元宮チアキではなく、“元”チアキ   作:元宮チアキ以外の誰か

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エイミが裏主人公みたいになってますが、理由は一話後書きを参照してください。次の次からチアキ視点に戻ります。




ゲヘナではなく、ミレニアム

__ミレニアム、某所

 

「……それで、個人的に興味を持ったヒマリ部長が『元宮チアキ』の調査を開始。私が本人を尾行している最中に『的場サトカ』を発見しました」

「やはりブラックマーケットに……」

 

ミレニアムサイエンススクールの生徒会長、調月リオは自身の部下である和泉元エイミから報告を受けていた。

 

かつて方向性の違いで仲違いし、行方をくらませてしまった的場サトカが、偶然とはいえ発見できたのだ。

 

ここまで捜索していながら見つかっていなかったにも関わらず、発見できたのは『セミナー』でも『C&C』でも『ヴェリタス』でもない『エイミとヒマリ(特異現象捜査部)』が『的場サトカ』ではなく『元宮チアキ』を追っていたからだろう。

 

直接追いかけていれば、警戒されて逃げられていたに違いない。

 

急に他校の生徒会メンバーを調べ始めたヒマリには少々困ったものだが、サトカが見つかったとなれば十分にお釣りが来る。

 

まあ、ヒマリもエイミもやるべき事をやった上で個人的に調べていたのだから、リオ自身このことに対して文句を言うつもりはない。

 

「……ただ、サトカは精神疾患の疑いがある『元宮チアキ』の『治療』をしていたようで、発見したタイミングでそのまま確保してはゲヘナの運営に多大な影響が出てしまう可能性を考慮し、一旦報告に来ました」

「なるほど」

 

エイミの自己判断でサトカを捕まえてここまで連れてくることはできた。いや、『特異現象捜査部の部長』だった頃のエイミなら、問答無用で連れてきていたはずだ。

 

――ヒマリの影響だろうか

 

リオが、エイミと同じ『推薦』でミレニアムに入学させたコユキと違い、考え方が自分に近い上に身体能力も素晴らしいエイミは、手元に置いて飛鳥馬トキと同じく直属のエージェントとして育てていた。だが、デカグラマトンの宣戦布告を受け、現在はヒマリの手に渡っている。

 

それ以来、彼女の中にヒマリの色が少しずつ染み始めているように感じる。近いうちに、何らかの対処を考えるべきかもしれない。

 

いや、それよりも今は――

 

“サトカを確保すること”が先だ。

 

エイミの報告によれば、元宮チアキを通じて『空崎ヒナ』もサトカの存在に気づいたらしい。

 

風紀委員という目立つ存在が動けば、せっかく発見したサトカが再び姿を消してしまう可能性は高い。

 

となれば、善は急げだ。

 

「そうね。明日にはサトカの確保に向かうことになると思っていなさい。C&Cやセミナーを動かせば、サトカにバレてしまうでしょうから、エイミ」

「はい」

「あなたが捕まえてくるのよ」

 

もちろん、トキを使う手もある。しかし、サトカの居場所は割れており、彼女自身の戦闘力もそれほど高くはない。エイミ一人でも、十分すぎるほどだ。トキを出すほどの案件ではない。

 

「分かりました。……ちなみに、ゲヘナへの対応はどうするつもりでしょうか?」

 

エイミの問いに、リオはわずかに眉を動かす。

 

ヒマリの部下になって以来、エイミは“他人のこと”をより考えるようになった――リオはそう感じていた。それ自体は良いことだが、ヒマリの影響だと思うと、どこか釈然としない感情が湧いてしまう。

 

その心のわだかまりを表に出さず、リオは静かに口を開いた。

 

「そうね。まずはその元宮チアキだけれども、サトカの『奉仕活動』の一環として『治療を続けさせる』ことにするわ。但し、『正当な』方法で」

「なるほど」

 

チアキの精神的な不調が元々のものか、それとも最近のものか。リオには判断できないが、そこにつけ込んだのがサトカであることは明白だった。

 

サトカの作る薬品は、法で規制されるような強い依存性のあるものばかりだ。

 

大方、ブラックマーケットで成功して自分の正しさを示そうとしているのだろう。

 

「しかし、それを大々的にしてしまうと、エデン条約を控えた万魔殿は事実を隠蔽しようとし、取引を拒否してしまう可能性がある。でも、幸運なことにチアキは『広報』の役割も兼ねているようだし、交換留学……、いや取材の名目で滞在させつつ、こちらで治療しながら匿う方針よ」

 

サトカに逃げられてしまったのはミレニアムのミスだ。それ故に、この後始末は自分でつけるべきであり、ゲヘナ学園に迷惑をかける訳にもいかない。

 

チアキを調べていたからサトカを捕まえたのではなく、サトカを捕まえて調べていたらチアキに辿り着いたと説明しておけば向こうは納得するだろうか。

 

エデン条約を控えた万魔殿はスキャンダルは控えたいはず。

 

それを考慮するとチアキはミレニアムで匿いながら『元に戻す』のが最善だろう。

 

幸い、ミレニアムにはメンタルケアを専門として学んでいる生徒も何人か居る。

 

「……分かりました。ヒマリ部長にも伝えておきます」

「よろしく頼むわ」

「はい。失礼します」

 

部屋を出ていくエイミの背中を見送りながら、リオは小さく息をついた。

 

(エイミ……あなたにも“居場所”ができたのね……)

 

孤立していたエイミに、“特異現象捜査部”という居場所を与えたのはリオだった。

 

だが、それが真に安心できる場所となったのは、ヒマリが部長になってからのことなのだろう。

 

エイミが“ヒマリの隣”に自分の居場所を見出したことは、喜ぶべきことなのかもしれない。けれど、リオの胸の内には、わずかな喪失感が渦巻いていた。

 

それでも、リオはミレニアムの生徒会長として、エイミだけでなくミレニアム生徒たち全ての“居場所”を守るために、今日もその責務を果たしている。

 

いずれ巣立っていく彼女たちを見届けるのが、生徒会長の務めだ。

 

だからこそ――

 

それを乱そうとする的場サトカの確保は、急がねばならない。




【キャラクター紹介】

的場サトカ

████開発部の元部長。現在は廃部になっており、別の医療系部活に吸収されている。

サトカは、ミレニアムから指名手配のような形で捜索されている。見つけると報酬金が貰えるので部費に頭を抱える生徒が探しに出かけることもあるらしい。

「治療」を最優先に考える人物だったが、副作用として「強い依存性をもつ薬品」を作り出してしまったことで状況が一変。この薬の投与で患者は薬を積極的に求めるようになり、確実に治せるようになる。決めたとおりに薬を摂取してくれない患者に頭を悩ませていたサトカにとってこの薬はまさに天啓だった。そこからサトカは、作る薬にあえて依存性を持たせるようになり、その是非を巡ってミレニアム会長と揉めたことで自分からミレニアムを出る。そのまま無法者の街「ブラックマーケット」で薬売りとして生活するようになった。書類上は『停学中』らしい。

BMで依存性の高い薬品を売り続けているが、決して薬物中毒者を増やし、金儲けがしたいわけではない。あくまで彼女なりの「治療」の信念に基づいた行動であり、アフターケアも一応行っている。

だが、何故そういった薬品が規制されているのかをあえて考えず、その上強い依存性による過量服薬を考慮していなかったりと、彼女もまた完璧ではない。



サトカの設定は過去を含めて深くまで考えていますが、それは本編に直接関係はないことだし、『僕の考えた最強の生徒』を書きたくてこの作品を書いてる訳ではないのでこれ以上開示する予定はありません。
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