モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第68話

 カキンの技術力で作られた最先端のカメラが望遠しても、僅かにしかその姿を捉えられないほどの遠方。

 しかし、映るその眼はモニター越しであろうと、睨まれれば恐怖で失神しそうなほどの重圧を湛えている。

 

 間違いなく、先の火球はあのモンスターによるものだろう、とカミーラは確信する。同時に、マチとノブナガが船内の旅団メンバーに通達。

 ユータが全力戦闘を行う、と。

 

 それを受けた旅団メンバーは……全員、スマホで中継されているユータの姿を見ながら、クロロの元へ集結し始めていた。

 クロロの『盗人の極意(スキルハンター)』で、流星教の信者から預かった能力がある。

 

信じる者は観ている(アセンブルミラー)

 

 ユータを信仰する人間のオーラを徴収し、ユータがモンスターを狩る姿を映す鏡を作り出す相互協力型の具現化能力。

 

 これにより、信じる神の勇姿をその目に収めるため、幻影旅団は急いでいた。それはユータに退避を命じられたマチとノブナガも例外ではない。

 

「逃げろったってね」

「ユータ様が全力出さなきゃならんような相手から逃げ切れるわけねーからな」

 

 事実、先制攻撃で放たれた火球。

 あれが当たっていれば、この船が燃え落ちていたことは明らかだ。

 通常の人間の目には豆粒ほどにも見えない距離からの攻撃であの威力。となれば、更に上の攻撃があることは想像に難くない。

 そんな相手に、どうやって逃げろと言うのか。

 

「なら、ユータ様とあの龍の戦いを観てた方がマシだよね」

 

 また、聞くところによればブラックホエール号に紛れ込んでいた、『信じる者は観ている(アセンブルミラー)』を持つ流星教信者が各層におり、既に鏡の設置を終えているらしい。

 

「ユータ様の全力戦闘……多分、蟷螂の時より凄いよね」

「間違いねぇだろ。ユータ様の顔見たか?」

「うん。多分、ずっと飢えてたんだね。全力を出せる機会に」

 

 マチの言葉は正鵠を射ていた。

 周囲を破壊しかねない力を持て余したユータは、それでもその力を自らの内に抑え込んでいる。

 ユータは、持った力を全て発揮できる機会を待ち望んでいた。これから暗黒大陸に上陸し、さまざまなモンスターと戦うにしても、あの黒龍ほどの相手がいるかどうか。

 今後の長い彼の行く道で唯一かもしれない。それでも、彼の願いはようやく叶う。

 

「ん?」

 

 走るノブナガは、手元のスマホに映る映像が動いたことに気付き、そちらを注視する。そして、

 

 

「は……?」

 

 

 思わず間抜けな声を漏らした。

 

「ちょっと、どうしたの?」

「……見てみろ」

 

 マチにも画面を見るように促す。

 彼女はノブナガのただならぬ様子に、手の中のスマホに目を遣る。

 

 カメラに映る、流星教現人神の証、流星(バルファルク)の鎧を身に纏うユータは……

 

 

 宙に浮かんでいた。

 

 

 画面内の光景により、念能力者という異能者として生きる中でどこか忘れかけていた常識が、改めて丸ごとひっくり返される。

 

 人は空を飛ばない。

 

 いかに念能力者とて、それは根底にある常識だった。相互協力型として飛行機など乗り物に変身することはあっても、己の身一つで空を飛ぶ存在など、今までマチもノブナガも、お目にかかったことがない。

 が、ユータはオーラの噴出により空に浮いている。二人は知る由もないが、光の尾を引いて飛ぶ姿は、奇しくも星の龍が流星街に落ちてきた時の様子と酷似していた。

 分かってはいたことだが、二人は改めて認識する。

 人は空を飛ばない。なら、飛んでいるユータは人ならざる者……流星教の神であると。

 

「ついに飛んじまったよ。空」

 

 

 

 

 

 

 火球を切り裂いたユータは、二つの感情に支配されていた。

 自らの肉体に刻まれた、ミラボレアスへの憤怒。

 そしてそれよりも大きな、自らの力を解放できることへの狂喜。

 

「行くぜ……ミラボレアス!!」

 

 ユータは、流星教の現人神としての正装……バルファルク装備に身を包んでいた。

 彼我の距離はどれほどか。目測もできないほどの遠距離。それを詰めるべく、ユータは、空に一歩を踏み出した。

 

 そのまま、鎧の排出口からオーラを噴出し、空を飛んだ。

 

 既に、『神降ろしの儀(ハンターズクエスト)』で空を飛ぶ実験は済ませてある。空から駆けつけたせいで、余計に神扱いされることもしばしばだったが、ミラボレアスが翼を持つ以上、空中戦の対策は必須だった。

 遠距離攻撃での対応も考えたが、上を取られ続けることが戦闘においてどれだけ不利となることか。

 

 ユータなりに様々な対策を考えた結果、辿り着いた結論。

 

『そうだ、俺も空飛ぼう』

 

 極めて単純かつ『それができれば苦労はない』という類のものだった。

 当然だが、通常であれば人ひとり浮かすほどのオーラの放出などあらゆる意味で出来るわけがない。

 オーラが枯渇するし、そもそもそれだけの出力のオーラを放出できない。

 

 ユータはこれを己の常人離れしたオーラ量、出力により……要するにゴリ押しで解決した。

 いくらオーラを放出しようが、ユータの潜在オーラ量からすれば微々たるもの。

 出力も、放出系として練度が人類最高峰であれば問題ない。

 

 バルファルク装備の影響か、オーラが龍気のように赫く煌めきながら、ユータを前へと運んでいく。

 船からある程度離れたところで、さらに加速。ミラボレアスとの距離をぐんぐんと縮めていく。

 

 しかし、それをただぼうっと見ているだけの黒龍でもない。

 ミラボレアスは大きく息を吸い込み、先ほどよりも射程は短いが、威力は遥かに高いブレスを放った。

 

 ミラボレアスはユータしか見ていない。それ以外は脅威ではないからだ。

 しかし、それ故にユータだけは絶対に逃さない。

 

 扇形に広がるブレスが更に強化された、上下にも広がる放射状のブレス。回避困難、範囲内を灼熱で焼き尽くす死の吐息。

 

 ユータは急速に真逆の方向に転換し、ブレスの範囲から逃れるように反対方向へ逃げる。そして、迂回して再びミラボレアスへ向かった。

 

「怖ぇ怖ぇ。攻撃を避けなきゃ、と思わされたのは久しぶりだ」

 

 当たればただでは済まない攻撃を前にして、ユータはそれでも楽しそうに笑う。

 

「場所を変えさせてもらうぜ」

 

 ユータはオーラの放出でミラボレアスへ突進。勢いを活かして、大剣を振るう。それは斬るというより、もはや叩き潰すような動きだった。

 対し、ミラボレアスはオーラを集中させガードする。極硬の鱗も相まって、ユータの大剣がミラボレアスの肌を傷付けることはなかった。

 が、その衝撃までは消しきれない。ミラボレアスは遥か後方に吹っ飛ぶ。

 

「はっはあ!」

 

 容赦なく追撃を加えに飛ぶユータ。しかし、攻撃に意識を集中させた隙を、ミラボレアスは逃さない。

 

 天から炎が降り注ぐ。

 ミラボレアスは自らの獄炎を空に吐き出していた。それが雨のように細かく別れ、ユータに襲い掛かる。

 

「チィッ!」

 

 火の雨が掠り、その度にユータに甚大なダメージを与えていく。防具越しにも拘らず、触れた箇所は焼け焦げる。さらに防具は熱を持ち、身に付けるだけでユータの体を熱で蝕み始めた。

 

 しかし、ユータは己のダメージを顧みず、追撃を選択した。腕はダメージで動かない。なので、勢いを落とさないまま、吹っ飛ぶ黒龍の腹に追撃の蹴りをかます。

 更に加速したミラボレアスは、ユータの狙い通り無人島に叩き落とされた。

 

「ぐ……」

 

 しかし、ユータも我慢の限界。海に飛び込み、海水で防具を冷却する。飛び込んだだけで海水が蒸発する。腕の一部は炭化してしまっていた。

 無事な腕でアイテムBOXから秘薬を取り出し、口の中で噛み潰す。

 

 そのままユータは海面へ飛び出し、びしょ濡れのままミラボレアスと相対する。

 ミラボレアスは吼える。よくも己を地に落としたな、と言わんばかりの激昂。

 

「やっぱハンターは地上戦っしょ」

 

 空中(ぜんしょう)戦は終わりだ、と言わんばかりにユータは大剣を担ぎ直した。




閲覧・お気に入り・感想・評価・ここすき・誤字報告していただいた皆さん、ありがとうございます。

オーラの放出による高速移動は原作でもやってる人がいるんですよね。
ですよねリールベルトさん!!
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