風の鎧。それは高飛車瑚が開発した何者も寄せ付けない攻撃と防御、両方に使える優れものである。その鎧は強固で絶対。そう車瑚は思っていた。
「どどどどど、どういうことですの~~~~~~!?」
「見ての通りだ」
なんとワンは風の向きを掴んで飛ばされないように立ち回っているではないか。
「ちょこまかするんじゃありませんわ~~!」
「断る」
ワンは、足下にある風を、更に下に寄せつけ、上下に動き出した。そして一気にブーストをかける。
「なっ!」
「風の鎧……大したものだが、いささか穴が多いな」
「ぬわんですって~~~~~~!」
車瑚は驚愕の声を上げた。ワンが今いる場所は――
上空。
「風の鎧のコントロールを上にも向けなければ奇襲に対応出来ないぞ」
「まず何食わぬ顔で空飛んでいるのがおかしいのですわ~~!」
車瑚は、見上げながら、バサバサッとデコ団扇とデコ扇子を振り回して叫ぶ。
「言っただろう。俺は異能力者だ」
「ムキーッ! ですわ~~~~~~!」
「これで終わりだ」
ギュルルル! とワンは回転して螺旋状に突っ込んでくる。
「ギィヤアアアアアアですわ~~~~~~!」
風と風が交錯し、その場で雲散霧消した。
「わ、私の風が……」
信じられないと言った顔で呟く車瑚。
「これが現実だ」
ワンはシュタッと地面に降り立って言う。
「ぐぬぬぬぬぬぬですわ~~~~~~!」
車瑚は悔しい様子で地団駄を踏む。ワンは、小さく首を振った。
「やれやれ。……さて、と」
ワンは一歩踏み出す。ビクッと車瑚が肩を揺らした。
「うう……」
「…………」
ピタッとワンは止まる。暫し黙考した。ここで異能力を回収するのは簡単だが……。
「高飛車瑚」
「な、なんですの?」
ビクつく車瑚に向けて、ワンは、ゆっくりと口を開いた。
「その異能力、……俺の任務に役立てるつもりはないか?」
「は、はい……?」
ポカンとする車瑚であった。
「お前の風の能力は使える」
ワンは単刀直入にそう言った。
「あ、あなたは一体何者なんですの!?」
車瑚は話に全くついていけましぇ~~ん! と言わんばかりに叫ぶ。ワンは、表情を変えずに淡々と答えた。
「悪いが、正体は明かせない。そういう決まりなのでな」
「ミ、ミ、……」
「?」
「ミステリアスですわ~~~~~~! なんかカッチョイイですわ~~~~~~!」
車瑚がお目々をキラリン! としながらワンに詰め寄ってくる。
「そうか」
ワンは、小さく頷いた。
「ですが、異能力者というのは言ってもよかったのですの?」
お嬢様のお気遣い感謝致しますわ~~~~~~!
「ああ。問題ない」
ワンさんはどこまでもクールですわ~~~~~~!
ワンは周囲に目を配ると、車瑚に向き直る。
「場所を変えよう。時間はあるか?」
「あるっちゃありますわ~~~~~~!」
「ならばよし。行こう」
ワンと車瑚はそのまま並んで歩き、中庭を後にした。
ワンと車瑚は、車の前までやってくる。
「お嬢様には少々手狭かもしれないが、乗ってくれ」
「アイアイサーですわ~~~~~~!」
さっきからテンション可笑しくね? って思ったらそれは気のせいですわ~~~~~~!
ワンは車の助手席に車瑚を乗せるとバタンと扉を閉めて、自らも反対側に回り、ドアを開け乗り込む。
「どこへ行かれるのですの?」
車瑚の問いに、ワンは少しニヤリとする。
「俺の行きつけの店だ」
ワンはそう零すと、エンジンをかけ、アクセルを踏み、車を発進させた。ブロロロロロロ~~~~~~。
決着ですわ~! 交渉ですわ~! また次回です。