モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第60話

 アイちゃんは俺が勝手に付けた名前だ。暗黒大陸にいた時、周りに人がいない寂しさからガス状の生き物にそう名前を付けて可愛がっていた。

 だって話しかけたら返事してくれるんだもん……「あい」って。

 

 画面越しに見るアルカちゃん……いや、キルアが呼んでた名前は『ナニカ』だったな。ナニカちゃんはアイちゃんにクリソツな雰囲気を醸し出している。

 

 キルアは意を決したように、彼女に命令する。

 

『ナニカ。お前の『願いを叶える能力』を失え』

『あい』

 

 キルアがそう命じたことにより、ナニカちゃんの体から、何かが抜け出ていくような感覚が画面越しにも伝わってくる。彼女が持っていたとされる『他人がお願いしたことを何でも叶える能力』が失われたのだろう。

 

 アルカちゃんが家に幽閉されているのは、その力が大きすぎるため。使い方を誤ればゾルディック家が滅ぶ。それだけ大きな力を、自分でコントロールできていないのだ。

 

 なら、能力無くしちゃえばいーじゃーん。

 

 そう提案したわけだが、シルバくんも悩んだことだろう。使い方を誤れば滅びでも、正しく使えれば莫大な利益が生まれるだろうからな。

 しかし、シルバくんも娘さんを幽閉しておくのは心が痛んでいたのかもしれない。悩んだ末にキルアに判断を委ねたようだ。

 

 結果、アルカちゃんとナニカちゃんを連れ出したいキルアは、能力の破棄を選択した。

 一件落着……かな?

 

 チラ、とシルバくんの方を盗み見てみると、小さく息を吐いていた。みすみす凄まじい能力を手放したことへの後悔が少し、それ以上に、安堵の表情が見て取れる。

 やっぱり、シルバくんも娘さんを監禁しておくのは精神的に突っかかりがあったのだろう。

 シルバくんの背中を叩いてやる。

 

「まー、悩みがあればいつでも相談したまえよ。俺もジグも、ゼノくんだっているんだ。いくら歳食ったって俺らにとってはシルバくんはシルバくんなんだから、年長者に頼っていいんだぜキミぃ」

「……ははっ。お気遣いありがとうございます、ユータ殿」

「おーよ。能力の破棄を提案したのは俺だからさ、なんか不都合があれば言ってくれよ。絶対助けるからよ」

 

 まー、このことがなくてもジグの子孫だし、俺が助ける理由は十分すぎるけどね。

 よし、ジグのとこに遊びに行く前に、キルアとアルカちゃんナニカちゃんの方とも話しとくかぁ。ナニカちゃんのことも気になるし。

 

 モニタールームにはキルアとアルカちゃんが戻ってきて、シルバくんからアルカちゃんを自由にすることが、二人に直々に伝えられた。

 

「済まなかったな、アルカ。お前の力を恐れ、遠ざけてしまった」

「ううん。大丈夫だよお父さん。あたし、お父さんの気持ち分かってるから」

 

 キキョウちゃんは感動で顔を覆っている。良かったなぁ……

 

「あ、アルカ。この人がユータ。俺の、友達だよ」

「お兄ちゃんの……アルカです、初めまして」

「初めまして、ユータです。アルカちゃん、早速で悪いんだけど、ナニカちゃんにも挨拶させてもらっていいか?」

「え? は、はい」

 

 自由に切り替えられるのか、アルカちゃんが目を閉じると、ズズズ、と顔がナニカちゃんに変わる。

 

「おお……やっぱ雰囲気がアイちゃんに似てるんだよなぁ」

「あい」

「アイちゃん、ですか?」

「ああいや、気にしないで。昔の……友達に似てると思っただけだから」

「あい」

 

 うーん。多分俺の知ってるアイちゃんとは別だな。つーかガス状じゃないし。

 俺のこと知ってるならもっと反応してくれると思うし。……いや、100年以上ぶりだし、忘れられている可能性もあるか。

 

 暗黒大陸のアイちゃんはどうしているだろう。さすがに100年経ってたら寿命を迎えているかな?

 

 アイちゃんも同じような能力を持っていたりして。そんな訳ないか、願いを叶える能力を持った存在がそんなゴロゴロしてたらやばいだろ。

 ……ん?

 

 あれ、でも俺、確かアイちゃんの前でボヤいたよな。なんだっけ。知ってるモンスターと会いてえみたいなこと。

 

 ……………………あれ?

 

 なんか背中から汗が……

 

「ユータ様、どうしました?」

「ちょ、ちょっとジグと話してくるわ」

 

 良かった、俺の事情を知ってる人が近くにいて!

 相談相談。社会人は報連相よ。

 ということで。俺はジグに相談してみた。

 

「そりゃお前……やったじゃろ」

「やっぱそうかぁ……」

 

 モンスターがこっちの世界にもいるのって、俺のせいだったのか……

 

「まあ、そんな気にすることないんじゃないかの。もう生態系に根付いているし、人類世界にいるヤツらは暗黒大陸のヤツらほど脅威ではない」

「そりゃそうだけど、まー俺のやったことだし、やれるだけのことはしないとな」

 

 というわけで、俺は『神降ろしの儀(ハンターズクエスト)』を改良することにした。

 といってもそんなに難しいことじゃない。依頼主が紙に書いたりオーラを込めなくても、モンスターを見つけたら、俺を呼ぼうと意識して強く念じれば勝手にオーラを徴収して飛べるようにするだけだ。

 こうすれば、疲れはするだろうけど非念能力者でも俺に依頼ができるからな。制約として報酬はもらえないようになったが、まあ俺が蒔いた種だし構わないだろう。

 

 あと、稼働が増えるだろうから天空闘技場のチャンプを引退した。

 防衛成功したし、このまま続けて一生覇者として君臨しても興業的に盛り上がらないだろうからな。良いタイミングだったのかもしれない。

 

 引退会見では引退理由を『本業に戻るため』ということとし、ついでに『神降ろしの儀(ハンターズクエスト)』についての説明もさせてもらった。

 これでモンスターが出たら俺が狩れる範囲はかなり広がることだろう。

 しばらくは寝れないかもだけどな……エナドリ代わりに強走薬飲んで頑張るか……

 

 また、できる範囲でモンスターが出現するのは俺のせいでしたごめんなさい、と謝罪会見みたいなこともしたが、異世界から呼び出したとか信じられるわけなさすぎだったので、暗黒大陸から連れてきたという話にしておいた。

 が、今度はいつ、どうやってって話になって説明し切れずその辺は誤魔化してしまった。アイちゃんとかニトロ米とかの説明するとヤバそうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 ユータが天空闘技場のチャンピオンを引退し、モンスターハンターに専念するという動画を公開したその日。

 アイチューベにアップされた動画は瞬く間に拡散され、世界中の人間がユータの『神降ろしの儀(ハンターズクエスト)』を知ることとなった。

 

 モンスターが現れた時、祈るだけでどこからでも駆けつけ、一瞬でモンスターを屠る男。

 実際にそれを見た人々は、いつの間にやら膝を折り、両手を組んで祈りを捧げるようになった。

 

 また、会見では暗黒大陸からモンスターを持ち帰ってしまった、などと宣言していたが、その具体的な方法や時期については不明なまま。

 それにより、人々の間でまことしやかに囁かれる噂話が出来上がった。

 

『モンスターは彼が創造した獣なのではないか』

 

 生命の創造。

 そして祈られただけで現れ、その獣を狩る存在。

 

 明らかに超常的な力を持った彼を、一部の人々は……『神』と呼んだ。




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