何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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11月中旬.3

 

 恒星間航行バハムート級アーコロジーシップ「ベヒーモス」

 

 何となくリヴァイアサンと同じ要領で入ることできないかなーと言う極めて軽い気持ちでそれらしいところがないかと走ってみたらファステイア近くで見事に見つけてしまった。

 

 

『いじらしくも勇敢な我が子、そして盟約の花の魔術師よ』

 

 そしてポン、っと艦内に転移された。

 

 2回目とも慣れ場慣れたものでさっそく管理AIに話を聞きたいところなのだが。

 

 

 ―――隣にシズレナが居た。

 

 

 ――アイエエエ!?(略)

 

『ふふ、花の魔術師も隅に置けませんね』

 

「違う違う、俺追い掛け回されてた。伴侶コイツ違う!」

 

『あら、そうでしたか』

 

 どうやら近くで一緒に走っていたとこでついでに彼女は呼ばれたらしい。

 

「豆太郎君既婚者だったんだ」

 

「結婚してから一か月ちょいの新婚やぞ」

 

「おめでとう?」

 

「どうも!」

 

 なんかシズレナに祝われた。

 

「んー、弟弟子もサクッと結婚しちゃったし私もヴァン君にアピールしておこうかなぁ」

 

 ……この人に狙われる男性ある種かわいそうなのでは?

 

 キリトは訝しんだが、その視線を感知したからか首筋にそっと刀を置かれた。

 

「その首おいていく?」

 

「勘弁して」

 

 ……ヴァン何某頑張って!

 

 

『ふふ、母の話も聞いてくださいな』

 

「お、おう」

 

『私の名は象牙。神代の賢人達より子宮と揺籠を預かるアーティフィシャルインテリジェンスにして開拓者の門出を見守り、その帰還を待つ門番。『かくれんぼ』は続いていますが少し早めのお勉強の時間ですよ』

 

 ……かくれんぼにスッゴイ含み持たせてくるじゃん!

 

 

 

 とはいえ勉強、勉強かぁ。

 

 シャンフロそんなに知らねぇんだよなぁ。

 

 ……あれ、リヴァイアサンと違って普通に攻略しないといけない感じか。

 

 ゲーマー的にそう言うスキップより段階踏むのは好きだ。

 

「穴だね」

 

「穴だな」

 

 転移した最初のエリアは巨大な穴。

 

 深淵ダンジョン?

 

 蛸の所でやりませんでしたっけ、それ。

 

『これは「試練」であり、「再現」であり、そして「試験」なのですよ』

 

 と言っても、レガシーモードではないので本来の目的とは違った形となっていますが、とのこと。

 

「じゃ、ちょっと降りてくる」

 

「……かるぅ」

 

 キリトは虚偶の聖杯でサクッと条件整えて疑似改宗[天覇]で翼を生やしながら降下した。

 

 道中はくらい。

 

 20mも落ちれば周囲などほとんど見えない。

 

 見えない時はどうするか。

 

 はい、魔力ソナーですね。

 

 キリトは近くの壁に手を付き、全力で魔力を下に伸ばした。

 

 商業施設的吹き抜けではなくて各層で床がある感じかな、タケノコの節的な。

 

 わからないけど。

 

 んー、魔力全部使い切りたくないから魔力を伸ばすのにも限度と言う物が。

 

 おっと…?

 

 キリトはそれに気が付くと再び入り口まで急上昇した。

 

「あ、戻って来た」

 

「リバイアサンでいう所のアンバージャックパス的なものがあれば、昇降設備の様なものは使えるのか」

 

 再度大穴の淵までやって来たキリトは象牙に問う。

 

『ふふふ、直ぐに解ってしまうのですね。ですがその場所は―――』

 

 この大穴はプレイヤーが落ちても只の時間の無駄。

 

 そう言う大穴だ。

 

 となればビルの非常階段的なものがその壁の外に存在する可能性が高い。

 

「アレじゃない?」

 

『……本当にすぐに解ってしまうのですね』

 

 象牙はもったいぶって、自分で探して見なさいなと言わんばかりの言い方であったが、シズレナが即看破していた。

 

 ‥…早い。

 

 

 シズレナが指さした方向に進むと、それっぽいハッチがあった。

 

 扉は固く閉ざされている。

 

 

 こう言うの見ると抉じ開けたくなるよね!

 

 いつぞやのラボの様に神代の武装チラ。

 

 ……違うか。

 

「その刀業物っぽいね、いいなー」

 

「やらんが!?」

 

 機械式の扉。

 

 叩いてみる。

 

 音の響き的にそこそこ厚そう。

 

「……近くにコンピューターねぇかな」

 

「いやいや、ちょっと切ってみようよ」

 

「蛮族過ぎるだろ」

 

 幕末プレイヤーってこんな感じなの?

 

「アッ」

 

 シズレナは果敢にもその扉を切ろうと試みるが、武器の耐久が負けた。

 

 硬い物質か。

 

「こっち見ても替えはやらんぞ」

 

「えぇー」

 

 自業自得だろうに。

 

「象牙、ハッキングしたい」

 

『……そう言った切り口で進められるのはちょっと困りまりますね』

 

 えー?

 

 キリトが避難するような視線を向ける。

 

『2号人類の進化はこういった方面に進みましたか。いえ、花の魔術師は異質ですもの。あなたが例外なだけでしょう』

 

 ひどい言われよう。

 

「あー、んじゃここ通るライセンス的なものの発行に条件はあるのか」

 

『ええ、ありますよ』

 

 それが正解です。

 

 悪がきを正すような声色で象牙が告げると同時にキリトは光に包まれ、落ちた。

 

 やはりパス認証式でござったか。

 

 

 〇

 

 

『抑制進化機構クェンチ・エヴォリューション・ドライブ。識別コードは「Q.E.D.」その説明をしておきましょうか』

 

「そこらへんはザックリ勇魚の所で資料は見た」

 

『そうですか。必要になったらいつでも答えましょう』

 

 光に包まれたキリトはどこぞのクローン製造工場にも見えるエリアに足を踏み入れた。

 

「なるほどわからん」

 

「気になったら象牙が何時間でも答えてくれそうな空気感出してるから聞いとけ」

 

「え、そう言うのは大学でお腹いっぱい」

 

 卒業してまでそう言うので頭悩ませたくない、とシズレナは愚痴った。

 

 ここでQEDの説明をすると言うことは、ココはザックリ言えばプレイヤーの生産工場、とも言える場所なのだろう。

 

 だからベヒーモスはファステイアにある訳か。

 

 現在進行形で目の前の試験管はブクブクと泡をたてながら新規プレイヤーのキャラメイクと思われる光景が進んでいる。

 

 ロックオン・ロックマンLv.1……そのチャラい雰囲気ソレスタルビーイング的なアレに居そうな緑っぽい雰囲気がありますね。

 

 推定ガワ転まだ増えるのか。

 

 となると、気になるのはあの空っぽの容器。

 

「あれは?」

 

 キリトが突っ込みを入れる前にシズレナがそれにツッコミを入れた。

 

『「R.C.S.」リセット・カリキュレーター・システムと私は名付けました。簡単に言えば……肉体の再構築を可能とする後天的アバタービルドが可能なものです』

 

 つまり後天的キャラメイクマシーン?

 

 課金要素なのか、それともゲーム内通貨で済むのか。

 

 ちょっと気になるな。

 

『使用したいなら……そうですね、最奥までたどり着いてもらいましょうか』

 

 お勉強が先です、とそのリアクションはゲームをしたがる小学生を叱る保護者のごとく。

 

 では進みましょうか。

 

 そう案内する象牙に続いてキリトとシズレナは進んでいく。

 

『運動能力及び基礎知能テストです』

 

 ほんの少し進むとそこに存在するのは懐かしきSAS〇KE的アスレチック、と言うのは少し違うかもしれないが概ねそんな形のフィールド。

 

『この先を進むための最初の関門、と言っておきましょうか』

 

「じゃ、私先!」

 

 一直線に伸びるそのコースは、プレイヤースキルちゃんとあるんだろうなとでも言わんばかり。

 

 3Dマリオ風味さえ感じてしまう。

 

 トゲ・レーザー・扉・振り子の刃。

 

 物騒だけどこういうシンプルな遊びも楽しそうだ。

 

「ステータス足りないってことはないみたいだね」

 

 こう言うの新鮮、なんて言いながら軽やかにシズレナは進んでいく。

 

 プレイヤースキルのゴリ押しでいけるんだなこのステージって。

 

「到着!」

 

『ふふ、実に優秀ですね。ご褒美です』

 

「あ、なんかラッキー!」

 

 スキルなしでたどり着いたら何かボーナスでも貰えるのだろうか。

 

 リヴァイアサンのスコアに相当するものとか。

 

 そう言われると俺もノースキルで行ってみたくなるな。

 

 キリトもボクサーがリズムを作るように少し跳ねて自分の動きやすいタイミングを把握し、駆けた。

 

 

 第一関門、板から落ちたらミンチ。

 

 足場を踏み外さなければ基礎ステータスで余裕で飛べる。

 

 第二関門、気を抜いたら針鼠のトンネル。

 

 人感センサー的に射出されている訳ではなく、一定のリズムで針が飛んでいるので、これも簡単。

 

 第三関門、バイオでおなじみ迫りくるレーザートラップ。

 

 あの花園の蛸の変態的攻撃に比べればお遊び。

 

 第四関門、高速で開け閉めしてくる扉。

 

 往復一秒感覚とか実にアホ。

 

 飛雷神の術使えば一瞬でクリアできそうなんだけど、目の前に素のスペックでクリアしたのがこの扉の前で呑気に象牙と会話しているのを見ると意地でもノースキルで行ってやろうと思ってしまう。

 

 これもタイミング合わせてダイブ、っと。

 

「これでよs―――危なァ!?」

 

 潜り抜けたらギロチンは初見殺し過ぎませんかねぇ。

 

 横に飛んで回避したけども。

 

『花の魔術師、いいえ、今はキリトと呼んでおきましょう。お見事です』

 

 キリトにもリザルトなる通貨が振り込まれた。

 

 はーん、ここでもなんか買い物できるな?

 

 もしくはさっきのR.C.S.とか言うやつ。

 

 

 〇

 

 

『筆記テストです』

 

「シズレナ」

 

「え、分からないよ」

 

 キリトとシズレナは図書館にも似たその空間で、ある種一番苦手なカテゴリーにぶつかり詰みかけることとなる。

 

『ふふふ、テストの合格ラインは8割ですが、提出まではここの資料の閲覧を許可しましょう』

 

「これアレだ、持ち込み可の大学のテスト!持ち込んだところで解けないような問題さらっともってくるヤツぅ!」

 

 ……うん、シズレナは大学がお嫌いだったらしい。

 

 キリトの大学時代は基本的なことをぎゅっと詰め込まれたと思ったら論文ライフだったから正規のテストの様なものを受けた記憶はだいぶ薄い。

 

 見ていいならどうにかなるかな。

 

 問題見て、大体回答すべき要項をまとめてそれっぽい棚を見つけて調べて穴を埋めていく。

 

「なるほどなぁ」

 

 キリトはどんどんと進めていく。

 

 本を開くとしっかり読める。

 

 

「……キリトくん助けて」

 

「自力でどうぞ」

 

「テスト嫌い!」

 

 

 堂々とカンニングしてくるシズレナをスルーしながら、只管本を読み進めていった。

 

 設定資料見るのって楽しいんだよなぁ。

 

 継久里創世の設定へのこだわりを感じるな。

 

 しっかり埋め終わると採点は満点。

 

 キリトはシズレナが「え、コレ全問同じじゃないの!?」とキレているのを尻目に1人そそくさと進んでいった。

 

「ゲームの中まで勉強したくない!」

 

 ……頑張れ、シズレナ。

 




・シズレナさんなんでベヒーモス入れたの?

 巻き込まれ事故。

 象牙が「あら、今代の花の魔術師はお相手が…」気分で連れてきちゃった。

 PSの異常なまで高さに「中々やりますね」と象牙さんもニッコリ顔。

 イレギュラーもいいかもしれませんと言う思考にちょっと傾く原因。

 でも勉強は大事ですよ^^

 頑張る子にはご褒美が与えられるかもしれない。

・RTA紗音さん。

「一層は真っすぐダンジョン進んで襲い掛かってくるモンスターシバいてれば最低限のステータスは大丈夫。時間制限慣れれば避けて切る分には十分。でも武器の耐久値に不安あり。アニールブレード取りに行った方が効率的かな」
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