何も知らない鳴坂和人くん(22)   作:スティック/糊

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11月下旬.3

 

 キリトは新大陸を歩いていた。

 

 なんやかんや新大陸のマップをあまり確認していなかったので事務所(ドールフロント)に向かうついでに色々と見て回ろうという算段だ。

 

 

 空からパーッと行ってもいいのだが、どうせならモンスターの素材を狩りながらゆっくりと向かうことにした。

 

 事務所(ドールフロント)は大陸南西方向の森の中にあるという。

 

 新大陸拠点が東に位置しているので大陸の反対側に行く感覚に近いだろう。

 

 空で行くか海に潜っていくか。

 

 それが一番近い気もしている。

 

 とは言っても新大陸は馬鹿デカい。

 

 今日中に横断は中々ハードかもしれない。

 

 ……ダッシュで行こうか。

 

 

 〇

 

 

「着」

 

 キリトの想像的に事務所と言うのだからもっとデザイナー物件的なものを想像していたのだが、実際の事務所は森の中にひっそりと隠された中々ファンシーな感じである。

 

 地形の段差を利用して表面上は見えない感じに建物があるらしい。

 

 カモフラ―ジュされている地下物件、って雰囲気。

 

 秘密基地感を感じる。

 

 一般住宅街に紛れ込んだ秘密基地なら持ってるんですけどね()

 

 地形の差がめっちゃ利用されてる…。

 

 崖の様な場所まで移動するとSF的足場が形成されていく。

 

 ……ロマンあるなぁ。

 

 螺旋階段の様に形成されていく水晶足場をゆっくりと下って進んでいく。

 

 螺旋階段って憧れるんだけど日常的に使用すると足を踏み外したりしたら怖くて採用できねぇんだよなぁ、内側に行くにつれて踏板狭くなるし、すれ違い出来ないし、階段下のデッドスペース活用出来ねぇし。

 

 こっちがオルケストラに繋がる扉で、事務はこっちか。

 

 キリトは脳裏に響く音に導かれるまま進んでいく。

 

 

 ジョブ〈征服人形接続者(ドール・コネクター)

  

 簡単に言うと征服人形ができることが出来るようになるジョブ。

 

 体自体が征服人形に置き換わるとかではなく、機能を使用できる。

 

 そういうジョブ。

 

 クラスVIIIまでの戦闘装備をパススルーで使用可能で、それ以降は近くの征服人形に声掛けして使う感じ。

 

 後は拡張機能ユニットと言うアクセサリーや装備枠とは別の機能が文字通り拡張された。

 

 その条件としては征服人形接続者(ドール・コネクター)をメインジョブにしておく必要がある。

 

 マイクだったりブースターだったりワイヤーアクションっぽい道具であったり。

 

 今の所ネタ装備。

 

 マイクだったりステージだったりはオルケストラ報酬で自前で持ってるし。

 

 ラビッツで試した限りでは注目後光(バックライト)と言うアイテムと増設双駆動型ブースターで空中を爆走するのが中々楽しい。

 

 まぁ、これも疑似改宗[天覇]で飛ぶことはできるから使い道がなぁ。

 

 とりあえず花の魔術師?知らんな、すっとぼけるのに便利なジョブとでも思っておこう。

 

 後は…

 

提案(おねがい):征服人形のマッチングの場を設けてみませんか』

 

 これをメインジョブに入れてから割と高頻度で征服人形と開拓者のマッチングをしないかコールがやってきていることだろうか。

 

 俺、そんなに知人おらんねんと拒否しているナウ。

 

 

 そんなこんなで事務所に到着すると

 

 

「あ」

 

「……ミナカッタコトニシヨウ」

 

 

 やたら声の渋い幼女のキョージュ?さんと同じマークくっつけたと複数のメンバーが黒板の様なものだしてなんか講義っぽいことしてた。

 

 ……これ絶対面倒ごとになるやつ!

 

 

 〇

 

 

 見なかったことにしたかったキリトだが、ドールフロント付近で木々の剪定や環境整備していた征服人形に捕まってドナドナ。

 

 事務所に逆戻り。

 

 未確認生命体のごとく両腕を拘束され、何とも言えない眼で推定:ライブラリの方に見られながら関係者以外立ち入り禁止(staff only)に運び込まれた。

 

 征服人形接続者(ドール・コネクター)の取り扱い注意や武装がぶっ壊れた時の対処などのレクチャーを受け、呼称『K(キリト)P(プロデューサー)』で登録された。

 

 妥協した結果がこれだ。

 

 だってこの事務員力業でCanonちゃん略してCCとかにしようとしてくるんですぜ?

 

 CCはダメでしょ(オタク並みの感想)。

 

 で、再びマッチングの場を設けてと言う征服人形に即席でどんな人物像の開拓者がいいのかと大まかなアンケートを作成し、提出を求めた。

 

 回答した奴からね、うん。

 

 え、余裕で数百超え始めるぞ?

 

 ……プレイヤー側の選定適当な奴に投げつけてぇ。

 

 

 そんな感じで関係者以外立ち入り禁止(staff only)から解放されると次はライブラリのメンツにカバディの様に取り囲まれた。

 

『ここで殺生はお辞めください』

 

 まじで?

 

 

「えー、捕まりました。キリトです」

 

 キリトはとりあえずこちらへ、と黒板の前に移動させられた。

 

 板書する人もつくの?

 

 そんな重要情報ないぞ?

 

「なんかいちいち捕まるのがめんどくさくなりそうなので少しゲロります。最大防御関係については旅狼のアーサーペンシルゴンに防波堤になって貰っているのでそこを乗り越えてください。一人一問、この場にいるヒトのみ。挙手して、名乗ってから質問をどうぞ。はい開始」

 

「ライブラリのレインゴローです。今キョージュ叩き起こしているので少し待っていただきたいんですが」

 

「待ちません。貴方の質問権はこれでなくなりました。次」

 

「そんなッ!」

 

 メガネのインテリが声を上げるがキリトは却下する。

 

 質問の場でそう言うのが切られるのって定番ですよね。

 

 今の所いるメンバーは10人ちょっと。

 

 「後30分早ければキョージュもいたのに」との声もあったが気にしない。

 

「えー、これ以上抗議の声が上がりますとスクロール使って逃げます」

 

 そう言うとピタッと喧騒は止まる。

 

 最大防御関係は実質的に答えません、と言ったのでとんがった質問はないだろう、多分。

 

 ライブラリーのメンバーが後方で少し集まって作戦会議らしきものを始めた。

 

 それから真っ先に1人の男性プレイヤーが手を上げた。

 

「ライブラリのジョン・ノーです。キリトさんもオルケストラ攻略関係で事務所にいらしたと思われますが、先ほどプレイヤー立ち入り禁止エリアに連行されたことの経緯に付いてお願いします」

 

「先ほど征服人形にUMAのごとく連行されたのは、えー征服人形関係のユニークジョブ生やしたのでそれの受付です」

 

 ライブラリのメンツが一瞬ざわつく。

 

 すぐにもう一人が手を上げる。

 

「そのジョブ名称と詳細を!」

 

「はい、名乗らなかったので却下。あなたの質問権はなくなりました。次」

 

「しくじったッ!」

 

 律儀に回答拒否った流れまで書くじゃん。

 

 しっかり挙手。

 

 名前を名乗る。

 

 質問する。

 

 ステップ順序が書かれた。

 

 スッと次の人が手を上げる。

 

「ライブラリの3ロウマンです。現在のメインジョブ、サブジョブについて教えてください」

 

「メインジョブ征服人形接続者(ドール・コネクター)・サブジョブ傭兵です。次」

 

「ありがとうございます」

 

 ……サッとジョブ入れ替えておいてよかったー。

 

「ライブラリの黒霧島です。征服人形接続者(ドール・コネクター)とはどういったジョブなのでしょうか。またジョブ発生条件をお願いします」

 

征服人形接続者(ドール・コネクター)は征服人形の武装等が使えるようになるジョブです。ジョブ発生条件はバハムート内で発生した、とだけ。次」

 

「ありがとうございます!」

 

「ライブラリの阿寒ボーイです。その素敵な防具はどちらで入手したのでしょうか」

 

「プレイヤーメイドです。次」

 

 ライブラリのメンツが再びざわつく。

 

 ……イーオン製目立つかぁ。

 

 戦闘以外で装備しておくものもうちょい考えておこう。

 

「ライブラリのρ人です。現在のステータスについて教えてください」

 

 ステータス、ステータスか。

 

 最近具体的な数値特に気にしていなかったなとキリトはステータスを開く。

 

「MP・STR・LUC多め。次」

 

「VIT振りじゃないのかッ!?」

 

 再びざわつく。

 

 そこまで意外性のある話でもない気がするのだが。

 

「楓の木のサリーです。キリトさんのオルケストラの進捗お願いします」

 

「クリア済ですね。次」

 

 再度大きくざわついた。

 

 ……そう言えばこの人らオルケストラ攻略でここに集合しているのか。

 

「はい!ライブラリのセートです!世界の真理書「冥響編」は正典でしたか!」

 

「外典でした。次」

 

 再度大きくざわついた。

 

 何回ざわつくんです?

 

 質問の内容的にやっぱ正典あるんだ。へー?

 

「ライブラリの毘猩々磐斎(びしょうじょうばんざい)です。対価をお支払いすればその外典は見せて頂くことは可能でしょうか!」

 

「ダメです。次」

 

 そう答えた直後、ドタバタと音をたてながら小柄なツインテールのプレイヤーが転がり込んできた。

 

「金、金ならいくらでも積もう!」

 

「はい、質問権がないのでおとなしくしてくださいね」

 

「ぐぬっ」

 

 あ、キョージュさん。

 

 今、時計の針頂点向かいかけてるのに元気過ぎません?

 

 声と慕われっぷりが還暦近そうに見えるんですが。

 

「キョージュ、既に質問権だいぶ消費しています。と言うかあと一人です」

 

「詳細はそこの黒板、か」

 

「回答権持ってるのも板書の俺です」

 

 そして現れた教授を含め再度作戦会議が後方で開かれた。

 

 盗み聞きしようと思えばこの距離ならできるんですよ?

 

 しないけど。

 

 

 ライブラリメンバー等が集まり、出してきた最後の質問はこれだ。

 

「ライブラリのチョーコーセー、です。キリトさんのクリアした冥響のオルケストラについて・もしくはオルケストラについての考察をお願いします」

 

「では、オルケストラの考察の方を。簡単ですが、まず結論から。冥響のオルケストラは音楽プレイヤー『ポケットアリアG型10-82119』の付喪神的存在である。数多の所有者の手を渡ったポケットアリアに染み付いたその所有者の思いが色濃く形に出てきているのが戦闘描写でわかるはずだ。受注の前提である征服人形との契約などの関係はアンドリュー・ジッタードールの思いが強いのでしょう。と言った所ですかね」

 

 今度は静寂に包まれた。

 

 

「―――ちょっと待てぇい!」

 

「え、えぇ?」

 

 

 そこまで外れてはいないと思うんだが。

 

 一つ堰が切られると10数人いるとは思えない混沌が発生した。

 

「突然情報で殴らないでくれ!」

 

「質問に答えただけなのになんという言われよう」

 

「え、何、え?ポケ、え?」

 

「ちょっと考察班叩き起こせるやつ叩き起こして!」

 

「もう始めてる!」

 

「板書!」

 

「待て、ちゃんと書いている」

 

 

 ……そこまでの燃料だったかなぁ。

 

 

「あ、日付変わったからログアウトしますね」

 

「あ、ちょ、キリ、キリトさんここで逃げないでください!」

 

「明日も仕事あるのでマジ勘弁」

 

 

 喧騒をよそにキリトは日付変わったから寝よう、と一声かけてログアウトした。

 

 

 キョージュは年甲斐もなく貫徹をし、翌日の仕事に支障をきたした。

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