モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった… 作:レイトントン
クロロたちの念を目覚めさせるため、とりあえず一番丈夫なウボォーギンに実験台になってもらうことになった。
ゆっくり起こす方法はなんかちまちましてて俺の性に合わない。とっととビックリさせて起こした方が本人たちも楽だろう。
ただどのくらいで怪我なく目覚めるかは分からないので、ウボォーに体を張ってもらう。といっても、危険はない。
俺は指先からビー玉くらいのオーラの球を威力抑えめで放つ。ぺち、とウボォーの厚い胸板にぶつかるが、何の痛痒もなさそうだ。
「どう?」
「なんも感じねえ」
「じゃー次はもうちょい強めるわ」
こんな感じで少しずつ念球の威力を上げていき、ちょうど良い強さを調節する。俺が放出系で良かったぜ。
パシ、とほどほどのショックをウボォーに与えると、彼の精孔が開く。
「おお……」
「オーラを体に留めといてな。やり方はさっき言った通りで」
どんどん男衆の念を目覚めさせていく。
女の子たちはレンコという女性の下で修業するらしい。俺のところにはクロロ、ウボォー、ノブナガ、フィンクス、フェイタン、シャルナークがいる。
クロロとシャル以外はかなり喧嘩っ早く歳の割にガタイも良い。反抗されたらどないしよ……と思っていたが、意外にも彼らは素直だった。
俺の指導をよく聞いて、念の習得に励んでいる。が、やはりセンスの差はあるようで、クロロがトントン拍子に纏、絶、練とクリアしていく中、他のメンバーはところどころ躓きながらもなんとか付いてきていた。
2年が経つ頃、メンバーたちの『練』はかなり高まっていた。
クロロ以外はまだ能力開発の段階には至っていないが、纏と練を丁寧に繰り返し続け、かなりの練度で発揮できるようになっている。
彼らの才能もあるだろうが、何よりモチベーションの高さがそうさせるのだろう。
が、彼らも多少壁にぶつかっている。基礎四大行から派生した応用技だ。
「おーし。次は堅ね。目標3時間」
「うー、キッツ……」
シャルは堅が苦手らしい。が、練で増幅したオーラを維持する堅は、操作系のため強化系の習得効率が悪いシャルは覚えておいて損のない技術。あくまで応用技で、能力開発とは関係がないものだからな。
逆に、脳筋どもは凝や流といった細かいオーラの移動が苦手らしい。
「凝と流は念の戦闘なら必須だから精度上げろー。フィンクス、フェイタン遅いぞー」
「ッス! すんませんッ」
「ハーイ」
ヤンキーみたいにビシッと頭を下げるフィンクスと、対照的にすげー軽いフェイタン。
まあ、遅いって言いはしたけど、一般的にどのくらいが標準なのかは分かってない。
さすがにネテロレベルを求めるのは酷だろうが……俺の中で勝手に決めた水準に従わせている状態だ。ちょっとカラめに判定させてもらうぜ……
ノブナガは円がかなり得意なようで、よく練習している。そろそろ能力開発に手を付けてもいい段階かもな。
フランクリンは放出系ということで、俺と似たような放出系用の訓練をしている。
片手を地面に付けて逆立ちし、オーラの放出で体を浮かせるというもの。
「苦戦してんなー、フランクリン」
「……ムズイぜこれ。オーラを一気に爆発させる感覚は練で掴んだ。が、それを押し出すのがな」
「まあ、そこがクリアできればもう放出系の基礎はガッチリ固まったようなもんだ。地道にやろうぜ。時間はたっぷりある」
焦るとロクなことにならないからな……
修業を付ける中で感じたのが、彼らの諦めと怒りだ。サラサちゃんを殺した連中への復讐心に溢れている。
こんな地道な修業で不満を垂れないのが不思議なくらいだ。長く成果が出ないとあっては、苛立ちは募るばかりだろう。
また、フランクリンはマジでイカれていた。あいつ念弾の威力が上がりそうだからって指を全部切り落としやがったのだ。
『上がりそう』で指を落とすな! ヤクザでもドン引きだよ!!
しかし、それで本当に威力が上がってしまうのだから、念能力ってやつは恐ろしい。
誓約と制約が念の威力を底上げするとは聞いていたが、覚悟キマり過ぎだろ……
俺はフランクリンがプレッシャーやら劣等感やら感じたんじゃないかって悩んだんだぞ! かと思ったのに全然思い詰めた様子もないし、なんで指落としてケロッとしてんだよ!!
ツッコミに疲れるような出来事だったが、フランクリンが『
ノブナガは円を自分の居合の間合いまで広げることに成功したし、フィンクスは腕を回した回数だけ拳の威力を上げる『
クロロは強力な能力を盗む能力『
「ただ、シャルの能力はちょっと不安だよな。アンテナ相手にブッ刺せば瞬殺なのはすげーけどさ」
「ユータ様……オレのアンテナが素肌に刺さらないのはアンタとウボォーくらいだと思うよ」
「分かんないじゃん……2人いるなら他にもいるかもじゃん……? 周とか硬とかも覚えた方がいいんじゃね?」
多分暗黒大陸にいるモンハンモンスターたちには刺さらないし……
「……ま、アンタが言うならそうしよっかな」
「お……良い心がけ」
よしよし、とシャルの頭を撫でてやると、やめろよーと恥ずかしげに反抗してくる。
生意気そうな子供たちだったからきちんと指導できるか心配だったが、思いの外素直な可愛いやつらだった。
流星街には神が棲む。
何十年も昔、流星のような龍と共にこの地に落ちてきたそうだ。眉唾な話だが、乳母衆や長老連中などは口を揃えて事実であると語る。
オレももちろん信じてはいなかった。
たしかに、流星教の現人神……ユータと名乗る青年は、獣を狩るハンターとしては十分すぎる実力を持っていた。
大きなトカゲのような怪物をいとも簡単に仕留めているのを見た。遠目に見えた様子ではあくびすらしていて、僕が簡単に食い殺されてしまいそうな怪物相手にも退屈しているようだった。
オレの何倍もある巨体を持つ熊をあっという間に葬ったこともあるらしい。ただ、人と人との争いには関わりたがらないようだ。
猛獣専門のハンター。何十年か前から、各地に強力な猛獣、モンスターが出現するケースが増えてきているらしい。
そういった情勢を鑑みて、流星街にもモンスターが現れないとも限らないと考えた(実際、流星が落ちる前からたびたびモンスターは出現していたらしい)流星教の人たちは、彼を神と崇め貢ぎ物をすることで守ってもらう契約を結んだのだろう。
その割には、崇拝の度が過ぎているような気はするけれど……
流星街の中でもはみ出しもの気味な彼らだけど、気持ちは分かる。人は何かに縋ってないと、簡単に心を壊してしまう。
ともかく、オレはそういった情報を見たり聞いたりして、ユータという人物はいわば用心棒のような存在なのだと解釈した。
それが間違いだと分かったのは、ある事件を目の当たりにした時だ。
その日、流星街中で地響きがしていた。
原因はすぐに分かった。
流星街のど真ん中に、くず鉄でできた巨龍がいた。
そいつは流星街のくず鉄をどんどん吸収して、どんどん体を大きくしていく。
山のような巨体。それがオレたちを害そうとするものだというのは、嫌でも分かった。
あいつが見える範囲にいる人はパニックに陥っていた。
後から聞いた話だけど、あの巨龍は金色の蟷螂がくず鉄を糸で繋ぎ合わせて作ったものだったという。いわゆるモンスターの襲撃。でも、それまでとは規模が違った。
あいつはゴミ山を吸収しながら移動している。このまま行けば、流星街の全てはあいつに吸収されてしまうだろう。
そうなれば、もう止める方法なんてないんじゃないだろうか。
いや違う。今の時点で、あんな巨大な怪物を止められるわけないじゃないか……
オレは立ち尽くしていた。恐怖で足が竦んだ、というわけではない。意味がないからだ。
「おい、シャル。何してんだ、逃げるぞ!」
「早く行こう、ヤバいよアレは」
いつのまにか近くに来ていたフランクリンとクロロに促されるけど、それでもオレは動けない。
逃げたとしても、オレたちが生きていける場所なんてこの流星街以外にはないんだ。一体どこに逃げるっていうんだ。
「おー……アトラル・カね。このレベルの文明のゴミを纏ってるのは強そうだな……戦車砲とか撃ってくんじゃねーの」
ぼそり、と呟かれた声は、こんな絶望的な光景を前にして、なんだか気楽な色をしていた。
振り返ると、そこには流星の鎧を纏った男がいた。
彼は現人神と呼ばれる男だった。
「お? 君たち逃げ遅れ? ここはあぶねーからよ、俺が進む反対に走りな」
ぽんぽん、とオレたちの頭を軽く撫でた男は、躊躇いなく軽い足取りで巨龍の方へ進んでいく。
鼻歌でも歌うような落ち着きようで、彼の背丈ほど大きな剣を得意げにくるくると回しながら。
やがて彼はくず鉄の龍のもとに到達し……それを破壊し尽くすと、金色の蟷螂と熾烈な戦いを繰り広げ、そして打ち倒した。
激闘だった。
彼の予想通り、無数の火器が彼を襲った。
余波による暴風はオレたちのもとにまで届いた。
しかし彼は楽しそうだった。
「よぉ、ありがとな蟷螂。久しぶりに楽しい狩りだったぜ」
駆け寄った僕らにも、戦いの激しさ故に兜が取れているのにも気付かない彼は、剣を突き立て地に縫い付けた蟷螂の死骸相手に、歯を剥き出しにして笑った。
オレは確信した。
彼は本当の神だ。
流星街には神が棲む。
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HUNTER×HUNTERのキャラってみんな頭良いよね……