俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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原作がとてつもないほどアレ(褒め言葉)ですので、あの独特の空気を出せないかもしれません。ご了承ください。


第1巻
プロローグ 男は愛していた


ツインテールという髪型を知っているだろうか。

簡単に説明すればツインテールとは、髪を左右で縛った髪型の俗称であり、数ある髪型の中でも比較的メジャーな部類に入るものだ。この髪型は髪の毛を右と左で縛るだけという簡単な髪型なのでその歴史はかなり古い。

少なくとも18世紀のヨーロッパでは既にツインテールという髪型は存在したと言われる文献が確認されており、それより昔の時代にも似たような型をしていた者もいたそうだ。19世紀のアメリカでもチアリーダーの髪型はツインテールが多く、シンプルな髪型が故に数多くの派生の髪型を生み出している。

アニメや漫画などを見てもツインテールのキャラは調べればごろごろ出て来るし、昔は「少女がするような髪型」の象徴だったツインテールも、近年では「好意を寄せているが、本人の前では強がってしまう」所謂ツンデレ系のキャラにも多用されている。

そう、ツインテールとは時代を変え、その意味を変えながらも、多くの人々に愛されている髪型なのだ。それこそ、数世紀の時を超えた現代にまで。

そのように長い間愛されてきたこの髪型には、何か大きな力が宿っているのではないだろうか? それこそ、世界を変えてしまうほどの強大な力が。

…さて、ここで一人の男の話をしよう。ある男をこの髪型を愛していた。それもとびっきりに、ツインテールという髪型に心を奪われてしまったほどに。

だが、その男は…愛しているが故にその愛に大いに苦しんだ。

これはそんな男の物語である。

 

 

 

 

 

 

俺はツインテールが好きだ。

幼き頃、自分と同年代の少女が、その2つに別れた髪を揺らしながら歩く姿に、ときめいた。ポニーテールのように一本に纏めていないので、左右で違った動きをするあの独特なスタイル。三つ編みのように編み込んでいないので髪の毛1本1本が意志を持ったようにゆらゆらと動く美しさ…。

その髪型をツインテールだと知った時、俺の中の何かが変わった。ツインテールという髪型は愛おしい物になり、そして俺の光ともいうべき象徴へとなった。

俺にとっては単なる髪型とかそういった概念を超えた何かへと変わっていったのだ。

…でも、そんな俺でも年を重ねていく内に、自分の好みがどこか周りと違い、おかしいことに嫌でも気づいてきてしまう。

それがはっきりと知ったのが、俺が小学校3年生の時だ。

小学校中学年にもなってくると、自然と好きな人への話や異性の話題で盛り上がるものだ。何かの弾みで俺にもその手の話題が回って来たことがあった。

誰だかは忘れたが、俺はある一人の女の子の名前を出した。確か一学年上の女の子だったはずだ。ツインテールが似合う綺麗な子だった。

話題を振った同級生は興奮して「その子のどこがいいのか?」と聞いてきた。俺は迷う事なく「あの子が優しくて、髪がツインテールだから」と答えた。

その瞬間、聞いて来た同級生の顔がさっと変わったのを覚えている。期待していた答えと違い、驚いているのか、と俺は思ったが、どうやら違うそうだ。

「お前、変だぞ」

この言葉だけを言って同級生はそそくさと去っていった。

…俺は途端に怖くなった。同級生が俺に向けながらいったその言葉は、俺を何か異物か何かを見ていったような発言だったからだ。まるで全否定するような目で俺を見てきた。あの目を、あの視線を、あの言葉を俺はきっと忘れることはできないだろう。

幸いにも同級生はそれ以上俺に突っかかることもなく、数日後には俺に言ったこともすっかり忘れて普通に接してくれた。このことが原因でイジメにでも…と心配していたがそのような事態に収まって嬉しかった。

けれども、心に深く刺さったその出来事は俺を苦しめることになった。同級生は忘れることが出来ても、俺には忘れられない。

自分が好きな物は気持ち悪い物なのか? 俺のツインテール好きは他人から見れば異常な性癖なのか? …ずぶずぶと何かに嵌っていくような事態になった。

それ以降、俺は人前でツインテールのことを口にすることはなくなった。自分の思いを、趣味嗜好を偽り、人受けの良い自分を演じた。…それこそ、友達や先生、親にすら。

自分の本当に好きな物を好きだとはっきり言えなくなってしまった。

優等生を演じ、ツインテールという髪を愛する自分を心の奥底へと押しやった。

…そして、俺はその思いを閉じ込めたまま、俺は15歳へとなった。この春、高校生へなろうとしている今でも、誰にも話さないまま。




…と、まあ暗い雰囲気ですが、プロローグぐらいは真面目にね?

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