モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった… 作:レイトントン
「うおおおおおお!!」
俺は綺麗なフォームの全力ダッシュで敵前逃亡を犯していた。だってテオにゃんが今にも爆発しそうなんだもの。
そのままダイビング回避で爆発攻撃を避け切る。現実に目の当たりにすると爆発ってクソ怖ぇ!
だが攻撃を避け切った今、俺のターンだ。双剣を構える。チャクラムのような円形の刃がイカすオロミドロの素材を元にした双剣だ。
そのまま乱舞で一気に斬り刻む。
え、鬼人化しろ? 俺だってそうしたい。
でもやり方が分からねえんだ……気分だけは鬼人化しているからセーフ。
テオにゃんは獣のような咆哮を上げて地に沈んだ。ふう。やっぱ古龍は格が違った。
「うおお……よくあんなおっかないのをハントできるな」
隠れて様子を窺っていたらしいベンが、近寄ってきながら恐々とした様子で呟く。ツンツン、とテオにゃんの骸をナイフで突き始めた。これで生きてたらクソ面白いんだけど、俺はきっちりテオにゃんを仕留めることができていたようだ。起き上がる気配はない。
「さー、とっとと剥ぎ取りすっか」
俺とベンで剥ぎ取り作業を始める。討伐したモンスターの顔怖ぇな……
「しかし、切れ味バツグンだなベンズナイフ」
「そうだろうそうだろう。今まで300本近く作ってきたが、どれも傑作さ。どうやら元いた大陸では好事家たちに集められているらしい」
「デザインも良いからなぁ」
何気ない俺の発言に気を良くしたらしいベンは、手際良く剥ぎ取りを進めていく。
ベンから貰ったナイフ、というかベンが作ったナイフはベンズナイフと呼ばれているらしい。そのまんま過ぎるな。いや響きはカッコいいんだけど、使う時ベンの顔が浮かびそうなのがね……
「まさか古龍と出くわすとは運が良いぜベン。普通は一生に一度会うかどうかって存在だ」
「そんな貴重な幻獣なのか。狩って良かったのか? ハンターは時に絶滅しそうな幻獣を保護することもあるらしいが」
え……なにその設定。知らんかった……ハンターってギルドの依頼でモンスターを狩猟するのが仕事じゃないの?
それで言うなら今の俺、ギルドのクエスト通してないから密猟者になっちまうけど……
「だ、大丈夫大丈夫。テオにゃんは絶滅しそうなわけじゃないから……多分滅多に縄張りから出てこないから人前に現れないだけだから……」
「テオにゃんて……あの強大な幻獣にそんな可愛い渾名を付けるのはアンタくらいだろうな」
そんな雑談と剥ぎ取りを行い、今日も狩猟生活を過ごしていく。だが、今までのように一箇所にテントを張る生活は辞めた。ベンの言うお宝とやらが気になったからだ。
なんでも食べ続けると寿命が延びる代物らしい。すげえなぁ、と思いどんな食い物なの? と聞くと、ベンは気まずそうに視線を逸らした。
「ベン? なんで目を逸らすのかな?」
「……囚人はそこまで知らされてないんだ」
「じゃあどうやって探すんだよ」
「監視役が何人かいたんだけど」
「なるほど、そいつらが情報持ってるわけね。で、そいつらはどこ?」
「そいつらに監視されてたらこき使われそうだったから逃げ出した」
おいおいおい。やっぱとんでもねーヤツだわコイツ。
「じゃあお宝がどんなもんか分かんねーじゃん! つーかそもそも持って帰っても恩赦なんか貰えないんじゃねえの?」
「言ったろ、別に恩赦には興味がない。オレも結構名前が知れてるし、恩赦なんて貰ったところでどうせ隠れ住むことになるからな。ならお宝とやらをいただいてしまった方が良いだろう」
「なるほど、そりゃそうだ。とすると、問題は帰還手段だけど……その監視役とやらの船を奪うのが手っ取り早そうだな」
モンハンの世界に飛行機なんてないはずだし、海を渡ってきたなら多分船だな。いや、飛行船はあるんだったか?
「人間と一戦交えるのは避けたいなあ」
「ユータは強いんだから、心配することはなにもない。それにこの大陸過酷だし、あいつらも多分全滅してるさ。俺が脱走した時に既に何人か死んでたしな」
ベンの目がキマってる。こいつ、監視役殺ってない? 大丈夫そ?
絶対ベンに背中は預けないと決意を新たにして、俺たちは暗黒大陸の海沿いを、ベンの元いた場所を目指して旅することになった。
ベンは意外にも足手纏いにはならなかった。このモンスターひしめく暗黒大陸を、曲がりなりにも歩いてきただけのことはある。俺と同じように体から湯気みたいなものも立ち昇っている。バフがかかっているのだろう。
ただ、頭に太陽光が降り注ぐと眩しい。かといって俺の後ろを歩かせたくないというジレンマ。サングラス欲しいなあ。
ベンは狩猟に興味がないようで、モンスターと遭遇しても、お互いスルーし合うことが増えた。幸い、縄張りを侵したり、こちらから吹っ掛けない限り襲ってこないモンスターも多く、狩猟の回数は以前よりは減った。
ただ、生きる為に糧となってもらうことは度々あった。まさにさっきのテオにゃんのような事例だ。古龍の肉って別に食っても大丈夫だよね……?
ちなみに他の多くのモンスターもそうだが、味は微妙だった。やっぱ草食動物だな、食べるなら。あとは大量に確保しておいた米。
アイテムBOXが快適仕様でほんと助かったわ。危うく馬鹿でかい箱を背負って旅する羽目になるところだった。
そんなこんなで暗黒大陸沿岸をふらふらと渡り歩く男2人。しかも片方は鎧で片方はハゲたおっさん。見映えのない絵面だ。
「にしても……船らしきものは見えねえなあ」
随分と長い月日を歩いたが、全然船は見当たらない。
「諦めて元の大陸に帰ったんじゃねえの?」
「……まあ、まだ諦めるには早いだろう。もうちょっと先だった気もする」
ベンは当時、テキトーに逃亡したためか元いた場所を覚えていないらしい。だが、船はかなり大型のものだったというから、沿岸を歩けば見つかると思ったんだが、アテが外れた。
どれだけ歩いても、船が見つかることはなかった。
だが、俺も特にすることがあるわけじゃない。ベンの気が済むまで付き合ってやろう。どうせ他に話し相手もいないんだ。
……あ、アイちゃんのこと忘れてた……ごめんよ……でもガス状の生き物より人間とのコミュニケーションが優先なんだ。本当にすまないと思っている。
しばらく時が経った。
結局船は見つからなかったので、俺たちは船を作ることにした。幸い、ベンは刀鍛冶でありながら防具も作れる器用さを持った加工屋だ。素人ながら船造りも試行錯誤していく内に身に付けていった。
しかし……正確に数えてはいないが、体感数年、下手したら10年以上経ってそうな気がする。もちろん気のせいなのは分かっている。俺とベンの姿が会った時から全然変わっていないからだ。
四季もないし、どのくらい時が経ったのか分かりにくい。数えとけよって話ではあるが。俺は面倒臭がりなのだ。
船造りはかなり難航した。人が乗れるくらいのデカさ、かつ大陸間を渡れるくらいのデカさの船を作るには、本来かなり正確な設計図に、大掛かりな道具が必要なはずだ。が、そんなものはない。
船は沈没し、あるいは設計中にモンスターにぶっ壊され、キレた俺がそのモンスターを狩猟し……そんなことを繰り返して、ついに完成した。
大型の帆船だ。
「しかしまあ、よくゼロからこんなもんを作ったよ。すげえな、ベン。俺の防具や武器も並行して作ってくれたのによ」
「あんたの協力があったからだよ、ユータ。飯や安全、資材は全部あんたが用意してくれたものだ」
俺はこのハゲたオッサンと奇妙な友情を育んでいた。俺たちはマブだぜ。
というわけで、善は急げ。悪も急げ。早速出航した。
陸からかなり離れてくる。前までの船は大体この辺で船体の下層から浸水してきて沈没したんだが、今回そうはならなかった。
「うおお……沈没しない! しないぞベン!」
「当然だ。試行錯誤を重ねてついに31隻目……オレの設計に死角はない」
フラグ建てんのやめない……?
と思ったが、実際に死角はなかったらしく、その後もしばらく船は進み続けた。
個室まで用意されている船だ。加えて、俺のアイテムBOXからこんがり肉や米、水などを取り出せるのだから、餓死するような危険もなく優雅な船旅を過ごせた。
……なんて順風満帆な日々はそう長くも続かなかったが。
出航からひと月ほど経ったある日。暇なのでベンと海に釣り糸を垂らしていたところ、俺は違和感に気付く。
「…………な、なあ、ベン。なんか船の下の海、黒くない? なんか居るんじゃないか?」
「なんか? 何もいないぞ?」
「いや、すげーデカい影が船の下に」
「ははは、意外と臆病なんだなユータ。大丈夫さ。クジラだよクジラ」
ベンがそんな暢気なことを口にした瞬間、船が大きく揺れる。
船の真下から、巨大な影が海水を突き上げるように海上へと飛び出してきた。それはつまり、俺たちの船までもひっくり返るってことで。
仲良く空中に放り出されながら、俺たちはそいつの姿を目にした。
「ラギアクルスかい!!」
まっずい。
俺
水中戦初めてなんですけど!!!!!
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おかげさまでモチベ爆上がりですわ!!!