ブルアカ監禁SS 作:名無し
“……はぁ…”
このままでは終わる、終わってしまう
頭ではわかっている、これは時が来ただけ、私たちは最初から別の道を歩むべきで…
何事にもいつか、終わりが来るのは当たり前だ
それが、迫っているだけで、私は、先生で、ミサキの道を閉ざすことなんて許されなくて
だからこれが間違っていることはわかっているけど…
私は手放したくない
私はこれを手放すつもりなんて毛頭ない、なんとしても、何が何でも
私は、理解している、こんなのは間違っていると
だけど、それでも、絶対に、手放したくない
“…どうしよう……”
「先生」
“サオリ?どうしたの、今日は当番じゃないよね…?”
「……話があってきた、ここは、安全か?」
“えっと……うん、でも、あまり長居しない方がいいかも、最近私、少し…”
「そうか、監視されている自覚があるようで良かった」
“……どういう…”
そこまで言って、理解した
そうか、最初からサオリは知っていて見逃していたのか、と
“…知ってたんだね”
「……ミサキにも、先生にも、私は…良い人生を生きて欲しいと思っている、だから…」
きっとサオリは、ミサキの幸せ、私の幸せ、その両方を考えて、考えた上で黙認していた
でも、そうだ、それはもう、成り立たない
「……先生、急には難しいだろうが、時間も無い、今夜…日付の変わったあと、朝の1時にシャーレの前に来る」
“…わかった”
今夜……それで私達の関係は終わる
“……”
避けられない、未来だ
「今夜…」
「うん、今サッちゃんが先生にも伝えに行ってる」
「……そっか」
「じゃあ、そろそろ見張を倒したのバレそうだから行くね」
「…わかった」
…そんなにわずかな時間で、私の人生の時間が止まる?
…そんな事、いきなり言われても…
「……先生」
その日、先生が帰ってきたのはいつもより少しだけ遅い時間だった
…それだけの事だった
“…ただいま”
「先生…おかえり」
…ミサキの元気が無い気がした
「サオリから、聞いた?」
“!”
“(…ミサキにも、すでに伝えて…?)”
「……」
ミサキが、私にもたれかかってくる
…温かい、これを私は、失うのか…嫌だ、失いたくない
「…先生…ありがとう」
“…うん”
「私…生きてるのも……悪くなかったよ」
“…そっか、良かった”
“(…本当に、良かったよ)”
2人で食事を摂り、寄り添って時間を過ごした
…ミサキの手を見せてもらったが、特に傷が増えた様子も無かった
見える範囲には、何も、自分を傷つけた様な後は…ひとつも
きっと、きっとそれは、成長と呼べるものなのだろう…
だから、後は、私が背を押すだけだ
押すしか、ないんだ
深夜、遅い時間
私達は、家を出て、2人でシャーレへと向かった
…夜は、綺麗で、暗くて、孤独だった
風が吹いていて、でも、なんの匂いも運んでこない
昼間の喧騒も、車の音も、何も無い
「…2人きりだね」
“そうだね”
…何も無い、今だけは、彼女を傷つけるものも、私を追い詰めるものも
……私を、止める何かもない
「……行きたく、ないな…」
“…なら、逃げちゃおっか”
「……」
ミサキが驚いたようにこちらを見る
…わかっている、これは、甘い毒だ、よく、わかっている
でも、私はその毒をミサキに差し出してしまった
「……先生…」
ミサキは、望んでいるんじゃないか?
今、私の差し出した毒を飲もうとしてるんじゃないか?
それは、善いのか、悪いのか、私にはわかってるはずだ
“っ……ごめん…言ってみた、だけ”
…これが、正しい判断なんだ…
しばらく歩くと、シャーレの前に3人分の人影が見えた
「ここまでで良いよ」
“でも…”
「いいから」
そう言って、ミサキが少しずつ離れていく
“……ミサキ”
“大丈夫、また会おうね”
(…また、か)
ミサキが振り返り、こちらへと戻ってくる
“み、ミサキ?”
「…これ、あげる」
“え?…ミサキ、これは…?”
「私は、コレをもらったから」
“……うん”
私達は、それぞれの人生に帰った
“忙しくて、でも、いろんな生徒に頼られて充実した日々”
「虚しくて、常に気を張って居なきゃいけないような日々」
…でも、確かにお互いが居た痕跡が、お互いの手元にあった
「先生、大丈夫ですか」
“…うん、平気だよ、ごめんね…心配かけちゃって”
「あの…最近ちゃんと休まれてますか?」
“後少しで仕事も片付くし、それが終わったら…旅行にでも行ってみようかな”
「……」
“会いたい人が居るんだ、しばらく会えてないから…会いに行くのもいいなぁ”
「そう、ですか…」
…だから、これはただ、会いに行くだけだから
私は、君を感じていたくて、毎日欠かさずこれを大切に手入れしていて…
漸く、もう一度…
死後の世界、というのは未知だから恐ろしい
私はそう思う
「ミサキ、馬鹿な真似はするなよ」
「馬鹿な真似、って何」
「…それは」
「私に本当の事を隠して、もう2週間も私は待たせてるのに…!邪魔しないでよ!」
でも、死後の世界は未知だから、私は希望を抱いている
「こんな檻に囚われてたら、もう2度と、会うことなんてできないのに…!」
せめて真実を最初から知っていたら、弔われる時に立ち会えたのなら…
それでもこうならなかったとは言えないけれど
私には許せなかった
私が殺した、私が呼んだ、私が、あげたあの銃で
だから私は会いにいかなきゃ行けない、だから…
監視の目が厳しいのをわかってて、それでも無理やり抜け出した
昼間に人通りの多いところを逃げれば簡単にヴァルキューレや自治部隊を巻き込める
これだけの話なんだ、簡単だった
私にはもう、荷物なんて一つしかなかったから
昔はどうして、捕まって止められてたんだっけ…
いや、違う、止めて欲しかったんだ、サオリたちが私の1番だったから
だからこれはそれが入れ替わっただけで…
ただ、誰にも止められない場所に逃げ込んで仕舞えば、いつも先生を感じさせてくれたものが
私の呼吸を塞いで、静かに、ただ終わらせてくれるから
これでようやく逢えるから…
IF END ③