俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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今回は全編アルティメギルサイドでお送りします。彼らの変態っぷりをお楽しみください。
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第24話 下着とツインテール

アルティメギルの秘密基地。2つの部隊の合流手続きなどがようやく終わり、気がつけばすっかり大所帯となった。これで誰もがようやく侵略活動も本格的に打ち込めると思いきや、意外な所で壁にぶつかった。

部隊統一。よそから集まってきた者たちを交え、新たな部隊を再編成する。その際の地位や役割を決める時に、その問題が起こったのだ。

現在、各部隊の代表者達は大会議室で熱い討論を繰り広げていた。各部隊の要人を集結させたこの頂上会議。その議論の論題こそ、問題の原因であった。

「まだ分からんのか!?」

「分からんからこうやって話しているのではないか!」

巨乳属性(ラージバスト)貧乳属性(スモールバスト)。この対極の属性ゆえに主張は平行線を辿り、対立に次ぐ対立で部隊は真っ二つに割れてしまったのだ。

どちらが上でどちらが下なのか。それによって統一部隊での地位やポジション、敷いてはその属性力の強さや素晴らしさ、その価値が決まる。皆、やれ自分たちが上だやれお前らが下だと互いの主張を繰り返している。

その勢いは今や元居た部隊のメンバーをも巻き込む事態となっている。そのせいでこの長期間、出撃すらままならなかったほどだ。

「この世界の巨乳属性(ラージバスト)の少なさに呆れ果てているであろう! 自らの身体にメスを入れ、偽りの胸で満足しようとする浅はかさな女子がこの世界は多すぎる! その浅はかな考えだからこそ、巨乳属性(ラージバスト)が生まれぬのだ!!」

「だが、貧乳属性(スモールバスト)は違う! 小さいから、ちっぽけだからこそ、その胸に誇りが生まれるのではないか!?」

「ならばそれはこちらも同じだ!偽りがはびこるからこそ、本物の存在とその価値が希少になる!美しくなれる! 若かりし頃にしか見せれない、一瞬の火花のような煌めきが巨乳属性(ラージバスト)にはある!」

「贋作がはびこるからこそ、荒れた大地に咲く一輪の花のように、純然たる巨乳属性(ラージバスト)のほうが可憐に映えるのではないか!? 」

一歩も譲らぬ両者の対立。厳つい顔をした怪人たちが、中学生の休み時間レベルの話題でここまで論じ合う光景を見たら、はたして侵略される側の人間はどう思うのだろうか?

「ここに巨乳属性(ラージバスト)の素晴らしさを示した一枚の写真がある! これを見よ!」

リヴァイアギルディの部下が大型モニターに一枚の写真を写した。写真には登校中の女子大学生が映っていた。その胸元はたわわに実った乳房が淫らにある。

「なんと下品な乳をしている女だ!」

「ふん…! 馬鹿の一つ覚えのようにただ胸の大きさのことで語る前に、これを見たまえ!」

その言葉で渋々とモニターを見る貧乳属性(スモールバスト)軍団。するとリヴァイアギルディの部下はピッピッと写真のある部分の拡大を行った。

アップされたのは、女子学生のたすき掛けにしていた鞄のベルト部分だった。なんと、ベルトが胸に食い込んだせいで巨乳が沈み、女子学生の胸の大きさが一層強調されているではないか。

「どうだ、この食い込みは! 貧乳ではあり得ぬ谷間は! 左右に別れた乳の有り様…これぞ天地創造の再現ともいえる素晴らしき光景! 世界の開闢は巨乳属性(ラージバスト)にあるのだ!!」

「そしてこの左右の胸の美しさこそ、左右に分かれるツインテールの根源と同じではないのか!?」

一気に貧乳属性(スモールバスト)を畳みかけようとする巨乳属性(ラージバスト)軍団。

だがクラーケギルディの部下も負けじと一枚の写真をモニターに表示させた。そこには笑顔でスクール水着を纏う幼女の姿が映った。

「どうだこの密着具合は!? スク水との調和は!? 下品な巨乳属性(ラージバスト)には決して出来ん、貧乳属性(スモールバスト)だからこその魅力は!!」

「貧乳だからこそ、このようにスク水が映えるのだ! スク水だけではない、メイド服、学生服…スレンダーだからこそ、貧しいからこそ、それらが美しく見えるのではないか!?」

その主張は、数多の服装フェチの属性力を持つ怪人たちの目の色を変えた。

「! 貴様、そう言ってどっちつかずの者たちを自分たち側に取り込もうという魂胆か! 汚いぞ!!」

「違う! 私はいかなる属性力も最後は貧乳属性(スモールバスト)に結実するのだと伝えたいのだ! 大地が平らなのも、大空がどこまでも広がっているのも、水平線の彼方があれだけ平坦なのも、全ては平面を…すなわち貧乳を表しているからではないのか!?空を飛ぶ小鳥も死ぬときは大地へと還る…つまり貧乳とは、どんな万物すら帰す、最終地点なのだよ!!」

「だったらテイルファイヤーはどうだ!? 彼女があれほど強いのはツインテイルズ一の巨乳があるからではないのか!?」

「貴様! それは貧乳のテイルレッドをディスっているってことか!?」

「ああそうだ! あんな小便臭い幼女のどこがいい!? 時代はテイルファイヤーだ!!」

「この野郎、表に出ろ!!」

両者の怒りは遂に爆発し、一部で殴り合いや取っ組み合いが始まった。それを皮切りに巨乳だ貧乳だと、もはやただの口喧嘩となり、会議は荒れに荒れる。

「静まれい!!」

硬質のテーブルに触手を鞭のように叩きつけ、怒鳴るクラーケギルディ。

途端、水を打ったように静まり返る一同。取っ組み合いをしていたものは気まずそうに離れる。

「このままでは拉致が明かぬ。一体何日、こうやって終わりのない言い争いをすれば気が済むのだ? 昨日に至ってはエロゲのキャラを会議に持ち出して、双方醜い罵り合いをした挙句、その内の一人が男の娘キャラだったではないか!! もはや巨乳貧乳の問題ですらない、貴様らは異性の乳すら見抜けない程愚かで未熟なのか!?」

クラーケギルディの触手の1本1本が怒りのあまりビンと張りつめていた。騎士道を重んじるクラーケギルディが感情を露わにして叫ばなければならないほど、事態は深刻だった。

「…このままでは侵略もままならぬぞ。やむをえんが、部隊の統一は一度白紙に戻し、個々での侵略を行うしかないな」

ここでリヴァイアギルディが割って入った。

それは云わば先延ばしの決断であったが、そのすることでしかこの争いを終わらせる方法が無かったのも事実である。このままではツインテイルズと戦う前に内輪もめで部隊が壊滅してしまう。だからそれを防ぐためにもこの争いを無理矢理にでも止めなければならなかった。苦渋の選択だったが、一部隊の長として、リヴァイアギルディはそれを決断はしなくてはならなかった。

「しかし、リヴァイアギルディ様…お言葉ですが、2つの部隊の総力を結集しなければツインテイルズを倒せません! 多少時間がかかっても話し合いで解決を…」

「だが、このまま座していても事態は何も変わらぬ! …分かった、リヴァイアギルディ。その案を呑もう。貴様の言う通り、個々での侵略を行おう」

「ク、クラーケギルディ様…」

クラーケギルディが部下の発言を遮り、リヴァイアギルディの意見を取り入れた。

「俺の腹心たるバッファローギルディがああも惨たらしくやられたのだ。ツインテイルズの実力はとうに承知済みだ。皆、足がすくんでも仕方あるまい…もっとも、あ奴があそこまで腑抜けだったことに俺は苛立ちを隠せないがな!!」

バッファローギルディを冒涜するリヴァイアギルディであったが、本心は違うということは誰もが理解している。その証拠に、彼の股間から伸びる一本の触手が悲しみに震え、濡れていた。

普段はいがみ合うクラーケギルディもその部下も、惨殺された猛牛の戦士を思い、目を伏せた。

と、ここで―。

「た、大変です!」

会場内に一体のエレメリアンが血相を変えて駈け込んで来た。

「何事だ? ただ今会議中であることは承知の上で…」

「そ、それどころではないのです!! ダ、ダークグラスパー様が、近々この部隊の視察に来られるとの連絡が…!!」

「何だと!?」

真っ先に反応したのはリヴァイアギルディだった。悲しみに暮れていた顔から戦士の顔へと戻る。そして遅れて、他の面子や部下たちも反応する。その反応は明らかに怯えと畏怖が混じっていた。

「…到着はいつになると?」

「ち、近々伺うとしか…」

「そうか」

クラーケギルディは冷静に振る舞うが、それでも焦りの色は隠せなかった。

「ぬう…奴が来るとはな…度重なる失態についに我々も見咎められたか…」

「ええ、地獄の処刑人…噂には聞いていましたが…」

リヴァイアギルディとクラーケギルディの顔に苦渋の表情が浮かぶ。

ダークグラスパー。アルティメギルに所属する者ならば誰もが噂だけでも一度は聞いたことのある人物の名だ。

所謂ワンマンアーミー。部隊を持たず、アルティメギルでは異例ともいえる単独行動を認められている。首領の勅命を受け並行世界を渡る闇の戦士。その使命は組織の反逆者の処刑。本名は誰も知らず、いつしかその戦士を示すコードネームだけが広まっていった。

「通称、地獄の処刑人。ダークグラスパー…」

そう呟いたクラーケギルディだが、彼はダークグラスパーという存在をその異名のような物騒な存在ではないという風に考えていた。

アルティメギル内に処刑人などといったそんな物騒な存在があるとは思えないのだ。何故なら部下を処刑し、その恐怖で無理矢理縛る組織などが長続きするとは到底思えないからだ。恐怖は思考を鈍らせる。ある程度与えるのは効果的だが、度を過ぎるとそれはむしろ害悪にもなりえる。

だからダークグラスパーという存在は精々、慣れあいや緩みがちな部隊の気を引き締める為の監視役…雇われ店長が運営する店をときどき視察に来る本部の社員、その程度の存在なのではないかというのがクラーケギルディの認識であった。処刑人などという物騒な肩書きも云わば我々への威嚇。物騒な肩書きで周りが勝手に怯えてくれるのを狙ってなのだろう、きっと。

しかし、そんな処刑人様がこちらに伺うという事実はあまりいい状況ではない。首領が地球侵略に拱いている我々のことを好ましく思っていないのは確実だ。

「…俺たちにのんびりと構えていられる時間はない、か。クラーケギルディよ、ここは我々でのみ出向き、直接ツインテイルズの手の内を見てみるか?」

「ほう? 貴様にしては良い案だなリヴァイアギルディ。小手調べという訳か…異論はない」

巨乳と貧乳、どちらか上でどちらが下か。決着はつかずに遺恨だけが残る結果となったが、ダークグラスパーの来日を前に、いがみ合いを続けるのは得策ではないだろう。

会議は部隊の長2人が協力して出陣する、ということで一応の解決となった。

 

 

 

 

 

 

(本日の会議も実にならない、中身のない争論で終わってしまったか…)

そう思いながら、プレゼンの資料を片手に廊下を歩くクラーケギルディ。騎士のような凛々しい外見とは対照的に、その背中は日々生徒に手を焼かされているくたびれた教師のような哀愁が漂っていた。

このままでは不味いと思うが、では皆が納得する解決法は? と問われると明確な回答が出ないのも事実であった。

(明日は出撃を控えている。とりあえずは自室に戻り、お気に入りの貧乳画像が大量に入ったパソコンでも弄りながら睡眠をとるとするか。まずはこの身体の疲れを取らなくてはまずいな…)

そう思いながら角を曲がろうとした瞬間…突如出てきた人影と衝突しそうになった。

「!」

ぶつかる、と思ったが、普段から剣術を嗜んでいるクラーケギルディは反射的に身体を動かしてこれを回避した。

「…すまなかった。こちらの不注意だ」

「いえいえ、大丈夫ですよ。それにしても…随分と疲れが溜まっているみたいではないですか」

ぶつかりかけた人物に謝りながら、クラーケギルディは歩を進めようとするが、後ろから遠慮なくかけられた声に聞き覚えがあり、振り返る。

「調子が優れないのであれば、明日の出撃はお止めになった方がよろしいのでは?」

「…貴様に言われる筋合いはないな、フェンリルギルディ」

目の前にいる怪狼型の怪人、フェンリルギルディに嫌悪感を抱きながら向き合うクラーケギルディ。何故なら、このフェンリルギルディは協調性がない怪人であり、騎士道を重んじるクラーケギルディとは壊滅的に相性が悪いからだ。

会議には参加しない、無断行動が多い、自由気ままに行動する増援者。合流を命じられずにも関わらず自分の所属していた部隊を抜け出して、この部隊にやってきたのが、このフェンリルギルディだった。

狼のような外見とその野心で染まった瞳は、クラーケギルディはすぐに本性を見破った。こいつは、フェンリルギルディはあまり信用できる相手ではない、と。

「豪傑のドラグギルディ隊長と若手エースのワイバーンギルディを倒し、あなた方2人が呼ばれるほどの相手となれば、私でなくとも興味は持ちましょう。私めの力が役に立てばと、この部隊に合流したのですが」

「貴様がいなくとも、我々だけで十分戦っていける。用が済んだのならとっとと帰れ…それに思い上がるのはやめておけ。早死にするぞ」

「ふふ、何を言っているのか私めにはさっぱりですな」

フェンリルギルディはとぼけたような顔をするが、それがクラーケギルディの精神を逆なでする。

「貴様は幹部の座を欲して、コソコソと行動しているそうではないか。属性力を鍛え、己の力で幹部を目指せ。そうやって功を焦っていると碌なことにならぬぞ」

「…誰にも理解されぬ属性に邁進すれば、焦っているようにも見えましょうに」

スッと、フェンリルギルディは自分の毛皮に収められているブラジャーを取り出した。白のレースが入った、シルク生地のそれはフェンリルギルディの銀色の毛皮と調和して、大変眩く見えた。

「あなた方のように巨乳だ貧乳だと言い争えるのならまだいい。胸の内に秘めた思いを吐けるのならばまだマシです。しかし我は下着属性(アンダーウェアー)を持つが故に、どの部隊からも爪はじきにあっているのです。外道だ卑劣だと罵られ、同じ土俵で語ることも、誰かに喋ることすら許されないのですよ。…あなた方が愛してやまない胸も、この下着に包まれているというのに…!」

フェンリルギルディは悔しそうに歯を食いしばり、手の中で握りしめられたブラジャーが歪む。その様子から、普段からどれだけ耐え忍ぶ生活を強いられてきたのかが伺える。

確かに全ての属性力が仲間内で認められている訳ではないのも確かだ。同じエレメリアン同士でも、奇妙な属性力を持つ者に対しては眉を潜めたりされるという弊害も多い。組織という多数の怪人が集まる以上、見えていない所でそういった小さなトラブルはどうしても起きてしまうものだ。

体操服属性(ブルマ)学校水着属性(スクールスイム)が王道と認められていて、下着属性(アンダーウェアー)は邪道と罵られる風習。実に嘆かわしいと思いませんか? 元を正せば、それらは全て衣服という一括りで纏められるもののはずなのに、古き考えがそれを邪魔している。下着姿の女性を愛するなど邪道だ、と」

フェンリルギルディの演説はなおも続く。

「ですから私はアルティメギルに新たな風を吹き込もうと考えているのです。私という、次世代のエレメリアンの存在を以てしてね。だから私はこの部隊に合流したのです」

「…」

一区切りついたフェンリルギルディの口元には勝利を確信した笑みが浮かんでいた。そんなフェンリルギルディをクラーケギルディはジッと見ていた。

(若いな。若いが、確かに一理ある…)

何時の世界にも若者という存在は、世界を大きく変えてきた。

例えば、ロリ巨乳やミニスカ巫女。これらを見出した若者たちは当初、古き良きを愛する者から大バッシングを受けたはずだ。

こんなの俺たちの愛する姿じゃないと。これはおかしいと、異質だと叩かれたはずだ。

だが若者は自らの信じる理想の為に戦い、立ち上がった。そして今ではそれらの存在は『これはこれで』と認められるに至っている。それは世界を変えるために尽力し、己の理想を優先できる存在である若者だからできたのだろう。

この世界に伝わる数多の偉人もそういった古き良きの殻を突き破り、常識を変えてきた。そういったことができる熱き魂を持つのは、何かを失うことを恐れる老人ではなく、何かを失うことを恐れずに行動できる若者にしかないのかもしれない。

「ふん…ならば好きにすればいい。我々の邪魔をせぬ限りは目を瞑ろうとしよう」

確かにフェンリルギルディは鼻持ちならない相手だ。だが、いくら異質な存在であろうとそういった貴重な意見を認められぬほど、クラーケギルディも器は小さくはなかった。…もっとも、次にフェンリルギルディから飛び出した発言を咎めないほど、事なかれ主義ではなかったが。

「-私は、ツインテール属性もそろそろ不要ではないかと思うのですよ」

「…貴様!」

クラーケギルディは腰にある剣を手にかけた。流石に今の発言は聞き捨てならなかった。フェンリルギルディが何とも無いように言ったそれは、アルティメギルの理念を根本から覆すような発言だったからだ。

「まあ、お聞き下さい。最強のツインテール属性の確保を最優先とし、その上で個々の求める属性を探すのが今の我々の侵略方針です。…ですがこれでは効率が悪すぎます。いくらツインテールが広まろうとも、全ての女子がツインテールにしたり、好きになる訳ではないでしょう? そしてそれは我々にも言えるのではないでしょうか。いかにツインテール属性が最強とはいえ、もっとのびのびと戦える状況に変えるほうが、結果的に集まる属性力も増えるとは思いませんか?」

つまり、フェンリルギルディの言っていることはこうだ。

今までのアルティメギルの侵略活動は、他の属性はツインテール属性を奪うおまけ程度の扱いであった。まずは何が何でもツインテール属性の確保を優先し、他の属性力は奪えたら奪え、という方針。

フェンリルギルディが変えるべきと言っているのはツインテール属性を優先する風習だ。それを優先するのを辞め、全ての属性力を同じランクに戻し、他の属性もメインに奪う方針に変えろ、と。その方が侵略も捗るのではないか、と。

確かにその方が、兵の士気を高められるかもしれない。…だが、皆、ツインテール属性もまた等しく愛しているのだ。そうでなければ、あれほどツインテイルズが人気者にならないはずだ。

「それが貴様の言う新しい風か。…随分と小さな風だな。まるでそよ風だ」

クラーケギルディはため息をついた。

「フェンリルギルディ、これは忠告だ。…ツインテール属性を軽んじることだけは慎め。あれは貴様の範疇を超えるほどの強大な力を秘めた属性力だ。それを軽んじることは、流石にできんよ」

「…ご忠告ありがとうございます。私はあなた方の邪魔になることは致しません。どうぞご安心を」

警告が何だという風にクラーケギルディの横を通り、立ち去るフェンリルギルディ。

「む?」

ふと、クラーケギルディは自分の手に下着が握られていることに気がついた。恐らくは横切った時にフェンリルギルディが渡してきたのだろう。

…それはAカップのブラジャーと、それとお揃いの色のパンティーだった。上下セットで構成されているそれは、滑らかな手触りであり、一目で高級品であることが伺えた。

それはお近づきの印で渡されたのか、それとも決闘の際に渡す手袋の役目を果たしているのか…。

「生き急ぐなよ…フェンリルギルディ…ワイバーンギルディの二の舞にはならないでくれ…!」

クラーケギルディはブラジャーとパンティーを握りしめながらそう唸った。

 

 

 

 

 

 

アルティメギルは時空移動の際、移動艇を用いる。そして今、現在進行形で移動をしている一団がいた。

「…ふう」

この移動艇のスタッフ兼雑用係担当のエレメリアンは、緊張した顔つきでドアをノックする。

「…なんじゃ?」

少し遅れて、忌々しげな声が聞こえてきた。エレメリアンはビクッと怯えながらも、応じる。

「ダ、ダークグラスパー様! お食事の方が完成いたしましたのでお持ちになられたのですが…」

「…食事?」

「は、はい。もう夜の8時です。小腹も空いてきた頃合いかと思いまして…!」

受け答えに応じるエレメリアンは一足一手に全神経を集中した。なんせこの扉の向こう側にいるのは地獄の処刑人という異名を持つ、闇の戦士が控えているのだから無理もない。

「そうか…分かった。ではそこに置いといてくれぬか?」

「え? あ、あのそんなことなさらなくても私が…」

「いいからそこに置いてくれぬか!」

声が怒気を含んだ物へと変わった。途端にエレメリアンの顔が真っ青になる。

「は、はい! かしこまりました!!」

そして逃げるようにエレメリアンが立ち去り、辺りに人の気配が完全に消えてなくなると、するするとドアが開き、さっと置かれていた食事を部屋の中へと引きずり込んだ。

「まったく…折角の勉強中に…余計な…」

ぶつぶつと呟く一人の人物は、おずおずとポケットに手を入れ、いつもそこに入れてある、くしゃくしゃの紙切れを取りだした。そしてその記事に書かれている人物に話しかける。

「ま、待っていて下さいね…この、ダ、ダークグラスパー…。また一つ、賢くなりますから…」

そう呟きながら、少女はパソコンへと向かった。パソコンに繋がれているヘッドホンからは淫らな声とBGMが漏れていた。

「や、やっぱりこのメーカーのエロゲは何回やってもいい…」

ふひひと笑いながら、ダークグラスパーと名乗った少女はマウスをクリックする作業に戻った。

地獄の処刑人、ダークグラスパー。ただ今地球に向けて移動中である。




とりあえずダークグラスパーさんを顔見せをしてみました。さっさと彼女も暴れさせてぇぜ!!
後、日間ランキング1位になっていてびっくりしました。今後もこの作品のことをよろしくお願いします。

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