モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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ゾルディック家訪問編
第28話


「おおー」

 

 飛行船でパドキア共和国、デントラ地区に二人仲良く向かう。着陸し空港を降りると、既に高級車が停まっており、燕尾服姿の執事たちがキルアの姿を認めるや、一斉に優美に礼をした。

 

「お帰りなさいませ、キルア様」

「やめろよ、恥ずかしーだろダチの前でよ」

「ダチ……そちらの仮面の方ですか?」

 

 変装代わりに、ライズのウツシ教官みてーにジンオウガのお面を着用している俺を、眼鏡の執事……ゴトーくんは怪訝そうに見る。

 ぷぷ……俺だと気付いてないのおもろいな。ちょっとイタズラしたろ……

 

「ああ、キルアとはハンター試験で知り合ってね」

「うん……? どこかでお会いしましたか?」

「えっ!?」

 

 やべー、声か。声でバレかけてら。迂闊すぎるな、俺。ドッキリに秒で失敗したわ……

 

「失礼ですがお面を外していただいても?」

「はい……」

 

 パカ、と仮面を取ると、ゴトーの顔色が変わった。

 

「……! 失礼、キルア様。ご友人と少しお話させていただきます。どうぞ先に車に乗ってくださいませ」

「おお。良いけど、ユータとは同じ車で行くからな?」

 

 ゴトーくんは俺を連れてキルアから少し離れると、小声で聞いてきた。

 

「ユータ様、なぜパドキアに? 流星街は大丈夫なのですか?」

「ちょっと前にワープの能力開発してさー。いつでも狩りに戻れるし、色んなとこぶらついてんのよ」

 

 ゴトーくんは眉間を押さえている。そ、そんな迷惑そうにしないでよ……俺だって傷付くよ……?

 

「ゴトーくんはダンディになったね。キルアに直接話しかけてたし、偉くなったんじゃない?」

「光栄なことに、執事長を任されております」

「マジ? ツボネちゃんは? 引退しちゃった?」

「いえ、先生は現役ですよ。今はシルバ様直属です」

 

 当主直属かあ。ツボネちゃんなら実力に不足ナシだよな。

 

「そっかそっか。ま、ってわけでいきなりでスマンけどさ。キルアと仲良くなったし遊びにきたよ」

「……かしこまりました。キルア様とご一緒に当家にお連れいたします」

 

 車に乗せられて、キルアと一緒にゾルディック家の敷地へ。すげー、こんな高級車初めて乗ったぜ。そわそわしちゃう。

 流星街に遊びに来てもらったことは何度もあったけど、俺からゾルディック家に遊びに行くのは初めてなんだよなー。楽しみだ。

 

 しばらく談笑していると、やがて車は大きな、それは大きな門の前に辿り着く。

 

「おおー! すげー。巨人用かぁ?」

「はは。これは試しの門っつーんだ。すげー重くてさ、これ開けられないとゾルディック家(ウチ)に入る資格ナシ。まあ開けても侵入者は執事に止められんだけど」

「へえー。やってみよっかな」

 

 どんぐらい重いんだろ……まあ、あんだけデカい扉だし、かなり力入れないと多分開かないよなあ。よーし。

 

「おやめください」

「え? でも……」

「おやめください」

 

 ゴトーくんに止められてしまう。しょんなぁ……乗り気だったのに……

 けど、ゴトーくんの『お願いだからやめてください』みたいな冷や汗混じりの必死の視線を受けては仕方ない。

 

「いいじゃん、やらせたげれば」

「いいえ。お客様にお怪我をさせるわけにはいきませんからね」

「ユータは強いぜ? 大丈夫だよ」

「まあ、ゴトーくんがそう言うなら従っとくよ」

「そう? じゃあいいけどさ。俺はやってこーかな。家出以来だし」

 

 ふん、とキルアが力を込めて扉を押すと、鈍い音を立てながら3番目まで門が開いていく。おおー。

 

「3か。ま、こんなもんだろ」

「お見事です、キルア様」

 

 扉も相当重そうだし、念なしでこれは凄いんじゃないか?

 俺も試してみたいなぁ……でも、ゴトーくんの頼みだし我慢我慢。

 

 俺たちは門の中に徒歩で入っていく。ここからは徒歩か……すげー広い敷地だなぁ。

 ん?

 

 俺は急接近する巨大な気配を感じ取る。この感じ、モンスターか?

 アイテムBOXからナルガクルガ素材の太刀を取り出し、構える。現れたのは巨大な狼。

 

 獲物か。

 

 しかし、俺の視線を受けた狼はくぅんと弱々しく鳴くと、腹を見せて服従のポーズを取った。

 なんだモンスターじゃないのか……

 よくよく見たら目もくりくりしてて可愛いじゃないか。よーしよし。お腹をさすってやると、狼は安心したように鳴いた。

 

 

 

 ミケがあっという間に服従したのを見て、キルアは驚愕していた。

 徹底的に教育された狩猟犬。そこに最早感情はなく、命令は絶対と本能にまで刷り込まれている。

 それが、ユータの視線を受けただけで怯え、あまつさえ服従した。

 

 無論、ユータが排除対象でなかったのも理由の一つだろう。試しの門以外から入った場合、それがどんな相手でもミケは噛み殺しにかかる。ユータであろうと例外はない。逆に言えば、試しの門から入った人間を襲うこともまたない。

 しかし、門から入ったとはいえ、初めて見た人間相手にミケが服従するなど、ありえない事態だ。

 

 キルアが驚愕したのはもう一つ。ユータ自身に対して。

 キルアはユータを信頼し始めている。

 ハンター試験で長い時間一緒に過ごし、高い実力を持ちながら、素朴な感性を持った彼の人柄を好ましく思っていた。

 

 極めつけは自分のイルミとの試合。

 イルミに命令され、また強い言葉で精神を締め付けられていたキルアにかけられたユータの言葉は、不思議と温かく、キルアはまるでイルミの邪気から守ってくれているような感覚を覚えていた。

 また、ユータの宣言通りゴンは殺されず、自分の選択は友達を見捨てることにならずに済んだ。

 

 強く心優しい男。キルアはユータをそう認識していた。

 

 そんな彼が見せた新たな一面。

 ミケに対して見せた殺気だ。

 

 思えば、試験中に彼が殺気の類を見せたことはない。精々、二次試験で豚を捕まえる時や、三次試験で怪鳥を仕留める時にほんの僅かに感じた程度か。

 

 今回、彼は武器まで取り出し、ミケに対して明確に殺気を向けている。

 自分が向けられているわけでもないのに、ビリビリと空気が震えることでそれを感じ取る。今までに感じたことがない類のものだった。

 

 凶悪殺人犯のような禍々しい殺気ではない。武道家のような真っ直ぐな殺気でもない。

 ゾルディック家の人間が発するような、混じり気のない、研ぎ澄まされた刃のような殺気でも断じてない。

 

 荒れ狂う嵐のような、野蛮な殺気。

 相手を獲物としてしか見ていない。原初の、人類が腰布を巻いて石槍で獲物を追い詰めていた頃を思い起こさせるような。

 

『狩猟』

 

 その二文字が脳裏を過ぎる。

 男は、ミケをただ獲物として見ていた。

 

 ユータは、優しい。人間に対しては。

 ハンター試験を見るに、荒事に向かない性格だと、キルアは思った。

 だが違った。彼にとって、人間は狩りの対象でないだけなのだ。

 彼の力は尋常ではない。脳内、全身の細胞が『逃げろ』と警告(アラート)を発している。なのに動けない。

 一歩でも動けば、ユータの視線が、殺気が、自らに向くかもしれない。

 そんなことはないと頭で分かっていても、体は動かない。

 

 警戒だけでこれだけの圧力。実際に獲物と相対した時の彼がどう戦うのか、考えただけで身震いが起きる。

 ユータが楽しそうにミケの腹を撫でている様子を見ながら、彼が自分に優しいこと、人間に対して害意を持たないであろうことを思い、キルアは心底安堵した。




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試しの門の7は256tかあ……
256t!?!?
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