乃木を除く五人の女子とも自己紹介をし合い数分後。 チャイムが鳴り、午前の授業が始まる。勇者と巫女、そして憑人だけの特別な学校と言っても基本は変わらないようで中学生としての義務教育の授業も行われた。 病院にいた時に、中学のドリルをいくつかやっていたことが良かったのか、乃木たちと同等の授業に何とか着いていけていた。
普通の学校と違うのはその義務教育の授業に加えて、例の地球外生命体に対抗するための訓練があると言ったところである。新学期最初の訓練、それと同時に俺の初訓練と言うこともあって、三年前の地球外生命体──いつの間にか“バーテックス”と名付けられていたヤツらと自衛隊が戦った映像を見せられた。
実際の映像故に、内容はかなりグロテスクな物だった。人類が死を繰り返しながら作った兵器はただの鉄くずにすぎなかった。戦車も銃も、大砲も一切効かず、 一方的に貪られているそんな映像。正直、中学生に見せるような映像では無かった。しかし、これからそんなヤツらと戦う俺たちには必要なことで……唯一対抗できる存在なのだと、言い聞かされているような感覚がそこにはあった。
頂点の意味を持つバーテックスと言う名は、確かにヤツらに相応しい。──そう思い知らされた、午前の授業だった。
◈◈◈
昼休憩も過ぎ、午後の授業。
午後の授業は座学では無く、ヤツらに対抗できる力を持つための訓練が予定されていた。俺は初めて、と言うことで手始めに乃木たちの訓練や模擬戦闘を見学させて貰った。
訓練と模擬戦闘を一通り見た感想だが、五人の中で一番、動きが洗礼されていると思ったのは乃木だった。 彼女の幼馴染と言う、
それを聞いて、納得をする。無駄一つない剣筋は、バーテックス襲撃後から始めたにしてはできすぎていると思えたからだ。
(そんなことより、容赦なさすぎだろ……)
一通り流れを掴んだので、乃木たちが終わった後に俺も訓練を始めた。本来であれば実力を見るために、乃木たちと模擬戦闘をするらしいのだが、男女で力の差が違うとの理由でガタイのいい男の指導者とやることになった。しかし──結果は知っての通り、惨敗。それはそれは、清々しく。そして、痛いほどに分からされた。
自分は勇者の称号を持つ乃木たちとは違うのだと。
自分は所詮、
「祐〜大くん♪」
「うぉっ!?」
圧倒的な実力の差に、らしくもなく落ち込んでいると背後から俺の名を呼ぶ声が聞こえた。それと同時に冷たい感触が首筋から感じる。突然のことに、何とも間抜けな声を上げて振り返るとそこには、水のペットボトルを持った赤髪の少女がしてやったりと言いたげな満面の笑みで立っていた。
「──
「お疲れ様、ボコボコにやられてたね」
高嶋
「……身体より先に精神が限界を迎えそうだ」
「あはは……でも、初めてにしては期待以上だーって言ってたよ? 私も見ててそう思ったくらい」
「そうだと良いんだが……」
俺の隣に座った高嶋からそんなことを言われる。彼女も乃木に似て幼い頃から武道を習っていたそうで、それを証言するかのように身体の使い方がずば抜けていた。経験者からそう言われると当然、嬉しく思うのだがやはり悔しさが勝つ。
少しの間が空いた後、「そう言えば……」と高嶋が俺の方を見つめてきた。
「祐大くんは憑人って言う存在なんだよね? それって一体どう言う奴なの?」
「どう、なんだろうな……できることなら教えてやりたいが、何故かそこだけ記憶が無いんだよ」
死に際に出会った獣に魂の所有権を譲ってから、記憶が一切無い。大量の出血から起きた貧血で気絶したのが原因だろうが、おかげさまで大社の言う憑人と言うものがどう言うものなのか自分でも分からなかった。
「そっかぁ……でも、バーテックスと戦うことになったらきっと分かるよね」
「あぁ、そうだろうな。正直、戦いたいとは思わないが……」
世界の存亡が自分たちに懸かっていると言うのは、俺たちには荷が重い。もう少し、人数がいたのならプレッシャーもそこまでじゃないだろうが現実は俺たち六人のみ。兵器さえも効かない桁違いの存在と戦いたい、なんて命知らずな考えはそう簡単に持てるものではなかった。
情けないほど未熟で、無力である俺の今の目標は、バーテックスとの戦闘までに足を引っ張らない程度に実力をつけること。そのためならば、例え精神が壊れようが、身体が壊れようが、血反吐を吐く努力をしてやろうと胸にやる気の炎を燃やす。
「……よーし、休憩終わり! ねぇ、祐大くん」
「ん?」
そう言って立ち上がり、無邪気に笑う彼女からは、
「ちょっと、私の動きを見てよ」
ふんわりと、
季節外れの桜の匂いがした。