何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
和人と衛宮はスタッフオンリー、関係者以外立ち入り禁止区域の各社に割り振られた休憩スペースの内、ゼムリア社に振り分けられたスペースにて休憩していた。
「さて、ご用件は?」
「ん、特に深い意味はないんです。つくよん、継久里創世が褒めちぎってた天才がどんな人物なのか気になって」
和人はなぜあの流れで一緒にARゲーやってたんだ?と首を捻りつつ、彼女に質問を投げたが、返答は随分とあっさりしたものだった。
「それに例の件で少し気になってね。嗚呼彼女と私は極めて同じだけど別ではあるからね」
「あー、アレか」
例の件、花園のエミヤの件だろう。
「まぁ、彼女についてはUES社の秘匿情報だから言えないけど」
「左様で」
極めて同じだけど別、フラクトライト的な感じの奴なのかな。
情報的に特許取る訳にも行かないから俺も完全に秘匿してるし。
「驚かないんだね」
「まぁ、似たようなことは俺もしてるし」
「マジかー」
やっぱこの二人別次元の生き物じゃんね、等と失礼なことを言われつつ、叙々苑の弁当を食す。
うめぇ。
「ロボゲーの詳細について聞きたいんだけど、いい?」
「別に良いけど、幼い頃にプラモでブンドドしたことある?」
「すごくある。何なら今でもやってる」
「それの延長線で、自分のプラモ読み取ってそれをVR内でカスタムして遊ぼうぜって言う感じのゲームを作っちゃったってのがプロジェクト:プラモ」
「神?」
衛宮は目をキラッキラ輝かせながらその話に食いついた。
「ちゃうわ。最初は個人で遊ぶ用にスキャナーの伝手を他の転生者伝手に聞こうとしたら『面倒ごとは大体こっちで対処する』と言われて捕まったというか……」
「……もしかして流されやすい?」
「流されやすいというより、目標に向かって真っすぐに進むやつが嫌いではない、って感じ」
「まぁ、個人のお楽しみゲーにしなかった他の転生者に感謝、感謝。ちなみにそれってSAO関係者?」
「違う。俺も詳細な作品は知らないがこの会社名にもなってるゼムリアってとこの転生者」
「そうなんだ。私もそこらへん詳しくはないかな。……そう言えばフルダイブSAO今日発表されたね」
「……マジ?」
「え、知らなかった感じ?」
「おう」
うわぉ、マジかー。
衛宮にそんなリアクションを取られて和人も首をかしげる。
「転生者掲示板で情報回ってきたりしないの?」
「あー、なんか色々あって忘れてたな」
和人はエミヤに転生者掲示板と言われてそう言えばそんなものもあったな程度の認識しかない。
そこらへんは忙しかった。
だいぶ忙しかったので記憶の彼方にポイしていた。
それにSTLでかなり体感時間長い事をやったのもある。
「わーおー」
「後はアレだ、幕末は分かるか」
「あの問答無用切り捨て御免ゲー?」
「それ。そのゲームでSAO?のガワ転を遭遇するたびに切り捨てしてしまってな。掲示板内で暴れているとか聞いて間をおいて後で考えようとかしてたらそんな感じだ」
「……ん?モシカシテ原作知らない感じ?」
「知らない感じ」
「マジかー」
マジかよお前主人公やろとツッコミを食らいながら、別に俺が動かないといろいろと不味い状況じゃないなら放置ですが?とリアクション。
「そっかー。あ、自分のコピーいるとたまにその子もアクセス権限持ってたりするから気を付けてね」
「マジか。今度生み出すときは気を付けよ」
和人もアンダーワールド内で知らん間に自分のコピーが生まれていたことがあったりもしたのでそこらへんは気を付けておきたい。
そのコピーとはだいぶ熾烈な争いして勝ったけど。
「やっぱりそのゲーム出してるのってアーガス社?」
「え、うん。そう」
「ほーん」
商標的に権利持ってるのアーガス社だし、やっぱ自分でSAO出そうと思わなくて正解やなぁ。
SAO出したら一発訴訟ものだ。
「何か含みない?」
「別にないぞ?アーガス社が旧式VRでSAO出していた時には俺もフルダイブのSAO作っていたことがあったけど、そのまんま出してたら訴訟ものだったから回避できてよし、って感じだ」
あぶねぇあぶねぇと和人がケラケラと笑っていると衛宮は頭を抱えた。
「……ちょっと待って」
「おん」
衛宮は指折り数えながら脳内の年表と照らし合わせているらしい。
「私の記憶が確かならフルダイブ以前の技術で作られた旧式のSAO出たの5年くらい前じゃなかった?」
「俺が継久里と特許申請バトルしてたのがそれくらいだからそうだな」
「その頃にはできてたの?SAO」
「できてたな。サーバー用意したり運営するのめんどくさくて棚に収まってるけど」
「―――ばっかじゃないの?!」
「大声出さんといてクレメンス」
衛宮がテーブルを強く叩きながらそう怒鳴る。
お茶がこぼれちゃうでしょ。
「アホ、あなたはアホ。継久里創世とは別方面のアホね」
衛宮はビシッと和人に指を向けてそう宣言する。
「失礼では?」
「バカと天才は紙一重ってよく言うけど、本当、マジかぁ…」
そして再び頭を抱え始めた。
情緒大丈夫か?
「あれね、馬鹿のゲーム引きずり出してくれたゼムリア社に足向けて眠れない」
「面倒ごと引き受けてくれてマジ助かってる」
「それとこのアホの手綱握っておいて欲しい、本当に」
「失礼では?」
ついに机に突っ伏した衛宮を横目に弁当を食べ勧める。
「ねぇ、アホ」
「なんだ衛宮」
衛宮が突っ伏したまま和人に問いかける。
「まさかとは思うけどSAOの他にALOとかGGOも作ってるとか言わないわよね」
「作っているというか随分前に作り上げたというか」
現在は別ゲーに統合したゲームにしてる、とまでは口には出さない。
「アホ!アホ!なんでそんなゲーム棚のこやしにしてるの!?」
「ちゃんと奥さんが遊んでくれてるし」
「とんでもない豪華なローカルゲーねこの野郎!」
衛宮は「奥さんが羨ましいんなぁ!」と謎の切れ方をしている。
「そもそもの話をしよう」
「うん」
「当初俺は大学を卒業したらゲームをリリースする予定だった」
「……マジ?」
「マジ。未だ黎明期から足を一歩踏み出した程度のVR業界をちゃんと段階的進化で緩やかに発展させるつもりだったんだ。技術の進捗ラインを見定めて行けば無理のないVRゲーム業界の発展が見込めるだろうと思ってな」
「えらく堅実的」
「で、昨年事件は起きた。未だゲームキューブ程度の文明進行度にいきなりPS4ぶち込んだ馬鹿が居るだろ」
「……うん?」
「シャングリラフロンティアのことだ」
「……スーッ」
「もう一人の方のVR開発者の継久里がものの見事にVRゲーム振興プランをぶち壊してくれたわけだ」
流石に色々アホらしく思えるだろ。
色々面倒になった。そう和人が続けると大きく息を吸い続けた衛宮が爆発した。
「つくよんのアホーッ!」
……ボリュームは落として欲しかった。
「アホ、やっぱつくよんアホだ」
だから喧嘩の度合いが幼稚園児なんだ、と衛宮はボロクソにつぶやく。
「自社の社長を随分とボロクソに言いやがる」
「いいの、幼馴染特権」
「なんという便利な特権」
まさかシャンフロがリリースされることでそんな弊害生まれてるとか思わないじゃん、と衛宮は一周回って泣きそうだった。
「まぁ、そんな訳で俺は積極的にゲーム出す気はない感じだ。VR機器とかAR関係で忙しいし」
「うちの幼馴染が考えなしのアホなばっかりに…」
「ま、それはそれとしてシャンフロに負けるのも癪だからシャンフロより体感0.5世代上げたのがプロジェクト:プラモなんだけども」
まぁ、VR文明発展速度では人のこと言えないゲーム作っちゃったんだけどね。
「……正気で言ってる?」
「真実は自分で体感してもらわねぇとな」
「流石に今から並ぶのは遅い気がする」
「あー、らしいな」
和人はカムラのアホから来ていたメールでなんとなくゼムリアブースの列がすごい事になっているのを知った。
「ロボゲー、ロボゲーあるなら真っ先にそこならんでたぁ」
「ネフホロも結構面白かったぞ」
「無印は肌に合わなかったけど、ネフホロ2はUES社員権限でプレイさせてもらったから楽しいのは知ってる。でも求めてるのは球体関節じゃなくてもっとメカメカしいロボット!具体的にはガンダム!」
「今日の体験版はコックピットカスタマイズorザクとバトルだな」
「めっちゃやりたいィ!」
……これが愉悦か。
シャンフロのキャスターに受けた屈辱を衛宮に返すのは筋違いだとはわかっているがこう、つきものが落ちていくような気がしてくる。
「ちなみにハードモードでは赤い彗星とバトルができる」
「なに、何なの私発狂するマシーンになるよ!?」
「ハハハ」
……よし、落ち着いた。
あまり人をからかうものではないと分かっているが、こうリアクションされると揶揄いたくなってしまうものだ。
「流石に割り込みさせる訳には行かんだろ、これをやろう」
「え、さっきと違う名刺?」
「その名刺の角を切り離すと俺の個人的な趣味サーバーに置いてあるゲームにアクセスできるキーになる」
「と、とんでもない技術がさらっとお出しされる恐怖」
「要らんなら回収するが」
「だ、誰もいらないなんて言ってないでしょ!?」
「プロプラとは違うが、スパロボ寄りのゲームを置いておいたはずだ」
だいぶ前に作ったからそれは流石にシャンフロより世代落ちするけど。
「……神?結婚しとく?」
「だから俺は妻帯者だって」
「オーケー、奥さんと離婚したら連絡頂戴」
「しないが?!」
結婚から一か月ちょいの新婚ぞ?
「……第二夫人枠でもいいよ?」
「だからしないが?!」
あっという間にこっちが押されてるやん。
「自慢じゃないけど私めっちゃ美人!」
「うちの奥さんも超美人」
「クッソ惚気られた!」
そこら辺の攻撃は効かんが?
「ま、ゆるーい友達としてよろしく」
「……友達くらいならな」
「気が向いたら第二夫人枠空けといて」
「そんなものは未来永劫存在しない」
キャスターとは別方面で疲れるなぁ。
▽
「ハローワールド! ハロージャパン! 特設ステージから愛を込めて!」
「えーこんにちは」
「ほら、魚臣選手元気がないぞ?」
「これでどうやって元気を出せと?」
JGE特別ステージ。
様々なゲームや本日の見どころ、各会社の重要情報発表などを行うイベントステージに天音永遠と魚臣慧は立っていた。
天音永遠はモデルと言う看板にウソ偽りない整った格好を。
魚臣慧はメイド服を。
「ケイちゃん怒りっぽいなぁ」
「誰かさんの策略に嵌ってこんな格好をする羽目に……」
一週間前の自分を殴りたい。
魚臣慧は力なくマイクに拾われないボリュームの声でそうつぶやいた。
「改めてご説明を。ジャパン・ゲーミング・エキスポ、特別ステージイベント「フューチャーリアリティ」 実況進行は私、天音永遠とぉ~~~~~~?」
「すっごい貯めるじゃん。魚臣慧です」
「
「えー、色々な柵と言うか策略に嵌った結果です」
すっごい不本意です、とは流石に言えない。
誰がケイちゃんだ!
これでも魚臣慧はプロゲーマーなのだからスポンサーに目を付けられたら色々と大変なことになるのは目に見えている。
わかり切っている地雷は必要がない限りふまない。
ゲーム攻略の為なら躊躇いなく攻略本を開くのが魚臣慧なのだから。
\ケイちゃーん!!/
「ほら、ケイちゃん声援が届いてるよ」
「とても低いのに響く声ですね……」
どんなリアクションしろって言うんだよペンシルゴン!?
そんな思いでペンシルゴンにアイコンタクトを取ろうとするが、モノの見事に躱される。
「ま、これで魚臣選手の緊張もほぐれたことでしょう。それとも日本のエースな魚臣選手には余計なお世話だったでしょうか」
……しれっといい人を装っているが、その面の内側は真っ黒なことは知っているので藪はつつかない。
「えー天音さんのお陰で少し緊張は解れました。舞台に立つことは成れていますがこういった形で立つことは殆どありませんので」
「あれ、さっきより硬くなってる。ま、いいや。今回はスワローズネスト社やユートピア社などなど、いろんなハイテク企業の全面協力のもと、メガフロート・サイト全域に張り巡らされたARホログラムでどこにいても最新情報をお届けしちゃうよ! フフフ、何が飛び出るかはお楽しみっ!」
切り替え凄ー。
って、あれペンシルゴンの眼の色が変わった。
目線の先には……高校生くらいの男女カップル?
なんか初々しいな。
っと、進行しなきゃ。
「えー本日はカムラ社からパーソナルARデバイスオーグマーと」
「……」
「天音さん?」
「…っとごめんね。ちょっとド忘れしちゃった。でも大丈夫!スワローズネストさんから秘密兵器、最新式の眼鏡型ARデバイス借りているから!」
随分と強引な台本戻り。
あそこまで動揺するとか珍しいな。
…?
SNSの個人チャット来た。
このARデバイス凄いなぁ。
こんな時に誰だろ。
自分からは見えるけど他の人には分かりっこないから見ちゃえ。
【前方観客席】
鉛筆:アレ、サンラクくんとレイちゃん。
「ぶっ!?」
「ちょ、急にどうしたのかなケイちゃん。そんなに緊張してるの?」
「す、すみません。急に痰が絡まったと言いますか」
「もーしっかりしてよね」
どの口がそれを言うのかな!?
【前方観客席】
カッツォ:とんでもない爆弾落とさないでくれるかなぁ!?
カッツォ:と言うかよく顔を知ってたね?
鉛筆:レイちゃんの方知ってたから逆算的に
カッツォ:そう言えばサンラクとサイガ-0お付き合いしてるんだっけ
鉛筆:みたいね
「それにしてもすごいよ、これ………堂々とカンペとか、目の前に表示してるのに本人しか見えてないんだものねぇ……」
「とんでもないカンニング発言はやめようか」
「もちろんみんなは学校のテストとかで使っちゃだめだぞ!」
「使用方法が邪悪!」
「えーケイちゃんは学生の時にこんな便利なデバイスあったらなー、なんて思わなかった?」
「思わなかった訳じゃないけど、ちゃんと使う場所を守るから楽しく使える訳だから節度は持っていたと思うよ」
「んープロゲーマーらしいコメントをどうも!それじゃ、さっそくみんな気になってるゲームの最新情報をお届けしていくよ!」
この女面の皮だいぶ厚いな!?
と言うかよくもまぁ、二つのことを同時進行できるな。
【前方観客席】
鉛筆:サンラクくん、結構見た目悪くないんだね。だいぶ好み。
カッツォ:え?
鉛筆:妹ちゃんが読モやってるだけあって、遺伝的にも悪くはないか。
鉛筆:んー、妹ちゃん巻き込めばこっちにも分があると思わない?
カッツォ:俺を巻き込まないで貰えます?
魚臣慧はこのステージを無事に乗り切れるか少し不安になって来ていた。
まぁ、GGCであんな仮面付ける必要がないくらいには、とは思うけども。
▽
「アレ、レイサン、レイサン、目がとっても怖いヨ」
「すみません、ちょっと虫が飛んでいたので」
ペンシルゴンさん、宣戦布告ですか?
一瞬だけ交錯した視線に斎賀玲は確かにその気配を感じ取った。
楽郎は彼女に何かヤバいスイッチ入ったな、と少し遠い目になった。
・特定キャラに作者の加護はないぞ()
かと言って泥沼にする気もないんだ。
気を抜いたら書いてしまいそうなのでそこらへんは番外編を書く機会があればもしかしたら……?
鉛筆→ハシビロコウ
揶揄の範疇にとどまる、ハズ
イ→K
揶揄のハズ()
・現実:伊里夜とシャンフロ:イリヤスフィールの違い
オカルト的なところまで完璧にトレースしちゃったアホのせいで色々ヤバい。
どれくらいヤバい?
トレースしたと思ったらそれは並行世界の存在でしたくらいヤバい()