何も知らない鳴坂和人くん(22) 作:スティック/糊
「旦那様、ちょっとゲーム馬鹿過ぎない?」
翌朝、和人がダメージを食らった話を耳にし朝食を取りながらため息をつく。
「端から見たらドエムの所業だよ?」
「注意深くプレイしていなかった俺が悪い。UWだったら即死だった」
「一般ゲームは楽しむ範囲に抑えておこうね」
「クリアするまではやめん」
そう、和人はゲームこと電脳世界全般に置いてゲーム馬鹿とも言えるほど真摯だ。
物理的に進行不可とならない限り自身の感情を傍らにおいてでもクリアを目指すのが和人と言うゲーマーだ。
「負けっぱなしは趣味じゃないんだ」
「そういう所も嫌いじゃないけどさぁ」
負けず嫌いなところあるんだよねぇ…。
「それで、メンタル回復タイムに入ろうと思う」
「どこか旅行でも行く?」
「ゲームの精神的疲労はゲームで癒す」
「馬鹿かな?」
紗音的にはギャルゲーとかに走らなければ別に良いか。
そんなことを思いながらゆっくりと朝食を食べ勧めた。
「え、クソゲーの話?」
「「まぁ、ある種の」」
「…?」
門河女中の手により用意されたホテルの朝食並みのパンケーキを食べる真登香は、その話について行けずただ首を傾げた。
〇
ゲームのダメージはゲームで。
戦闘中しか回復できないめんどくさいタイプの高性能キャラの様な事を言った和人ではあるがそれはそれ、これはコレとして紗音とデートに出かけた。
以前の約束通りテーマパークへ遊びに行く予定だったが、チケットの有効期限は少し先。
なのでたまには街中をぶらぶらと歩く普通のデートと言う物をしようと執事の門河さんの運転で都心の適当な所に送ってもらった。
見ず知らずの適当な街を散策するのもいい気分転換になる。
論文関係が嫌になった時も和人は何も考えずに適当な近場を散歩する癖があったので、こう言うのは少し懐かしく思う。
「傘、さすか?」
「傘あると旦那様の顔見づらいからイヤ」
「そうか。どこか適当な喫茶店にでも入ろう」
「そこまで気遣わなくてもいいのに」
過度に発達している訳でも田舎感がある訳でもなく、人通りがあまり多い訳ではないそんな街中をだらだらと散歩する。
「こんなデート、久しぶりかな」
「私たち出不精だからねぇ…」
基本自宅内で完結するようなことや、食事に出てもレストランとかに足を運ぶことが多く、彼女の義肢のアップデートを考える切っ掛けになったのもこんな散歩の様なデートだったか。
ちらりと見える都心の公園も小規模で、少子高齢化の波からか遊んでいることもは多くはない。
公園の数も結構少なくなってきたような気もする。
「将来はみんなでのんびり公園で遊ぶのもいいかもね」
「……それも憧れるが皆出不精になる未来が見える」
「偉大な父だ」
「まだ先の未来かもしれない」
「私はいつでも準備出来てるんだけど?」
「式を上げたら、な」
「そう遠くない未来だね」
ちょっとした未来の展望を思い浮かべながら、ゆっくりと歩みを進める。
都心であるため、雪はあまり振らないだろう。
だが、12月を迎えようとしている暦では少し肌寒いかもしれない。
「手、繋いでもいいか」
「welcome!」
「いい発音だ」
「現役女子大生ですから」
「それ、関係あるかな」
昼近くに歩いていれば路面の凍結の心配が少ない事は、都心に住む数少ない利点かもしれない。
和人は紗音の左手を取り、どこか喫茶店がないかあたり見渡しながら適当に歩く。
30分くらい見つからなければネットで調べればいいが、未知の道を歩くと言うのも楽しいものだ。
「あ、喫茶店発見」
「ほんとだ」
住宅が多くあるような道を抜け、少し大きな通りに出ると喫茶店を見つけた。
喫茶ポアロ、か。
美味い珈琲があればいいのだが。
そう思いながらオープンと掛けられた扉を開く。
「いらっしゃいませ」
「―――ッ!?」
「え、あ、旦那様!?」
和人はその扉を開けた先にいた店員の顔を見た瞬間開いた扉を即閉めてその喫茶店が入っている上を見た。
あ、音楽教室なのね。
セーフ。
「某死神の御膝元かと思って焦ったぜ」
「なんて?」
和人は大きく胸をなでおろし、再度店に入店した。
「お客様、転がって来た方ですか」
「そんな感じだ」
テーブル席に案内された和人と紗音はドリンクとケーキを頼みつつ、件の店員と話をしていた。
「特定の人種特攻過ぎるだろ」
「僕としては一瞬で判別できて便利なんですよ」
そう言ってハニーブロンドの髪と褐色の肌を持ったベビーフェイスの男はイタズラっ子の様に笑った。
「え、それは逃げる」
「せやろ」
注文した商品を待つ和人はザックリと先ほど店の上階を確認した意味を紗音に話した。
「ま、僕はポリ公でも探偵でもありませんけどね」
「とても安心」
「この世界混沌としてるなぁ…」
「こちらご注文のケーキセットになります」
サーブされた珈琲とケーキセットは普通においしそう。
紗音の方には紅茶とケーキセット。
「あ、サンドウィッチもありますよ?」
「ネタに走ってるなー」
「趣味と実益を兼ねているだけですよ」
また何かあったらお呼びください、と彼はカウンターに戻って行った。
まさかの転生者エンカウントするとは。
ホームズもどきの死神系名探偵とか人生で遭遇したくない存在第一位過ぎる。
「あ、美味しい」
「そうだな」
「のんびりとするのも悪くないね」
「なんか休日って感じがすごくする」
「在宅ワーク多めの弊害?」
「かもな」
「月に一回くらいはこうしてどこか出かけようか」
「その時の状況に相談して、だな」
「で、少し目を逸らしてたけどアレ、ガンダムだよね」
「フルスクラッチだな」
カウンターの辺りにジオラマが見えた。
RX-78-2。通称:初代ガンダムだ。
「個人的に初期系で行くならゲルググの方が好きだな」
「わかる」
中の人ネタ繋がりか初代ガンダムフルスクラッチとは恐れ入った。
「個人的にはビット飛ばすのが好きだから系統的にはHiνも好きだな」
「そっちはまだ未履修。あ、この後どこかホビーショップ行こっか」
「そうだな」
次の目的地が決まり、店を出ることに。
伝票を手に取り、会計。
「お客さんもプラモお好きなんですか」
「それなりに」
「でしたら少し離れていますが、私の友人が経営しているホビーショップがありますのでそちらもよろしければ」
「ありがとうございます」
褐色の店員に小さなショップカードを貰い、次の目的地であるホビーショップへ向かった。
模型店、AA。
……まさかぁ。
〇
「……プロプラ発売日前だったよね」
「ここまで売れているのか」
ひと先ず量販店内のホビーコーナーを覗くと棚がだいぶ空いている。
棚には〈おひとり様、一点まで〉の注意書きの張り紙もあるレベル。
発売日前……どころか発売日の発表もまだ先だと言うのに中々プラモは売れているらしい。
転売ヤーヌッコロと息巻いていたゼムリア上層部だったが、発売時期と同時にGOすると言っているので12月には品不足は一気に解消されるだろう。
それでもここまでとは…。
「塗料も枯れてるな」
「だね」
「最悪、好きな機体があれば俺が用意する」
「圧倒的パワープレイ」
「ちゃんとキットだぞ」
「“きっと”は副詞じゃなさそうだなぁ…」
目的の物がなかったので次の店へ。
先ほど貰ったショップカードの店である
プラモ?
紗音はサバーニャの最終決戦仕様がいい、とのこと。
ビットいいよね!
和人は気合を入れて作ることにした。
あ、面白い構想思いついた。
ネフホロでためそ。
その頃には和人のメンタル回復し、精々中二時代の痛い過去をつつかれたくらいのダメージだったな、と開き直った。
・喫茶ポアロ店主:安室零。
自身の容姿を見て上店舗外を見るのは大体転生者と言うトラップを有効活用している。
ビジュは名探偵に寄っているが中身のチートはガンダム系。掲示板もガンダム系。
トリプルフェイスではなく、ただの喫茶店店主。
ガンダム板の住民が良く現れるポイントとなっている。
プロプラの白い悪魔になりそうなタイプ。
・模型店:アークエンジェル
常にプラモ用品が尽きることのない隠れた名店。
ショップカードがどこかキャバクラの名刺っぽいトラップが仕込まれている。
・紗音さんとプラモ
手のひらドリルでランナーの持ち替え少なくても切り離しやすい事に気が付く。