モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第67話

 エイ=イ一家壊滅から数日。

 カミーラ第二王子は、ユータのことを監視していた。基本的には私設兵を使い、時には自分の目で彼を盗み見ることもあった。

 

 理由は、先日彼の円に触れたためだ。

 ユータの円に触れたことにより、オーラの質、量に絶対的な差があることを感じ取ったカミーラは、一つの願いを抱いた。

 

「あの男をカミィの(しもべ)にしたいわ」

 

 カミーラは世の理不尽に怒っていた。

 自らが絶対であるはずの世界で、願っただけで実現しないなんて、理不尽極まりないと。

 傲慢、強欲と言った言葉では表せない我の強さ。

 

 しかし、ユータのオーラを見たカミーラは、彼を手に入れさえすれば、彼女に取って本来あるべき世界に限りなく近付くことを彼女は確信する。

 ユータならば、自らの願いを口にするという手間はあれど、願えば全てを実現できるだけの力がある、と。

 

 問題は、彼がベンジャミンやツェリードニヒといった他王子とも親交がある上、何よりカミーラが唯一意見を聞く相手、カキン国王ナスビー=ホイコーロとも顔見知りであることだ。

 

 いかにカミーラとて、父親であり国王であるナスビーの言葉を蔑ろにすることはできない。ユータに下手に手を出せば、父親の不興を買うことになるのはさすがのカミーラにも想像できた。

 

 弱みでもなんでもいい、ユータを手駒にするための情報が欲しい。

 その一心で、カミーラは陰からユータの観察をする日々を続けていた。

 

 ユータが一人でいることは基本的にはない。いつも誰かと共にいる。

 

 私室には専属の秘書を控えさせており、外に出る時はかなりの使い手である若い念能力者集団を、最低二人は護衛に付けている。

 本人の武力からして護衛に意味などあるのだろうか、とカミーラは疑問に感じた。

 

 交友関係は広い。

 ハンター協会に所属するプロハンター連中はもれなく彼の仲間だ。

 また、暗殺者一家であるゾルディック家とも友好的な関係を築いているらしく、一層のバーで楽しそうに談笑している様が目撃されている。

 

 ただでさえ念能力者の集団であるハンター協会の長なのだ。人間関係から崩すのは無謀に思えた。

 

 なら、本人に何かしらの弱点はないのか。

 

 あった。

 

 まず、頭が良くない。

 例えば娯楽室。

 カードゲームやダーツ、ビリヤードなどの室内遊戯が多く並べられているが、ちょっと複雑なものだとルールの説明を受けても一度では覚えきれないのだ。

 一般人ならそれでも問題ないが、彼はハンター協会の長。協会はそれでいいのか、とカミーラは少し呆れてしまった。

 

 次に、力加減が下手だ。

 モンスターの狩りで見せた力や、溢れ出るオーラは凄まじいものだ。日常生活にも不便はしていないという。が、ビリヤードやダーツを本人はやろうとしない。

 壊したら嫌だから、だそうだ。

 確かに、日常生活と違い力が入りやすい遊戯は彼にとっては危険なのかもしれない。ダーツを投げたらボードを貫通して人を殺しそうだ。

 

 あとは、色仕掛けに弱い。

 娯楽室ではバニーガールがドリンクを配っていたりするが、ユータはよく女の子に話しかけたりデレデレしたりしている。カミーラ自身が目撃している。

 

 が、それらもカミーラにとって、ユータを僕とするのにはさして有効な情報とは思えなかった。頭の悪さは周囲の人間の優秀さで補っているし、力加減はユータ自身がかなり気を配っている様子だった。

 カミーラは己を至上の存在であると考えているため、自らが色仕掛けを行うようなことは欠片も考えていない。自分の美貌に酔いしれ、ユータ自身が跪くようなら足への口付けを許してやってもいい、というくらいの考えだった。

 

 身辺調査から行うような回りくどい真似も、本来カミーラには性に合わないやり方だった。

 

 我慢の限界が訪れたカミーラは、ストレート、単刀直入に行くことに決める。

 自らの私設兵を使い、ユータを居住エリアに呼び付けた。

 

 こういった時、異性相手は不便だ。ツェリードニヒのように私室に招くような真似はできない。護衛はどうしても付いてくる。

 

 本日、ユータに付いていたのは吊り目の女と長髪で髭の男だった。

 

「カミーラ第二王子、お招きいただき光栄です」

「ねえ、あなた。私の僕にならない?」

 

 挨拶を無視して、要件を叩き付ける。

 ビキ、と護衛二人の額に血管が浮かび上がった。

 

「あー、申し訳ない。私はハンター協会の会長として……マチ、ノブナガ。やめなさい」

「……失礼しました」

 

 護衛の二人が答える。彼女らは何もしていない。が、ユータの口ぶりから、カミーラを害そうとした可能性すらあるが、彼女らがピクリとも動いていない以上、問題にしようがない。

 

「話が逸れましたが、あなたの僕にはなりません」

「なぜ? 私の下に就く方が、ハンター協会の会長なんかより余程有意義よ」

「んー……」

 

 ぽりぽり、とユータは困ったように眉毛を下げて頬を掻く。

 

「ハンター協会の会長に就任したのは成り行きだとも調べが付いている。あなたにとっては邪魔な役職でなくて?」

「そうですね。ですが、それ以外にも理由はあります」

「それは?」

「私の本業はモンスターハンター。獣を狩る者です。あなたの僕となって本業を疎かにするつもりはない」

「狩りに出ることも許可してあげるわ。私って優しいでしょう?」

 

 いよいよ護衛二人が暴走しそうになる中、ユータは明確に否定の言葉を口にする。

 

「どんな条件を出されようと、あなたの下には就きません。俺は俺の意思でモンスターを狩っている。あなたの許可など得なくてもね」

「そう……くだらないわね、狩猟なんて。後悔するわよ」

 

 苦笑いするユータに反して、護衛はいよいよ怒りでオーラが溢れ出していた。場の緊張が高まっていく。

 一触即発。護衛二人が今にでもカミーラの首を取ろうと動き出そうとした時、ユータはバッ、とあらぬ方向を向いた。

 

「なに?」

 

 

「……………………くはっ」

 

 

 その瞬間。

 カミーラの背筋が凍った。

 

 ユータが見せたのは、この数日彼が見せていたどの表情とも違った。

 楽しそうに友人と談笑する顔でもない。

 遊戯場の女性に対する軟派な顔でもない。

 カードで負けて落ち込む顔でもなければ、ハンター協会会長として真面目にカミーラと対面する顔でもない。

 

 狩人。

 獲物を見つけたハンターの獰猛な顔が、そこにはあった。

 

 カミーラに侮辱されようともおくびにも出さなかった殺意が、ユータの視線の先、その対象には向けられている。それを目にしただけで、カミーラは指の一本も動かせなくなった。

 

 瞬間、ユータの体から円が展開される。

 

「カミーラ王子。早急に対処すべき敵が現れました。私はこれで失礼します」

 

 ユータは見ていた方向の斜め上空に手を翳した。次の瞬間、オーラの光が瞬き、ユータの掌、その直線上の物体が消失した。

 

「なっ……」

「大丈夫、円で人がいないことは確認済みです。マチ、ノブナガ。俺が死んだら、船を捨てて逃げろ。泳いででもな。ヤツは俺でも殺せるか分からん」

「ユータ様……」

 

 護衛の言葉に答えることもなく、ユータは自らが開けた穴へ飛んだ。

 

 カミーラは思わず、モニターの電源を付ける。

 ユータは、出航後のパフォーマンスの時同様、船外のカメラにその姿を捉えられていた。 

 

 航海する先を見据えている彼はカミーラが見たこともない防具を着用しており、また手には身の丈ほどの大剣を携えている。やがて彼は大剣を構えると、空に向けて斬り上げた。

 

 斬撃の形を取ったオーラが飛ぶ。それは遥か彼方より飛来した炎の塊とぶつかり、それを真っ二つに割って消失した。二つに分かれた火球はそのままブラックホエール号の遥か後方に飛んでいき……轟音と共に海の一部を蒸発させた。

 水蒸気爆発により、船にまで大きな振動が走る。

 

「こ、これは……一体何がいるというの……!?」

 

 その問いに、答えられる者は誰もいない。

 答えを求め、カキンの誇る超望遠カメラが捉えた映像を見て、カミーラは息を飲んだ。

 

 黒い龍。そうとしか呼びようのない生物が、ブラックホエール号より遥か彼方からこちらを睨んでいた。




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次回はモンスターハンターでもHUNTER×HUNTERでもなくDRAGON BALLをお送りする予定です(ネタバレ次回予告)
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