俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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遂に2人の再会にして、痴女の大暴走回です。
色々とヤバい描写が多々ありますが、原作と比べたらだいぶマイルドな感じに仕上がっていると思います。
…アニメで再現できねえわけだわこれは。したら絶対クレームの嵐が巻き起こるもん。


第36話 再会とツインテール

「トゥアール…」

レイチェルは自分の目の前にいる人物の前で鉄仮面を纏おうとした。無表情で、何も感じていない人形のようになりたかった。

顔を見られたならまだいい、ここにいると知られただけならまだいい。でも、今の自分の浮かべている表情と感情だけはどうしても知られたくはなかった。

「レイチェル…本当にレイチェルですよね…?」

「あ、う…」

その問いにレイチェルは何か声を発しようとしたがすぐに失敗した。口をぱくぱくと何度も喘がせるが、どうしても声が出ないのだ。目の前にいる人物、トゥアールに何を言おうとしても、声を発することが出来ないでいた。

「?」

隣にいるレッドも不思議そうに両者を見る。

突然現れたトゥアールにも驚いたが、その親しげな口調からレイチェルとは何らかの知り合いだということだけは何となくだが伺うことが出来たようだった。

「なあトゥアール、この子は…」

続きを言うか言わないかのその時、レッドがトゥアールへと意識を向けたほんの一瞬の隙をつき、レイチェルは纏っている白衣を脱ぎ捨てて、逃げた。

「あ!」

レッドが気付いて手を伸ばした時にはもう遅かった。レイチェルはレッドの手をすり抜け、遠くへと駆けだしていたのだ。

「逃げるんですか、レイチェル!?」

トゥアールは叫んだが、レイチェルは聞く耳を持たずにあっという間に距離を離し、数十メートルの距離を取った。そしてレイチェルは腕に付けている腕時計、テイルリストの転送機能でこの場からの脱出を図ろうとするが…。

「!? どうして!? さっきまでは正常に…」

何故か先ほどまで正常だったテイルリストがうんともすんともいわなくなっていた。狼狽するレイチェルをトゥアールは優しく論破する。

「転送で逃げようとしても無駄ですよ。つい先ほど、この辺一帯に転送妨害用のジャマーを仕掛けましたから」

「…あんた!」

「私の方が一枚上手でしたね。常に相手の先を見る…私が教えたこと、忘れちゃったみたいですね。でも、これでもう逃げられませんよ、レイチェル」

トゥアールはまるで悪戯した生徒を叱る先生のような口調でレイチェルへと迫ると、今度こそ逃げられないようにしっかりと捕まえた。

「あなたには色々聞きたいことはありますが、それは後回しです。…本当に、本当にあなたが無事で良かった…!!」

絞り出したような声でそう言い放つと、トゥアールはレイチェルを抱きしめた。レイチェルも最初は抵抗しようとしていたが、やがて諦めたかのように大人しくなりそのままの体勢でいた。

「良かった…本当に…! 本当に…生きていて!!」

トゥアールはようやくの再会を噛みしめるかのようにレイチェルを抱きしめる。感無量というべきその行為にレイチェルはどうすればいいのか分からない顔をしていた。

それを傍観していたレッドもどうすればいいか分からないような顔であった。あんなトゥアールの顔を見るのは初めてだったからだ。いつもはおちゃらけて変態な女科学者の顔はどこへいってしまったのか、目の前では本気で再会を喜んでいる顔で友を抱きしめている光景が広がっている。

「夢じゃない…。私の、私の大切な親友が…私の胸の中にいる…」

「うん…そうね…」

「胸の…胸に…!え、えへへへ、うへへ、けけけけ…」

「…あの、ちょっと、一旦離してくれない?」

女として出してはいけない声を発しながらトゥアールはますます抱きしめる力を強くし、自らの乳房にレイチェルの顔を押し付ける。

…段々雲行きが怪しくなり始めた。シリアスな空気が30秒も持たずに崩壊し始めた。

「むがっ!?」

突然の行動に声にならない声で焦るレイチェル。だが抱きしめるトゥアールはさっきの優しい目ではなく、どこかぎらついた目でますます強く抱きしめる。

「だ、大丈夫です…レイチェルも、ひ、久しぶりの再会ですから…私のこと、すっかり忘れていますよね…さっきも教えたこと忘れていたし、ね…」

一瞬浮かんだその笑顔はまるで母性溢れる女神のようであったが――。

「だから、私のことをこの身体で思い出させてあげます…!」

すぐにそれは邪悪な悪魔のものへと変わった。

「むー!むー!!」

窒息させるような勢いでレイチェルを自分の胸で押さえつけると、トゥアールはその首筋に顔を近づけ、思いっきり息を吸った。

「ふ…む……すふぅうううううううううううううううううう」

トゥアール本人からしてみれば親友の匂いを確かめるスキンシップ的な行為らしいが、傍観者であるレッドから見ればその行為はどっからどう見ても不審者そのものである。

己の体内に存在する気体全てを、抱きしめている幼女が発する臭いと移し替えると云わんばかりの勢いで吸い続けるトゥアール。女性離れした肺活量を発揮して、いつ終わるともしれないその行為に励んでいる。

「うへへへ…!つ…次は…!」

「むー!」

空気の移し替えが終わったが、行為自体はまだ終わらないらしく、今度はレイチェルの綺麗な茶髪へと腕が伸びた。そして自らの手を櫛のようにしてそれを弄ぶ。

「いい髪です…相変わらずこの髪は…優しくて可愛くて…やはり若い子はツヤが違う!」

「ん! んんー!」

もう顔が悪魔の笑顔ですらない、唯の笑顔の悪魔と化した痴女がそこにはいた。

「もがー!!」

「大丈夫です大丈夫ですよレイチェル!! あなたも感じていますよね、私の温もりを! 私も感じています! だからもっと感じて…私の全てを…!」

レイチェルの顔色がそろそろヤバそうな感じになっており、トゥアールの背中を全力でタップしているが、トゥアールはそれすらスキンシップなのだと感じているらしい。

だが―。

「オーラ……ピラーッ!!」

「えっ」

その行為は、トゥアールの足元から突然現れた青色の拘束用ビームにより強制終了された。

抱きしめられていたレイチェルはそのまま弾き飛ばされて地面へと落ち、抱きしめていたトゥアールは青色のビームで拘束される。

「こ、の…! あんたとうとう、直接手を…!」

「て、ててて、テイルブルー!?」

「ひいいいいいいいいいいいいい!?」

その姿はまさに神か悪魔か。ツインテールを逆立たせ、とんでもない形相で佇む戦士、テイルブルーが降臨した。

「あ、ああああああなた何で…気絶していたはずじゃ…!?」

「流石のあたしも偶然、幼女にふしだらな行為をする現行犯を視界に入ったら、寝てもいられなくてねぇ…!」

言いたいことはそれだけかと目の前で拘束されている不審者の現行犯を睨むと、何気ない顔でオーラピラーの出力を上げるブルー。怪人を軽々と拘束できるそれを生身の人間に放つというそれはまさに拷問ともいえる行為であり、トゥアールの身体がメキメキと音を立てるような勢いで拘束が強まった。

「おぎゃあああああああああああん!?」

「あ、あんまりゲホッ…やり過ぎちゃダメよ…そいつ、一応は友達なんだから、ケホッ…」

「分かっているわ…殺す一歩手前で辞めるから大丈夫よ」

「前提がそもそも間違ってないか?」

「うっぎゃあああああああああああああ誰か止めてぇえええええええええ!」

ブルーはムスッとした顔で腰に手を当て、拘束されているトゥアールを睨んでいるのを尻目に、レッドは何とか場に落ち着きを取り戻そうとした。

「…あー、トゥアール。一旦基地に戻って、あの眼鏡の子のことを詳しく教えてくれないか?」

そして、一旦言葉を止めたレッドの視線がレイチェルへと向かう。

「それに、君のことも。君はトゥアールの知り合いなんだろ? 聞きたいことが山ほどあるんだ」

「…分かっているわ」

「あ、あの…ブルー様? 私、そろそろ五体がバラバラになりそうなんですけれど、いつまでこのままなのでしょう?」

「いっそ、一度バラバラになってしまえばいいわ! 変質者にはいい薬よ!」

「に、二度目はないです…その薬は私を永眠に…ぐげぇ…」

「お願いブルー、そいつだけは殺さないであげて。変態だけどいなくなったら色々と困るから」

そのフォローはどこか哀愁にまみれており、胸で殺されかけたレイチェル自身もトゥアールが変態だと認めていることが皆にも分かってしまった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

「まぁ…まあまあまあまあ!」

秘密基地に帰投したレッド達を待っていたのは、コスプレ状態で椅子にふんぞり返っている母、未春の姿だった。

「随分可愛い子が来たわねー! 宜しくね、私はこの部隊を率いる隊長にして大幹部の未春よ!」

「は、はぁ…」

入って来るなり高いテンションでレイチェルに握手をしてきた未春に、リアクションに困った反応をするレイチェルはそっとレッドに耳打ちをする。

「ねえ、あのおばさん誰? 何で中ボスみたいな格好してるの?」

「俺の母さん」

「…ごめんなさい、変なこと言って」

レイチェルの何か同情するかのような視線の先には悪の女幹部衣装の母親がアニメ好きなイエローと共にきゃっきゃはしゃいでいる光景があった。

「素敵なお召し物ですわ!」

「でっしょー?」

「「………」」

レイチェルはそんな未春を見ながら軽く引いていた。あれはないわ、みたいな視線をしていた。

そんな当たり前の行動はレッドを感激させた。コスプレ姿の母親を見られて、しかも会話しているという恐ろしい行動に初めてまともなリアクションをしてくれる人がいた。それだけで嬉しくなってしまう。

「心中、お察しするわ」

「ありがとう…!そんなこと言ってくれるのは君が初めてだ!!」

レイチェルはレッドの肩を叩きながら、慰めている合間にも話は進み、互いの自己紹介に映る。

「あ、あらためて、よろしくお願いしますわ。私、テイルイエローと申しまして、本名は…」

この場に見知らぬ幼女が一人紛れ込んでいることで本名を名乗るか否かで迷っているイエローにレイチェルは助け舟を出した。

「あー、いいわ。今日の所は本名を出さないでくれない?」

「え、でも…」

「ファイヤーの正体を明かしていないのに、あなた達の正体を私が知るのはフェアじゃないもの。あなた達ツインテイルズの正体についてはひとまず保留にしてもらえないかしら?」

「…な、なら」

「脱衣も禁止」

「あぁん、寸止めだなんて…」

「どうしてそこでエクスタシーを感じちゃうの?」

何だか物足りない感じのイエローだが、ここは我慢して貰わなければ。この場で脱がれてはたまったもんじゃない。

「うへへ、目の前にレイチェルがうへへ」

「ちょっと黙っててよ、変態」

「はい、黙ります! ああ、このやり取りも久しぶり。幼女に罵ってもらう私、ぐへへ」

「自重してくれ、トゥアール…」

口元に涎を垂らしながら至福の時を味わっているトゥアールをレイチェルは無視することに決めた。構っていたら何時までたっても話が進まない。

「あー、もう知っている奴もいるかもしれないけれど、私の名前はレイチェル。ええと…」

チラリとトゥアールを一瞥すると、不服そうにこう言った。

「テイルファイヤーのマネージャーをやらせてもらっているわ」

「「え!?」」

ブルーとイエローが目を剥いた。まあ当然のリアクションね、と思いながらレイチェルは話を進める。

「分かりやすく言うと、あっちではあいつの…目の前で涎を垂らしている奴のポジションを担当しているわ」

「嘘よ!」

「事実なのよ」

信じられないような目で糾弾するブルーに返す刀の如く切り返すレイチェル。

「で、ではあなたが私たちに通信を…」

「そういうことね。随分早い再会になっちゃったわね」

そっと笑いながら手を握ってくるレイチェルに、どうリアクションしていいか分からない顔をする両者。

「で、では! あなたが私の…お姉さま!?」

「はぁ!?」

とここで、突然イエローが立ち上がったと思うと、大げさに手を握り返してきた。そんな光景にレイチェルはどこか戸惑った表情を見せる。

「お…お姉さまって、絶対あんたの方が年上でしょ? それにお姉さま呼ばわりするんだったら、あたしよりファイヤーの方が…」

「いえ、いえいえ! あなたのあの言葉のおかげで私は全てをさらけ出すことに成功しましたわ! おかげで私が思い描いていたスタイルや必殺技が完成いたしました!」

イエローの本来の戦闘スタイルは後方支援の火力型なのだが、先ほど見せたスタイルは前線にガンガン突っ込んでいく上に、せっかくの武装をどんどん脱いでいくという真逆のスタイルなのだが。

「ああ、そうなの…」

「ですから尊敬の念を込めて、お姉さまと呼ばせてください!!」

「………はぁ」

もの凄く面倒そうな目でイエローを見始めるレイチェルはどうすればいいのか分からなかったが、ここで未春が会話へと加わった。

「いや~でも、凄かったわねえ。おばさん、何だか感激しちゃった! 射撃型なのに格闘戦もこなせるだなんて! それもこれも全部レイチェルちゃんのアドバイスのおかげなんでしょ?」

「そうですわ! 今の私がいるのは、あなたが、いいえレイチェルお姉さまがいるからなのですわ! 『全てをさらけ出せ、ありのままの私を解放しろ』…お姉さまはこのことを言っていたのですのよね!!」

「よしてよそんな」

「いえ! それもこれも全部お姉さまのおかげなんです! ああ、この胸の解放感は何なのかしら―!」

何て言っていいのかレイチェルには分からなかったが、一人で盛り上がって一人で落ち着いたイエローは一旦落ち着きを見せたように自分の世界へと入り込んでしまった。

すると今度はブルーが詰め寄って来る番だった。

「あ、あの…あんた本当に…?」

「何度も言っているでしょ? 本当に本当なのよ。あなたに通信を入れたのもあたしよ…信じられない?」

「だって、あいつのポジションなのよ!? なんで変態じゃないの!? しかもこんな子供が…」

「初対面の人間にこんなに喧嘩売られたのは初めてよ、ブルー」

青筋を浮かべながら、わなわな震えるレイチェルは憎々しげにブルーを見たが、ここでトゥアールからの助け舟がやってきた。

「見た目で騙されてはいけませんよ! 確かにレイチェルは小さくて可愛くて幼女ですけれど、頭脳は超天才なんですから!! 飛び級で大学を卒業している上に一時は私とパートナーを組んでいた時期だってあるんですから!!!」

「飛び級にパートナー!? あいつと!?」

「わざわざ分かりやすい説明をありがとう、トゥアール」

「ふふん、もっと褒めて下さい!」

何であんたが得意げになっているんだとツッコみたくなったが、ここは我慢した。

「でも、ねぇ…どう見たって小学生くらいのあんたが?」

だがブルーはそれでも信じられないような目でレイチェルを見てくる。…正直言うと、通信の際に彼女に顔を明かさなかったのもこれが該当する。

いきなり通信をかけてきた人物が幼女だとばれたら、説得するのに余計時間がかかっていた可能性がもの凄く高い。その結果、ファイヤーがやられていた可能性もあったため、あえてレイチェルは顔出しをしないで、ブルーに通信をかけたのだ。

「…まぁ、確かに信じろってのが難しい話よね…こんな子供が戦っているだなんてね…。でもあなたには感謝しているわ。うちのファイヤーのピンチに駆け付けてくれて、共に戦ってくれて。…ありがとう」

「えっ…?」

するとレイチェルが、ブルーに向かって頭を下げて礼をした。ブルーもこれには驚いて言葉を失ってしまった。

「その…あなたが頑張ってくれたから…あいつに勝てたし、皆も守ることが出来た。だから…本当に、本当にありがとうございます」

「う…」

最初は言葉を失った。だが、目の前の幼女が自分に向かって丁寧なお辞儀をしていることにようやく気付いたのか、焦ったように声を出した。

「~頭上げて! 女がそんな簡単に頭は下げるもんじゃないわ!!」

「そうですよレイチェル! そんな毛皮と棍棒が似合いそうな蛮族に頭を下げる必要はありませんよ!」

「あー何だか寒くなってきちゃったなー、あ、ここに毛皮があったわ! 羽ー織ろっと!!」

「毛皮というかそれは私の皮でぎゃあああああああああああああああああああ!?」

人骨という名のマネキンにかけられた毛皮を、強引に剥ぎ取って羽織ろうとするブルーと全力で悲鳴をあげるトゥアール。それを見て、焦るレッドにそんな光景を見慣れてしまったのか微笑ましそうに見ているイエローと未春。

そんなツインテイルズたちの日常に、いつもはここにいないメンバーであるレイチェルはポツリと呟いた。

「…あんたがいる所はいつもいつも、騒がしくていいわねぇ…」

 

 

 

 

 

 

「で、どこから話せばいいんでしょうかね。正直、私も色々と混乱しているので…」

「まったくよね。あいつ、地獄の底まで追いかけてきそうで怖いわ。あんたも想像していなかったでしょ?」

「ええ。あの年頃の女の子って少し見ない間にいきなり成長しやがりますからね。その点レイチェルは以前と変わりなく幼く胸もちっぱいで…」

「くたばれこの変態」

「ありがとうございます、レイチェル」

初っ端から流れるような会話がモニタールームを支配したが、トゥアールは満面の笑みを浮かべながら、席に着いた。

先ほどのあれで命の危機を感じたのか、ブルーから一番離れた席に移ったトゥアールは慎重に言葉を選んでいるような様子であった。ちなみにトゥアールは「私のここ空いてますよ」と膝を叩いてきたが、レイチェルはこれを間髪入れずに断固拒否した。だがトゥアールは断られたことですらご褒美に感じているらしく満足そうな顔をしていたので、もう放っておくことにした。

レイチェルは一番無難そうなレッドとブルーの間に入って、会話へと入る。

モニターに先ほどの様子を捉えた静止画を映し出しながら、会話が始まった。

「彼女の名前はイースナ……私が元いた世界の幼女(じゅうにん)でした」

トゥアールが頭に浮かべた言葉とセリフとして発したルビが何一つ一致していない。

「あれは私がエレメリアンに狙われている所を助けたのがそもそものきっかけでして…その時に知り合ったんですが…」

「? ええと、その話ですと、トゥアールさんもツインテイルズだったのですか? でも以前…」

イエローは不思議そうな顔をしながらトゥアールを見た。イエローが言いたいのは以前、この基地に来た時にトゥアールがテイルファイヤーなのではないかという疑いがあったのだが、残念ながら違うとの回答が出ている。それなのにどういうことなのか? ということなのだろう。

「私は別の世界でテイルギアを着けて戦っていたんです。今は引退して、レッドたちに力を託したのですが…」

「何故、引退を?」

質問を重ねるイエローに少しだけ痛そうな顔をするトゥアール。それでイエローは何か聞いてはいけないことを聞いてしまったと察した。

だがツインテイルズにいる以上、話しておかなければならないとレッドは思い、立ち上がる。

「…イエローにはまだ話していない、トゥアールの秘密があるんだ。でも、イエローも正式なツインテイルズになったんだ。トゥアール、もう話してもいいんじゃないのか?」

「…もし、あんたが嫌ならば、あたしが説明してもいいわよ。聞きたくなかったらその間だけ出てってもいいし」

「いえ、大丈夫です。全て私が説明します…。でも2人とも、話し終えるまで…握っていてくれませんか」

不安そうな顔をするトゥアールはレッドとレイチェルにそっと、手ではなく胸を突きだしてきた。

「オッケー、そのくらいお安い御用よ」

「ひいっ!?」

この場にブルーがいるのに握ってくれだなんて迂闊な発言にも程があった。おやすく御用になりそうな力でトゥアールの胸を握りしめながら、トゥアールの身の上話が始まった。

自分の世界で起こったこと、自分が最後の決戦で負け、自分の世界が侵略されたことや自分の属性力を犠牲にしてそれをレッドのギアに組み込んだこと、以前使っていたギアをブルーへと託したこと。隠してきたことを全て暴露した。

時折、悲鳴がBGMとSEとして彩ったその解説は圧巻の一言であり、必要以上に哀切極まる語りへとなってしまった。…別の意味でトゥアールは哀切極まっているが。そしてレイチェルもまた、渋い顔でそれらをすべて聞いていた。

「…つまり、トゥアールさんは次世代に意志を託してくれた、先代のヒーローなのですね!! 引き継ぎイベント、しかと承りましたわ!!」

ちょっとずれた感じではあるが、イエローにもトゥアールの事情がしっかりと理解できたらしい。あなたの魂は私たちが継ぐと云わんばかりに張り切っているイエローにトゥアールはどこか嬉しそうに微笑む。

「わ、私の魂を受け継いで下さったのなら、無力な私に変わって、戦っていただけませんか…超絶貧乳だから胸を握り絞められるのがどれだけ痛いのかわかっていないんですよこのゴリラは…」

「10割方あんただけの問題だからあんただけで解決して。それはあたしたちの管轄外よ」

「ああん、レイチェルはいけずです…」

「黙っていてこの馬鹿」

トゥアールの身の上話が済んだところで、イースナについての説明は再開される。

「さっきの話から分かるように、レッドのギアにはトゥアールから摘出されたツインテール属性が組み込まれているわ。…多分、イースナはこいつのツインテール属性の反応だけを頼りに、この世界にやってきたんでしょうね。そのせいでレッドをこいつと勘違いしているのよ」

「……つまりは、この眼鏡女はアルティメギルに取り入ったってこと?」

遂に名前ですら呼ばれなくなったトゥアールを指さしながら話すレイチェルに、腕組みしながらブルーが聞き返した。過去云々より今の立場の方が重要だと言いたげそうに眉間にしわを寄せて。

「私との会話から分かることは、あの子は洗脳されたり、騙されて利用されている訳ではないということです。つまり、イースナは自らの意志でアルティメギルに与しているということなんです」

「認めたくないけど…あいつのうろたえ具合から、洗脳という線は間違いなく消えるわ」

先ほどのレイチェルのイースナに対する精神攻撃の録画映像が再生される。妙に現実味が帯びたその攻撃は見ているこっちが痛くなる内容だ。

自分の意志で同胞を裏切り、共存できない怪人がうごめく敵組織に身を置くイースナ。そのショックは大きく、その意味することを全員が噛みしめていた。

「で、どうして敵がその…グラスギア?なんて持っているのよこの眼鏡は。あれ、テイルギアのコピーなんでしょ?」

「イースナは妙な能力の眼鏡で私のテイルギアを解析したそうです。それでも完全にはコピーできなかったそうですが」

眼鏡にいつの間にか不思議な力が宿っていたとイースナは言っていたし、それのおかげでギアのデータを読み取るといった芸当を成しえることが出来たのだろう。

「大まかなギアの情報さえ読み取ってしまえば後はあっちのもんよ。属性力の変換技術はアルティメギルの方が何倍も研究が進んでいるから、例え別の属性力でもその調整は容易でしょうしね。問題は…」

「人間が仲間として受け入れられている、ということですわね」

「その通りよ」

イエローとレイチェルの言葉にレッドが続いた。

「あいつら、共存は出来ないって言っていたのに、どうして人間を受け入れるんだ? 例えあの子が強力な属性力を持っているにしたって…」

「戦闘力を買って引き入れられたとか?」

「それだけじゃあ、理由としては不十分過ぎるわ。もっと別の…奴らと手を組んでいる何かがあるんでしょうね」

あの時、イースナは後ろで気絶しているイエローには目もくれずにレッドだけを構っていた。もし、イースナがアルティメギルに取り入っているのならば、気絶して戦えないイエローやブルーをさらってもおかしくはない。それなのにそんな行動は一切取らずにしている。トゥアールのことをいくら尊敬しているからといって、何の手土産も持たないで退却。

そんな彼女が首領直属のポジションにいるだなんて、不自然にもほどがある。

彼女が去り際に言っていた『わらわは、わらわの守るものの為、戦いを選んだ』。この言葉が何か関係しているのだろう。

「何にせよ、トゥアールの元恋人なんでしょ? だったら適当に色気振りまけば、また戻ってくるんじゃない?」

「滅多な事言わないでください! 私はまだまっさらの新品なのに、変な風に思われたらどうするんですか!! とにかく! イースナとは本当に何もありませんでした!!」

「微塵も思っていないから安心して、こいつ」

「せめて名前だけは読んでくださいよレイチェル…」

そんないつもの様子なブルーとトゥアールとは対照的に、レッドは不安だった。

人間と戦う。しかも相手は怪物なんかじゃなく、ツインテールをしている女の子だ。人間と命がけの争いをしなくちゃいけなくなるかもしれない。怪人と戦う事すら抵抗があるのに、人間とだなんて…。

「燃えますわ!」

「は?」

するとイエローは鼻息を荒くしながら夢見る乙女のように手を組んで、勢いよく立ち上がった。

「燃えますわ!黒色で同じ力を持った敵の出現! しかもその正体はかつてトゥアールさんを慕っていた少女…避けられぬ運命! この燃えるシチュエーションを待っていたんです!!」

真剣に悩んでいるレッドとは比べ物にならないくらいにらんらんと輝いた瞳で語るイエロー。

「あ、あの~そんな気楽な問題じゃないと思うんだけどなこれは…だって人間と戦うんだぜ?」

「? 特撮やアニメではこういった人間同士の争いはお約束ではありませんか!」

そんな後で仲間になるライバルキャラとの戦いみたいな、軽いノリで言われても困るだけだった。

困ったレッドは助けを求めてブルーの方を見たが、しかし当のブルー本人もまた、これに賛同するように、拳をパキパキと鳴らしていた。

「まあ人間相手だし、エレメリアンとは違って爆散させちゃまずいけど、要はトゥアールを殴るより強めにブン殴ればいいんでしょ?」

何て頼もしくて、何て恐ろしい発言をするんだろうこの子は。

ブルーの変身者である津辺愛香は誰彼構わず見境なしに暴力は振るわない、家族思いで友達思いの高校生だ。

だが、一度敵と認識した者には情け容赦一切かけないのは承知の事実であり、それは我々の前で何度も見せつけられた。…こう言ってはなんだが、限りなく野生動物の習性に近く感じるのは気のせいなのだろうか?

「ありがとうございますブルーにイエロー。きっとイースナも、心のどこかでは自分を倒してほしいと思っているはずです。ですから手加減せずに、余計な事を言われる前に全力ではっ倒して足腰立たなくしてあげて下さい」

「分かったわ」

「分かりましたわ」

ああ畜生、これでいいのかツインテイルズ。痴女に蛮族に脱ぎ魔。こんな正義の味方が果たして存在していいのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

イースナの話題が終わった後、次なる話題はレイチェルのことだった。

「解説は私が担当を…」

「あることないこと言って誤解されたら面倒だから、あたしが全部話すわ」

トゥアールの口すら挟む隙を与えずにレイチェルは自らの身の上話を始めた。…とは言っても、必要最小限のことだけなのだが。

「まあ…こいつが昔、世界の平和を守っていたのは周知の事実よね?」

「あたしは未だに信じられないんだけどね。こいつがヒーローだったなんて」

「奇遇ね、付き合いが長いあたしですら、未だに疑う時があるのよね」

話はトゥアールが先代のツインテイルズであり、別世界で世界の平和を守っていた頃に遡る。

「あたしはまあ…人より頭の出来が良くてね。だから学年が上がる感覚で、トントン拍子に飛び級しちゃって…気がつけば大学を卒業していたのよ」

レイチェルは同年代の子供が小学校中学年辺りに差しかかった頃には、既に一般社会に出て働いていた。大学の卒業過程を終えてしまったレイチェルはその身一つでとある研究所へと進路を定め、そこで住み込みで働くことに決めたのだ。そこは近年発見された新たなエネルギーである属性力に関する研究所であり、ここでトゥアールとの出会いを果たすことになったのだ。

「そこで…今のツインテイルズみたいな関係が始まったのよ」

トゥアールは常人を超えたツインテール属性を持っており、テイルギアを纏う資格があった。そして現れた侵略者アルティメギル。今のツインテイルズのようにエレメリアンとの戦いの幕が開けたのだ。

そうしていく内に、トゥアールの周りには戦闘に関する環境が着々と整えられていき、サポートする専属の研究員などが現れ始める。

その一人であり、オペレータ担当であったのがレイチェルであった。

「つまりは、レイチェルはあなたたちの大先輩ってことになるんです!」

「お姉さまにそんな過去が…」

「…あんた本当に面倒くさいわね、いちいちお姉さまだなんて」

「そんなこと言わないでください、レイチェルお姉さま」

「黙っててよ、もう」

イエローが尊敬のまなざしで見てくるのを、うっとおしい感じで耐えるレイチェル。

「それであたしは、今のあいつみたいな仕事をしていてね。オペレーターであいつの戦闘をサポートしていたのよ」

元々、並外れた頭脳の持ち主であるレイチェルと変態だけど天才であるトゥアールはすぐにパートナーとしても友人としても打ち解けることになった。

「じゃあ…何でこいつとは一緒にこっちにこなかったの? やっぱり最後の戦いが原因ではぐれちゃったのかしら?」

「違うわ。それよりも前に、あたしが、こいつの元を離れたからよ」

「どうして、なんだ?」

するとレッドは真剣な声色でレイチェルを見た。

「君はトゥアールとパートナーだったんだろう? どうしてそんな中途半端に…」

「………………」

レイチェルは思わず、顔を伏せた。レッドの真摯な視線が、これでもかと突き刺さってくるのに耐えられなかったからだ。

「ふ、ふふ…」

わざとおちゃらけた風を装って、顔を上げる。表情に出てしまっているかもしれないけど、この際どうでもよかった。

「何てことはないわ……ただ、変態のコイツに付き合ってられなくなっただけよ。あたしの洗濯カゴから脱いだパンツ盗んだり、真っ暗な部屋の中で全裸で正座して待っているあいつとはね」

「「「……………」」」

全員の冷たい視線が一斉にトゥアールへと向かった。当然の如く、トゥアールは反論する。

「いっ、1回だけ! 1回だけなんですよあれは! 若さ故の過ちといいますかあれはしょうがなげほぇ!?」

言い終わるか終らないかの内にブルーの右ストレートがトゥアールを捉えた。

「1回でも何回でも駄目なものは駄目よ! あんた間違いなく犯罪者! もう嫌よ、警察呼ぶわ!!」

「違うんです違うんですよ待って下さい落ち着いて下さい! あれは本当に時効が…」

どっちにしろ、トゥアールが前科持ちの変態であり、こっちの世界でもあっちの世界でもやることなすことは何にも変わらなかったらしい。

「何となくだけど、あたしが逃げた理由、分かった?」

「「「十分に分かった(分かりましたわ)」」」

「違うんですよレイチェル~あれは、あれはねぇ…」

どうやら皆、納得してくれたようだ。勿論、それも理由の一つではあるのだが、本心はまだ別の所にある。…でも、それはここでは絶対に言えない。

「と、ところでさ…君は今、テイルファイヤーのマネージャーをやっているんだろ?」

「そうよ」

レッドの露骨な話題逸らしではあったが、レイチェルはありがたくこれに乗っかった。するとレッドは物凄い勢いで詰め取って来て、レイチェルの肩を掴んだ。

「じゃあ! 君はファイヤーが誰なのかも知っているんだよな!」

「…ええ、知っているわ」

ここで嘘を言ったら余計に話を拗らせることになる。咄嗟の判断でレイチェルは正直にそう答えた。

「じゃあ! じゃあ…それを教えてくれないか!? 俺はあの人に! 一回でいいんだ! お礼をしっかりと言いたいんだ!!」

「それは無理な話よ」

「どうして!?」

「あいつ自身がそう望んでいるからよ」

「…っ!」

今度はレイチェルが詰め寄る番だった。真剣な顔でレッドを睨む。

「あいつは自分の正体を自分の意志で明かしたいと言っていたわ。時間はかかるかもしれないけれど心の準備が整うまで待ってくれって…だから、あたしはあいつの意見を尊重する。あいつがいいって言うまで、あたしは絶対に正体はばらさない。例えあんたが自分の正体をばらしたとしても、あたしは絶対に言わないわ!」

これはあいつのパートナーとしての役割よ、と言い終わるとレッドの手をどけて、レイチェルは出口へと向かって歩き始める。

「それと…あんまりあいつを過度な期待で見ないであげて」

「え?」

ふとレイチェルは立ち止まり、何にもないような風にわざとそう言った。

「あんたから見れば、テイルファイヤーは何でもできるヒーローかもしれない。いつでも強くて、正しくて…でもねあいつはあんたと同じ人間なの。ミスだってしているし、アンタの知らない所で失敗だってしている。怖いことだってあるし苦手なことだってある…変な期待や崇拝は逆にあいつを困らせるだけよ」

レイチェルはそれだけを言うと、歩みを再会させた。

「…あたしが言いたいのはそれだけ。今後もちょくちょく遊びに来るわ、トゥアール。いつかファイヤーも連れてくるから楽しみに待っていてね」

「あら、もう帰っちゃうの? ご飯くらい食べていっても…」

「遠慮しておきます、レッドのお母さん」

「泊まっていかないんですかレイチェル!?」

「いい加減にしないとその口ねじ切るわよ」

相変わらずマイペースな未春にレイチェルは丁重にお断りする。トゥアールはいわずもがなだ。

ひらひらと手を振ると、レイチェルはお邪魔しましたとだけ言い、そのままモニタールームを出ようとするが、ここでグンッと腕を引っ張られる感覚がし、急ブレーキをかけられる。

「何?」

「待って、レイチェルちゃん。あいつに会ったら…あたしがこう言っていたって話して。…『無茶だけは絶対にしないでって』」

「…分かったわ、ブルー。今日は一緒に戦ってくれて、ありがとうね」

ニコリとブルーに笑いかけると、レイチェルはテイルリストで転送のコマンドを選択し、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

貰った合鍵を使って鍵を開け、家へと戻ったレイチェルが最初に見たのは、テーブルに突っ伏して寝息を立てている光太郎の姿だった。

きっと自分が帰ってくるのをずっと待っている内に、寝てしまったのだろう。テーブルには食器や箸が置かれており、レイチェルがいつ帰って来ても大丈夫なように夕食が食べれるようにしていたらしい。

つい数時間前まで激闘があって休ませるために返したのに、帰って来るまで待っているだなんて…。

「…全く、あんたはお人好しで馬鹿なんだから」

呆れたように笑うと、レイチェルは上から毛布を掛けて、そのまま寝かすことにした。

そんな光太郎はどこか満足そうな顔をしながら、寝息を立てていた。

そんな光景を見ながら、自分が帰ってこれる場所があるということのありがたみをひしひしと噛みしめていた。ここに来るまではあちこちを転々としていたからこそ、余計にそのありがたみが分かった気がする。

誰かが帰りを待ってくれている…何だか胸の中が暖かくなってくる感覚がした。

「…おやすみなさい、光太郎」

そう言いながら、毛布を羽織ってあげたレイチェルは昔こんなことトゥアールにもしたような気がするかもと思いつつ、自分も床につくことにした。

 

 

 

 

 

 

そして残されたレッドとブルー…いや、変身を解除した今は正確には総二と呼ぶ方が正しいだろう。2人は会議がお開きになってもそのままホールに残っていた。

「なあ愛香…ファイヤーに会ったのならさ、どんな人が変身しているかぐらいは分かるか? 俺みたいにツインテールの気配を探るとかで…」

「…あたしだって分かんないものは分かんないわよ。…というか、そんなこと出来るの、そーじだけよ」

正直な所、その正体は愛香だって知りたい。いつも助けてくれるのはありがたいけれど、一向に正体を明かさないファイヤーのことが心配なのだ。

いつも、いつも馬鹿の一つ覚えのように突撃しては殴られて、吹き飛ばされて…。今日のリヴァイアギルディの時だって、無茶ばかりして…。

「女として、やっぱり心配よ。攻撃を当てる為にわざと顔面パンチを受けたりとかして…」

「うっへえ…」

流石の総二も痛そうな顔をする。

「…多分、あの子は何の武術経験も無いんでしょうね。だからがむしゃらに突き進むしか戦法が無いのよ」

「何とかしなきゃ、マズイよなぁ…」

武術経験のある総二や愛香はその危険性は嫌という程知っている。いくらギアで今日強化されているとはいっても、戦っているのは人間。その全てのダメージを受けながら戦うファイヤーのスタイルは豪快に見えるが、危なっかしいことこの上ない。

総二もファイヤーをどこか頼りにしている一方で、そういった無茶をすることを心配しているのだ。

「…何となくだけど、レイチェルちゃんが言っていたこと、分かる気がするわ」

「え?」

「その…そーじとファイヤーって凄く似ているでしょ? まるで鏡写しみたいに…」

ある時は姉妹。ある時は親子。またある時は未来から来た成長したレッド自身…テイルファイヤーの正体には色々な説がある。

だが、愛香はその3番目の説である『未来の総二本人説』を真っ向から否定できる。

理由は2つある。1つは、総二ほど…と言っていいのか、ツインテールへの愛を叫ばない。

普段はそれを隠しているのかどうか分からないが…ここ一番という時にしかツインテールのことは喋らない。それに総二とは違って、どこか恥ずかしげ…というのか、今日の叫びも、ほんの僅かだが迷いが見えるような感じだった。普段から総二の惜しみないツインテールへの愛の叫びをすべて聞いている愛香だからこそ、分かったことだった。

どこへいようとツインテール一筋馬鹿の総二とはまず、そこが違う。

2つ目は…。

「多分…なんだけど、あの子は、自分がツインテイルズだってことにまだ迷いがあるのかも」

「ええっ?」

総二が信じられないといった顔をする。

「あたしだって詳しいことは分かんないわ。でも…ファイヤーからは何か本心を封じ込めているような感じがするのよ」

ギアを十分に扱えるほどの属性力をファイヤーは持っている。けれど、今日間近で彼女を見た感想は、『もっと勢いよく動けるのでは?』ということだ。

今日だって勢いはあったものの、ワイバーンギルディ戦で見せたようなどこか吹っ切れたような勢いではなかったし、共に戦っていた時に感じたあの不思議な感覚の中に迷いや戸惑いといった感情が混じっているのに気付いてしまった。

『本心を封じ込めている何か』という存在が総二とファイヤーとの決定的な違いがあるのだ。

「確かにそーじとファイヤーは凄く似ている。…けど、違うところは違うし、迷いや戸惑いだってある。同じように見えても、やっぱり他人なのよ」

もしかしたらだけど、ファイヤーはその迷いを吹き飛ばす為にあんな戦い方をしているのかもしれない。

「…だからね、あいつがまた無茶をしたら、今度はきつく言ってやるわ。このまま放っておいたらとんでもないことになりそうだもん」




…とまあ、レイチェルとトゥアールの関係は大体こんな感じです。ここから色々と紐どいていくとともに、物語は進んでいきます。全く、前途多難だなぁ、これがな。
ちなみに黒くてライバルポジションなキャラで作者がお気に入りなのは『重甲ビーファイター』のブラックビートと『星獣戦隊ギンガマン』の黒騎士ブルブラックの2人です。このポジションにいるイースナちゃんは…ここまではカッコよくはなれないだろうなぁ色々と残念すぎてwww
では次回もお楽しみに!!

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