何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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色竜災害

 

 大規模ドラゴン狩り当日。

 

「……でるぅ?」

「やり過ごすのも手だけど後がめんどくさいよね…」

 

 和人と紗音は隣に並べたVRチェアに横になりながらどうしようかと言う話を始めた。

 

 赤竜ドゥーレッドハウルを下したものとしてディープスローターはプチお尋ね人状態。

 

 今日まで一瞬だけシャンフロにログインしては大量の伝書鳥に覆われる状態になっていたので和人と一緒にGGOをして過ごしていた。

 

 なんでこの旦那様ナチュラルにライフル弾を光剣で切り裂くかなぁ……。

 

 

「行きますかぁ」

「おー」

 

 今日はバフに徹するかと和人と紗音は本職後衛らしく後方で辻バフすることとした。

 

 

 〇

 

 

 いざと言う時の隠れ蓑、と言うことでキリトとディプスロは別々に分かれドラゴン狩りの会場である前線拠点を訪れた。

 

「やぁ、キリト氏!」

「うっわ」

「そのリアクションは傷つくんですけど!?」

「日頃の行いだよ」

「何も言えねぇ」

 

 キリトは格納鍵インベントリアに格納していたキャスターからの引継ぎ物の中からいい感じの杖を見つけたのでそれを手にしていた。

 

 [彼方に手まねく杖(ウィンズ・ロッド)

 

 バフ効果1.25倍と言うシンプルな性能。

 

 シンプルな性能のはずなのに変動機構が備えられている。

 

 ビジュはプーリンの杖。

 されど武器ジャンルは[可動剣]

 

 俗的な言い方をしよう。

 

 スラッシュアックスだ。

 

「キリト氏以前と装備違くない?」

「ああ、これはバフスタイル」

 

 キリトは[きみをいだく希望の星:L(アラウンド・カリバーン)

 キャストリアの最終再臨衣装だ。

 

 流石に胸元の穴は中のインナーで閉じている。

 

「……え、キリト氏後衛なの?」

 

「後衛のバッファー」

 

「うっそだろお前!?」

 

「メインジョブ魔術師、サブジョブ弓の完全な後衛職だぞ?」

 

「ファーッ!?」

 

 サンラクは発狂した。

 

 飢餓暴走状態でもないのに。

 

「え、うっそだろお前!後衛職で―――いや待て、前衛職とスイッチしてるとかそういうアレだろ!」

「20ちょっとまでは傭兵ジョブだったが、それ以降はずっと後衛だな」

 

 サンラクは崩れ落ちた。

 現実を受け入れられそうにないサンラクは、キリトは前衛ジョブをメインに保有していると踏んだがあっさりと否定された。

 

 え、後衛職であれクリアできるものなの?と。

 

 遠回しにPSの格の違いを思い知らされたような気がした。

 

「おーいサンラクへばってる場合じゃねぇぞー」

 

 Orz態勢のサンラクをオイカッツォが蹴り飛ばした。

 

「ってぇな何すんだカッツォ!」

「始まってんぞ、大規模ドラゴン狩り」

「う、嘘だr―――って、キリト氏いない!?」

 

 カッツォの姿を確認し、サンラクの視界外に移動できることを察したキリトは既にその場にいなかった。

 

 

 〇

 

 

「あ、キリトちょうどいい所にバフお願い」

「はいよー」

 

「キリト、良い所にバフを!」

「はいよー」

 

 キリトは逃げた先でアリスとユージオに捕まりバフ掛け。

 

 英雄作成で暴れている二人を尻目に、退散。

 

 気分は辻バッファー。

 

 

 

 適当にバフ重ねても大丈夫そうなプレイヤーにバフ投げて退散を繰り返し、たまに辻回復。

 

 

 そして天覇のジークヴルムの元へたどり着いた。

 

「あーこういう感じねぇ」

 

 

[他のプレイヤーが攻略中です、この先進行することはできません]

 

 

 キリトは目の前に現れたウィンドウに挑めないことの意味を察した。

 

 

「あー、こっちのジークヴルムにも認めてもらう機会ロストかぁ」

 

 キリトはちょっとふてくされながら、これ以上求める成果はなさそうだと前線拠点を後にした。

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 キリトは人のいないであろう前線拠点近の海辺へ来た。

 

 青春よろしくAnotherクエストのバカヤロー!と叫びたい気持ちを込めて大きく息を吸い込むと声がした。

 

 

『エクストラオーダー対象確認。招集を行います』

 

 

 大きく吐き出す叫びは音になることはなく、キリトは忽然とその場から姿を消した。

 

 

 

『ようこそ花の魔術師様。こちら、恒星間航行バハムート級アーコロジーシップ「リヴァイアサン」! 』

 

 

 かんたんクターニッド以来の海底へ引き込まれての誘拐と言った方が正しいだろうか。

 

 

『こんにちは! 改めて自己紹介しますね! 私は「勇魚」! イレギュラータイプAIではありますがこのリヴァイアサンの電脳統括担当者に任命されたアンコントロールアーティフィシャルインテリジェンスです! 長らく前リヴァイアサン代理指揮者ジュリウス・シャングリラ様のご命令により深海直下2万マイル地点で回収操作及び定期的なマナ粒子の変動観測をしていましたが、ドローンにて対象を確認したため、急遽エクストラオーダーを実行しました!』

 

 

 つまり、である。

 

 

『開示情報を制限した遺跡レガシーモードでの開放ではなく、深海直下2万マイル地点での招待となりますので情報開示制限は行われておりません!中央へお進みください!』

 

 

 

 え、俺またユニークシナリオEXの顛末見れない感じ?

 

 

『ただし、花の証明。それが貴方の義務となります!』

 

 

 明らかに次のステップに先に足を踏み入れているはずなのに、どうしようもない虚無感。

 

 キリトはその場でOrzとなり、暫らく立ち直れそうになかった。

 

 

「マスター大丈夫?」

 

「ふぁ!?」

 

 

 本来格納鍵インベントリアに収納されているアインスが知らぬ間に出てきたことにキリトはものすごく驚いた。

 

 蛸に海に引きずり込まれる3倍は驚いた。

 

 

「簡単に説明すると高出力の通信補強施設……アーコロジーシップ内ならインベントリアから勝手にでてくることが出来る」

 

「そ、そうか」

 

 

『アインス様!お久しぶりでございます!今代は堅物の「象牙」の処よりも先にこのリヴァイアサンへときてくださったのですね!』

 

「流れで」

 

 

『そんなことはどうでもいいのです!「象牙」の処よりも先、それが重要なのです。向こうが征服人形の本場ですが、こちらに先に来てくださったのですから!この「勇魚」にお任せを!これより工廠を限定稼働して征服人形向けコンテンツの作成に取り掛かります!』

 

「ほどほどにね」

 

『ハイ!』

 

 

 おーい、俺かなり置いてけぼり食らってるんですけどー。

 

 

 

「証明、ねぇ。五つの証明開始」

 

 一息ついて落ち着いたキリトは一つ息を吐くと虚偶の聖杯を取り出し、疑似改宗五つがけを行った。

 

『御見それしました!今代も確かに花の魔術師は機能していることを確認いたしました!』

 

 ……また花の魔術師の疑問が深まったなおい。

 

『それでは今代の花の魔術師様にアンバージャックパス:FREEを付与いたします。これでリヴァイアサンのどこにでもあなたは向かうことが出来ます!どうぞ中央へ向かいながらお楽しみください!』

 

 …………えぇ?

 

 こう言うのってもうちょっとあるじゃんアゼルバイジャン。

 

「あー勇魚、此処でなんか戦闘とかできないの?」

『もちろん、と言いたいところですが、花の魔術師様の全力を振るわれますと当機の安全性を保障できるものではありませんので条件付きです。証明を振るわない形でしたら可能ですよ!』

「あー、了解。ユニークモンスター並みいる?」

『ふふ、流石にユニークモンスターとまではいきませんが…勇魚の特別生産モンスターの元へお送りいたしますね!』

 

 キリトは、とりあえずこのフラストレーションどうにかしたいと、勇魚に問いかけると可能だと言うのでひと狩りすることに―――あ、伝書鳥。

 

――――

 ディープスローター

 

 あれ、旦那様どこ行ったの!?

 妻を放置ですか!?

 なんか、ちょっと色々質問攻めがすごいんですけどぉ?

 

――――

 

――――

 キリト

 

 ユニークキャンセル食らったのでバハムートで暴れてきます

 

――――

 

 ……これでええやろ。

 

「勇魚、案内頼む」

『了解しました!ここで一番耐久値高いエリアへご案内しますね!』

 

 キリトは勇魚の後に続き、リヴァイアサンの戦闘可能エリアまで案内されて行った。

 




・ジークヴルムキャンセル。

 現実は時として非情。

 アヴァロンで戦いましょう。

 
・リヴァイアサン

 ふてくされた結果たどり着くのがユーザーが確認できないであろうモードのリヴァイアサンってなんやねん。

 最深部には花の魔術師に関する資料がいっぱい。ただしアヴァロンの鞘を保有していることが閲覧条件。

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