俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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第29話 前夜とツインテール

「…」

通信が切れ、砂嵐が走るパソコンの画面をじっと眺めるトゥアール。そしてこれ以上開いていても無駄だということを理解し、パソコンを荒々しく閉じた。

「レイチェル…」

ポツリと呟いたその名前。それが意味することは果たして何なのだろうか。

友が自分の呼びかけに答えてくれない苛立ちか、それとも逃げ続ける友への悲しみか。それとも…。

友を振り返るたびに思い出すのは、かつて自分が暮らして世界のことだ。

今ではサポートに徹しているトゥアールだが、その昔、総二たちと同じように戦士として戦っていたことがある。彼女は先代のツインテイルズとして、自分の世界を守っていた。

そして正義の味方として敵と戦う日々を過ごすよりも前に、ひょんなことから出会ったのがレイチェルという少女だっただった。

今でいうトゥアールのポジション、サポート役にいた彼女をトゥアールは一目で気に入ってしまった。…まあ、見た目とかが自分の好みにぴったり合っていたということもあるのだが、幼くして天才的な頭脳を持つ彼女とは意気投合し、レイチェルが自分専属のオペレーターになるまではそう時間がかからなかった。それほどまでにレイチェルは優秀だったのだ。

2人の仲が深まり、パートナーとも呼べるような関係になっていたある日のこと、突然彼女は自分の前から姿を消してしまった。

それから間もなく始まったアルティメギルの本格的な侵略。

トゥアールは最後の戦いに赴く時、彼女が後ろにいないことが非常に気がかりだった。いつもはいるはずのパートナーがいない…そのことが大きな痛手になったのかは分からないが、トゥアールはあと一歩のところで敵に負け、世界は瞬く間に侵略されてしまった。

そして次に奴らが狙う世界が総二たちのいる地球だと掴んだトゥアールは、このままだと地球はこの星の二の舞になるとはっきりと感じていた。自分が駆けつけても、やられてしまうのがオチとなる。もっと強い人物に…それこそ世界最強のツインテール愛を持つ者に力を渡さなければ勝ち目がない。

『ならば…私の中にあるこの力を…!』

トゥアールは自分の中にあるツインテール属性を摘出して作った赤色のブレスとかつて自分が使っていた青色のブレスを握りしめて、奴らよりも先へ地球へと降り立った。

そして、自分の身体の中にある属性玉が内蔵されている赤色のブレスは総二の手に、かつてトゥアールが使っていた青色のブレスは愛香の手へと渡ったのだ―。

「…」

…と、まあAパートを丸々一本使うくらい長い回想で振り返っていたが、はっきりと分かることは、レイチェルは間違いなく近場にいることだった。通信の時にラグ無しで行えたことからそれは簡単に分かった。そして通信先の人物は間違いなくレイチェルだと確信できる根拠もトゥアールにはあった。

何故なら先ほどの戦いでイエローとファイヤーを連結した際、ギア同士の間に独特で見慣れた反応が確認できたからだ。トゥアールはモニターに先ほどの映像を出してみる。

『行けぇぇぇぇぇぇ! イエロォォォォォォー!!』

『…! ジェネレイト!フル!! バーストォ!!!』

映像を止め、イエローの部分をピックアップしてみると、全射撃武装を解き放つ時、バチバチと強大な属性力がぶつかり合うことが原因で引き起こされる閃光が走っている。

(これは『同調(シンクロ)システム』を使った時に起きる現象…)

そう、必殺技を放つ際、イエローとファイヤーの間には互いの属性力同士がぶつかった時に起きる同調(シンクロ)システム独特の反応があったのだ。

同調(シンクロ)システムを使って、2人の属性力を重ね合わせ、上手く動かないイエローのギアを正常に作動させている…)

本来は同調(シンクロ)システムはそういった用途に使うものではないのだが、項後属性(ネープ)と組み合わせることでファイヤーの属性力を外付けのバッテリーのように使用しているのだろう。所謂「同調(シンクロ)システムのちょっとした応用」というやつだ。その際、属性力が重なったことで生じる余波が周囲に発生しているのだ。

イエローのギアのデータと照らし合わせてみれば、それはすぐに分かることだった。互いの属性力が重なり合う…これと非常に似た現象を、トゥアールはシステム開発の時に幾度となく見てきたので、すぐに同調(シンクロ)システムを利用して、ファイヤーの属性力と繋げていることに気付けたのだ。

…と、ここまで自分の知っているシステムの反応を見せられれば、ファイヤーの後ろにはかつての自分のパートナーがいるということにたどり着くまでそんなに時間はかからなかった。

「あなたは…ファイヤーのサポートを…していたんですね」

それならば、あの時レインボーブリッジにいたことにも納得ができる。

「…よし!」

そしてトゥアールは決心した。次、彼女が確認できたとき、自分は真っ先に駆けつけてレイチェルを確保しよう。そして色々と話を聞いてあげよう。…それがかつてのパートナーがやるべき責任だ。

「で、会ったら…色々してもらいたいことが…あ、あるんですよね。コスプレとか…罵りとか…う、うへへへへ…レイチェル…私、私ね…」

…色々危ないその怪しげな声は、地下室中に響き渡っていた。この独り言が、誰にも聞かれていないのがトゥアールにとって、不幸中の幸いであったであろう。だって今の彼女の顔は、とても人前で見せてはいけないものであったから。

 

 

 

 

 

 

「―私、本当は…ツインテールが嫌いですの」

総二は、慧理那が言ったその言葉にショックを受けていた。それは一番信じたくなかった言葉だし、総二が一番傷つく言葉であった。

その慧理那の衝撃的な告白を理解するには、初戦闘を終え、基地に帰ってきた時まで話を遡らなければならない。

慧理那は基地に帰ってきて早々、総二たちにブレスを返却すると言い出したのだ。総二と愛香は驚いたが、何とか慧理那を落ち着かせ、話を聞いた。…そしてその原因はすぐに分かった。

慧理那は自分がツインテイルズの足手まといになってしまっていることを気にしているのだ。デビュー戦で敵を倒したといってもそれはファイヤーの助けがあったからこそであり、自分の力ではない。接近戦を主体として戦っているファイヤーの足を自分は引っ張っている。今日だって私がいなければもっと早く敵を倒せていた…だから、これを使う資格なんてないんじゃないかと、落ち込んでいたのだ。

大丈夫だと、総二は励ました。初めての戦いは誰だってあんなものだと。すぐに順応できる俺や愛香の方が珍しいんだと、会長の方が普通だと。きっと時間が経てばすぐに慣れていくさと。

すると慧理那はで総二だけと話がしたい、と言い出した。そして2人きりになった時、彼女は苦しそうな顔でこう言ってきたのだ。「自分はツインテールが嫌いなのだ」と。

「私は、本当は自分でしたくてこの髪型にしている訳じゃありませんの…お母様に絶対にそうしろと言われて、仕方なくしているだけですの」

ばつの悪そうな顔で語る慧理那は目に涙を浮かべていた。まるで先生に怒られているように縮こまっている。誰よりもツインテールを愛している総二を目の前でこんなことを語るのは万死に値すると思っているからだ。

「家訓、とでもいうのでしょうか。子供の時から私はずっとこの髪型でしたわ…子供っぽい、子供っぽいと言われても…それでも髪型を変えることができなくて…いつしか私はこのツインテールを嫌って、いや憎んでいましたわ。子供と言われるのは…この髪型のせいなのだと…罪もないツインテールを憎んで、私は逃げたのですわ」

総二はショックだった。会長がツインテール嫌いだったことではなく、誰もがツインテールを愛して当然だという傲慢な考えに陥っていたことにショックを受けていた。

ツインテールという髪型は本来マイナーな髪型で、成長していくにつれて辞めていく人が大半であった。

しかしツインテイルズの影響で、ツインテールは大人気の髪型として一大ブームとなっている。メディアではツインテイルズの話題が上がらない日はない。

俺たちのおかげで誰もがツインテールを愛してくれている…誰もがツインテールを愛する世界になってくれたんだ―いつのまにか総二の中ではそんなことが常識になっていたのかもしれない。…そんなことは絶対にありえないのに。

この世に同じツインテールが存在しないのと同じように、人の価値観だって同じものがあるはずがない。その中には会長のように、無理矢理ツインテールをせざるを得ない人だっているかもしれないのに…ツインテールにしている人は必ずツインテールを愛している、なんてそんなことはありえない話じゃないはずなのに。

「観束君はいつも言っていました…『あなたがツインテールを愛する限り、私は助けに来ます』と。…不安だったのです。自分に嘘をついて、あなた方と出会うたびに。いつか私の言葉ばかりの偽りで塗り固めたツインテールへの気持ちを見抜かれてしまうのではないか、と」

「…」

「だから、私にはこのブレスを持つ資格なんて…」

慧理那は下を向いたまま、ブレスを取り外そうとしたが総二はそれを制した。

「え…?」

「…会長。俺は別に会長がツインテールを嫌いでも、それでもいいって思っているんだ。別に『本当は好きなはずなんだ』って無理に言いくるめたくもない」

総二はぽつりとそう言った。そう、慧理那はギアを起動できるだけの属性力がある。それはすなわち、慧理那にもツインテール属性が存在するという何よりの証拠だ。…つまりは彼女にも愛があるのだ。

「…もしかしてなんだけど…嫌いって思っているのが、本当の嘘なんじゃないのかな?」

「う、嘘なんかじゃありませんわ!!」

慧理那はどこか心当たりがあったのか、痛い所を突かれたような反応があった。

「…いや、分かるよ。会長のツインテールを見れば、分かる」

「…! じゃあどうして! どうして…観束君はそこまでツインテールが好きなんですの?」

そう言って机を力強く叩く慧理那。慧理那のツインテールはまるで萎れた花のように元気がなかった。

「じゃあ逆にさ、会長はどうしてヒーローが好きなんだ? 子供の頃からずっと好きで…会長だってそんなヒーローになりたくて、ツインテイルズになったんだろ?」

「それは…かっこいいからですわ! 己の信念を貫き、世界の平和を守る正義のヒーロー!! その尊い信念があるからこそ、ヒーローは強くて、かっこいいのです!! 観束君だって…そんな尊い信念を持つヒーローではないですか!」

「ううん、俺は違うよ…尊い信念や決意なんて持っていないさ。ツインテールの為に戦うなんて、普通のヒーローの戦う理由じゃないだろ?」

「でもそれは建前なのでしょう!? 世界を守るついでにツインテールも…」

「ついでなんかじゃないさ!!」

今度は総二が机を叩く番だった。

「俺にとっては、世界の方がついでだ! 俺は、ツインテールを守るついでに世界を守っているんだ!!」

「…!」

「だって俺…ツインテールが好きだからさ」

総二はそう言うとニコリと笑った。慧理那は信じられないような顔で総二を見ていた。

「…なあ会長。明日からヒーローに憧れて生きるのを辞めてみないか? おもちゃも全部捨てて…普通の高校生として生きてみないか?」

「そんなことできる訳ないじゃありませんか!! 私にとってヒーローは命の次に大切なものですわ!!」

「…な?」

その言葉と共に、総二はトンと親指を自分の胸に押し当てる。慧理那は総二が言いたかったことが理解できたかのような顔をしていた。

「誰だって、それぞれ大切なものがあるんだ。俺がツインテールが好きなように、会長がヒーローが好きなように。それは時に人には理解できないものかもしれないし、他人から見ればくだらないものかもしれない…でもそれは、その人にとっては、命にも勝る宝物なんだよ」

「それは…」

「俺はツインテールが好きだ。それもとびっきり。…だからそれを奪おうとするあいつらが許せないんだ。そりゃあ…あいつらは怖いしビビッてしまうこともあるけど…救えるツインテールがあるのならば、俺は走ってしまう! だって俺、ツインテールが好きなんだから! 世界がどうだとかじゃない、それだけで俺にとって、戦うには十分な理由なんだ!!」

総二は自他ともに認めるツインテール馬鹿だ。それを理不尽に奪う、奴らアルティメギルの存在が許せない。奴らに征服された世界の人たちもきっとそう思っているはずだ。大切な物を奪われた、と。

総二はそんな悲しみを広げたくはなかった。初めての戦いで会長のツインテールを奪われた時に感じたあの思いを、怒りを、悲しみを総二自身、二度と感じたくはなかった。

大切な物を奪われる。これほど残酷で身勝手なことはないということを総二は分かっているからだ。

「だから俺は、ツインテールを守るために戦うんだ。俺にできるのはそれだけだから」

総二は言いたいことを全部言い終えたとばかりに椅子に腰掛ける。そんな総二を見ながら慧理那は目許を擦り、微笑んだ。

「…やっぱり、かっこいいではないですか、観束君」

「いや、さすがにこんな理由で戦って、それはないよ」

総二は軽く手を振って否定する。これでかっこいいというのならば、この世にいる数多のヒーローの方々に申し訳が立たないからだ。こんな間抜けな動機で戦うヒーローが存在してたまるか。

「…でも、だからこそ、私は、あなた方と共に戦うなんて…。私は、ファイヤーの助けが無かったら銃も使えない…あんなに惨めでかっこ悪い…」

「かっこ悪いなら一緒に戦えないのか?…だったら俺の方がよっぽどかっこ悪いさ、幼女に変身するんだぜ?」

「でも、テイルレッドは皆のアイドルではないですか! 誰からも愛されている、力も人徳も兼ね備えて…ファイヤーだってあんなに華麗に…!私にはヒーローの資格なんて…」

「だったら愛香はどうなんだ! 目つきがヤバいとか近寄ったら殺されるとか、魔人だ鬼神だと散々言われても一緒に戦ってくれているんだ! 愛香は、テイルブルーはヒーローじゃないのか!? 違うだろ!!」

隣の部屋辺りで、誰かが壁を殴ったような轟音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。…多分、愛香の仕業だろうけど、気にしないでおこう。

「…俺はさ、本当は怖いんだよ」

今度は総二が苦しい顔をして、慧理那に弱みをぶつける番だった。

「愛されているから、崇拝されているから、俺の正体がばれた時が怖くてたまらない。皆だって掌を返すかもしれないし…」

そう、総二だって人の子だ。怖くないわけがなかった。正体がばれ、テイルレッドの正体が男だと広まった瞬間、皆から何を言われるか。共に戦うテイルファイヤーだってどんな顔をするか簡単に想像できる。戦うたびに人を騙しているような、そんな感覚が総二の中にはあった。

「でも俺は、仲間がいることで、一緒に戦うことでその恐怖と戦ってこれたんだ! それは俺が一人では絶対にできない事なんだ! …それは、いつか会長自身が言ってくれたことじゃないか!!」

「あ…」

慧理那は数週間前のことを思い出していた丁度、ブルーがメディアに出てきて、ボロクソに叩かれていた時期のことだ。

慧理那はレッドに新たな仲間ができたことを非常に喜んでいた。『レッドもファイヤーも寂しがらずに済むのですね』と喜んでいた。一緒に戦う仲間がいればつらくない…そう総二たちに言ってくれたのだ。

「誰にも認められなくてもいい。俺には、思いを打ち明けられる仲間が、共に戦う仲間がいればそれだけで十分に誇らしいんだ! そこに強い弱いも関係ない! 華々しくなくたってかっこ悪くたっていいんだ、俺にはその仲間たちがそばにいるだけでいいんだよ! それは会長も同じさ!! 俺が、愛香が、トゥアールが、君が弱いから…慧理那が必要ないって一度でも言ったことがあるか!?」

総二は熱くなり、いつしか慧理那に掴みかかっていた。その手には慧理那のツインテールが絡まり、総二は無意識の内に強く握る。

「強くなろうぜ、会長! 弱くたっていい、誰だって最初からヒーローな訳がないんだ、俺だってそうだ! だから…ここから始めようぜ!! 君が弱いのならば…君がファイヤーと繋がらなくたって戦えるように!俺たちが慧理那を鍛え上げてみせるからさ!!」

総二は一通り喋ると、自分が会長に掴みかかっていることに気づき、慌てて離れた。その後に自分が慧理那を呼び捨てにしていることにも気づいた。

「…あ、ごめん、呼び捨てにしちゃって…」

「い、いえ…!その…私…はぁ…はぁ…!!」

「え、えと!? 大丈夫ですか!?」

何故か慧理那は顔を赤らめて、はあはあと息をあげていた。…まるでトゥアールが総二に詰め寄る時に見せるような顔つきをしていた。

「え、ええ…その…申し訳ありません…私、少しばかり取り乱してしまいまして…」

「う、うん。ならばいいんだけれど…」

総二は離れながら、今の慧理那を少し観察して見ることにした。特にある一部分を、注意深く見てみる。

そして総二はあることに気付いた。

「――今、会長のツインテールが光った気がする」

「…何を言っていますの?」

意味が分からないといった顔で総二を見る慧理那。うん、そうだろうなと思う総二であったが、今までにないほど会長のツインテールが光り輝いて見えるのは事実なのだ。

「…なあ、会長。もしまだ、俺を…テイルレッドのことをかっこいいと言ってくれるのなら…俺の馬鹿に付き合ってくれないか?」

「…つ、付き合う?」

「ああ、それも今すぐにね。会長の殻を破る為に…」

「駄目ですよそれは――!!」

だが総二が言い終わる前に、ドアを蹴り破ってトゥアールが転がり込んできた。

「い、今すぐ突きあうですって!? 駄目ですよ慧理那さん、ここは順番待ちをしてもらいましょう! 一番は不動の私なんですから!! …あっ、でも愛香さんの前に横入りにするのは許して…」

「いいかげんにしろあんたぁ―――!!」

「ごぽろげっぇ!?」

「ふむ、中々いい蹴りだな。私も参考にするか」

卑猥な発言を言い終わるか終らないかの内に、愛香の放った延髄蹴りが綺麗にトゥアールに決まった。最近、トゥアールは愛香のサンドバックが非常に様になっている気がする。

壁に叩きつけられたトゥアールを睨むふくれっ面の愛香と、メイドの尊先生が部屋へと入って来る。

「付き合う、か…観束君、お嬢様を頼むぞ。君にならば任せられる。…そして帰ってきたら私と結婚しよう」

「帰ってはきますが、結婚はしません」

冷たくそれだけを言うと、総二は部屋の隅に置かれている転送機器を動かして、転送準備に取りかかる。

「あ、あの…どちらにいかれるのですか?」

「ん? ああ…ヒーローが戦う、お約束の舞台さ」

さあて、と言いながら総二は近くの使われていない採掘所を転送場所へと設定した。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これが…」

「ああ、新たなツインテイルズだ。名はテイルイエローというそうだ」

リヴァイアギルディとクラーケギルディは部下からの情報を受け、それを観覧していた。モニターにはイエローとファイヤーが連結して必殺の一撃を放つ瞬間の静止画が映っている。

「今はまだひよっこらしいが…あれほどのツインテールを持つ戦士だ。時間をおけばおくほど厄介な存在になると見て間違いないな」

「ああ。この揺れる乳は不愉快だが、遠距離特化型の奴と私たちではいささか相性が良くないであろうからな」

「テイルファイヤーと連結しているというのも厄介だ」

リヴァイアギルディ、クラーケギルディ共に接近戦を主体として戦う戦士。その為、イエローの遠距離からの攻撃にはなすすべもなく、戦闘の主権を彼女に奪われる可能性が非常に高かった。やりようによっては戦えるが、倒せるかというと難しい話になってくる。

クラーケギルディは歯噛みしながらモニターの電源を落とした。

「…面目もない。私が取り乱したばかりに、先の戦いではデータ不足に陥ってしまって。未だにレッドやブルーの手の内が分からないままだ」

「構わん。手の内が分からない戦いというのも戦の醍醐味だ…それにしても貴様らしくもない。随分としおらしいではないか」

「いつまでも争いをやめぬ部下たちを見続ければ、こうなるに決まっているではないか」

「…違いないな」

巨乳と貧乳。組織を2つに分けた争いは、泥沼の極限状態に達していた。2人の部下たちは諍いをやめずに、言い争いだけでなく戦闘行為にまで発展するケースも少なくはなかった。幸いにも死傷者は出ていないものの、これ以上放っておくと本当に出てしまう可能性もあった。

焦る理由はまだある。フェンリルギルディの行方だ。ここしばらく、彼の姿を見ていない。

生意気な若造ではあったが、実力は確かにあった。それが忽然と姿を消した理由を、幹部クラスの2人が理解できないわけがない。既に闇の処刑人は降臨し、粛清は実行されたのは間違いないだろう。

ならば次の対象は自分たちか、あるいはその部下か…。そんなことだけは絶対に許すわけにはいかなかった。部下を守らずにして何が一部隊の長か。

そしてつい先ほど殉職したブルギルディの存在。それがこれ以上、部下たちを無駄死にさせるわけにはいかないという決意を固めさせた。

…明日、リヴァイアギルディとクラーケギルディはツインテイルズの決戦へと仕掛けるつもりだった。今度はどちらも思う存分戦えるように、人のいない場所を戦場として、互いの全力を尽くせるようにする…。

2人は向き合い、互いの目をしかと見た。それは互いの意志の確認を行うためであった

「…やはり貴様と手を組むことはできないな。巨乳属性(ラージバスト)を理解できぬものと手と手を取り合うなど」

「それはこちらも同じだ。貴様は不倶戴天の宿敵。貧乳属性(スモールバスト)を拒んだ者の助力など、必要ないわ」

和解の道は断たれた。2人の長は、別たれた道を断固として進むという決断に達した。それが結論であり、互いの部下へのけじめでもあった。

対極の属性力を持つ者同士、和平という道はあり得ない。…ならば。

「我らの内、ツインテイルズのツインテール属性を奪った方が、全ての部隊を率いる…異論はないな?」

「ああ、ない!」

そして、2人は豪快に笑った。互いを嫌っているからこそ、互いの考えは恐ろしいほど読めている。そして、何が互いに納得できる答えなのかも分かっていた。

「くくく…結局、この答えに行きついてしまったか」

「勝てるから戦うとか、勝てないから戦わないではない…戦うべき時だからこそ戦う。アルティメギルの信念に基づく、良い解決方法ではないか?」

「つくづく馬鹿な奴らだ!」

「ああ…だが残念ながら、我々もその馬鹿な奴らの一員なのだよ」

「…違いない!!」

リヴァイアギルディは粋な笑みを見せ、クラーケギルディもニヤリと笑った。

シンプルかつ単純な解決方法だった。絶対的な力を得た者が、その力を以て全てを屈服させる。勝者を決め、勝利者になった者が全てを決めればいい。…それで争いは終わる。

なぜならば彼らは侵略者。言葉ではなく、力で全てを統一させるのが、あるべき姿なのだから。

2人は懐からパソコンを取り出し、無言でタイピングをする。キーボードを叩く音しか聞こえなかったが、しばらくすると、それが止った。

2人は所謂、遺書を書いていた。勝つにしろ負けるにしろ…結末は明日、決まる。生きて戻れない戦いかもしれない。だからこうやって2人は遺書という最後のメッセージを残す作業に励んでいたのだ。

万が一、両者共に死ぬことがあれば、この部隊はたちまち空中分解を起こすであろう。それほど部隊は泥沼状態にいるのだ。

だから2人は、それぞれの部下の成績や順位をしっかりと残し、万が一の時の為に、与える地位やポジションなどの詳しい情報を事細かに示し、自分がいなくなっても部隊がしっかりと機能するようにした。―それが、隊長として、散りゆくものの最後の責務だった。

遺書に示していたともあれば、部下たちは借りてきた猫のように大人しくなってくれるはずだ。良くも悪くも部下たちは隊長思いである馬鹿どもばかり集まっているのだから。

リヴァイアギルディは不器用な文面でそれぞれの部下たちへの激励の言葉を残していた。それぞれ最後に精進しろ、と言い加えている。小難しいこと嫌い、不器用で豪快なリヴァイアギルディらしい遺書だ。

クラーケギルディは万が一自分が死んだ場合、テイルブルー用に発注していた青色のドレスの処分方法や遺品などの行方を細かく示した。欲しいものがあれば持っていってもかまわないという一文も加える。遺品をなるべく残したくない、繊細で几帳面なクラーケギルディらしい遺書だった。

「ふん…明日の出撃時刻は?」

「1600。午後4時丁度だ」

「…分かった、遅れるなよ」

「それはこちらの台詞だ」

それだけを言い、2人は別れた。それ以上言葉は交わさなかった。

そう、勝てばいいのだ。必ず勝って戻る。そうすればこの胸の中にある悲しみや空白はなくなる―そう決心し、会議室の扉は閉められ、明かりは消された。…巨乳と貧乳、この2つの属性力に彩られたパソコンだけを会議用の長テーブルに残して。

決戦まで、残り24時間を切っていた。




変態が多い俺ツイですが、ここの総二はガチでカッコいい奴だと私は思えます。好きなことをはっきりと言える強さ…それが総二の魅力であるのではないでしょうか?
とりあえずイエローの覚醒は…まだとだけは言っておきましょう。原作やアニメと違い、まさにここ一番というタイミングで見せたいと思います。
さて、いよいよ2巻も大詰めとなってきました!!…ここら辺で例の嘘?予告でもいっておきましょうか。


※この予告は“例のあの声”と”あのBGM”で再生してください。

次回予告

君達に最新情報を公開しよう!

リヴァイアギルディとクラーケギルディ、胸を愛する2人の怪人は遂にツインテイルズへ最後の決戦を仕掛ける!!

巨乳と貧乳、この終わりなき戦いはどこへ向かうのか!? そして我らがツインテイルズは勝利を掴むことができるのか!?

The Another Red Hero ネクスト!『放たれし一撃』

次回も、このチャンネルでファイナルフュージョン承認!!!

これが勝利の鍵だ!! 【同調(シンクロ)プログラム】

次回もお楽しみに!!
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