何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

50 / 94
感想誤字報告感謝茄子




竜よ.3

 

 夕食時の宣言通り、ディプスロとキリトは海上に立っていた。

 

 夕食食べて風呂入ってゲーム、時刻は大体21時の少し前。

 

 割とゲーマーならログインしている時間帯なので隠れるように新大陸の人気のない崖を駆け下り、海に立った。

 

 ジーグルもディプスロが誘ったのだが「海の上を駆ける…?」とアホ面になったので今回はラビッツに置いていくことに。

 

 うっかり落としてデスっても可哀想だしな。

 

 ひとまず人の視界に入ることが無いであろう海岸線から10㎞程離れた所で一度休憩……と行きたいところではあるが、疑似改宗[深淵]を有するキリトと違いディプスロのMPは常時減少している。

 

 人力システム外スキルからスキルへ派生したと言ってもそのマナ消費量は馬鹿にできない。

 

 曰く、何度もダウンビルドしているのでそこいらの魔法剣士よりも多いMPをしている上にMP回復アクセサリーを有しているのであまり問題ではないらしい。

 

 流石にアヴァロンの鞘を貸すわけにもいかないのでそれには助かった。

 

 ……でもアクセサリーの一部が地味に存在感を主張するエフュールのドールなんだよなぁ。

 

 

「んで、パーティー組んで適当に旧大陸向かえばいいのか?」

「らしいよ?」

 

 

 ディプスロにフレンド申請を送信し、受理したのを確認し駆け足くらいのペースで旧大陸の方へ向かう。

 

 途中に小島なんてものはない。

 

 曰く旧大陸と新大陸の間に大陸プレートが存在しているからだという。

 

 ……地震とか起きねぇのかな。

 

「今日は……露出が低いんだね」

 

 聖剣遙か夢の名残:Ⅰ(メモリー・オブ・ロンディニウム)を装備していたキリト。

 

 至布匠製の最高峰の装備である。

 

 耐久値を犠牲にMPとAGIのステータス補正がすごい。

 

 避けが基本のキリトとしては相性がいい。

 一式装備が基本になるのでそろそろドレッセリアが欲しい所。

 

 格納鍵インベントリアの改修イベどっかにない?

 

 そんな露出度めっちゃ少ない体型を大きく隠すようなTHE魔術師と言った風貌がディプスロ的になんか違うらしい。

 

「太もも出すんじゃないの?」

「出さないが?」

 

 いつまでも俺が太ももを露出するような恰好をしていると思わないで貰いたい。

 

 と言うか成人男性がそう言った趣味でもないのに太ももを露出しているのはなんか違くない?

 

「お嫁さん的に、その格好は気分が乗らない」

「ナニする訳でもないのだから問題なくない?」

「気分的PSが-25%」

「えらく具体的」

 

 まだ結婚一週間程度だと言うのに流れるように[―――(えっっっ)]な衣装で布団に潜り込んでは自爆している妻を数度目撃したキリトは、今の時代旦那もそういった方向に走らんとあかんのか?と割と真面目に考え始めた。

 

 って、ちゃうねん。

 

 今ゲーム中やぞ。

 

「―――移動で速度を出すのに便利だからこれなだけで戦闘時は変わるぞ」

「よし元気出てきた」

 

 それでええのか…?

 

 

「そういえばキリトくぅん、この大陸間どれくらいで渡ったの?」

「んー、途中ルルイアスっぽい所に引きずり込まれたの込みで一桁時間位?後半は影に潜れば早いって気が付いてな…」

「……影?あ!あの時以降一向に見せてくれないケモミミ!」

「チッ、思い出させたか」

「露骨な舌打ちやめて?」

 

 大陸間移動、アレどれくらいかかったんだっけと考えていたら余計なことを思い出させてしまった。

 

 確かにディプスロとの初邂逅時以来見せていないかもしれない。

 

 そこでキリトは妙案を思いついた。

 

「よし、ディプスロ一時停止」

「はい」

「後ろ向いて」

「ドキドキお着換えタイム?」

「違うが?」

 

 徐々に速度を落としながらディプスロに一度止まってもらい後ろを向いた彼女の髪に一つのアクセサリーを付ける。

 

 キリトの簪とは違うバレッタ状の[リュカオーンの小夜]を髪に止めた。

 

「あ、強制装備行けた」

「え、何、何が起きたの!?」

 

 するとディプスロの耳にぴょこんと小ぶりな狼耳が生え、ローブの内側を少し持ち上げるように尻尾も生えてきた。

 

「よし、これで自分でケモミミが触れるぞ」

「ふぇ!?」

 

「あとアクセサリースロット一個強制固定になってると思う。メンゴ」

「別にそれはいいんだけど、これって?」

「リュカオーンアクセサリー。簡易的にリュカオーンっぽいことが出来る」

「……ぶっ壊れぇ」

 

 もっともキリトの[リュカオーンの夜]が既にリュカオーンの一部能力の行使権であり、紗音の[リュカオーンの小夜]はさらに機能限定版の様なものになる。

 

「おそらく影渡りくらいはできるんじゃないか?」

「んー、こう?―――便利!」

 

 条件付き瞬間転移にディプスロはテンションが上がった。

 これって相手を切る時超便利じゃない?と。

 

 専業主婦以前に大学生(VR通学)の紗音は専ら活動時間は夜なので実質的にデメリットはあまりなさそうである。

 

「まぁ、今くらい月が隠れている時とか使いどころ。曇りじゃないと使いずらい所もあるな」

 

 満月の夜は正直難しい所はあるが、キリトにはそれをどうにかするアイテムがあったりする。

 まぁ、今の所出番はないだろう。

 

「それでもこれは便利だよぉ……あ、消せた」

 

 ディプスロは少し意識をすると耳と尻尾が隠せることに気が付いた。

 

「真っ暗な空間とかだと隠せないから気を付けろよ」

「りょーかい」

 

 いつの間にかケモミミと尻尾を出しているキリトと共に再び旧大陸方面へ駆け出した。

 

 ……ローブの下が尻尾で膨らんでいると言うのも中々乙だな?

 紗音はまた一つ扉を開いた。

 

 

 

 

 旧大陸と新大陸の間に差し掛かったころ、その例の真なる竜種とやつらしいものが襲い掛かって来た。

 

『真なる竜種:No.Ⅶ』

 

Advantage(アドバンテージ)

 

『参加人数:2人』

 

『竜狩りが開始されました』

 

 

「まさかラギアクルス系かぁ」

「奴が潜ったら俺がぶち上げる」

「りょーかい」

 

 と言うか俺水中が一番花の自己バフ使いやすい説ある。

 

「一番槍もら――ッ!」

 

 海中から顔を出すラギアクルスもどきにさっそくと一撃加えたディプスロは、カウンターの様に与えたダメージ以上の攻撃で反撃された。

 

「なんか映画に出てきそうなボスっぽい能力してるんですけど!?」

「こう言うのって相手が受け止めきれる以上の火力で殴るのがベターだけど」

「一応、ダメージが全く入っていないって訳じゃないけどグミ打ちして弾幕ゲーでもする?」

「ありっちゃありだけど、一発ロマンぶち込みたいとは思わん?」

「めっちゃ思う!」

 

 その発言を聞いたキリトはバッファーらしく、ディプスロにありったけのバフの準備を始める。

 インベントリアから取り出すのは[虚偶の聖杯]。

 

 [虚偶の聖杯]これは発動条件が[――状態の時]などの条件を限定的ではあるが存在すると誤認させるアイテム。

 認識情報を置き換えるだけなので、「空を海中とみなした自由移動」なんかは出来ない。

 セルフ逆境とかする時にHP満タンでもできたりする。

 

 ぶっ壊れアイテム。

 

 つまりこれを使っている間はユニークモンスターの交友の証である疑似改宗全部盛ができるって訳だ。

 

 故に、今のキリトは「晴天であり」「海上であり」「月光の魔力獲得状態である」をすべて満たすことが出来るという事。

 

 [称号【三つ星の証明】を獲得しました]

 

 体に[夜襲]のケモミミと尻尾、[深淵]の魔術回路に似たライン、[天覇]の黄金のうろこが少々。

 

 人外化が進んでる気が…。

 

 【八葉一刀流:神気合一】

 

 【加速詠唱】及び【剪定[()]】

 

「――」

「え、生歌唱?!」

 

 【霞】【杜若】【睡蓮】

 

 龍法律[激突] 龍法律[勇傑]

 

 【英雄作成】

 

「アッ、旦那様の熱いのがっ」

―――(やめーや)

 

 と言うかバフに温度ないやろ。

 

 こちらが歌って喋れないのをいいことにッ!

 

「でも、こう言うことだよねぇ―――」

 

 ディプスロ――紗音は、不定形な魔力の塊で形成されるアンダーワールドでの相棒を確かに自らの手に感じた。

 

記憶解放術(リリース・リコレクション)!」

 

 逢魔ヶ時の剣。

 

 夜を呼ぶと呼ばれた鳥の成れの果て。

 

――解放(ラグナロク)

 

 兎雪【黄昏】

 

 その相棒に似た、終わりを告げるのにふさわしいその剣。

 

 その二つをバフ盛って振るったらどれほど楽しいのだろうか。

 

「特に恨みはないけど、返せるものなら返して見なよ!」

 

 最高のBGMがあるなら負ける気はしない――

 

 

 

「アレで瞬間最大火力更新できないってなんなんだよぉ!」

「合計値的にはいけたかもしれないが、二刀流にしたことで僅かなラグで返してくるとは恐るべし」

「あいつ嫌い!」

 

 二人は最終セーブポイントであるラビッツの宿で目を覚ました。

 

 つまりはデスった。

 

 ラギアクルス擬きはまず受けた英雄作成で形成された逢魔ヶ時の剣のダメージを跳ね返し、兎雪【黄昏】の攻撃を無効化どころか過剰なダメージを返してきた。

 二刀流を完全同時に当てるか、一発の攻撃をさらなる火力で殴らなければいけないと言うことだ。

 

 推定:[それ以上の威力]もしくは[それ以上の規模]で返してくる厄介モンス。

 

 つまり、頭を使う系の竜退治。

 

 デスる直前に見た光景的には“それなりのダメージを与えることは出来ていた”

 

 まったく効いていないと言う訳ではないらしい。

 

「……デスペナ食らったから今日は寝よ?」

「そうだな」

 

 あのモンスターと遭遇するまでシンプルに時間がかかったことと、デスペナルティで一定時間のステータス低下を受けたことにより今日の再度挑戦は難しいということでログアウトすることに。

 

 アヴァロン外のモンスターにデスペナ食らったのさりげなく初めてかもしれない。

 対人ではそこそこ負けてたけど。

 

 ……7つの最強種以外のモンスターに敗北したのちょっと許せそうにないよなぁ?

 

 あのラギアクルス擬き絶対狩る。

 

 キリトはそう思いながらログアウトボタンを押した。

 

 そしてVRチェアから出ると既にベットに飛び込んでいる紗音はバタバタとしていた。

 

「久々に露骨な負け方して悔しぃ!」

「それがゲームの面白い所だろ」

「和人くんってたまにプレイスタイルマゾいよね」

「そんなことはないと思う。ちょっと負けず嫌いなだけだ」

「ちょっと……?」

「ちょっと、だ」

 

 なんか釈然としないリアクションをされたが、敗北してぐぬっている紗音をよしよしして眠りについた。

 

 




・アドバンテージ氏

 海の竜なので雑にラギアクルスっぽい姿が選ばれた。

 原作で言及あったらすまん。

 このバースではこの姿なんだ。

 描写を微修正しました。


・2024年の更新はこれでおしまい!

 また来年~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。