聖ジュリアナ女学院に着いたテンは息を切らせながら、スマホを見る。
「あれ? 先輩の位置情報が消えている?」
ええー? とテンはワチャワチャと髪を搔き乱す。
「ん? テンじゃないか」
するとテンの前方から影が現れた。
「あっ! ハンドレッド先輩!」
ハンドレッドと呼ばれたスーツ姿のビューティフォーな女性は上品に溜息をつく。
「なぜこんなところに? 任務はどうした?」
「完了しました!」
テンはビシッと敬礼する。若干ドヤッてもいる。可愛い。
「ならば休め。体調管理も大事だ」
「ですが、ワン先輩が……!」
「あいつがヘマすると思うのか?」
「全く思いません!」
「そんなにあいつに会いたいのか?」
「はい! ワン先輩成分を摂取したいです!」
ワン先輩成分って何ぞや?
ハンドレッドはもう1度溜息をついて、テンと一緒に行動を共にすることにした。
「ハンドレッド先輩はなぜ、ここに?」
「監視だ。もしものための、な。全く心配いらなかったが」
「さすがワン先輩ですね~じゅるり」
「念には念を、ということだから続けはするがな」
「ワン先輩は異能力を回収して移動中ですか?」
「いや、それが……」
ハンドレッドは、テンにちょっと言いにくそうにした。若干歯を食いしばっているご様子。
「? 何ですか?」
「ターゲットと仲良く喫茶店へゴー! だったな」
「はあああああああああああああああああああ!?」
テンちゃんの叫びが学院中に木霊した。
「お待たせ致しました。クリームソーダでございます」
マスターが車瑚の前にクリームソーダを提供する。メロンソーダが入ったグラスの上にバニラアイスとサクランボが乗っている。
「おほほ見目麗しいですわ~~~~~~! まるで私のようですわ~~~~~~!」
「そうか」
おほほってる車瑚に対してフランクなワン。
「お待たせ致しました。エスプレッソでございます」
「ああ」
ワンはおほらない。代わりにまずエスプレッソの香りを楽しむ。
「パシャパシャですわ~~~~~~!」
一方車瑚はデコスマホでクリームソーダの写真をパシャパシャ撮っている。楽しそうで何より。
ワンはエスプレッソを一口飲んでふうと息をつく。
「それでお前の異能力だが」
「ズゾゾ~~~~~~ですわ」
どうやって飲みながらですわっているのだろうか。ワンの疑問は尽きない。お嬢様って不思議だ。
「俺が次にターゲットにしている者との相性がいい。協力してくれると助かる」
とりあえず、ですわスルーで話を進めるワン。
「私の能力に相性がいい? もしや、あれ系ですの?」
アイスをスプーンでペロリンチョしながら、車瑚は言う。
「あれ系とは何だ?」
同じ事思いました。
「神ってる能力って事ですわ~~~~~~! おーほっほっほ!」
車瑚はデコ扇子をバサッとはためかせる。
「異能力は全部神ってるだろう?」
ワンが事も無げにそう呟く。
「私の能力は~~風! 神! ですわ~~~~~~!」
「なるほど。そういうことか」
ワンはエスプレッソを嗜みながら、納得したように頷く。って、え? 分かったんすか? ワンさん。
「お前の言うそいつでおそらく合っている。知り合いか?」
「初等部からのマブダチですわ~~~~~~!」
「そうか。なら、頼めるか?」
「合点承知の助ですわ~~~~~~!」
「助かる」
ワンは、一言そう言った。
「マスター! またこの店来ますわ~~~~~~!」
「心よりご来店をお待ちしております」
バサッとデコ扇子を掲げ、クリームソーダをグビグビしている車瑚が予約すると、マスターは真摯に頭を下げる。
「どうやら気に入ったようだな」
ほんの少し口許をニヤリとさせるワンは、エスプレッソを優雅に飲む。
喫茶店の店内にはスパイとお嬢様が楽し~く飲み物を飲んでいる様子が出来上がっていた。
数十分後。ワンと車瑚は喫茶店を出た。すると道の脇にワンの見覚えのある車が止まっていた。
「あれは……」
ワンが気付いて声を発した瞬間、バンッ! と勢い良くドアが開いた。
「ワン先輩!」
「テンか」
ワンは慌てることなく冷静にテンを迎える。テンはふしゅ~と息をついて肩を上げ下げしている。
「に、任務お疲れ様です……!」
「お前もな。こちらは問題ない。もう済んだ」
端的にワンがそう伝えていると、テンの後ろからハンドレッドが溜息をつきながら現れた。
「すまんな。ワン。監視しているつもりだったがこいつが聞かなくてな」
「ハンドレッド先輩。そうでしたか。いえ、問題はありません」
これまたワンが端的に答えていると、車瑚は見ましたですわ~~と言うようにあわあわしている。どったの?
「ビビビっときましたわ~~~~~~!」
車瑚がバサッとデコ扇子を広げる。
「何がだ?」
ワンが首を捻る。
「これはまさしく……ただならぬ関係ですわ~~~~~~!」
「は、はあ!? な、何を言っているんですか!?」
テンが驚きの声を上げる。
「私の勘ですわ~~! 50%の確率で当たりますわ~~!」
「普通だな」
ワンがコクリと頷く。
「本当に何なのだこの娘は?」
ハンドレッドは呆れたように首を振る。
「そちらの御方!」
車瑚がデコ団扇をずびしっ! とテンに向ける。
「な、何ですか?」
「見たところ、学生っぽいですわ~~。 年齢をダイレクト公開するのですわ~~!」
「は、はあ? まあ、いいですけど……16です」
「まさかのタメでしたわ~~~~~~! 驚き栗の木桃の木ですわ~~~~~~!」
車瑚は微弱な風に乗ってクルクルと回っている。
「「「…………」」」
ワン、テン、ハンドレッド一同どうしたらいいのかと言う沈黙。
「更にそちらの御方!」
ずびしっ! とデコ扇子をハンドレッドの方に向ける風に乗る車瑚。
「私か?」
ハンドレッドが優雅に腕を組む。黒髪ポニーテールゆらゆら~。
「とてもお綺麗ですわ~~! さすれば年齢をダイレクト公開するのですわ~~!」
途端にハンドレッドはギランと目を鋭くする。
「女性に年齢を聞くのは御法度ではないか?」
「こりゃ失敬ですわ~~~~~~! てへぺろですわ~~~~~~!」
車瑚は、てへぺろしながら風に乗っていた。
やれやれと、ワンは首を小さく振る。
任務はまだ始まったばかりだ。
ワン、車瑚、テン、ハンドレッド揃いました。ハンドレッドちゃんはワンの先輩おにゃのこスパイです。次から第2章へと入ります。