何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
「RPGは突然敵が襲い掛かってくる展開あるよね」
「あるあるだ。そう言う時に限って装備整ってねぇんだ」
「でも、万全なんでしょ?」
「まーね」
「じゃ、花園のエミヤが勝負を仕掛けてきた―――なんてねッ!」
「お前ユニークモンスターちゃうやろがい!」
キリトは瞬時に装備を切り替える。
彼女に対抗するならこの装備だろう。
赤交わる魔術師・赤原一式。
久方ぶりに装備する気がする。
「ふーん、じゃぁ私もそれに乗ってあげる召喚:規格外戦術機『サファイア』!」
そう言って彼女は一つの杖を取り出す。
ああ、ルビーがあるならサファイアもあるよな。
「再・征服換装≪
「カテゴリなんか違くない?」
「これがこの世界の本家!」
彼女がサファイアを使用し規格外戦術機の機能たる
「お決まりのセリフ言っちゃうね」
「それ言われた側が―――」
「装備の耐久は十分か!
「俺も投影は使えるんだけど!?」
その声と共にイリヤは干将・莫耶をこちらに向けながらそう告げる。
―――なんかルビ間違ってなかった?気のせい?
それに対するようにキリトも両手に剣を投影する。
「残念、ココは私の箱庭なんだよ」
「あっ」
「
―――なんか剣聖の従剣劇みを感じる!
でもあれって同時に3本も自由にマニュアル操作出来たら変態なんだよな…?
じゃあ、目の前に浮遊する目算でも100を超えそうな剣を引っ提げているあの光景はなんと表現すればいいのだろうか。
「ぶつける直前までは流石にオート!」
「それでも同時に10本は超えるような操作してんじゃねぇか!」
ああ、剣の雨久しぶりに見た気がする。
でも、これくらいならテクニックで切り伏せる。
「キミも十分変態してる!」
「俺はあの鳥アタマと違って半裸でもねぇ!」
「でもへそ出ししてるよね」
「犯人はテメェだろうが!」
キリトは飛んでくる剣をいなし、弾き、避けながらイリヤまでの距離を詰めていく。
一回弾いたり干渉すれば再度操作はされないらしい。
自分の近くに弾き落として油断した所でハリセンボンとか流石に勘弁してもらいたい。
「
「さっきも見たけどさりげなくお洒落さんだね!」
「テメェと同じ愉悦部員擬きがいるんだわ!」
らちが明かない。
キリトはそう判断し、装備を変更する。
エミヤの正義の効果で赤い弓兵効果がアップしているとは言え、真正面から迎え撃つのは些か分が悪い。
変更するのはMP特化の装備と盾。
弾いて近づく!
「うわ、ギャラハッド!マシュじゃない!?」
「流石にマシュ装備は色々とキツイ!」
今ではすっかり盾を振り回すのにも慣れてきた。
このゲームで練習する機会がなくても俺はやりたい練習の項目に特化したゲームを作るなど朝飯前なもので。
「くっ、私より盾の扱い上手い!悔しい!」
「タッパがちっこいからじゃねーの?」
「誰がエターナルロリだコラァ!」
こんな悠長な会話してるけどすごい数の剣が襲ってきてるんですよ。
無駄に剣の長さチマチマ変えてあるからすっごいうっとおしい。
ちょっとチビいじりをしてしまったからなのかスイッチが入ってしまったらしい。
彼女もまた装備を変更する。
「再・征服換装≪
「おそらく毒!」
「大正解!私の神代から続くちょっと神秘すらある毒だよ!」
アヴァロン使えないやん。
アヴァロンの鞘の効果は神代以降の状態異常無効。
リュカオーンの夜の効果は呪だし。
「――なんてね。疑似改宗[無尽]」
「さっき貰ったばっかりなの知ってるんだから!」
「効果なんて一回流し見すれば覚えるんだよ!」
「フレーバーテキスト外の機能が売りなのに!」
「後でしっかり検証します」
「この戦闘でやらないだけえらい!」
ゴルドゥニーネの薬箱。
その効果は状態異常のストックor解毒剤の作成。
えらく実用的。
いや、他の友の証系もすごい実用的なんだけどさ。
「この、回避能力高すぎ!」
「盾持ってるけどメインは機動力なんでね!」
「このビーター野郎!」
「何その単語」
「そういえば原作知らないんでしたっけ!」
「そうなんです!」
と言っても当たらなければ実際問題大きな問題にはならない。
空気感染問答無用とかだったらだいぶキツイけど、毒武器が飛んでくる分には割と対応できる。
「詰めたぞ!」
「じゃぁ逃げる!再・征服換装≪
「それがセイバーちゃうんかい!?」
「ウェザエモンは常時乗り物乗ってるようなものだよ?」
「それはそう!」
待て、パワードスーツは乗り物に加算していいのか?
いや、騏驎と合体している時は確かにライダーみがなくもない…?
じゃぁ、ココからは意見の不一致。
俺もルビー使っていればそうなるかもしれないけど、疑似改宗でやってるからね。
「疑似改宗[天覇]」
「オシャウィングで追っかけてくるじゃん!?」
「無尽蔵に追い掛け回せるわけではないんだけどね」
この翼魔力依存だし。
「
「それ知らない!?」
「あれー?花園のことなら何でも知ってるんじゃないのー?」
「クッソむかくつくぅ!」
効果は5分:相手は可能ならば必ずブロックする。
「5分間防いでもらうか!」
「鬼!悪魔!ちっひ!」
「どこにガチャ要素あった!?」
あー、こっちの現実にアイドルマスター系のガワ転いること教えてやろうかな。
虚偶の聖杯を取り出して疑似改宗条件を達成していることと認識させる。
このアヴァロンじゃ月の魔力とかリュカオーンの所の空間くらいしかないし。
「2つ星の証明!疑似改宗[斉天]!」
「ちょ、こっちは重ね掛けできないんですけど!?」
「そりゃいい事を聞いた。斉天:改修[天覇]」
この状態の銃はセクエンス。
わかりやすく言おう。メイドオルタの持ってるあの銃だ。見た目はSVD。
「…そんな
「探せばあるんじゃないか?後で勇魚に聞いておく」
「ぐぬぅ!」
「【
「
削れて一枚か。
この構図は奇しくも
やっぱあの天鬼譽奉の派生みたいな永世冠促の火力やべぇわ。
あんとき食らったの単純に言って斉天:改修五種セットの天鬼譽奉総攻撃みたいなもんだし。
多分他の色々も混ざってんだろうなぁ。
あんとき2門ぶっ壊しておかなかったらどうなっていたことか。少なくとも完全即死だろうな。
「ふっ、龍法律の無駄使いだったんじゃないの?」
「らしいな。ぶっつけ本番が過ぎた」
イリヤの言う通り、この斉天:改修[天覇]の能力として龍法律[激突]と同等の能力が乗っかるらしい。
「でもいいんだ、ただの火力検証だからな」
「言うじゃない!」
「『
「なんかヴァッシュがこそこそ作ってたやつでしょ」
「そうだよ。【
「あー!あー!それだいぶ不味い気がするんですけど!」
「大丈夫、FGOな世界なら等倍だ」
「何も安心できない!」
「
「
また一枚。
確実に削ることは出来ている。
「もー!こっちには円卓ないんだから
「引継ぎ資料にそんな仕様見てねぇんだけど!」
「……メンゴ!」
一ついい収穫が出来た。
だけどまぁ、大きな火力は使っちまったのでここからは剣で行くかな。
「……キミ二刀流じゃなかったっけ!」
「なんか安定して使える気がするだけで何でも使うぞ俺は」
アヴァロンの鞘を『晴呼』から『
「ここからは未知の領域かな」
「鍔競り合いが好きなら乗ってあげる!再・征服換装≪
「それ槌って聞いてた気がするんだけど!?」
「彼、結構多才なんだよね」
「あー、そりゃあの貫禄だもんな」
「ほら、鍛冶師は剣を振るうのはお決まりって奴じゃん?」
「ごく一部の界隈ではな!」
無駄口が続いたのはここまで。
彼女の一撃を受けた瞬間悟った。
これ、リミッターかけてる場合じゃねぇ。
外のヴァッシュもそうだけど、その初速どうなってんだよ。
俺がリミッター外してどうにかギリギリ追える程度だぞ…?
―――もしかしてこのゲーム内で動体視力を弄ったりする所あったりするのか。
そうでもなければこれの対応キツイって!
あー、うん。
羞恥的に対人戦で使いたくなかったんだけど使うしかねぇみたい。
【八葉一刀流:神気合一】
「【高速
声にMPを載せて吐き出し続ける限りスキルのリキャスト無視して使い続けることのできるぶっ壊れスキル。
ただ、そのスキル使うためには実物の花を切りながら、もしくは花に由来するスキルの影響を混ぜなければいけない。
だが、ここは花園。花は無尽蔵にある。
大きく息を吸い込み、防具も整える。
やけに着心地のいい、剣士の服と称された一式装備に。
今度は俺が言わせてもらおうか。
「投影の準備は大丈夫か
セリフに魔力を乗せるとか言霊かな…?
でも吐いた唾は飲み込めない。
啖呵を切ったならそれを押し通すのみ!
〇
「このビーター野郎!」
「だからビーターってなんやねん」
「チート的に強いβテスター」
「シャンフロのβテストは受けてねぇぞ」
開始したの7月末頃だし。
「あ、マジレスはいらない」
「この剣押し進めんぞ?」
キリトは尻もちをついたイリヤの首に添えた『青薔薇・哿』を少し動かす。
「私もいつでも針鼠にできるんだからね」
二人の周囲には無数の剣が浮遊する。
嫌な予感は的中するもので、弾かれた後の剣も再度使用可能らしい。
「じゃ、どっちが早いか試すか」
「最速には勝てる気がしないね」
だから、おしまい。
イリヤがそうつぶやくと剣は音を立てながら自壊していく。
「そうだね、とりあえずこのクエストに関しては“Congratulation”と言っておこうかな」
「そいつはどうも」
そこでキリトも気が抜けてその場に座り込んだ。
「それじゃ、疑似改宗全部オンにして」
「ん、ああ」
キリトは虚偶の聖杯を取り出して条件を整え、すべての疑似改宗をオンにする。
[称号[7つ星の証明]を獲得しました]
[称号[可能性の証明]を獲得しました]
えーっと、この方法だとエミヤの正義も並行して起動できるのか。
「はい、そこに追加でドン!」
「え、俺のアクセサリースロットいっぱいなんですけど?」
「私が弄るのはそのエミヤの正義。私もまたエミヤだからね」
ツンツンとエミヤの正義を表す褐色した左腕を掴み、引っ張った。
そして―――彼女は、キリトの唇を奪った。
「ごめんね、こうじゃないと二号人類の魂に刻まれたタイプのアクセサリーに干渉するにはこうするしかなくて」
「……俺、妻帯者なんですが?」
「だから御免て」
[アクセサリー[エミヤの正義]は[イリヤスフィールの杯]に変化した]
[[
[規格外戦術機『サファイア』を入手しました]
[アヴァロンの入場制限が一部解除されました]
[ユニークシナリオAnother:アヴァロンにて]をクリアしました。
[ユニークシナリオEX[友の呼び声]]を開始します。
キリトは顔を青く染めながらがたがたと震え始める。だいぶひどいバイブレーションのよう。
流れるメッセージウィンドウなど気にする余裕はない。
本能的な震えだ。
「でもほら、私ビジュは超美少女だよ?欧米的挨拶の様なものだよ、そう言うことにしておこう。………えーと、かなり大変なやらかし……?」
「お前に分かりやすく今起こった状況を説明してやろう。お前を遠坂凛と仮定する」
「え、うん」
「その場合うちの奥さんは虚数属性に目覚めているタイプの間桐桜とする」
「―――スゥ」
イリヤは流れるように1.5mほど離れ正座をする。
「俺はログアウトした瞬間、捕食されるだろう」
「本当にすみませんでしたぁ!」
多分今まで見てきた中で一番きれいな土下座を見た。
〇
「気を取り直そう、アヴァロンの説明が終わってないの」
「おう」
キリトが今晩の覚悟を決め、震えがやや収まったころ、イリヤが話し始めた。
「まず、このアヴァロンの入場が緩和されます。まぁ、ルビーかサファイア持ってないと入れないのは変わらないんだけど」
大本のアヴァロンの想定は超巨大シェルターみたいなものだしと続ける。
「アヴァロンの鞘奪われるタイム……?」
「あ、それはないよ。私が承認しないから。せめてものお詫び」
「お、おう」
……ん?
キリトの脳裏に一瞬良くない想定が走ったがいったん脇に置いておく。
「と言うかルビーかサファイアを使用できるのって格納鍵インベントリアの認証システムの問題絡んできたりするんだよね」
だから格納鍵インベントリアの機能解除を私がしない限りそもそも使えない、とのこと。
「なので基本キミに抱き着いた状態でもなければこっちにこれません」
……ん?
再度キリトの脳裏に良くない想定が走ったが更に脇に置いておく。
「来た所でまず門番たるウェザエモンチェックを超えないと進めないしね」
「ひどい鬼畜要素」
「それを低レベル帯でクリアしたキミは一体何になるんだろうね」
「魔王?」
「どう考えても勇者サイドでしょ」
これでも一時期はだいぶ荒んでた時期もあるんですぜ、とは口には出さない。
「まぁ、裏コンテンツ的無限ユニークモンスター練習場みたいなものだしね」
「それだけで一体どれだけの人が釣れることやら」
キリト的にも基本的に言うつもりはないけども。
「世界の進行度次第ではどうなるかわからないけどね」
「……現実ユニークと花園ユニーク連合軍とか出来上がらない?大丈夫?」
「それはこの花園の出来上がり方的にあり得ないよ。とんでもない天変地異的なことが起きなければ」
……それすんごいフラグでは?
「ま、花園についてはそれくらい。えーっと、あとはアインスとルビー呼んで」
「あいよ」
キリトはアインスをコールする。
「はい、再び出てきてアインスで――――え、わわわわわわわたしがいるぅ!?」
「あ、旧マスターお久ですー」
「え、旧マス、え!?前マスター!?」
……え、ちょい待って?
なんでアインスがそんなに驚くんだ?
「そういえばこの姿で会ったことなかったっけ。じゃ、いつものに」
そう言ってイリヤはキャスター姿に変わる。
……そっちの時間の方が圧倒的に長いのでは…?
と言うかその変身技術どうなっているんだ?
「あ、本当に前マスター」
「あっさり納得されるとこっちもなんか釈然としないね」
キャスターはどこか不服そうな表情を浮かべる。
「旧マスターの日頃の行いかと」
「ルビー冷たい!」
……微笑ましい光景、なのだろうか。
アインスはめちゃくちゃ混乱しているんだけど。
「と、それはさて置き。パワーアップのお時間です」
「…?」
「唐突ですね」
「それが僕だからね」
姿が変わるとしっかりと
「じゃ、ルビーこっちに」
「あ、はい」
キャスターはルビーを握りしめるとルビーは淡く発効する。
「そぉい!」
―――そして混乱したままのアインスに投擲した。
「いだぁ!?」
「ルビーちゃんの扱い!」
……こんなアップデートあるぅ?
「これで、征服換装機能のアップデート完了d――え、どうしたのアインス。ルビーをがっつり握りしめて」
「マスター、このバカ殴る許可を」
「やってヨシ」
「え、ちょ!?」
アインスはさっそくと言わんばかりに征服換装の使い心地を確かめるように、ルビーを構える。
キャスターはサファイアを構え、全力で逃げ出す。
キャスターとアインスの鬼ごっこはその後しばらく続いた。
……俺がディプスロここに連れてきたらもっとひどい追いかけっこになりそうだなとキリトは遠い目になりながらそれを眺めた。
あしたのJGEだいじょうぶかなぁ。
おれのたいりょくのっこってるかなぁ。
・電波をキャッチした人①
「今、旦那様の貞操が脅かされた気が」
ベットから飛び起きた人妻の図。
・電波をキャッチした人②
「今、イリヤのファーストキスが奪われた気が」
とあるユニークシナリオEXの難易度が上がった図。
・アインスとイリヤ
アインス側からのイリヤの認識は完全にキャスター状態しか見ていなかったので突然情報の爆弾を投げつけられたような感じ。
・サファイヤさん
イリヤの振るうものとキリトが報酬で貰ったのは概念的に別物。
・とあるUESの一幕
「―――誰、こんな設定にしたの!?」
「つくよん、ここに鏡あるよ」
「くっ、私の親友のファーストキスがぁ!」
「私の精神的ダメージも考えて?別の存在とは割り切ってるけども。あと、現実の私の唇奪ったの幼稚園児時代のお前だからな?」
「……慰謝料として明日のJGEの最上級優待チケット出しとく」
「あ、うん。じゃ有給取るね」
「変なのについて行っちゃためだからね!」
「私は幼女か。あとそのプレイヤーに変な制限掛けるとか職権乱用ダメだからね」
「そ、それくらいわかってるわよ!」
「つくよん、アホだからなぁ」
「アホってなによ!?」
※百合ではない。
・深い意味はない表
大英雄ウェザエモン:ライダー
結ぶクターニッド:アーチャー
守護者ジークヴルム:ランサー
歌姫オルケストラ:キャスター
尽くしゴルドゥニーネ:アサシン
夜王リュカオーン:バーサーカー
旅兎ヴァイスアッシュ:セイバー