何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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感想誤字報告感謝茄子

予約投稿したつもりになって日付間違えていたぜ…

タイトルに深い意味はないぜ…


いいえ、一本釣りです

 

 鳴坂和人と言う男は諦めると言うことをあまり好まない。

 

 

 だが、許容キャパを超えるとぶん投げそうになったりする。

 

 中々濃度高めな人生を送って来たお陰でそのキャパは思いのほか広い。

 

 掲示板での喧騒などフルダイブVRが出てきた当初の関係に比べれば随分と可愛いものだ。

 

 社会人的な側面を有しているので、めんどくさくてぶん投げたくても最低限の仕事はする。

 

 

 私生活とすればそれはもう適当だ。

 

 大まかに超えないラインを決めて、そのライン手前まではとことん自由気ままにする。

 

 

 現実と切り離したようなゲームの中では特に。

 

 

「伝書鳥攻撃がえぐい」

 

「サンラク君〆てこようか?」

 

「サンラクはアレだ、自分の身内が大変ご迷惑かけそうと言う謝罪メール」

 

「他は?」

 

「アーサーペンシルゴン」

 

「やっぱ〆よっか」

 

「別に良いさ。自分が手を伸ばせば届くところで足踏みしてらんないのがゲーマーって生き物なんだから。現実世界に波及して業界のイメージダウンの方が俺的にはきついよ」

 

「流石単身メーカー凸した男は言うことが違う」

 

「オンゲをサ終させたお前には負ける」

 

「もー!モー!人の黒歴史を掘り返さないでよ!」

 

「HAHAHA☆」

 

 最近ログインと同時に良く伝書鳥がやってくる光景に慣れつつある自分が居る。

 

「で、本当の所は?」

 

「え、全部ぶん投げたい」

 

「だよねぇ」

 

 あーなんであんなイベント一つで面倒ごと起きるかなぁ。

 

 それでもシャンフロにインしているのは最低限尻ぬぐってリベンジをするためである。

 

 ゲームは楽しくするもんだ。

 

 マナー違反は通報、もしくは無視。これに限る。

 

 放っておくと相手が増長してくる?

 

 それはプレイヤーの仕事ではなく運営の仕事だ。

 

 プレイとワークは違うのだ。

 

 運営が迅速に動いてくれることを祈りましょう。

 

 時に運営へメッセージアタックも止む無し。

 

 語尾に“べき”とつくような物事は大抵自己満足なんだから、悪いことしてる訳でもねぇのにとやかく言ってくる方が悪い。

 

 押し付けは良くない、以上。

 

 

「じゃ、その交渉の場、私が貰っていい?」

 

「…?」

 

「ちょっとダークサイドに降りたい時もあるんだよ」

 

 

 やや虚無気味に群れてる鳥に「老後はこれになりたい」と思いながら適当に餌を撒いていると、ディプスロが提案する。

 

 

「ほどほどにしとけ…?」

 

「もちろん。人間正論で殴られるときが一番ムカつくからねぇ」

 

 

 

 キリト的に使い道のないフィールドなら、まぁ。

 

 そんな気持ちでディプスロに弁護を投げたのはちょっと早まったかもしれない。

 

 

 

 〇

 

 

 

「どうも、弁護人のディープスローターです」

 

「私が用あるの、そこの彼なんだけど?」

 

 

 指定されたのは新大陸の拠点に誕生したという蛇の林檎新大陸支店の一角。

 

 相手サイドにはアーサーペンシルゴン、サンラク、サイガ-0、オイカッツォ。

 

 

「多勢に無勢、そっち戦力過多だから別に一人弁護枠いても構わないよねぇ?」

 

「ちっ」

 

 流石にシャンフロのプレイヤー内で最も高い攻撃を持つプレイヤーを近くに立たせておいて、過剰戦力ではないなどとは言えない。

 

 

「ワオ、態度わるぅ」

 

 

 相手サイドのサンラクとサイガ‐0の表情はだいぶぎこちない。

 

 彼らの内情とすれば

“アイエエエ!?ディープスローター!?ディープスローターナンデ!?”

 

 よりにも寄って悪辣に悪辣ぶつけるとかやべえよ、やべえよ。

 

 そんだけのこと………割としているかもしれない。

 

 サンラクはその場で頭を抱えて膝を着いた。

 

 サイガ‐0は手で顔を覆った。

 

 頼むから平和な、平和な交渉をしてください!

 高校生カップルの内情は切実にそう願った。

 

 それをオイカッツォはなんだこいつらと言う目線を向けた。

 

 

「ん゛、ごめんなさい。急に投げキッスの練習したくなっちゃって」

 

「媚び売っても何にも起きないよぉ?」

 

 

 ひどい言い訳ではあるが、さっきの舌打ち音はリップノイズだという誤魔化をペンシルゴンは行った。

 三馬鹿内であれば「こいつぅ」で済んだかもしれないが、相手が悪かった。

 

 誤魔化すような投げキッスのモーション付きの誤魔化しだったのが猶更だ。

 

 ディプスロの笑顔がちょっと死んだ。

 

 ふーん、人の旦那に媚び売るとかさぁ、喧嘩売ってるんだ。へぇ。

 

 それを感知したのかオイカッツォはなんか気温が下がったような気がした。

 

 

「それでぇ?どんなぁ内容の交渉する気ぃ?」

 

「墓守のウェザエモンについての情報が欲しい」

 

「対価は?」

 

「そちらの提案を概ね飲むわ」

 

「ふーん?どうしますー?」

 

 

『好きにして』

 

 

 机を挟んでペンシルゴンとディプスロが向き合い、ディプスロとキリトとの間のやり取りは外部メール経由だ。

 

 「相手からしたら拾える情報は何でも上げ足取ってくるかもしれないからポーカーフェイスよろしくぅ」とディプスロに言われているためキリトは基本置物だ。

 

 

「とりあえず、交渉は全面私に預けられたんだけど。……そうだなぁ、具体的に何が知りたいのか分からないと、こちらも判定できないなぁ」

 

「それに関しては私たちが有している知識との被りが有ったら嫌だから、どんなことを知っているか例を挙げて貰えない?」

 

「わぉ、流れるように情報絞ろうとしてくるねぇ。まぁ良いけど」

 

 

『適当に物出すか…?』

 

『それは大盤振る舞い過ぎない?』

 

『まぁ、そもそもエンジョイ勢で情報に固執してる訳じゃないからなぁ』

 

『あー、そう言えばそうだったねぇ。面倒ごと投げる方向にしちゃおっか』

 

『任せる』

 

『はーい』

 

 

 大前提として、キリトは情報に固執している訳ではない。

 

 情報のレア度を明確に理解している訳でもなく、どちらかと言うと時間的拘束をされることにめんどくささを感じて不機嫌になっているだけである。

 

 とりあえず、キリトに突っかかってくるめんどくさそうな団体の受け口を担当してもらう形にでもして貰おうかと言う方面で話を進めることにした。

 

 キリトはなんか使えそうな情報一覧を思考入力でばっとディプスロに送りつけた。

 

「えーと、ナニコレ……アマツキセツナとウェザエモンのイチャコラ写真集?」

 

「乗った」

 

「えぇ…?」

 

 ディプスロがその情報一覧からいい感じに使えそうなものを探していると、よく分からないものが視界に入ったので声を上げると、こちらが明確な何を要求する前にペンシルゴンはそれに乗った。

 

 ペンシルゴンが何時ぞやの“大局的な視点を持たなきゃだめだよ”なんて言葉は何処へやら。

 

 ウェザエモンの情報をペンシルゴンが欲するのは、偏に“セツナ”に関する情報の欠片でもあればと言う物だ。

 

 色々と情報を欲する中で、アマツキセツナとウェザエモンのイチャコラ写真集はペンシルゴンを一本釣りするには十分すぎる情報であった。

 

 

 過度な情報の引き出しよりも定期的な供給が可能。

 こいつはセツナの情報を明確に持っているという事。

 

 何より今後も定期的に情報を手に入れる可能性が非常に大きいと言うことだ。

 

 

 ペンシルゴンは旅狼の軍師的立ち位置から僅かに満たない時間から導き出した答えがそれである。 

 

 情報源はサヨナラバイバイをあっさりするタイプなら、パイプの維持は必須。

 

 弁護人を立てている時点でサクッと関係を切る気は大いにあり得る。

 

 故に最適解は、その条件を飲むことだ。

 

 

「とりあえず先に条件投げるねぇ。後からいやいや言われてもめんどくさいしぃ?」

 

「わかった」

 

 

 オイカッツォはその光景を見て一言。

 

 初手偶然クリティカル出されちゃったかぁ。

 

 

 ディプスロから出された条件は最大防御を獲得したキリトに関する情報の窓口を担当すること。

 いちいちこっちに突っかかられては面倒なため。

 

 それに関しては旅狼が情報を最速で握れるという面では問題なし。

 

 むしろ多くの情報を引き出す手札にすらなりえる。

 

 で、追加の情報に関してはセーブした実績に応じたお支払いと言うことになった。

 

 

 手付金としてウェザエモンとセツナのイチャコラ写真集が手渡された。

 

 

 キリトとディプスロの心情としては「これでいいんだ…?」と言う、思いのほかあっさりと済んだ交渉の場に肩透かし。

 

 高校生カップルは、至極平和に済んだことにとても感謝した。

 

 

 

 〇

 

 

 

 交渉会場から離れ、天覇のジークヴルムの件でディプスロと約束をしていたクエストの受注、深淵のクターニッドに挑戦するため、フィフティシアに移動した二人は先程の出来事について雑談をしていた。

 

 

「面倒ごとは投げたねぇ」

 

「アレで釣れるって言うことは、アレか……彼女はアマツキセツナガチ勢なのかもしれない」

 

「え、そんなすごいキャラなの?」

 

「墓守のウェザエモンと言うユニークモンスターに深く関わっていたNPC。思い入れが深いんじゃないか?彼女も討伐メンバーの一人だったと聞く」

 

「んー、嗚呼。そういえばアーサーペンシルゴンって阿修羅会のNo.2だったっけ。墓守のウェザエモンは阿修羅会が独占して握っていたから……ウェザエモン討伐する経緯としてそのNPCが関わっていたとか、そんなところかもねぇ」

 

「そこらへんは知らないけど。筆頭としてめんどくさそうなライブラリに対して“そこら辺の回答に関しては旅狼が握っている”と逃げれるようになったのがデカいことは確かだ」

 

「この船に乗る時もライブラリのキョージュが荒ぶってたもんねぇ」

 

 

 二人が今立っているのは深淵のクターニッドに挑むための船の上。

 

 乗り込む際にディプスロに用のあったキョージュが出待ち。

 そこに最大防御を獲得したキリトが居たからさぁ大変。

 

 逆に言えば、大手クランに拒否をできるだけの何かが存在すると不特定多数の前で宣言できたことが大きい。

 

 それなりの抑止力にはなるだろう。

 

 

「それをあっさりと納得させる旅狼、一体どんなやべぇことをしていたんだ…?」

 

「考えすぎだと思うよ」

 

 

 そもそもウェザエモンに関しても「旅狼の方が一杯情報握っているのでは?」と今更ながらキリトはぼんやりと水平線を眺めながら考えていた。

 

 ま、リヴァイアサンの中央部到達すれば大体わかるだろ、と思考を投げた。

 

 




 Q.なんで旅狼のメンツ厳ついの?

 A.用心棒(交渉がぐだったら実力行使も厭わない気があったため)

 まぁ、そうなったら未知の情報の濁流で大変なことになった後、それを手に入れる交渉手段とバイバイしていた訳ですけど。


・交渉の場で暴れられなくて欲求不満ディプスロさん。

 蛸にそのストレスをぶつかるために旦那に面白い武器貸して?とおねだりする。


・ディプスロさん、よく2人で深淵のクターニッドに挑める権利ゲットしたね。

 赤竜の情報にぎにぎええ感じにして
「その挑むメンバーの決定権私にくれたら、自由なスキル作れるところ教えちゃうのになぁ」
 と創流道場情報でゲッツした。

 とても情報が制限される環境に最大防御が入ってく光景にライブラリのキョージュはメンバーをねじ込もうとしたが断られてぐぬった。


・アマツキセツナとウェザエモンのイチャコラ写真集
 
 撮影場所:アヴァロン内で更に切り取られたセツナラボの一角。

 印刷場所:リヴァイアサン

 Next報酬:機装.ver-Dr.アマツキ護身モデル(予定)
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