元宮チアキではなく、“元”チアキ   作:元宮チアキ以外の誰か

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確認してたら戦闘シーンが気に入らなくなっちゃって無限に書き直してました。
すいません。


狙ったのではなく、願った

『元宮チアキ』のExスキル『本当ですか?』は、3発+1発の計4発で構成される単体攻撃スキルである。

 

──ただし、この攻撃において『会心』は発動しない。

 

想定通りのダメージしか出ないのだ。

 

 

 

 

 

「やめろッ!ここは銃火器使用禁止だぞッ!!」

 

サトカがそう叫ぶと同時に、視界にとらえていたはずの和泉元エイミの姿が消えた。いや、消えてはいない。反応できない速度で飛び掛かってきただけだ。

 

床を蹴った足音、乾いた靴底の音が一瞬遅れて届く。

 

「……ッ!」

 

気が付けば、和泉元エイミが手を伸ばせば届きそうなところまで迫ってきている。

 

だが、その時には既にチアキは、銃に込めた弾丸を撃ち出す準備を整えていた。

 

とにかく、どうにかしなければと『私』は、震える指で引き金を引く。何かを考える余裕なんてものは、とうの昔に失くなっている。ただ撃つこと。それしか思いつかなかった。

 

耳をつんざく破裂音。

 

こうやって『銃』を使うのは、初めてだった。

 

腕が跳ね、銃口が跳ぶ。ブレた。

本来はまっすぐ飛んで行くはずの3発の弾丸は、赤黒い光を放ちながらも、それぞれ別な方向へと飛んで行く。

 

「……やば」

 

そう、小さく零したエイミ。彼女に命中したのは3分の1だけ、1発が左肩に命中している。残りの2発がどうなったかは分からない。それに、当たってはいるが大したダメージにはなっていない。前世の感覚で言えば、膝を擦りむいた程度の傷にしかなっていないのだ。

 

あの和泉元エイミが、その程度のダメージで怯むわけが無い。銃撃を一切気にかけることなく、こちらに向かってきた。

 

速い。

さっきまで距離があったはずなのに、もう目の前に――

 

「ひっ……!」

 

体が勝手に後退る。腰が抜けそうだ。

刹那、チアキの視界の端で、何かが倒れるのが見えた。

 

 

 

 

 

エイミが止められなかった2発の弾丸。1発はエイミの脇腹を掠ったが、もう片方は掠りもしない。しかし、どちらも『命中』はしていた。

 

それらは、サトカの背後にそびえたっていた薬品棚を直撃していたのだ。留め具は破損し、金属の軋みが室内に響く。支えを失った棚がサトカを押しつぶそうと迫った。

 

危険なのは、その重量よりも中に収められている薬品である。

薬品をそのまま被れば、ただでは済まない。

 

「ひぃーッ!!」

 

サトカは、拘束された体を必死にねじった。派手な音を立てながら、サトカのすぐ脇に薬品棚が崩れ落ちた。

 

今まさに目の前でエイミと相対しているチアキよりも『マジ』な死の恐怖を感じたが、転がるようにして間一髪、倒壊から逃れることに成功する。

 

サトカは、ギリギリで助かったことにほっと一息ついた。だが、棚に収められていた薬瓶が割れ、中身が混じりあいながら床に広がっていく。ツンとした化学の匂いが、アジトに立ち込めた。

 

「マズい、揮発性が……気化するぞッ!」

 

瞬時にサトカは、何がこぼれたのかを理解して、叫んだ。

 

 

 

 

 

「……!」

 

その警告に、エイミの注意が一瞬逸れる。

だが、その警告すらも、もう『私』には届かなかった。

 

一瞬だけ生まれたエイミの『隙』、それを『好機』と見てしまった私は『最後の一発』を込める。チアキの銃が、先ほどまでとは比べ物にならないぐらいの禍々しい光を放ち始めていた。

 

しかしそれでも、エイミは動揺する様子を見せない。むしろ今度こそ受け止めるという『不屈の意志』すら感じてしまうほどに、冷静だった。

 

 

 

頼もしかったエイミが、怖い。怖い。でも――

でも、撃たなきゃ。サトカを、助けなきゃ。

 

 

 

『証拠』を、消さなきゃ。

 

 

 

最後の弾が、私の中で脈打つように熱を持つ。

 

もう一度、引き金に指をかける。

 

私を見つめるその目に、わずかな揺れが見えた。

……エイミは、避けない。

 

止める気なのか、自分の体で――?

 

「やめろ!本当にそれはやばいッ!」

 

サトカの声が、また響いた。けど、もう遅い。

 

チアキは、最後の一発を構えた。心の奥が熱を持ち、焼けるように痛む。

 

それに気づかない振りをして、引き金を引いた。

 

弾は先ほどまでと同じく、ブレる。

 

だが、今度は大きく逸れることはなく、エイミの眉間をめがけて飛んだ。

 

 

 

エイミに命中する瞬間、彼女はそのまま頭を突き出した。

変な音がした。肉の鈍い衝突音。そして――

 

その弾は、天井へと跳ね飛んだのだった。

 

 

 

サッカーにヘディングという技がある。アレのように、エイミは額でチアキの渾身の一撃を弾いたのだ。

 

『世界線』によっては大型ボスを一撃で葬り去るような弾丸を、だ。

 

 

 

その判断は悪くない。

チアキの弾は体に当てたところで止まるような攻撃ではないことを、エイミは発射された瞬間に理解した。

 

しかし、避けては被害が拡大する。そこでエイミはとっさの判断で、弾を『上』に向けて弾いたのだ。

 

これならば、機器や薬品に命中して被害が拡大することはない。

 

──筈だった。

 

 

 

軌道を変えた弾丸の先には、粗末な照明。

 

鉄製のフレームが揺れ、古びた天井から剥がれ落ちた。落下した照明は、薬品の混ざった床に衝突し、内部の電源部分が破損する。小さな火花が、濡れた床を走った。

 

 

 

しんとした空間に、化学反応の始まりを告げるような空気の変化が広がる。

 

最初に叫んだのは、やはりサトカだった。

 

「引火するぞッ! このままだと『証拠隠滅用』に仕込んである爆薬に誘爆する……ッ!!」

「……え」

 

衝撃で脳が揺れて、一瞬フラついていたエイミがやや遅れて理解する。

 

ここでチアキは、無表情で感情の見えなかったエイミの表情に、初めて感情らしい感情を見た。驚きと焦り。無表情だった仮面が一瞬崩れる。

 

チアキの息が止まる。ようやくチアキは『自分が何をしているのか』を理解したのだ。

 

けれど、時すでに遅かった。

 

サトカの声も、エイミの息も、何もかもが遠ざかっていく。

『私』の中で何かが壊れた音がした。

 

――ああ、やってしまったんだ。

 

『私』が後悔する間もなく、空気が、熱に膨れた。揮発した成分が一気に火に引き寄せられる。反応は早かった。わずかな火点が広がり、床下に埋め込まれた装置へと火が届いた瞬間――。

 

閃光がすべてを包み込んだ。

 

音も、色も、匂いも、一気に消えていった。

 

そして、ブラックマーケットの一角から、ひとつの廃ビルが激しい爆炎と共に姿を消した。

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