何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
金曜の夜、土曜の夜、日曜ほぼ一日。
すっかりシャンフロに浸かり切った和人は、月曜日だからとカムラに出社した。
月水金はカムラの鳴坂ラボにて次世代機の開発やVR機器の技術顧問として取引先との打ち合わせ等を行っている。
火木は在宅ワークが認められており、基本的に趣味のゲーム制作をしているが今後はシャンフロに籠る時間になりそうである。
和人は日曜の夜にVR機器のリミッターを外し、本気でプレイをしたため疲労感を覚えながらの出社となった。
前元号初期に建てられたと言うのに古臭さを感じさせないカムラの本社地下駐車場に車を止め、正面玄関から会社へ入る。
従業員は通常本社西の電子錠のかかった扉から出入りするのだが、和人は入社退社がすぐに分かるようにと正面玄関からの出入りを推奨されていた。
受付の人に挨拶をされながらエレベーターに乗るとエレベーターの4階のボタン脇にある指紋認証に指をかざすとエレベーターは3.5階と言う和人や役員のみ訪れることのできる特殊フロア、通称鳴坂工房のフロアへたどり着いた。
当初は社長室隣の滅多に使われない応接室を改造して使っていたのだが、気が付くとワンフロア丸まる貸し切りとなっていた。
色々な機器を製作したりする関係上、広いスペースが欲しくなりこうなった。
最近はフルオーダーメイドのVR機器のカスタマイズ調整をこの部屋で行っている。
フルオーダーメイドのVR機器は新車の車が買えるレベルの金額になっているのだが、VR博士が調整するよ、と言う謳い文句のため注文は2年待ち、一時受付中止とか言う頭おかしいことになっている。
現存するVR機器の中では一番パフォーマンスを発揮させることが出来るのは確かだ。
平均一日5台ペースで調整をして取引先のメーカーに送り出す。
週に15台生産ペースだから2年待ちになるのだとか言ってはいけない。
『鳴坂博士、株式会社レクトの結城様が今週分の納品にいらっしゃいました』
仕事に手を付けようとすると、内線が鳴り来社の報。
総合電子機器メーカー「レクト」の結城さんはこのVR機器フルオーダー企画を持ち込んだ張本人であり、自身もVRゲームを好むと言う大手企業のお偉いさんとは思えないフットワークの軽さをしている。
「いつものように直でこっちに案内してください」
『かしこまりました。納品物と共にご案内します』
「ありがとうございます」
鳴坂工房は二つのエレベーターのみ出入りが可能である。
一つはキリトが頻繁に利用する社員共用エレベーター。
もう一つは大型の機械等を納入するための大型貨物エレベーターだ。
「おはようございます、鳴坂博士。今週の納品です」
「おはようございます、結城さん先週調整が済んだものはあちらに」
「承知しました」
結城さんの持ち込んだフルオーダーVR機器プロジェクトは、受注をレクトが行い、ユーザーの身体の計測、希望の形状等のヒアリング等を行ってくれる。
オーダー時に必要とするとあるアプリでのユーザーの処理能力等を計測した情報からフルオーダー調整、セミオーダー調整、簡易調整といくつかに分け処理を行う。
商売だから金でそこらへん分かれるのよ。
「前回の納品で100件超えましたが調子はいかがでしょう」
「ええ、トラブルもなくお客様からは大変好評です」
話を聞くところによると簡易調整の物でもゲームのプレイ感が大きく向上したと好評で、セミオーダー以上にすればよかった、もっと受注枠を増やして欲しいとの声が多く上がったとのこと。
「……将来的には増やすことも考えたいとは思いますが、今は少しばかり自分の時間が欲しいので…」
「そう、ですよね…」
「ですが現在弊社職員でもセミオーダー調節まで可能なようにプログラミングの開発中ですので秋頃には再度受注を掛けられるかと思います」
「本当ですか!」
……最終チェックで和人が最終確認をすれば実質博士の監修ヨシ案件とか汚い大人になってしまったものだと明後日の方向へ目線を飛ばしてしまう。
だって今捌いてる分どうにかしないと次世代機を大手を振って生産できないんだから仕方ない。
「セミオーダーまでは生産速度が上がるので最上位モデルには月一で搭載したアプリケーションの課題をクリアした状態によってキャリブレーションを行えるようにしていきたいですね」
「それはぜひ!」
「キャリブレーションのソフトウェアと部品開発のためもうしばらく今の生産速度を維持させてください」
「承知しました」
さて、そろそろ結城さんが来た意味でも聞いてみることにするか。
和人は結城氏が納品のため毎回来ている訳ではないことを理解している。
「で、どっかから無茶振り背負いこんで来たんですか」
「あ、あはは。わかりますか…」
「大方アメ公のちょっかいと言った所でしょうけども」
「…はい」
先週金曜日、お国の方から
“去年に引き続いて今年のGGC:グローバル・ゲーム・コンペティション開催決まったからアメリカの全一呼ぶ予定なんで我が国の技術力見せてやって!”
“あーうん、そう。全一のパフォーマンスに恩を売れればアメリカの企業群とかとの交渉で外務省の方が少し動きやすくなる案件があるんだよ。VR関係の輸出条件こっち優位に交渉するためにもお願いします!”
とのこと。
その話を聞いて、正直なところ金銭的にはもうすでに遊んでゲームライフを送ることのできるだけの蓄えのある和人にとっては鼻ほじ案件なのだが、レクトとの友好関係ないと性能のいいVRマシンの部品調達面倒だからしゃーないやるか…くらいの認識である。
「……GGCの開催っていつでしたっけ?」
「来月、もとい3週間後…ですね」
「…うち、JGEのブース抱えてるの知ってる?」
「弊社の隣ですので…」
「…お国の要求的にアメリカの全一さん、既存のオーダーの範疇で満足できると思う?」
「……厳しいかと」
「次世代機の一部機能下ろさねぇとか……」
そんな心持ではあったが実際問題現行のフルオーダーモデルではちょっと容量不足。
アメリカの全一を“驚かせる”レベルを今後のVR文明の進行速度的に今の段階でお出しするつもりはなかったんだがな……。
「本当に無茶を言ってるのは分かっていますが何とぞ!」
「部品の取り寄せの多少の無理は聞いてくれますよね?」
「もちろん!」
「今日中に発注書出すんでパーツを今週中にお願いします。あと、今月のオーダー処理そこの15台で止めるのでそれの処理もお願いしますね」
「承知しました!」
そう言って今回の取引は終了。
エレベーターが閉まる結城さんの姿を見送り、思わず口が緩むこぼれる。
「シャンフロのプレイ時間ゲット」
なおこの男すんごい渋くもレクトの仕事をこなすことで恩を売り、無茶振り部品発注でレクトの対応力を図る算段である。
あとどさくさに紛れて仕事を一時止めました。
チートなんてものは日常的に3割出力に抑えて、有事に5割、だらける時に7割の出力である。
10割は何か?
当然趣味。
時間をうまく使うのが仕事を切らさない怠惰な働き方ってものだ。
今運ばれた15台を1時間で片付け、今日のノルマ分は簡易調整のみなので3分。注文書を作って定時の少し前に届くように自動送信予約を設定し本日の業務終了!
当然処理したシステム上の時間は改ざんされているものとする。
いやー融通利かせることのできる仕事っていいわー。
ぶっちゃけユーザー自身にキャリブレーションさせるシステムも、自分以外の社員にセミオーダー調整、簡易調整させるプログラミングも完成させてある。
要はどこまで引っ張れるかチャレンジをしているに過ぎない。
フルオーダー調整でも一日100台くらいならできるのがチートクオリティと言うやつである。
全一さんについては完全に調査不足なのでそこは頑張ろうと思う。
ま、プレミアって大事だよね。
そんなことを和人は悠々と考えながら会社のメッセージアプリに13:00-17:00緊急対応可、とメッセージを送り付けアメリカの全一、シルヴィア・ゴールドバーグについての調査を始めた。
〇
シルヴィア・ゴールドバーグ
五年前のとある格ゲー大会におけるアマチュア部門にて突如現れた一等星。
そのトーナメント式の大会ではノーダメ完封勝利、現在に至るまで文字道理無敗の格ゲー界における全世界一位、と。
ゲームでテンション上がってキタ!と言う側面とコンスタントに安定した勝利をする2つのパターンが存在。
……どちらも対応できるようにした方がいいだろうなぁ。
多少無茶な伝達速度を上げても対応できるだけの無尽蔵とも言えるスタミナがカギを握りそうだ。
ひとまず想定される3パターン。
・ダメ元今回のオーダーの枠組の最大調整コース
・無尽蔵の体力あり気の伝達処理モリモリコース
・ハイテンション時のシルヴィア・ゴールドバーグの最大値に適応したコース
……チートさんあってもこいつに合わせたデータ作るの手間だなぁ。
「兄さんお帰り!」
「お前金曜に来たばかりだろうが」
「ふふふ、今日は終業式だからさ」
「あーそんな概念あったな」
レクト社との打ち合わせをしたその日の夜帰ると再び真登香が居た。
真登香に言われカレンダーを見ると確か夏休みと呼ばれる期間だった。
和人は中学一年の頃には既にカムラに入り浸っていたのでそんな概念は遠く昔に消えていた。
「いやー切り良く金曜日に終業式にしてくれてもいいのに、今日でおしまい。お昼からお邪魔してたの」
「帰りに友達と買い食いとかのイベントはなかったのか?」
「うち、お嬢様学校ぞ?」
「あー」
私立エテルナ女子学院、港区に位置するその学校は財界のヤベーところのご令嬢がわちゃわちゃしているところである。
そんな学校なら夏休み期間をしっかり確保するため、金曜に終わらせそうなものだが。
「だから回線とマシーンつよつよの兄さんの部屋で遊んでいるのさ!」
昨今、通信技術の発展に伴い回線は光通信技術も有用であるがそれ以上の通信速度を求めようとすると部屋に専用のアンテナが立っている。
和人の部屋もその例に漏れず、回線は国内トップレベルを誇る。
一般的な回線ではアクセス競争に負けて閲覧することも難しいと言うシャンフロウィキも快適に閲覧することが出来る。
和人はウィキは本当に攻略に詰まるまで見ない主義だ。
後は、VRの通信料問題だろうか。
VRゲームの通信料はソフトの通信に応じて使用料の請求が発生する。
プロゲーマーはひと月当たり通信料として一万を支払っていると話を聞く。
和人にとってその程度何の痛手にもならないので実家の回線で使いづらいと言うのなら好きに使えばいい。
そんな程度のリアクションだ。
「それで一学期の成績はどうだった?」
「上位一桁」
私立エテルナ女子学院と言えば偏差値は高い……らしい。
和人はそこらへんの情報が薄いが妹の取り出した5段階評価の通知表で5か4しか並んでいない通知表を見ればその成績は優秀と言って誰も怒ることはないだろう。
「優秀じゃん」
「だから夏休み中入り浸って良い?」
「……宿題は最終日に泣きを見ないことと、登校日は忘れないこと、実家の許可を取り、健康的な生活を忘れない限り良しとしよう」
「ヒュー流石兄さん!」
「VRのログアウト時に現実との同期システムがあるとはいえ、多少なりとは感覚のずれが完全に0じゃないからVRは睡眠時間を超えないこと」
「‥…8時間は行けるな」
「あまりにもダメそうなら実家に強制送還します」
「はーい。炊事洗濯は任せてね」
妹を送り届ける関係で実家には度々顔を出しているので盆に返って来いとの声はなかった。
盆、八月の中旬であるその時期は去年と今年はGGCが存在するため和人は帰るのは難しそうだったのでありがたかった。
妹のダメ人間一歩手前の発言は聞かなかったことにした。
妹作の夕飯、曰く中華セットを食し食洗器に洗い物を突っ込み、さっとシャワーを浴びて和人は自室に引っ込んだ。
初回ログイン以降生体認証とパスワード処理を行いシャンフロにログインした。
相も変わらずサードレマの宿。
装備はセカンディルで揃えたもの。
サードレマから3つに分かれる都市に進む、もしくはアヴァロンの続きをやる。
現在キリトには2つの選択肢があるがアヴァロンに行って誰も邪魔されない状態で前任者の【格納鍵インベントリア】の中身を確認しよう。
そう決意した。
そのためには、再びあの愉快型戦術機を出さなくてはならない。
「[転送:格納倉庫]」
腹を括って倉庫に入った瞬間、腹部へ衝撃。
ノックバックで吹き飛ばされるキリト。
「やっっっっっっっっと戻ってきましたねマスター!」
「あ、おう……」
「さぁ、サクッとアヴァロンに行きますよ!上空が開けていて人に観測されないようなところがいいんですけど」
「じゃあ、昨日のところ行くか」
「通れない……あれ、なんかの条件型か…?」
愉快型戦術機を再び格納庫に放置プレイしたまま千紫万紅の樹海窟へ。
記憶をたどりながら昨日と同じ座標に到着し壁を調べるが何も起きなかった。
引き返すようにサードレマ……ではなく千紫万紅の樹海窟をクリアしてフォスフォシエに向かうことにした。
四駆八駆の沼荒野のほうは序盤エリアであることから夏休みに入ったばかりの新規プレイヤーに遭遇する可能性が無きにしも非ず。
今は夜だが、だからこそガチ勢に見つかることだけは勘弁願いたい。
方位的にあのピエロの絵背負ったような蜘蛛、何だろうな。
「サクッと行こう、サクッと」
ちょうど大木の内に住まう蜘蛛をみて察した。
「んーめんどくさい敵」
そう言いつつもノーダメノーデスでエリアボスをしとめたキリトの感想である。
俊敏に大きくステータスを振っていれば壁走りもできてたかもしれないが、キリトは一応、本当に一応後衛職である。
バリバリに近接戦をするが後衛職である。
アスレチックゲーの様に糸から糸へ張力を利用して自身が矢のよう移動、ボスの正面にヴォーパルストライク一発入れて怯んだところで足を切り落として落下。
姑息にも糸を発射して落下回避しようとしてきたので弓キャン。
落下してダメージ受けた所でアヴァロンの鞘背負って上から落下しつつ射剣でフィニッシュ。
食いしばりで落下ダメージ実質無効。
上から下まで移動がとにかく面倒だった。
上からグミ打ちでしとめるつもりがうっかり粘着性のある糸に触れてしまったため、糸を切り落として離脱した結果が落下射剣である。
アスレチックしなくても螺旋階段があったことに気が付いたのは倒し終えてからである。
「なんだこれ」
【最上質の糸玉】
「使いどころ…あるのか?」
エリアボスを倒した後他のエリアもどんなものか見ておこうかと思い立ちサードレマに戻ることにしたキリトは一人の露天商に出会った。
「どないしたん、うちの商品気になっとるん?」
「見たことないものがいっぱいあって思わずな」
「せやろせやろ。ジブン色んなとこ行っていろんなもん仕入れる行商人さかい」
「色んな所のマップとかないか?物々交換になってしまうが、モンスターのドロップアイテムなら色々持ってる」
「んーものによるなぁ」
うさん臭い関西弁をしゃべるフードを深く被った行商人だという。
初期マップでは限界を感じ、詳細なマップを持っていないか問うてみた。
「サードレマから延びる3つのエリアの詳細な地図は?」
「神代の鐵遺跡のちょっとええ地図ならあるで!」
「それ、欲しい。クアッドビートルの甲殻とかでどう?」
「んービィ姉ちゃんの領分でわての性分ちゃうなぁ……」
「……珍しい名産品的なものが好きなのか?」
「せや。その土地でしか手に入らんめっずらしいものほど良いんや」
「じゃ、クラウンスパイダーの【最上質の糸玉】」
「おぉ!ええやん、ええやんエフュ姉ちゃんが最近欲しがっとてなぁ、それでええわ。ついでに涙光の地底湖への地図も付けたるわ釣り竿持っていくんやで」
なぜか雰囲気的にレアスポットらしい地図までつけてくれた。
……そんな商売で良いのか?と疑問を浮かべるが貰えるものは病気と借金以外貰う主義なので有難く貰った。
「ありがとう、行商人さん」
「ええねんええねん。これでわてもエフュ姉ちゃんの人形の損失分カバーできるわ」
また来てなぁ!と元気のいいセリフを聞きながらその場を後に。
釣り竿探しを開始することにした。
〇
サードレマを徘徊すること1時間。
路地裏の隅にこっそり鮭の切り身マークっぽい扉の店を見つけた。
「らっしゃい、うちに何用で」
「涙光の地底湖で釣りしたくて釣り竿探してて、扉に魚の切り身マーク見つけて入りました」
「…涙光の地底湖よくみつけたじゃねぇの」
そう言うと店主は奥にゴソゴソと入っていった。
「これがァ俺がわけぇ頃ライブスタイドサーモン[極]を釣ったァ釣り竿だ。おめぇさんにくれてやる。ライブスタイドサーモン[極]をもう一度食いてぇ。釣ってきてくれねぇか」
『ユニーククエスト:幻の鮭をフィッシング!』を受注しました。
「釣ってみせるよ、ライブスタイドサーモン[極]を」
「ああ、期待してるぜぇ」
釣り竿ゲット!いざ行かん涙光の地底湖!
「説明適当か…?」
神代の鐵遺跡から雑な説明が書かれた通りに30分以上かかって涙光の地底湖に着いた。
いや、それになんで俺地下にいるんだ?
上空の開けた空間があって人目のない所を探していた……はず。
「ライブスタイドサーモン[極]を釣ってから考えればいいか」
そう思いながら釣りを始めようとすると地底湖にほかのプレーヤーが居ることに気が付いた。
PN:リィン
軍服を思わせるような印象と白い頭髪と眼鏡が特徴的だ。
湖畔に胡坐をかき片手に釣り竿、片手に若干動いている魚。
あ、噛り付いた。
食材ってそのまま行けるのか…
「ん、こんばんは。地底湖には釣りかな?」
「あ、ええ。ライブスタイドサーモン[極]釣りに」
「何、ライブスタイドサーモンにさらに上位称号を持ったものが居たのか!?」
あまりにも癖の強い釣り師を見ているとこちらに気が付いた様に声をかけてきた。
相手は律儀に立ち上がったので、まともな受け答えをせねばならないと地底湖に来た目的を告げると彼は釣り竿を放し、膝を着いた。
察するに彼は重度の釣り好きらしい。
「釣公師団及び釣皇倶楽部の名誉釣神であるこの俺としたことが、一生の不覚ッ!」
「えぇ…」
あ、釣りキチだこのひと。
「ん゛失礼した。俺は釣りスポットと温泉をこよなく愛するリィンと言う」
「俺はキリト、ユニークシナリオでライブスタイドサーモン[極]を釣ってくるクエスト中だ」
「……なるほど、ユニーククエストか。極はユニークオンリーの可能性があると言う事か。ありがとう学びになった、よかったらこれを貰ってくれ」
[PN:リィンから『フチなしメガネ』を譲渡されました]
俺もサードレママラソンが足りなかったらしい、なんて言われながら眼鏡を貰った。
「い、良いんですか!?」
「いいんだ。それに眼鏡普及委員会役員として常にメガネのストックは各5個有している」
「……ユニークシナリオの詳細話すので丸ふち眼鏡べっ甲があったらください」
「ああ、もちろんある。聞こう」
何かなぞに肩書の多い男リィンにユニークシナリオ受注までの流れを話すと丸ふち眼鏡(べっ甲)をくれた。
「キミは良い眼鏡ユーザーで釣り人だ、フレンドにならないか?」
[PN:リィンからフレンドの申請が行われました]
承認 ▽
拒否
リィンのフレンド申請を受けた。
「何かいい釣り情報や温泉情報があればいつでもメッセージを送ってくれ。報酬は用意しておこう」
「ああ、わかった」
「俺はさっそくその釣具店に行ってみることにするよ」
そう言って肩書の多い男リィンは目にも止まらぬ速さで去っていった。
「もしかしてあの人高レベル帯の人…?」
キリトの脳裏にまた新たな宇宙猫が住み着いた。
キリトは知る由もないがリィンはトールズⅦ組と言うクランのリーダーで、各々が変な趣味に走るが集団戦で無類の強さを誇る。釣りキチ、メカキチ、眼鏡キチ、楽器キチ、トレキチ、昼寝キチ、槍キチ、酒キチ、メイドキチ等々…全体的にキャラが濃いので胃もたれする。
普段誰もクランメンバー以外と会話をしないのでクランリーダーのフレンドと言うのは非常にレアである。
なお、メンバー全員が眼鏡キチの手によって眼鏡を装着させられており、眼鏡クランとしても有名。
眼鏡は現状プレイヤーメイドオンリーとなっているため眼鏡の詳細を知りたい人から掲示板で目撃情報収集までされている。
ライブスタイドサーモン[極]を5回目程でつり上げた所で、ライブスタライド・レイクサーペントとライブスタイド・デストロブスター同時に襲われながらサーペントの首を落とし、ロブスターの硬い甲殻を同一場所に攻撃を入れ続け倒すことに成功した。
Lv.41と一気にレベルが上がったうえ、ライブスタイドサーモン[極]を鮭の切り身マークっぽい扉の店の店主に渡し、釣竿も返したら称号【釣王】を手に入れたし、店主の捌いた刺身を食べたら味覚のロックが解除された。
すっごい上質な脂身を感じ、それをリセットするようなうま味ある緑茶、最高だった。
その情報をリィンさんに送った。
リィン
[一度行ったが失敗した。何かフラグになりそうなものに心当たりはないだろうか]
キリト
[涙光の地底湖への地図、かもしれません]
リィン
[なるほど……釣王の称号は何としてでも欲しい。譲ってほしい]
キリト
[承知しました]
フラグらしいフラグと言えばそこらへんだと思われる。
もしくは町一時間探索。
流石に夜遅いので後日と言うことに。
……あれ、俺初めてまともプレイヤーと交友したのでは!?
PN:リィン Lv.99 extend
クラン:トールズⅦ組リーダー
釣公師団及び釣皇倶楽部の名誉釣神(自称)
眼鏡普及委員会役員(眼鏡キチcv.清楚な声の人に押し付けられた)
釣りと温泉を愛する趣味人。
リアルでは近所の爺さんから継いだ古武術道場の師範。
メインジョブ:釣り人
サブジョブ:剣聖
剣術がシンプルに頭おかしい人。
晩年のリアル富岳もニコリスペック。
数度剣を合わせるだけで人間性を完璧に読んでくる。
このゲームでは釣りをしている際にモンスターを多々釣るのでそれをのしていたらこのレベル。
称号コレクターでもあり剣聖のジョブも名前のカッコよさと言うノリだけで手に入れた。
リィンの一番好んでいる称号は[最大魚拓]
ゲームをするのは最も気楽にストレス発散できるから。