モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第49話

 表紙を捲ってまず出てきたのが、先ほどの一行。

 

『この本はあなた、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の人生で関わった人を全て収録しています』

 

 書いてある名前には、まるでピンと来なかった。ユータと書いてないし、バグか? と思ったが、思い返してみれば、元々ゆうたというのは俺が名乗った偽名だった。本物のゆうたさんごめんなさい。

 

 もしや、これは俺の本名なのではないか。

 口に出してみる。

 なんだか懐かしいような気がしてくるのは、これが俺の本名なんじゃないかと思っているからだろうか?

 

 更にページを捲ってみる。

 目次っぽいな。スルーして次のページへ。

 また目次。相当な量だ。パラパラ、と飛ばして、最初の人物のページを捲る。

 

 俺と過去に関係した人物についての記載がそこにはあった。

 

『アスハ

 あなたの母親。享年42歳。

 あなたが産まれた時、涙を流して喜んだ。クレオと共に何度もあなたの名前を呼び、誕生を祝福した。

 あなたがあまり泣かないことを心配しながらも、楽しそうに子育てをしていた』

 

 といった感じの文章が、長々と続いている。会話録もある。すげーボリュームだな。そりゃこんだけ分厚くもなるか。

 

 初めは俺のかーちゃんか。

 最初に出てきたのは名前がアスハだからなのか、生まれた直後に出会った母親だからなのか。

 あ、名前順ならネテロが先頭にくるか? あいつの名前アイザックだし。ネテロ呼びで慣れてるからこのままだけど、苗字なんだよな実は。

 ネテロが先頭じゃないとすると、俺が出会った順に纏められているのかもしれない。

 つーか、クレオって誰よ。

 

 

 その後も、微笑ましいエピソードが続いていた。

 どうやら、文脈から察するにクレオとやらは俺の父親らしい。また、弟や妹もいたようだ。

 俺は幼い頃からモンハンの記憶、というか前世の記憶を持っていたようだ。生魚の刺身を食いたがったり、生卵を食いたがったりと、特に食事においてそれは顕著で、両親もほとほと手を焼かされていたようだ。

 

 また、モンハンの記憶持ちだからなのか、モンスターを倒す、いつかハンターになる、と言って聞かなかったとのこと。

 

 ただ、アスハ……母親は最後まで反対だったらしい。

 結局、モンスターを実際に狩ることで実力を認めさせ、晴れてハンターズギルドにハンターとして認可された、と……

 

「ん? ハンターズギルド?」

 

 待て待て。この世界にはそんなもん無いんじゃなかったのか?

 パラパラ、と読み進めようとして、しかし、気になる内容が目に留まり、そのページを捲りなおす。

 

 アスハ、母親についての()()のページだった。

 

『42歳。村を襲った黒龍ミラボレアスの劫火によって死亡。娘をかばってのことだった』

 

 お、おお……

 重たい。重たい話が急にぶち込まれて、胃の辺りがきゅっとする。

 他人事じゃないんだよな、これ……そうか、俺の母親は死んでしまっていたのか……

 なんでだろ。記憶はないのに、悲しいような気がする。俺、ちょっぴり泣いてない?

 これが俺の話だからなのか、それとも単に話に感情移入してるだけなのか。多分後者かな。悲しくはあれど、全然思い出せない。

 

 なんか、もうあんま読みたくないな。自分の与り知らないことで、メンタルにダメージ食らうし。

 でも気になる……読んじゃう……

 

 

 

 

 その後もしばらく、飛行船が着陸してからも近くでホテルを取って、俺は『人生図鑑』を読み続けた。一ページ一ページは流石に読んでられないので、俺の覚えていない人生がなんとなく分かる程度に掻い摘んで読み進めていった。

 

 

 

 

 母親が死ぬ前に遡るが、過去の俺はハンターとなった。

 リオレウスやジンオウガ、ブラキディオスなど、強力とされるモンスターをソロで狩れる、優秀な若きハンターとして名を馳せていった。

 やがてG級と呼ばれるランクまで到達し、一流のハンターとされ、楽しくやっていたらしい。

 ただ、ゲーム知識を元に狩猟をしていたため、常識知らず扱いされることも多かったようだ。ソロで古龍に挑んで怒られたり、剥ぎ取りの素材が区別できずに怒られたり……やはり俺自身だからか、なんか分かるのが悔しい……

 

 また、女の子にはモテモテだったようだ。やれこの子とはこうだった、あの子とはあんなことをした、とかこと細かに書かれている。官能小説かよ。

 

 しかし、良い気分も長くは続かなかったらしい。ミラボレアスの出現だ。

 読み進めて把握した中でだが、母親含めた家族(ちなみに、クレオはやっぱり父親だった)だけでなく、かなりの数の知人がミラボレアスに殺されている。

 どうやら、俺の故郷や周辺の村々を襲ったようだ。理由とか、どんな状況だったかまでは書いてないが。

 

 過去の俺は復讐を決意したようだ。あくまで関わった人との会話などしか見れないが、文脈からして相当ミラボレアスを恨んでいたらしい。

 文字だけでも幸せそうだと分かるところをドン底に叩き落とされちゃ、そんな気持ちにもなるか。

 

 俺自身は、正直言ってモンスターに善悪はないと思っている。あれは良くも悪くも野生でしかない。例外はあるだろうけど。

 ま、なんてことが言えるのは、俺に記憶がないのと、大切な人を殺されていないというのも大きいのかもしれない。ベンやネテロ、ジクにリンネとか、ゾルディック家と旅団の皆やヒソカにダウナーおねーさん、ゴンやキルアやクラピーやレオリオや……挙げればキリがないが、濃く関わってきた人たちを殺されたら、俺だって怒りが湧くと思うし。

 

 それは置いておくとして、過去の俺は仲間を三人集めた。どいつもこいつも凄腕で、狩猟笛使いのフーゴ、弓使いのザイク、片手剣使いのサリッサという名前だ。

 特に、サリッサとは良い仲だったようだ。が、彼女のページ数は少なく、あまり良い予感はしない。

 

 予感は的中した。

 四人でミラボレアスに挑むが、まるで歯が立たなかった。俺を除いて全滅したそうだ。その俺も、味方が全員殺された後、這々の体で逃げ出したらしい。

 

 いや、強いなミラボレアス。読んでる感じだと、四人は相当上澄みも上澄みの連中だったはずなのに、歯牙にもかけないとは。

 

 完膚なきまでに叩き潰された過去の俺だったが、ここで諦めたりはしなかった。イチから鍛え直すためベテランハンターに弟子入りし、怪しげな黒龍の研究家と共に、怨敵の生態について調べ上げていた。

 

 そして力を付けた過去の俺は、研究家が見守る中、シュレイド城での決戦に挑む。

 結果は、引き分けだった。

 

 いや、我がことながら凄いな!

 四人がかりで瞬殺だったのにソロで引き分け? どんだけ鍛え上げたんだよ。

 

 ミラボレアスはシュレイド城上空に空けた黒い穴……次元の裂け目から別の次元へと退却しようとしたらしい。研究家の、ヤツが逃げる、という叫びを聞いた過去の俺は黒龍の顔に飛び付き、角を一本へし折った。

 

 暴れるミラボレアスとともに、俺は次元の彼方に消えたようだ。

 

 その後関わった人物は、ベンまで飛ぶ。ここからベンと出会うまで、人間との接触はなかったわけか。

 

 

 

 整理しよう。

 

 つまり、

 

 俺は元々別の世界の住人で。

 そこはモンスターハンターの世界で。

 黒龍ミラボレアスと戦う内、この世界に迷い込んだ。

 

 ……ってコト!?

 

 もちろん、名前から何からなーんにも覚えていない以上、これが単純な創作って可能性もゼロじゃない。が、少なくともこの『人生図鑑』が正常な状態である可能性はかなり高い。

 だって、こっちの世界で関わり合った人たちの情報も、ちゃんと載ってるし。

 

 ベンから始まり、ネテロ、ジグ、リンネ。流星教の教主に、ハニトラねーちゃんたち。

 

 この本を作った関係者であろうジンが産まれる前には、もう関係があった、あるいは死んでた人たちもしっかり図鑑には載っている。載っている順番も、記憶にある限りではかなり正確だ。後ろに行けば行くほど、自分の記憶との照合により間違いはないと確信が持ててくる。

 

 

 色々と重たいストーリーもあったようだが、さっぱり記憶にないから、ちょっと他人事感はある。

 が……読んだ内容にはどことなく郷愁を感じる上、黒龍に対してはなんだかもやもやした感情が腹の底に残っているような気もする。

 

 ま、マジかー。

 いや、思わぬところで俺のルーツが分かった。

 まさか異世界人、つーかガチモンのモンスターハンターだったとはね。

 

 まあ、記憶にない以上、過去の俺……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は今の俺からしたら正直他人のようなものだ。

 とはいえ、こんなものを読んでしまった以上、ちょっと感情移入してしまっているのも事実。

 

 過去の俺と引き分けるくらい強いモンスターと戦ってみたい気持ちもあるし。

 ジンと話した時からそのつもりだったし。

 

「見っけたら狩ったるか、黒龍!」

 

 過去の俺よ、安心してくれ。

 今の俺がカタキ討ってやっからよ。

 

 

 

 

 ……あれ?

 でも、異世界転移した後、なんで俺記憶失ってたんだ?

 ……分からん。




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な、謎が増えた……
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