モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第71話

 元天空闘技場200階の受付嬢は、ユータの第一印象を聞かれればこう答える。

 軽薄そうな人だった、と。

 そしてそれは間違いではなかった。

 

 天空闘技場は野蛮人の聖地だ。当然、見目麗しい受付嬢たちに対し、声を掛けたりセクハラをしてくるような輩は幾らでもいる。200階ともなれば、そんな人種はすぐに淘汰されるが。

 

 初めてユータが声をかけた時、彼女はまたその手のナンパか、と適当にあしらうことにした。ただのナンパだったのは事実である。

 普段と違ったのは、シンプルに彼が強すぎたことだ。

 

 あっという間にカストロやヒソカといった200階クラスの注目株を下し、フロアマスターに駆け上がり、果てはバトルオリンピアで優勝を果たすほどの実力者。

 女などいくらでも寄ってくるだろう。

 

 が、ユータは一勝する度に彼女を訪ね、食事やデートに誘ってくる。

 当然、彼女も悪い気はしない。いつしか絆され、逢瀬を重ねるようになった。

 

 フロアマスターになってからも、バトルオリンピアに優勝してからも彼は飾らず、同じように彼女に接した。

 彼にとっては、フロアマスターもバトルオリンピア優勝も、大した価値はないのかもしれない。

 自らの職場の大切な称号ではあったが、この男ならば納得できる、と受付嬢は素直に受け入れていた。

 

 ユータと話す内、彼の内面について、彼女は理解を深めていった。

 

 ユータは、飛び抜けた戦闘能力以外は普通の人間だった。

 馴れ馴れしく、周囲の人間にやたら絡みに行く。リアクションも大きく、褒められれば照れるし調子に乗るし、貶されると肩を落とす。

 ともすれば、大きな力を持っていることを忘れそうになる。

 

 そんな彼が、ある日天空闘技場のチャンプを降りると言った時は、別に意外とは思わなかった。

 その椅子にこだわりもないだろうし、天空闘技場のチャンプで終わるほどスケールの小さい男ではないと思っていたからだ。

 

 だが、受付嬢は思った。もっとユータのことを近くで見続けたいと。

 だから今、彼女はブラックホエール号に乗っているのだ。

 

 

 

 

 

 複数の武器の組み合わせを解禁したユータは、ミラボレアス相手に有利を取っていた。

 

 ライトボウガンを二丁手に持ち、弾を乱射する。

 弾にはオーラが込められており、その威力は格段に増している。受けたミラボレアスの鱗がものすごい速度で削がれていく。

 

 そして、ガンランスを両手に持った二槍流。竜撃砲を連続使用し、一気にミラボレアスの体力を奪う。

 

 勝てる。

 

 そう確信し、突っ込もうとしたその瞬間、ユータの背筋に怖気が走る。

 思わずガンランス二槍をしまい、ランスを取り出して盾を構えた。

 

(本能的にガードを選ばされた。ヤバいのが来るか?)

 

 ユータの直感は当たっていた。

 ミラボレアスは、己の念能力系統を知らない。水見式など知る由もない。

 だからこそ、系統度外視で、己の最も欲する力を備えた。

 

 紅龍とは、黒龍が怒りや火山エネルギーの蓄積により変化した姿とされている。つまり、黒龍が紅龍に変わるのは、いわば体質。念能力とは関係がない。

 が、()()()()は、ミラボレアスの持つ念能力によるもので相違ない。

 

 黒から紅に変わった体色が、白に染まっていく。

 

「……祖龍…………!!」

 

 ユータの呟きに応じるように、気高い咆哮を上げる祖龍。

 その赤く変質した目がユータを捉えた瞬間、赤雷が迸る。

 

「しまっ……!」

 

 ガードを固めた盾の上から、ユータの体を雷が貫く。

 選択を間違えた。この雷はガード不能であり、強制的にユータの動きを止める。

 結果、回避も防御もままならないユータの前に、眩い程の火炎が迫る。

 劫火。ミラボレアス一撃必殺の攻撃がユータを捉え、彼の体は全てが真っ黒に炭化した。

 

 

 

 

 阿鼻叫喚。

 流星教の信者は取り乱し、また多くの念能力者、ハンターたちも、ユータという史上最強のハンターが敗北した事実に動揺していた。

 また、それだけ強大な存在がすぐ近くの島にいる、ということが、彼らの恐慌を加速させていた。

 

「今すぐ引き返すべきだ!」

「無理です、これだけ巨大な船。Uターンするにも時間がかかり過ぎます!」

「逆方向への推進力とか付けてないのかよ!」

 

 喚き、叫び、(モニター)の前は混沌としてくる。しかし、そんな中でも平静を保つ者がいた。

 

「大丈夫ですよ」

 

 一人の女だった。念能力者ではない、訳知り顔の、目の下の隈が特徴的なダウナーな美女だった。

 

「ユータ様は勝ちます」

「し、しかし。現に今彼は死んで……」

 

 男が鏡を指差す。が、様子がおかしい。

 先ほどまで白い龍と炭化したユータのいる無人島を映していた鏡は、いつの間にか船の中、一室を映していた。

 

 男は驚愕する。鏡に映っているのは……目の前のダウナーな女と、自分?

 

 

「信頼してくれて嬉しいなぁ。一乙しちゃったけど、次は油断しないよ」

 

 

 先ほどまで、鏡から聞こえてきた声が、背後から響く。

 まさか、と恐る恐る振り返る。

 そこには、死んだはずの男が立っていた。

 

「いやー、ごめんごめん。心配かけたね」

 

 なんでもないことのように死の淵から復活したユータは、軽い言葉で謝罪した。

 誰もが、愕然とする。

 

 人は空を飛ばない。

 そして、生物は死んでも生き返らない。

 なら、この男は一体?

 

「あれだけ強い相手に油断だなんて、仕方ない人ですね。ではお気を付けて」

「うん。行ってくるわ」

 

 こうしてユータは、復活を果たした。

 

 正確に言えば、死んだ訳ではない。

 死ぬ直前、生命の灯火が消えるギリギリで発動する放出系能力『二乙までは大丈夫(アイルビーバック)』。

 死の直前に、自身の潜在オーラを実に三分の一消費することで、自身が直前に眠った場所への瞬間移動を可能とする能力。

 別にダメージを回復するわけではないので、死の淵でいにしえの秘薬を飲むことに失敗していれば、それでユータは死んでいただろう。

 

 が、過程がどうあれ、人々からすればユータは『一度死んで生き返った』ということに変わりはなかった。

 その光景を見ていた全員が確信する。

 

 あの男は神だと。




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祖龍への変化は変化系能力ってことでいいかな…
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