元宮チアキではなく、“元”チアキ   作:元宮チアキ以外の誰か

1 / 35
実装おめでとう
私は嬉しいよ

私はマコトでもイロハでもサツキでもイブキでもないけど、祝福の言葉を送らせてほしい


こんにちはではなく、さようなら

拝啓

 

これを読んでいる誰かへ

 

あなたは『元宮チアキ』という少女を愛していますか?

好きですか?

 

 

 

私は、分かりません。好きなのか嫌いなのかも。

 

 

__だって、何も知らないから。

 

 

 

 

 

元宮チアキ

 

ゲヘナ学園における生徒会、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の書記

 

カメラを持ち歩き、様々なことを記録していく陽気な少女

他のメンバーと同じく、イブキを溺愛している

 

 

 

それだけ

 

 

 

『私』はそれ以外、彼女のことを何も知らない。

 

年齢も学年も誕生日も身長も体重も趣味も声帯も……

 

 

__何も、知らない

 

 

 

 

 

好きなもの、嫌いなもの、いろんなものがあると思う。

 

じゃあ、ここで質問。

あなたは『ジニルミカ』というキャラは好きですか?

 

この質問には誰もが『いや、知らないけど』ってなるに違いない。

 

今の自分は、これだ。

好きになるにも嫌いになるにも、何も知らないのだから答えられない。

 

――

 

『私』はファインダーを覗き込み、目の前でお絵かきをしている小さな子供をファインダー越しに見つめる。一眼レフのカメラは、お絵かきに夢中な子供の姿を捉えたが、ファインダーの中の子供はお絵かきに夢中で私の視線に気付く様子はない。

 

パシャリ、とシャッターを切る。

 

子供の写真を撮る、という行為が楽しいのか、それともファインダー越しに見える子供の仕草に心を奪われたのか、はたまた、『義務感』なのか。

それは分からない。ただ私は夢中でシャッターを切り続ける。

 

ファインダーの中の子供はお絵かきに夢中で、私が写真を撮り始めたことにすら気付いていない。

 

「できた!」

 

描いていた絵が完成したのか、子供がそう声を上げた時、満面の笑みを浮かべた。

それはそれは幸せそうで、純粋で、私には無い輝きだ。

 

私は、その瞬間を見逃すことなく、シャッターを切った。

 

 

パシャリ

 

 

「あ!チアキ先輩が写真撮ってる~!」

 

そこで子供、イブキはようやく『元宮チアキ』の存在に気が付いたようで、こちらへと振り返る。そして、『私』とファインダー越しに目が合うと再び満面の笑みを浮かべた。その笑顔を記録するべく、私も再びシャッターを切る。

 

パシャリ

 

「……イブキちゃんは可愛いねぇ」

 

私は小さく呟く。ファインダー越しにイブキが『チアキ』に向ける笑顔はやはりとても眩しくて、 私は思わず目を細めた。イブキが『チアキ』に向けているのは、ただ無邪気さから来る笑顔なのだろう。私がイブキに向ける笑みとは全くの別物だ。私は『チアキ』とは違い、偽りだらけの汚い人間だから。

 

__でも、この笑顔は好きだ

 

そんなことを思いながら私は何度も何度もシャッターを切った。イブキは屈託のない笑みを浮かべる。

 

イブキは知らない。自分がどんな理由で写真を撮られているのか、『私』がどんなつもりでカメラを向けているのかを。

無邪気にこちらへ手を振るイブキをファインダー越しに眺めながら、私は口角を上げた。

 

――

 

また、夢を見る。

 

いつもと同じように、夢の中で『彼女』を追い求める夢だ。

 

 

 

「チアキせんぱーい!」

 

イブキが無邪気な笑顔で抱き着いてくる。

それを写真で記録する。

 

 

 

「チアキ、頼まれてた新聞の文章、考えてきたわよ」

 

サツキが新聞の1コーナに載せる原稿を渡してくる。

それを確認して、印刷する。

 

 

 

「げっ……見なかったことにしてくれませんか」

 

イロハがサボっている場面に出くわす。

それを受け取った賄賂(お菓子)で見なかったことにする。

 

 

 

「キキキッ!よくやったなチアキ!これで私の名声は……」

 

マコトが『チアキ』を褒めている。

それを素直に受け取る。

 

 

 

万魔殿は、ゲヘナは、キヴォトスは、何とか回っている。

この顔面に『元宮チアキ』を張り付けた化け物でも案外何とかなるものだ。

 

__本当か?

 

 

 

楽しく笑いあっている万魔殿のメンバーをファインダー越しに見る。

万魔殿は、ゲヘナは、キヴォトスは、本当に何も問題がないだろうか?

 

__返せ

 

 

 

私はそう自問自答する。

 

 

 

 

 

 

答えは、否だ。

 

 

『私の体を!未来を!!返してよ!!』

 

後ろから『元宮チアキ』が『私』を壊していく。

『中身』を取り出そうと、引き裂き、壊して……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」

 

目が覚めた。

 

 

「はぁっはあっ…………」

 

呼吸を落ち着けながら、寝る前に用意していた水を口に含み、『罪』と一緒に飲み込む。

 

 

あれは『元宮チアキ』だ。

きっと本物の。

 

 

 

もしくは『私』が想像で作り出した『偽者』

 

__本物のチアキはあんなことしないはずだから

 

 

 

偽者が作った偽者、ということだろうか。

何と滑稽なことか。

 

 

「ははっ…………」

 

自分で自分をあざ笑いながら、ベッドの横に設置した小さな鏡を見る。

酷い顔をしていた。

 

 

当たり前だ。

1人殺しているのと同義なのだから、人殺しの顔をしている。

 

 

 

でも、『元宮チアキ』はこんな顔をしない。

ぐにぐにと顔の肉をほぐして『元宮チアキ』の顔にする。

 

__チアキは、陽気で明るい子だから

 

 

 

「……よし」

 

壁に貼り付けたイブキの書いてくれたイラストを見て、微笑む。

 

__チアキはイブキが大好きだから

 

 

 

チアキは目元に隈なんて作らない。

だから、早く寝よう。

 

飲み込んだ『(睡眠薬)』が体に染み渡り、だんだんと意識は闇へと落ちていく。

 

 

 

元から真っ黒だった意識が闇に落ちると、どこへ行くのだろうか。

 

 

 

 

ベッドと机と、椅子。壁に貼り付けられた何枚かの写真とイブキの絵。

それしかない部屋で、『私』は今日も眠る。

 

 

ああ、『チアキ』は部屋に何を置いているのだろうか。

どんな生活をしているのだろう。

 

 

私は、知らない。『元宮チアキ』のことを、何もかも。

 

 

 

 

 

__誰か、教えてほしい。

 

 

 

――

 

「マコト先輩は……これ!」

 

イブキは長い猫、『ウェーブキャット』というキャラクターのぬいぐるみを手に取り、かごに入れる。

 

「そうですね。マコト先輩は猫が好きだからきっと喜んでくれると思いますよ」

 

付き添っているイロハはそれを肯定する。

2人は日課のお散歩(パトロール)を終え、帰り際に偶然見つけたショップに立ち寄りお土産を探していた。

 

「サツキ先輩はこれ!」

 

続けてサツキの分もかごに入れる。すでにかごにはイロハとイブキのお菓子も入っている。

 

残りは、チアキの分だ。

 

 

 

「う~ん……」

「……どうしました?」

 

ササっと決まったマコトとサツキのお土産と違い、イブキはしばらく悩みに悩んでいた。

 

「チアキ先輩には何がいいんだろう……」

 

イブキは『彼女』の好きなものを知らない。

だから、頼れる先輩に訊ねる。

 

「イロハ先輩は、チアキ先輩が好きなもの、知ってる?」

「…………そうですね」

 

イロハは、考えた。

 

「イブキが選んだものなら、きっと何でも喜んでくれるはずですよ」

「そうだね!」

 

ニコニコと笑顔で答えたイブキは、マコトと色違いの物をかごに入れ、レジに向かった。

 

その後をイロハも付いていく。

 

(……本当に何が好きなんでしょうね、チアキは)

 

 

 

誰も、『元宮チアキ』のことを知らない。




和泉 元エイミ【https://syosetu.org/novel/341092/】を参考にしてなんか書こうと思ったけど無理だったので続きません。

【2025/05/07】
本人には許可を貰っています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。