モンスターハンターかと思ったらHUNTER×HUNTERだった…   作:レイトントン

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第73話

「ユータのジジイ、蘇ってから明らかに優勢になりよったな」

 

 一度死んだ男。ユータは復活を果たした。恐慌の中、画面を見ていた者たちは驚愕した。揉める観戦者たちの後ろの物陰で、黒い塊と化した男は、死にかけながらそれでも確かに動いていた。

 そして炭となった男は、箱から丸薬を取り出すとそれを飲み下した。

 するとどうだ。数秒もしないうちに、バリバリと黒ずんだ体は蛇の脱皮のように剥がれていき、中から綺麗な肉体が現れた。

 

『ふう』

 

 ふうじゃないが。

 奇跡の復活を果たしたユータは、そのまま自らを殺した龍の居場所へ再び飛翔した。

 最早考えるのも馬鹿馬鹿しい。心配して損したわ、とゼノは嘆く。

 

「あのジジイが死ぬわけなかったんじゃ……ワシの心配は完全にムダ。バカなことをしたわ」

「親父、珍しく狼狽えていたな。良いものが見られた」

「忘れんか馬鹿モン」

「ふぉふぉ。ユータが死ぬわけなかろ」

 

 ゼノを揶揄ってはいるが、シルバも内心では戦々恐々としていた。まさかユータが倒されるとは、とユータの死に疑いを持っていなかった。それだけ、画面越しに見ても規格外の炎だった。

 が、ジグは少しも動揺を見せなかった。それこそ暗黒大陸の時代からの、長い付き合いだからだろう。

 

「しかし、あの白い姿になった龍は強いぞ」

「いかにユータ殿でも……いや、待て親父。ユータ殿のオーラを見ろ」

「……ム。先ほどまでより強い……!?」

 

 明らかに、纏うオーラの量が増えている。

 

「目算だが10パーセントは増えているようだ」

「嘘じゃろ……まだ上があるんかい。ドン引きじゃ」

「ユータは……あの男は暗黒大陸の覇者じゃ。一部地域じゃがの。よぉ見とれ、あの大地で頂点に君臨する生物が、どんなものかをのぉ」

 

 ゾルディック家最年長の言葉を前にして、シルバとゼノは居住まいを正し、改めてモニターを注視した。

 

 

 

 

 

 俺がハンマーで殴り、ミラボレアスが爪で切り裂く。

 俺がランスで刺し、ミラボレアスが牙を剥く。

 俺がヘビィボウガンで撃ち抜き、ミラボレアスがブレスで燃やす。

 

 ターン制バトルのような、お互いの体力を削り合う真正面からのぶつかり合い。祖龍となったミラボレアスはさらに強くなった。が、俺も負けちゃいない。

 

二乙しても大丈夫(アイルビーバック)』には、モンハンのスキルである『不屈』に似た効果を付与してある。

 一乙した後、一時的に顕在オーラの放出量が1.1倍になるというもの。

 

 つまり、俺はさっきの1.1倍強い。

 ……なんかビミョーな表現だな、1.1倍だと。いや、クソ強いのは分かるんだけど、語感的にね。

 そこはド派手に4倍だぁーッ、とか言いたい。

 

 しかし、語感は悪くとも効果はテキメン。

 先ほどまで一撃モロにくらう度に秘薬を飲まざるを得なかったが、凝のおかげもあってダメージはかなり軽減されている。もっとも、そう何発も喰らうわけにはいかないことには変わりないが。

 

 結果。僅かに、だが確実に、俺の力がミラボレアスを上回っている。

 

 赤い雷が俺を狙うが、オーラの放出による高速移動で回避する。あれだけは喰らえないからな。スタンしたら劫火が来る。

 だが、劫火はかなり隙のデカい技だ。ゲームならともかく、今の状態で素で撃たせるほど俺はのんびりさんじゃねーぞ。

 

 赤い雷以外に、ミラボレアスが俺を一撃で殺すだけの手段(デスコンボ)はない。となれば、それだけ警戒すれば問題はない。

 そう思いたいところだが、そう易々と進ませてくれないのがこの宿敵だ。

 

 俺が赤雷を嫌がっているのを見て取ったか。ミラボレアスは咆哮を上げ……その体に赤い雷を帯びた。

 ……まーじで?

 

 赤雷を纏った爪が振り回される。

 

「うおおおおおおおおッ!?」

 

 やっべえ!

 掠ったらスタン! イコール一乙!

 オワタ式かよ……!

 

「面白ぇ! オーラの放出量も上がってんだ、機動力だってさっきとは違うぜ!」

 

 俺は惜しみなくオーラをバンバン湯水のように放出し、超高速移動で赤雷を全て避ける。

 こえーこえー。でも、見えてるぜ。

 

 あの赤雷を纏われちゃあ近接攻撃はできねーな、感電しちまう。俺はボウガン二丁持ちで弾をマシンガンのように連射する。

 オーラ量が増えている分、一発一発の威力もさっきまでとは違う。ガンガン祖龍にダメージを与えていく。

 

 このまま行けば俺がかなり有利だ。ミラボレアスにも、遂に疲労の色が見え始めている。

 お互いラストスパートだな。

 

 少し距離を取り、一息吐く。

 恐らく、次の接触がこの戦いの決着となるだろう。

 

 向こうもそれを察したのか、大技の準備にかかったようだ。ミラボレアスの体の赤雷の瞬きが激しくなっていく。

 これは……範囲攻撃の前兆か!?

 

「チッ!」

 

 全力で飛んで、遥か上空に逃れる。

 ちょっと過剰かとも思えるほどの距離だが、今更侮れる相手じゃない。そして、それは正解だった。

 ぐ、と溜めた雷を放ち、ミラボレアスの赤い雷が、一瞬で球状に広がる。

 

 無人島全てを覆い尽くすほどの雷。俺もギリギリのところでなんとか逃れたが、こんなの地上じゃ回避不可能だろ。

 あっぶねぇ……まだバチバチ音してるよ。

 

 雷が収まったらトドメを……と考えていた俺の視界に、遥か下方、無人島を更地にしたミラボレアスの顔が映る。

 その口の中には、全てを焼き尽くす獄炎が蓄えられていた。

 

 なるほど……!

 雷で俺を遠ざけ、劫火で仕留めるって腹か!

 

「やっぱ最後は最強の技で来るわけね……!」

 

 ミラボレアスとはかなり離れている。接近して、ぶん殴って劫火を止められる保証はない。

 なら、ここから撃ち抜くしかない。

 

 俺は弓を構え、矢の代わりに大剣を番える。

 ギリギリギリ、と弓を引き絞り、大剣にありったけのオーラを込める。

 

「最後の勝負だ」

 

 ミラボレアスの、極大の劫火が放たれる。

 

 

 

 

「貫けェェェェェっっ!!!!!」

 

 

 

 

 俺もまた、全力を込めて大剣を射った。

 

 お互いの最高火力のぶつかり合い。

 視界を赤で覆い尽くす、全てを焼く劫火。

 俺の放った一撃が、それと衝突した瞬間。

 視界が晴れた。

 

 

 炎を蹴散らし、正確に放たれた大剣は……ミラボレアスの首に、突き刺さる!

 

 

 その剣はミラボレアスを無人島の地に縫い付ける。そして、ミラボレアスは力なく崩れ落ち……白い体は、元の黒に戻っていく。

 俺は確信した。

 

「ッ……うおおおおおおおお!!!」

 

 ミラボレアスを、討伐したと。




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もうそろそろ最終回です。
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