら辺の星が私の世界かわかるなんて言わないわよね…?」
「天文学はちょっと雑魚いけどアレを月と呼称しているとするなら月の直径から星まで距離が分かる。星座が地球から見えるものと同じなら方位が分かる。マップで実際に歩いて水平線までの距離が分かれば楕円体がおおよそわかる。月と太陽の昇って沈む速度が分かればおおよその緯度経度は簡単な計算だ。自分が見てる場所が分かれば逆算するだけ」
大体[
「データの容量問題もあるだろうが実際に作りたかったものの1/5スケールにマップデータは縮小されて、要所要所がさらにその半分。そう考えると文明レベルに対してNPC人口が―――いや、モンスターとの戦闘があるってことは防衛領域が変わってくるから首都防衛面積の問題か。それにしては強さに対しての文化圏の違いにNPC人種差が出てねぇってことは統一規格の可能性とか色々考えるとおもしr――」
マップの整合性考えようとするとそうなる。
緯度経度から土地的な気候変動があまりないような位置かもしれないが、土壌のpHからその色の花は出てこねぇし育たねぇだろってこととか、とかはツッコミを入れたかったがファンタジーには何を言っても無駄。
それが粗を探せば結構見つかる、ファンタジー。
「わかるぅ!?」
「根幹の設定は絶対ずらす気はないんだなってことくらいは察した」
余計なことは言わない。絶対めんどくさいから。
「ほらぁ!わかる人にはちゃんとわかるんだよ!眼鏡!」
「わたしはめがねではない」
木兎夜枝は継久里のスイッチが入ったと胃にダメージを感じ始めた。
談義が始まりX時間。
食も忘れただひたすら口が回り、気が付けば木兎夜枝はいなくなっていた。
流石に時間も時間だから失礼する、そんなときに継久里はこんなことを言ってきた。
「で、あんたは自分の世界ってもんを作らないの?」
ベースが必要ならロハでもいいわよ、そんな言葉が飛んできた。
「俺だけの鉄の城はたった一人の勇者にクリアされたよ」
そう告げ、和人はユートピア社の応接室を後にした。
帰路に着き思う―――俺があいつを[ー]したように、俺もあいつに[―――]されたんだ、と。