モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第69話

 ブラックホエール号内の全ての層で、流星教信者によるユータVSミラボレアスのライブビューイングが行われていた。

 すわ映画か、と思われるような規模の戦いであるが故に一般人では見向きもしない者もいるが、こと念能力者においては全ての者がそれを観戦していた。

 

「……レオリオ」

「無理に決まってんだろ!」

「まだ何も言ってないよ」

 

 ゴン、キルア、レオリオ、カイト。四人の中で唯一の放出系であるレオリオに話を振るが、秒で否定されてしまう。

 

「お前らもやったろ? 放出系の系統別修業。アレで考えてみろよ。一瞬浮くだけでもあんだけオーラ消費すんだ、飛ぶなんてできるわけねえよ」

「クロロたちが神様だって言うのも分かるよ」

 

 放出系といえば、とキルアは自らの父や祖父を思い出す。彼らもまた放出系能力者。ゼノは己のオーラを龍に変え、それに乗ることで空を飛ぶことができる。が、果たして身一つで、あそこまで自由自在に飛べるだろうか。

 ……まあ、キルアにとってユータは最強のハンターだ。彼の強さについては今更だな、と割り切った。それよりも。

 

「オレは逆に敵の龍がヤバいと思うね。ユータとまともに張り合えてる時点でバケモン中のバケモンだ」

「同意だな。ユータの実力は全ハンターの中でも抜けている。あの猫型キメラアントでさえ相手にならなかった」

 

 カイトの言葉に、ゴンとキルアは息を呑む。カイトから話は聞いていたが、今まで触れた中で最も凶悪なオーラを纏っていたキメラアントでさえ、ユータは圧倒したという。

 

 速すぎて影を僅かに捉えるしかできないが、龍とユータは互角の戦いを繰り広げているように見える。それだけで、あの黒龍がどれだけ強大な存在なのかが分かる。

 

「頼むぜ、ユータ。おまえが勝てないモンスターなんて存在するもんかよ」

 

 兄から守り、キメラアントを討伐し、家族との仲も取り持ってくれた。

 もはやユータに対して全幅の信頼を置くキルアは、映し出されるユータの姿を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 ユータは己の目の前で変質するミラボレアスを見て、より深い集中に入る。

 怒りによりミラボレアスの体が赤熱化し、黒龍は紅龍に変わった。

 

「怒ってんな? ま、角折られた相手だもんなぁ」

 

 ユータは怒れる龍を相手に、更に挑発するという暴挙に出る。ミラボレアスは憤怒の咆哮をあげて、ユータに突進する。

 

 速い。ユータの何倍もの体躯を持つミラボレアスだが、ユータにも全く見劣りしない速度だった。

 突進を辛うじて避けたユータだったが、直後、凄まじい衝撃で血反吐を吐きながら吹っ飛ばされる。

 尻尾による薙ぎ払い。鞭のようにしなり、しかも攻撃力は禁忌のモンスター、ミラボレアスによるもの。並のハンターなら、何が起きたかすら分からずにこの世から消え去っている。

 

 ユータですらダメージは大きく、骨と内臓が幾つも損傷する甚大な被害を被っていた。今まで経験したことがないほどの痛みに襲われている。

 

 秘薬をスナック菓子のように軽々に消費しながら、ユータはミラボレアスへ肉薄する。

 大剣を振るうが、怒りにより硬質化した鱗は、先ほどまでと違いオーラを集中させずともユータの剣を弾いた。そして、反撃の尻尾による薙ぎ払い。

 

「二度は食わねえよ!!」

 

 軽快に跳ね、くるりと身をかわしたユータはその勢いのまま、尻尾を地に縫い止めんと大剣を突き出す。が、それも同様に弾かれ、空中へ放り出される。

 

「硬ってぇ〜。どんな肉質してやがる」

 

 言葉と裏腹に、ユータは明らかに喜んでいた。

 己の膂力を振るっても貫けぬモノ。その存在自体に、ユータは感謝していた。

 

 だが、だからと言って手加減する気も毛頭ない。ユータは自らの全力を尽くすのに喜びを覚えた。それに加えて、ユータの体に刻まれた憎しみは、ミラボレアスを殺せと叫んでいた。

 怒りと喜び。相反する感情の中で、ユータはミラボレアスの動きに変化を見た。

 

 ブレスの予備動作より、さらに大きく息を吸い込んでいる。巨大なブレスが来る、と予想したユータは、回避行動を取ろうとする。が、彼の予想は大きく外れた。

 

「あ、ヤバ」

 

 ユータを殺すためだけにミラボレアスが編み出したブレス。破壊を撒き散らすだけではない、その威力を極限まで引き絞った結果、細いレーザーとなりユータの腹に穴を開ける。

 

「がッ……」

 

 レーザーを吐き出したまま、頭を真っ二つにせんと勢いよく首を上げる。ユータは力を振り絞り、なんとか体を捻って頭部へのダメージは守る。が、腹から左肩にかけてが、レーザーにより焼き切られた。

 否、ユータの肉体だけではない。彼の後方、無人島の大地とその先の海が、裂けた。

 

 

 尋常じゃない痛みが脳にアラートを出す。このまま行けば死ぬぞと全身の細胞が訴えてくる。

 しかし。だというのに。先ほどから、ユータの顔からは笑みが消えない。

 

「クハッ。あっははははははははは!!!!!」

 

 ユータは戦闘中、終始笑っている。

 

 現時点で、ユータの攻撃はミラボレアスには通らず、逆にミラボレアスの攻撃は一撃一撃が秘薬を使わされるだけの致命的な攻撃。

 有利なのは紅龍。端から見て、それは絶対的な事実であるはずだった。

 

 

 だというのに、紅龍の目の前の、かつては鬼のようだった男は笑っている。

 以前戦い、角を折られた時とはまるで違う。

 別の生き物になってしまったかのような違和感。それはミラボレアスにとって脅威だった。

 

 何故笑っていられるのか。高い知能を持つミラボレアスにも、それは理解できなかった。

 理解ができない存在に対し、ミラボレアスはかつてこの世界へ逃げ延びた時の感情を思い出していた。

 

 

 

 

 

「くくく……ボクにはよく分かるよ、ユータ♥」

「どういうことだ?」

 

 ユータが何故笑っているのか分からなかったフィンクスは、隣で笑うヒソカに尋ねていた。

 シズクも興味深いのか、話に耳を傾けている。

 

「ボクとは対象が違うけどね。ユータは異種間戦闘(アニマルプレイ)がシュミみたいだし♠︎ キミも、命を削り合う極限のやり取りにどこか楽しみを見出している節があるんじゃないかい♥」

「まあ、否定はしねえけどよ。あのレベルの相手だぜ?」

「バトルは楽しいものだけど、一番楽しいのは、実力が拮抗した相手と命のやり取りをする時さ♣︎ 一歩間違えれば命を落とす状況で正しい選択を取り続ける快感。相手より僅かだけ上回った時の達成感、自らのセンスが磨かれる感覚……堪らないよね♠︎」

「ちょっと分かるのがキモいわ」

「あたしはちょっと分からないかも」

 

 フィンクスの嫌そうな同意にも、シズクの否定にもヒソカはにこりと笑みを返す。

 

「ユータには相手がいなかった。でも、見つけてしまったわけだ♥」

 

 バトルジャンキーであるヒソカだからこそ、今のユータの昂りには強く共感できた。

 

「今、彼は今までの欲を全部ぶつけている♥ ないと思うけど、間違っても邪魔しないことだ♠︎ 殺されても文句は言えないよ♥」

「するわけねえだろ。つーか手の出しようがねぇっての」

「それは良かった♥」

 

 もし、この戦いに横槍を入れるつもりであるなら、ヒソカはその対象を殺すつもりだった。

 あの戦いに加勢しようと思えるレベルの使い手と戦える、という自分の趣味が八割くらいを占めているが、そこには確かにユータとの友情を感じている部分も存在する。

 

(思う存分楽しむといい♥)

 

 ()()()()へようこそ、とヒソカはユータを歓迎する。

 

 ヒソカの言葉を飲み込んだフィンクスだったが、ここで黙って話を聞いていたシズクが口を開く。

 

「ユータ様も今勃ってるのかな?」

「…………」

「……………………」

 

 天然で下ネタをぶち込んできたシズクに対し何も言えず、ヒソカとフィンクスは黙り込んだ。




閲覧・お気に入り・感想・評価・ここすき・誤字報告していただいた皆さん、ありがとうございます。

ちなみに勃ってはないです。
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