何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
本日の予約投稿分2/3
「ルービーちゃんの攻撃ィ!相手は死す!」
「ふ、甘い!」
インベントリアに入って早々、愉快型戦術機の攻撃
しかし当たらなかった
「二度も同じ手を食らうと思うなよ」
「くっ、ルビーちゃん不覚!」
ちょっと放置かましたらぶちギレおる・・・
「で、やっと着いたんですか?秘匿の花園。あそこ満月の夜しか入れなかったと思うんですけど」
「知ってたら先に言わんかい!」
「うっかりうっかり☆って、まだ一か月たってないのでは?」
「あー今ラビッツでいい空間教えてもらってそこから格納鍵にアクセスしてる」
本当にこの愉快型戦術機重要な情報をすごい勢いでゲロってる…
「……あれ、もしかして開拓者の皆さんすでに新大陸行ってらっしゃいます?」
「新大陸行の船が出始めたくらいだな……と言うことはラビッツは新大陸にあるってことか」
やっぱこいつ外出したら周囲にとんでもない混乱招きそうだから封印しなきゃだめでは?
「っと、そんなことよりさっさとアヴァロン行きますよ、ルビーちゃんのチャージエネルギー切れそうなので!」
「……充電式か」
「あ、今効率よく私を静かにさせようとしましたね!?私がいないとアヴァロンに簡単に行けないこと忘れてませんか!?」
「ワスレテナイヨ~」
プンスカと怒るルビーを手に取り、格納空間から外に出た。
「もう怒りました。ルビーちゃん怒ったので超キュートなポーズ取らないとアヴァロンに行きませんからね!規格外戦術機のエーテルリアクターチャージで困ればいいんです!」
「そこはヴァッシュに頼るから…」
「逃げ道ィ!」
そういいながら周辺のズレを覚え、アヴァロンへ移動した。
アヴァロンに降り立ったそこはウェザエモンの話をしていたウサギの所だと思われる。
そこにいたのは推定若い姿のヴァッシュ。
何かを作っているようで、鎚を振り下ろしていた。
「……手前、リラックスしすぎじゃねぇか。待ってろとは言ったが」
「めんごめんご」
灰色の苦労人気質を思わせるようなオーラを纏っていた彼にそこ座ってろと言われたので近場に腰かけていたのだが、作業を終えたらしい若ヴァッシュはどこか呆れ顔だった。
「誠意ってもんがまるで見受けられん。花の継承者はどいつもこいつもこんなんなのか」
「そういう割にはすっごい自然にお茶出してくれるじゃん」
「―――はッ!?」
若ヴァッシュは「あれか、あれに汚染されちまってんのか」と頭を抱えた。
このアヴァロンにはキリト以上の自由人が存在するらしい。
「はぁ、手前の要件は?」
「ウェザエモンに“兎に武器を作ってもらうといい”と言われて来た」
「あー。あのダジャレ侍こっちに寄こしたか」
「あっちのヴァッシュに洋弓貰ったからいい感じの剣欲しいんだけど」
「んじゃワレ‼手前も武器とばすアホンダラけ!」
「武器だけじゃない。なんでも飛ばすよ」
そういいながら装備欄から黒弓とアヴァロンの鞘を取り出す。
「鞘は飛ばすもんじゃないわワレぇ!」
「じゃ、なんかいい感じのくださいな」
「じゃってなんだ、じゃって!」
……からかうとすっごいノリよく返してくれるぞこの兎。
「あー、花の継承者だけじゃなくてあれの継承者でもあったか」
「何やらかしたの本家」
「茶一杯の時間じゃ足らんわ」
そういいつつ、茶はもてなしてくれるんだ…
「あれの継承者っちゅうことなら【格納鍵インベントリア】も受け取ってんだろ」
「え、うん」
「片っ端から出せ。長く放置した武器は鈍っちょる」
「あ、はい」
「それを再生させてやる」
「お、おう」
インベントリア内の武器を復旧してくれるらしい。
それまでにある程度仕上げておいてやる。
そういうヴァッシュに促されるまま、インベントリアから武器を取り出してはまた入り……
「あ、MP切れた。ポーションない?」
「アヴァロンの鞘あるだろ。装備しとけ」
「あ、その手があった」
ほんのちょっと待てばインベントリアを移動するだけのMPは回復した。
……便利アイテムアヴァロンの鞘。
インベントリア内の武器はそう多くなく、3回ほどの出入りで出し切ることができた。
「とりあえずこれ使ってあっちの歌姫認めさせてこい」
「わかった」
その間には再生しておく、若ヴァッシュに言われるまま次の木へ向かうことに。
……随分と話がスムーズに済んだ。
ラビッツにいた時の反動とはいえだいぶちゃらんぽらんな対応でよく首をはねられなかったな俺。
次の木に向かって2里程。
「あの、マスター(予定)さん。そろそろ私にリアクションください」
だいぶ、と言うかかなり積極的にスルーを決め込んでいたのだが、ついに話しかけられてしまった。
その声の主は右後方。
インベントリアから出入りしているときに何食わぬ顔で愉快型戦術機を手にした身長140㎝程の銀髪の少女。
「私は征服人形アインス型01番。そろそろ契約してほしいです」
「……お、おう」
「肯定だね。言質取ったから!」
そう元気な少女、征服人形?の彼女はアインスと言うらしい。
「あ、このルビーの取り扱いは任せて」
「お、おう」
なんか名前の響き的に量産機っぽいし、人形と言うかホムンクルス感を覚えてしまうと言うか色々ツッコミを入れたい。
入れたいがスルーを決め込むのが今のところいい気がする。
すっごいナチュラルにルビー握りしめてるのがとても様になってる。
「あ、契約のため血をちょっともらうね」
そういって彼女は抱きつき首筋に歯を立ててきた。
……吸血スタイル、バンパイア、死徒…う、頭が。
「ふぅ、これにて契約完了。よろしくねマスター」
「お、おう」
「どうしたのマスター、BOTってやつですか?」
「違うが?」
「アインスさん、美少女免疫低そうなマスターなので優しくしてあげましょう」
「そっか」
「違うが?」
やっぱりぼっとだ。
なんていうアインスと、失礼なことを言うルビーに心労が二倍になった気さえする。
「あれだ、とりあえず説明を求む」
「はいはーい!ルビーちゃんのわかりやすい征服人形講座始めますね!」
変な頭痛を覚えながらルビーに説明を求むと征服人形について解説してくれた。
征服人形(コンキスタ・ドール)
〈再征服計画〉
・来たる危機に対応するための次世代人類のサポート計画。
〈蒐集計画〉
・人類の争いになりそうなものはしまっちゃおうね計画。
の二つの計画を主軸として自身に合う契約者を探し、契約を行うサポーター。
他にも歌姫オルケストラ案件で招待状を届けるためにも動くという。
「まぁ、アインスさんはそこら辺全く関係なくて変態と変態の奇跡のコラボレーションで生まれた番外魔法少女です。私を使って戦闘サポートをしてくれるものだと思ってください」
「おい、前置き」
「いざという時対外的な説明は必要でしょう?」
「それはそう」
ルビーちゃん天才なので、と言う発言はスルーしておく。
戦闘補助、ピクシーの上位版のような認識でいればいいのだろうか。
「一つ言えるのはルビーちゃんを扱えるのはマスターかアインスさんのみ、と言うことです」
「そういえばルビーの本体とか、そこら辺の説明も頼む」
「あ、インベントリアの中からルビーの本体出しますね」
アインスが補助するようにインベントリアの中に潜っていき、デッキケースのようなものを持ってきた。
―――あ、まさか。
「あ、察しましたね?そうです。クラスカード……いろいろな制約の都合上非常に限定的ですがマスターが認めさせた7体のスタイルを模倣し戦闘することができます」
元の七騎にすると魔術師枠が、と前マスターはキレていたとのこと。
「んー、とりあえず現状はウェザエモンさんのクラス〈侍〉のみみたいですね」
「実演するね。【再・征服換装〈侍〉】」
そういうとアインスは一枚のカードをルビーに翳した。
すでに身に着けていたプリヤな学生服のような衣装からセイバーリリィの装備を和テイストに変えメカメカしくアレンジしたような衣装に。原型をうっすら感じる匠の技。
武器は武骨な3尺ほどの刀……のはずが鍔の所にルビーが混ざっているのでメカ魔法少女の変身だな、と認識できる。
「マスター、こんな感じ」
「なんかいいな」
「私は〈兎〉が破壊力高くて好き」
「……おう」
……さりげなく物騒だ!?
と言うか前所有者の時に一度すべてのスタイルを試したんだな。
「あ。そうだ。基礎の【征服換装】も見せるね」
アインスは刀形態のルビーを構え、【征服換装】と唱えた。
すると現れたのは魔法少女。
当然のようにメカテイストのところどころにパーツの多い魔法少女衣装になった。
……やっぱり雰囲気プリヤじゃねぇか!?
前任者の自由っぷりに、これってシャンフロっていうファンタジー感強めの作品でしたよね、と頭を抱えた。
いや、まて。
これ俺にも使えるってことだよな。
まっさか魔法少女になるわけない……ないよな?
成人男性がまっさかねぇ?
GGOのM9000番と言う美少女フェイスを搭載しているとはいえ魔法少女はきついでしょ。
「マスター安心して。前マスターも男の人だったけどタコさんのおかげで変身中は可愛い女の子になってたから」
「慈悲がない!?」
「ルビーにいくつか搭載された聖杯システムのフル活用だって」
ここで聖杯まで出てくるの?
うそでしょ?
時間的には5時間もたっていないうちに地面に打ちひしがれることになるとは思わなかった。
キリトは邪知暴虐な前マスターとやらに一発こぶしを入れなければ気がすまなくなってきていた。
タコももちろん殴る。
キリトはそう決意し、改めて次の木の方へ歩き出した。
〇
次の木下には舞台があった。
その脇には屋外の小洒落たバーのようなカウンターが存在する。
常春のアヴァロンでなくては成り立たない。そんな配置だ。
そして、だんだんとズレている。
魔法とファンタジーな世界だと思っていたこのシャングリラフロンティアは実のところだいぶSFに足を突っ込んでいるのではないか、と。
最初に世界観情報くらい集めておけよと言う話ではあるがキリトは何も知らない未知の状態でこの世界に飛び込んでいる。
外部的補助情報以外はゲーム内で見つけるのが筋だと思っているからだ。
誰も、誰もいない。
歌姫と若ヴァッシュが形容していたから歌で群衆を操るタイプのやつではなかろうか。そう見立てを立てていたのでとても不思議な感覚であった。
「マスター。オーダーを“何か私っぽいカクテル”」
「……わかった」
勝手にカウンターの中に入れば怒られそうなものだが、まぁいいだろう。
その時はその時である。そんな精神でアインスのオーダー通りにカクテルを作ることにした。
彼女の前に出したのはノンアルカクテルことモクテル。ダブルカルチャードをチョイス。内容?カルピスとノンアルビール。
どういった意図で、なんて聞かれそうなものだから先んじて答える。
「甘酸っぱさと大人ぽさから」
「そうですか。悪くない気分です」
「えールビーちゃんにもぉ!」
「お前のどこに口があんねん」
その様子を持てルビーもカクテルの要求をしてくるがスルーをかます。
ここで飲料を無下にするのは違うだろう、と。
……後でキリト自身が飲めばいい?
それはそう。
キリトはただめんどくさくなっただけである。
「――」
気が付くとカウンターに一人の女性が座ってアルカイックスマイルのように微笑し指を一つ立てていた。
――彼女が歌姫だろうか。
そのオーダーには乗らないといけないようだ。
アインスと同じようにカクテルを。
炭酸の類いは避けた方が無難だろう。
ノンアルコールではなく、純心を冠するカクテルであるホワイトレディを。
そして同じようにこんなイメージで、と言う文句を並べれば嬉しそうにグラスを傾けた。
それを何度か繰り返すと彼女は満足したように席を立ち、大きなステージへ。
「――」
今度はカクテルではなく、私の感想を求める。
そんな語り掛けるような眼を彼女はしていた。
戦闘。
彼女が歌い始めるとステージは大きく変わる。
花園アヴァロンから、舞台ドームへ。
アヴァロンへ移動する時の様な感覚はなく、移動したと言うより塗り替えられたに近い感覚だ。
役者はキリトとアインス、そしてルビー。
相手方には、フードを被り仮面をつけた大きな杖を持つ魔法使いと言って想像するベタな魔法使い。
先行はあちら。
杖を一振りるだけでドームの中に花が咲き乱れる。
―――彼が花の魔術師か?
咲き乱れる花園とドームの強いスポットライトに照らされて、その姿はどこか幻想的だった。
「マスター。【再・征服換装〈侍〉】を起動します」
「頼んだ」
アインスは。【再・征服換装〈侍〉】へ換装し、キリトは先ほどヴァッシュから渡された双剣を手に持った。
ヴァッシュから渡されたその剣は一対の夫婦剣。
とことん赤い弓兵に寄って行ってる。
「――」
「別に前衛と前衛って訳じゃないんだ」
アインスに牽制を任せ、キリトは前進しながら黒弓を構える。
仮称:魔法使いは花吹雪のように視界をかく乱した。
「ステータス参照で補正は入るが、当てるだけなら人力の技能で十分なんだわ」
一瞬でも見えればそこを追えばいい。
個の集合体である花吹雪であるならばわずかながらでも、一瞬に満たぬ刹那でも視通は通る。
それを可能にするだけの視界補助がこの弓には付与されていた。
10㎞圏内ならどうにでもなりそう。
VR世界内なら超長距離射撃を可能にするキリトに頼もしい金棒である。
「――見えた」
「バフを重ねます」
キリトのつがえた夫婦剣はアインスのバフによって、捻じれた。
「これはそういうの期待していい感じ?」
「はい、前マスター曰くロマンと言ってたので」
「よし、“偽・螺旋剣”!!」
アインスのは一つだけではない。3重だ。
武器の変質、補足強化、速度上昇である。
「企画:偽・螺旋剣着弾を確認、対象は沈もk―――ッ!?」
花吹雪が止むとその先では五体満足の魔術師。
過去最高火力に近いその一撃は、まるで手も足も出ていないその相手にキリトは僅かばかりの好奇心を隠しきれそうになかった。
・スーパー言い訳タイム(ミニ.2)
Q.なんで征服人形のインベントリアからひょっこり出てきてるの?
A.愉快型戦術機が大体悪いんや……
Q.なんでアインス?
A.アンドロイドって言ったら番号感欲しくない?
Q.愉快型戦術機どうなってんのよ
A.元はユニークモンスターのなりそこないの愛機でぶっ壊れ性能でもよし!
なお、外装から中身まで七つの最強種由来の厄ネタの宝庫
大体蛸が悪い
Q.アヴァロンの鞘を矢にして射るとどうなる訳
A.対象物にアヴァロン由来の花が咲いてMPガンガン奪うよ!
Q.【征服換装】【再・征服換装〈侍〉】ってなんぞ
A.ユニークモンスターのなりそこないが使っていた時も同じ呼び方です。