何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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感想誤字報告感謝茄子。



GH社襲来

 

 鳴坂和人の顔はとても渋い。

 

 面倒ごとが120%起こる、そんな気がしている。

 

「日野さんだっけ?『博士に過度な迷惑をかけることはこれっきりです』って言ったよな?自分で言ったこと反故にすんの?」

 

 カムラ社応接室にて和人は深々と頭を下げる日野を尻目にソファーに足を組みながら雑な対応をしていた。

 

 和人は相手が自分で言いだしたことを曲げてくるのが嫌いだ。

 

 こちらからの提案だったのであれば巡り合わせが悪かった、とすんなり引き下がる。

 

 覆水盆に返らず、吐いた唾は飲み込めない。

 

 それが心情にある和人は基本的に明確なことを言葉にするのが苦手だ。

 

「と言うか、クリアしたなら資料見たんだろ?それを元に作ればいいだろ」

 

 故に和人から出した案としてゲームをクリアしたのなら設定資料集を見つけたはずだ。

 

 後はそれを利用してゲームに実装でもすればいい。

 

 では何故、GH社の日野が今日ここに来ているのか、だ。

 

『博士の作成した3Dモデルを使いたい』

 

 である。何ならうまい事がっちゃんこできませんか、と。

 

 閑散としている時期なら多少の対応はするが時期が時期。

 

 和人としても色々な案件が重なってそこまでの余裕はない。

 

 残業?クソくらえだ。定時出勤、定時退社それが和人の好きな言葉である。

 

「自分で作ってください」

 

 ゲームを起動したときのメニュー画面から資料を確認はできるはずだ。

 

「せめて録画機能とか!」

 

 そういえば特典資料の記録不可にしていたっけか。

 

 体感数年前だから完全に忘れてた。

 

「あー、はい。紙の資料コピー機とかスキャナー通したら消えるインクで写真でとってもバグる仕様だけど」

 

 和人謹製紙資料。ウォーターマークのすんごいバージョン。

 情報流出の可能性を小さくしました。

 

「……情報管理が強すぎるッ!」

 

「え、要らないならそう言ってくださいよ。あ、これシュレッd―――」

 

「そうはいっておりません!」

 

「あ、ゲームもコピーしようとするとそれにまつわるもん全部消えるから」

「―――コヒュッ」

 

「作り終わったら返却してくださいね。以上」

 

 日野は冷や汗だらっだらだった。

 

 本日中に博士から預かったソフトを返却予定だった。

 

 資料がないならソフトを増やせばいいのでは?と言う馬鹿がいたのでぶん殴ったところだったからだ。

 

 あのソフト起動時毎に3つの禁止事項が映画上映前警告の様に表示されていたことを日野は知っていたからである。

 

 “ゲームソフトのコピーダメ”

 

 “本ゲーム情報のインターネット流出ダメ”

 

 “許可なき営利目的による利用ダメ”

 

 ……あのバカ殴って止めてなかったらどうなってたのか。

 

 日野は心の底から安堵した。

 

 その後日野はアメリカに飛び、シャンフロエンジンのサーバーに情報を渡すためにスキャナー読み込みをしようとしたボブも殴り飛ばした。

 

 トレースでも情報が飛びそうになったので、写本の様に絵の巧い奴を日本からひっぱって頑張った。

 

 自力で作れって話だと言ってんだろうが!

 

 その後、アメリカのお偉い感じの六角形の住民もその情報保護技術に興味津々でやってきたが「貴様らに渡すものは何もない!」と日野が啖呵を切り、GH本社ではヒノ・サムライと言う愛称がついたのは別の話。

 

 原本としてその資料はGH社の一番セキュリティの高い所に保管されるようになった。

 

 数ヶ月くらい後、仕事が少し落ち着いた和人の謹製3Dヒーローモデルが手に入るチャンスがあったことは誰も知らない。

 

 

 それはそれとしてstar rainからの熱いファンレター(ムービー)が和人に渡された。

 わちゃわちゃしすぎて何言ってんのかわからなかったが。

 

 

 〇

 

 

 ARスポーツのプログラミング難易度ォ!と言う意見を「これをこうしてこうじゃ」と黙らせ、今日も華麗に定時退社を決めた和人はしれっと遊びに来ていた真登香が門河女中に貢がれているのを眺め、風呂に乱入しようとしてくる妻(防水メカ義肢装着)を「妹が来てるんで自重しようか」と止め、シャンフロにインした。

 

 

「マスターマスター、コレ!ひ、人のいないところで読んでね!」

「……ナニコレ」

 

 キリトはシャンフロ内で一番最初に目にしたのはラブレターを渡す小学生の様なノリで手渡された封筒に当然の様に疑問を浮かべた。

 

「プロトコル「オルケストラ」における設定条件を満たしたので。「ライブ」への招待状がマスター宛てに発行されました。簡単に言えばオルケストラへの挑戦権」

「……そういう感じなのね」

 

 キリトがツッコミを入れると普通に教えてくれた。

 

「ちなみに、一定以上強くて、征服人形と契約していて、神代の知識をそれなりに有していることが基本条件みたい」

「挑戦できるのすっごい限られてるやつぅ」

 

 ……ディプスロには情報流しておこう。

 

 どうにも一人で挑戦するタイプらしい。

 

 キリトは知る由もないが『オルケストラ』と言うだけあってオーケストラの意が含まれており、招待状として機能させるのであれば『コンサート』が正しい。

 それなのにライブである。

 

「と言うかアインスは番外魔法少女じゃなかったっけか」

「征服人形リストには登録されてるから、オルケストラの招待状を渡すこともできるんだよ」

 

 そんなのあるの?

 

 ……そういえば魔法少女姿で全力でキラッ☆したのを征服人形ネットワークで流したとか言ってた気もするわ。

 

 一周回って魔法少女姿なら身バレしないでゲームができる、とゆるーく考えていたがコレ、世間にバレたら切腹案件では?

 

 とりあえず、封筒の中身をちらり。

 

 

 

 ―――

 

 お元気でしょうか。

 

 私は今日も音楽を誰かに届けることを夢に見ています。

 

 この度、花園の私より新譜の自慢をされ大変悔しい思いをしています。

 

 それに対して私は考えました。対バン、歌合戦をしましょう。

 

 そうすれば内包された我々の思いを願いを少しだけ叶えることができると思うのです。

 

 時間の都合が付くようでしたら、アルバム引っ提げて会場へぜひお越しください。

 

 ──ポケットアリアG型10-82119

 

 ―――

 

 

 なんか思ってたんと違うなぁ…?

 

 対バンのお誘いとは…?

 

 

[ユニークシナリオEXの条件を達成しました]

 

[ユニークシナリオEX「あなたと広げる旋律歌」を開始しますか?]

 

 

 まぁ、開始しないとAnotherシナリオが進行しないらしいのでするけど。

 

 

[称号【ミュージックマスター】の特定エリアのBGM変更権限が追加付与されました]

 

[指定エリア〔冥響のオルケストラ〕]

 

 

「リヴァイアサン内に収録ブースを確保したよ。行こう?」

 

「準備がいいなこの野郎」

 

「そう褒めないで」

 

 なんか思ってたんと違うなぁ!

 

 

 本来のシナリオであれば戦闘が行われる。

 本来であれば最終楽章までの戦闘リザルトで偽典、正典の判断がサーバーAIによって行われる。

 

 だが、キリトはとあるサーバー内を飛び回るデータ系ガワ転の影響により、開始前に外典(・・)を選択させられていたことを知らない。

 

 

 外典:夢舞台(ライブステージ)

 

 外典とは、聖書におさめる主張もあったが、正典から除外された文書群を指す言葉。

 

 それはアンドリュー・ジッタードールによる「神代の文化を知ってほしい」という意思がオルケストラに強く影響し、色濃く表れた姿でもある。

 

 

 限りなく異色であることを知らぬまま、キリトは初めてのユニークシナリオEX体験をすることとなる。

 

 




・言葉が足りない鳴坂博士

「(今は仕事がゲロ忙しいので)自分で作ってください」
「(あ、資料渡せば自社作成する気はあるんだ。楽できてよかったー、数ヶ月くらい後なら提供できたかもしれんけど)」


・あったかもしれない世界線

 GH社、ソフトをコピってKZTブチギレ☆

 俺のソフトにあったもんは全部消すけど。

 あ?ヒーローを扱う会社としてのプライドってもんがねぇじゃん。

 そんな会社に渡すもんはねぇよ。

 クリア特典だ、テメェらの記憶の中のもんを参考に作ればいいんじゃねぇの?

 リアルミーティアス
「博士が情報を預けるに足りるヒーローかどうか見極めて欲しい」

 KZT
「テメェのフィールドで泣かせてやる」

 日野の拳が真っ赤に燃えたので、この√は消えました。


・この世界線の神代の一幕

 アンドリュー・ジッタードール
「シュテルンブルームのライブを新文明に見せいないとか世界の損失(クソデカボイス)」

 キャスター
「いつか征服人形交えての対バンとか起きるかもしれないじゃん」

 アンドリュー・ジッタードール
「くっ、その頃私は確実に死んで―――よし、フルトレースAIを作ろう。そうすれば私は確実にその光景を目撃することが出来る!」

 キャスター
「行動力ぅ」
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