俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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久しぶりの更新です。色々と立て込んでて…とりあえずどうなるかは分かりませんが、ペースが落ちようとそれでもきちんと書き続けていこうとは思います。


第43話 過去とツインテール

「え! 席無いんですか…」

「ごめんなさいね。今、丁度満室になっちゃった所で…」

カウンター前で愕然とする俺に慰めの言葉をかける先生。図書室の席はずらりと大勢の生徒で溢れかえっていた。

「開くまで、待つ? 結構時間かかると思うけど…」

「いや、いいです…諦めます…」

それだけを言うと、俺は図書室を後にし、廊下へと出た。

(…やっぱり、みんな考えることは同じって訳かぁ)

授業が終わり、放課後を迎えた光太郎は騒がしい教室を抜け、図書室で勉強でもしようとしていた。中間テストが間近に迫っている今、そろそろテスト対策を本格的に始めなくてはマズイ時期に来ている。

…が、生憎同じ考えをしている奴はたくさんいたらしい。図書室の机は全席取られていた。しかも勉強机だけでなく、読書用の机に至るまで全席埋まっている状況だった。

一応、『図書室内の机の使用時間は2時間まで』という制限はあるものの、正直にそれを待っていたらその分の時間が無駄になる。

「市内の図書館も今日は閉まっているし、こんな天気の中、帰ってもなぁ…」

外は強風が吹き荒れており、空模様も曇っている。午前中の雲一つない晴天が嘘みたいだった。

校庭にある木の枝がしなり、枯れ枝や木の葉が幾つも吹き荒れている。雨の勢いも激しく、バラバラと地面を打っていた。もしかしたら、この図書室で勉強している奴の大半が雨宿り目的じゃないのだろうか。

光太郎も傘を持ってきてなく、この土砂降りの中を何も差さずに走って帰る勇気は無かった。家に帰るころには風邪をひいてしまいそうなほど、天候は悪い。

教室に戻ってそこで勉強するという手もあったが、図書室まで来てわざわざ教室に戻るのも面倒だし、勉強するにしたってあそこでやるのは精神的にも避けたい。いくら慣れてきたとはいえ、あのカオスな空間で勉強をやるのはいい気がしないもの。避けられるものならば是非とも避けたい。

「ん?」

…すると光太郎は、ふといつかの言葉を思い出した。確か、そう…一月ほど前の話だ。ツインテール部の設立の際、俺の名前を貸した時に総二はこう言っていたはずだ。

『で、ここが部室だからな、暇な時があればいつでも来ていいぜ!』

(もしあの約束がまだ生きているのなら…)

あ、そうだ。光太郎の頭にパチンと光が灯った。

「…総二んとこの部室に入れさせてくれないかな?」

そうだよ、俺にはその選択肢があったじゃないか。仮にも幽霊部員とはいえ、俺もツインテール部の部員なのだから、部室を使わせてもらえばいいんだ。

幸いにも部員である総二や愛香さんとはそれなりに親しいし、上手くいけば二つ返事で入れてくれるかもしれない。それほどの仲ではないトゥアールさんの存在が鬼門であったが…行ってみる価値はありそうだ。

「うん、ツインテール部か…確か部室の場所は、部室棟の突き当りだっけ?」

総二が作ったその部活に自分の名前を貸してから、思い出すのは…。

『さあ、出てきてくれ丹羽君。怖がらなくてもいいんだ、出てきてくれたまえ! 私は君に婚姻届を渡したいだけなんだから!!』

『ほんっとに総二の馬鹿に付き合わせちゃってごめんなさい…』

俺の脳裏をよぎるのは尊先生の婚姻届と愛香さんの謝罪の言葉と……あれ、あんまりいい思い出が、ない?確かに、名前を貸したことでメリットよりもデメリットのほうが多く発生しているんだけど…。

「…まあ、メリットは…一つだけあったな、うん」

俺は初めてツインテール部に入っていてよかったかな? と思いながら、部室棟目指して歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

ツインテール部の部室では、早めに生徒会の仕事が終わった慧理那がいつもより早めに合流していた。

「最近、アルティメギルが現れませんわね…」

「いいことじゃない」

「そ、それはそうなのですが…」

「平和が一番よ。あたしだって戦いたくて戦っている訳じゃないんだし」

慧理那は降りしきる雨を見ながら、歯切れが悪そうにしていた。

せっかく変身できるようになったのにその機会が訪れないことに嘆いているのか、それとも自分に付いてしまったネガティブなイメージを早く挽回したいのか、それとも戦場でしか愛しのテイルファイヤーに会えない現状に苦しんでいるのか。

どちらも気持ちは分からなくはないが、一般人が危険な目に晒されないのが一番いいことだという愛香の意見は、慧理那自身よく分かっている為、なんとも複雑な様子だ。

トゥアールは熱心にパソコンのキーを叩いて、何か作業をしており、外の雨が地面を叩く音との調和が部室内に響き渡っていた。

総二たちも特にやる事がなかったため、新調したばかりのピカピカのテレビで夕方のバラエティーを見ていた。

『今日のゲストは知る人ぞ知る、地球一眼鏡を愛するアイドル、善沙闇子ちゃん!!』

『どうも~! 銀河を貫く眼鏡アイドル、善沙闇子です!!』

「あ、この子また出てる。最近よく見るわね」

「本当ですわね」

愛香と慧理那が注目したテレビに映っているのは、眼鏡を売りにしている新人アイドル、善沙闇子だった。最近、随分とプッシュされているらしく、ここのところのテレビで見ない日はないと言っていい程のブレイクをかましている。

「……………う~ん」

だが、ただ一人総二だけが残念そうな顔をしながら、テレビを見ていた。その理由は、テレビに映っている闇子の髪型が、前見た時と変わってしまっていたからだった。

前は見事なほどのツインテールだったのに、今の闇子の髪型は三つ編みに変わっている。

彼女の後ろめたささえ感じてしまう程のあのツインテールを総二はどこか気に入っていたのに、皮肉なことに髪型を変えて路線変更をして以来、彼女は急激にその人気を伸ばしていた。

恐らく、彼女と三つ編み、そしてそのトレードマークの眼鏡が完全に調和した結果なのだろうが、もうあのツインテールをお目にかかることは出来ないと思うと総二はがっかりせざるを得なかった。

「事務所の売り出し路線でも変えたのかプロデューサーが変わったのか…なんだか一皮剥けたって感じがしますよね~」

トゥアールも視線だけをテレビに向け、キーボードを操作しながら闇子の評価をする。以外にもトゥアールの目からして見ても、闇子は中々のアイドルらしい。

「…ところで総二様! 私の手で是非、総二様のアソコも剥かせて欲し…」

「あーら! ここに雨に当って頭の回路が逝かれたお馬鹿さんがいるわ!!」

「ぐえええええええええええええええ!?」

またもや総二の童貞を奪おうと下ネタを発したトゥアールであったが、もう当然とばかりに愛香のジャブが顔面を捉え、追撃のストレートが顎へと飛び、見えない戦闘開始のゴングが鳴った。

そしてそんな光景を見ながら、慧理那はとんでもないことを呟き始めた。

「…お2人は、とっても仲がよろしいのですね」

「会長!? 一体今のどこに友情を感じるシーンがあったんだ!?」

「で、でも、こう…殴り合いで和解はお約束ではありませんか!! 私にはそんなお友達なんていませんし…」

「……殴り合いっていうか、一方的に殴り合っているって感じなんだけど。しかも分かり合うってよりは、より溝を深めているって感じが…」

そもそもの争いの発端が、『トゥアールが総二の童貞を奪おうとしており、それを愛香が阻止する』といったどうしようもない時点で、友情も糞もないだろう。と、いうか最近のトゥアールは何かにつけて総二に下ネタを振るようになっている。…多分、未春に発破でもかけられて、焦っているのかもしれない。

そのとき、コンコンと部室のドアがノックされ、皆の視線がドアへと向かう。

「? はーい!」

一旦殴るのを止めた愛香は、その声と共に颯爽と立ったが、総二はこれを手で制し、「俺が出るよ」とだけ呟いて立ち上がった。愛香は「そう…」とだけ言うと、再び席に座り、総二がドアを開ける光景を見守る。

「…あ、総二?」

「おまっ…光太郎? どうしたんだ?」

扉の先にいた人物があまりに予想外過ぎた為か、総二はすっとんきょんな声を上げた。

「光太郎? あんたどうしたの? こんな所に来るなんて…」

「いや…少し、頼みがあってさ…」

愛香もいきなり現れた光太郎に驚いたのか、面食らったような顔をしていた。慧理那は2人とは別の意味で驚いた顔をしており、トゥアールは相変わらずパソコンに視線を向かわせていた。

「あー、総二…ここの席、一つ貸してくれないかな?」

光太郎は部室内にある長テーブル席の一つを指さしてそう尋ねた。

「図書室で勉強したかったんだけど席が全部埋まっていて。あの教室に戻って勉強するのも、あれだし。というか幽霊部員の俺が頼むのも図々しいって感じなんだけど…駄目かな?」

「………」

すると総二はきょとんとした顔をした後、あははと軽く笑いながら俺の肩を叩いた。

「なんだよ、そんなことか! それくらいなら別にかまわないぜ!!」

総二は右手を中に動かし、入ってこいよと言うと、席を一つ開けてくれた。

「なんたって、光太郎は俺以外で唯一の男子部員なんだからさ、遠慮しなくたっていいんだぜ!?」

総二は男が増えたことが嬉しいのか、鼻歌を歌いながらカップと電子ポッドを戸棚から取り出した。

「ほら、早く上がれよ。茶、出すからさ」

 

 

 

 

 

 

「…あ、美味い」

「まあ、家んち喫茶店だし、臨時の時は俺が客に茶出したりしてるからな。慣れみたいなもんさ」

総二はやってきた俺に嫌な顔一つしないで紅茶を振る舞ってくれた。電気ポッドで注いだとはいえ、茶葉を使ったそれは雨で少し寒くなっている身体に温かみを与えてくれる。インスタント系で済ませてしまう自分では、決して味わうことが出来ない味だった。

(に、しても…)

俺がそんなことよりも気になるのは、この部室内にいる慧理那会長のことだった。どうして生徒会の慧理那さんがこんな謎の部活に顔を出しているんだ? それに妙に総二たちと親しいようだし…。まあ、会長がツインテイルズのファンだし、ツインテールつながりで親しくなったのか? それに会長にはベルトの件で伝えたいことがあるんだけど…総二たちがいるんじゃ迂闊にも話せないしなぁ…。

『闇子ちゃんは眼鏡がチャームポイントなんだね! でもコンタクトにしないの? コンタクトにしたら、一層可愛くなるって僕は思うんだけどな~』

『コンタクトしている奴なんて…皆死ねばいいのに♪』

つけっぱなしのテレビではMCのフリに笑顔で答える闇子の姿があった。

(ん…?)

『あんこ』という名前にどこか聞き覚えがあった俺は、ふと視線を慧理那会長からテレビへと向けた。

「あれ、この子…」

「ああ、善沙闇子ちゃん。最近人気のアイドルなんだって」

『はい! 初シングルの『眼鏡プラネット』は絶賛発売中ですが、近いうちにセカンドシングルも出しますので、皆さん楽しみに待っていてくださいね!!』

「あ…こいつ…」

愛香さんが横から説明をしてくれたのと告知タイムになり、バックで流れ出した電波ソングのおかげでようやく目の前のアイドルが誰なのかが分かった。

この子、ノブが言っていたアイドルの…?

「あれ? 知ってんの、あんた?」

「…………うん、まぁ…名前だけは知っているんだ」

目の前にいるあの子が、弟がガチで応援しているアイドルだったという事実は俺に軽いショックを与えていた。

どう見ても未成年っていうか…下手したらこの子、小学校高学年辺りの齢じゃないのか? 同年代辺りのアイドルでしかも軽く電波が入っているみたいなアイドルを応援している我が弟を俺は軽く心配しながら、茶を啜る。

隣にいた総二もまた、テレビに視線が向かっており、複雑そうな顔で闇子を見ていた。

「…ねぇ、そーじ」

すると、愛香さんが自慢のツインテールの毛先を摘みながら、ちらりと総二の方を見た。

「やっぱり、ツインテールの子がツインテールを辞めたら…嫌、なの?」

「?」

「その…闇子ちゃんのこと、凄く残念そうにしているし…」

…どうやら、総二が先ほどから残念そうな顔をしていたのは、闇子がツインテールを辞めてしまったかららしい。

うーむ、しかし総二が落ち込むレベルのツインテールか。俺も見ておくべきだったな。

「…そりゃあ、似合う子にはいつまでもツインテールにして欲しいって思うけどさ、やっぱり、その子がしたいようにするのが一番だと思うよ。最近、無理にツインテールにしているような子が多いからさ」

それはその通りだと光太郎も思う。

本当に大切なのは『どうすればいいか』じゃなく『どうしたいか』だと、俺のツインテールも語っていた。言われたからとかじゃなくて、自分に決めることの方が大切なのだと。その覚悟はきっと人を強くするだろうし、きっと同じようにツインテールをも美しくさせる。仮にその子がツインテールをやめても、それが本当にその子のしたいことならば、俺は止めない。それもまた、その子の覚悟なのだから。

「……あ、あたしは…嫌じゃないから、ね」

「え…」

なんと愛香さんは潤んだ瞳で、総二を見つめていた。そんな総二も突然の愛香さんの行動に面食らったのか、驚いていた。

そしてそんな2人を、顔を赤くしながら慧理那会長は見ていた。…ちなみに俺も顔を赤くしながら、総二たちを見ていた。

「…やっぱり観束君と津辺さんは幼馴染なんですわね。お2人の何もかもが通じ合っているような空気…なんだか羨ましいですわ」

「そ、そうかな…羨ましい?」

「ええ、私もそんなお人と仲良くなれたら…どれだけ嬉しいことか…」

「まあ、ツインテールの気配やその時のコンディションを見れば、大体の感情は理解出来ますしね。愛香の考えは大体分かりますよ」

「「「……」」」

なんか総二が最後に言ったことで全部が台無しになっている気がするけど、総二と愛香さんの間では凄く甘酸っぱい雰囲気が展開されている。どこのラブコメ? と誤解する程の甘い展開だ。

ちなみに、俺にはツインテールの気配なんてものは分からない。というか、そこまで足を突っ込んでしまったら、俺は人として何かを捨ててしまいそうだ。

総二の並々ならぬツインテールへの愛に戦慄を抱いている俺だったが、トゥアールさんは逆に怒りをみなぎらせながら立ち上がり、テーブルを叩いた。

「正気ですか慧理那さん!? 幼馴染なんて、かませ犬ヒロインの宇宙代表とも云えるべき存在ですよ!? ただでさえ『何となくフッても後腐れない感』が半端ない存在なのに、よりによってあの愛香さんですよ!? 愛香さんの幼馴染ポテンシャルなんてカスカスに絞られた雑巾の水滴みたいに無いに等しいのに、間違えても憧れを抱くだなんて…」

「あら、なんとなく殴っても後腐れない感ナンバーワンのトゥアールさん、お覚悟はよろしくて!?」

「あ、やめてください! 私、そんなに安い女じゃ…まだHPも回復してなああああああああああああああああああああ!!」

ガシッと足首を掴まれて、部室の隅に引きずられていくトゥアールと、それを捕食せんとばかりに怒っている愛香さん。どうして、トゥアールさんはああいう行動をしたら殴られるんだって学べないんだろう…。

と、そんな光景を見ながら、何故か慧理那会長は椅子に座りながら羨ましそうな視線を続けていた。

その視線の先にはモンスターパニック映画よろしくの捕食される一般人とモンスターが映っている。…どっちがどっちの役かは説明しなくても分かるだろう。

正直、どこをどう見れば羨ましいという感情を抱けるのか、今の俺には理解できない。

「…!」

すると慧理那会長は突如立ち上がり、両手をメガホンのようにして、とんでもないことを口走った。

「―――津辺さんって、胸が小さいですわね!」

「「「………」」」

この部室内にいる全員の空気が、死んだ。俺と総二は呆然と慧理那会長を見て、愛香さんとトゥアールさんも一時停止し、丸い目で慧理那会長の方を見た。

何故だか、慧理那会長が今度は喜んでいるように見えた。口元がふっと軽い笑みを浮かべていたし、頬が何だか赤くなっている。

…やっぱり今の俺には、最近の女の子事情を理解できない。

「あの…津辺さん? 怒らないんですの?」

「いや…だって…ねぇ…」

愛香さんは会長の胸元へと視線を向け…そして微かな勝利の笑みを浮かべていた。ああ、事実と違うから、怒るに怒れない、と…。そんな愛香さんの行動がまるでテイルブルーがついこの間まで見せていた行動に似ており、俺はどこかデジャブを感じてしまった。

すると会長はこんな行動では満足できないと、2人の元へ歩み寄った。

「私も、津辺さんに叩いて欲しいのですわ!!」

「ぅえええええ!?」

…前言撤回だ。会長も別のベクトルでどこか変だった。

愛香さんは悲鳴に近い声を上げ、軽く尻餅をついた。流石の愛香さんでも、会長のその願いに二つ返事で承諾して顔面パンチを繰り出すほど、人間を辞めてはいないらしい。

「だって、津辺さんとトゥアールさん、とても仲良く見えますもの! 私も、友達として仲間としてそんなやりとりが出来るようになりたいんですの! そうすればきっと…!」

ああ、慧理那会長には2人のあれが仲間の証みたいに思っているのか。でも友達とか仲間って単語はあんな風に一方的に殴り合う関係を表すんじゃない気がするんだけど…。

「代わってもらえるのなら代わってほしいのですが! さすがにそれはできません! ヒーロー番組でもよくテロップが流れませんか!? これはヒーローだから可能であってよい子のみんなは絶対に真似しないでねって!!」

「そうよ! 会長じゃ顎から上が全部吹っ飛んでなくなっちゃうわ!?」

「愛香さん、あなた普段どんな力でトゥアールさんを殴っているんですか!?」

「えーと、殺す一歩手前くらい…かな!」

「…頼むから殺人事件だけは起こさないでくれよ、愛香?」

俺たちのそんな流れるような流れに加われない慧理那会長は「う~」と唸りだした。

「だ、大丈夫ですわ! ヒーローは変身する前でも何トンも威力がある攻撃を食らってもピンピンしているじゃないですか!! 私だって同じように、愛香さんのパンチを食らっても大丈夫なはずですわ!!」

確かにヒーロー番組ではそういった展開は多々ある。ヒーローたちは物語の進行上死んではまずい為、身体がミンチになるような設定の敵に殴られてもピンピンしてることがあるし、鋼鉄をも斬り裂く剣で斬り付けられた壁や金網がどういった訳か傷一つなかったり…とかいう不文律は存在する。

でもね、会長。ここはフィクションじゃないの、現実なんだ。本当のバトルは一度っきりでポーズもリセットもできないんだ。現実は非情なんだ。

「さあ、私の左のほっぺを思いっきり叩いてください!」

「ご、ごめん…それはあたしでもちょっと…」

「叩いて問題を起こしてください!! そして私との友情を育みましょう!!」

今、生徒会長として絶対に言っちゃいけない言葉が飛び出したような気がしたのだが、気のせいだろうか? だがいくら愛香さんでも、無抵抗の常人に殺人パンチはできないようで、その拳が握られることはなかった。

「…分かりました。もういいですわ、つーん」

「ああ、なんて可愛いんでしょう…じゅーん」

意味不明な効果音を語尾につけ、トゥアールさんは慧理那会長の子供っぽくて可愛い仕草に興奮している。

だが、愛香さんに断られたことで、その矛先は面倒くさい所へと向けられた。

「では観束君に丹羽君…! 私を殴ってください!!」

「「ええっ!?」」

「お願いしますわ!!」

またもや目を閉じて俺たちの前に無防備に立つ会長。

「いや…これは流石に…会長のツインテールに対する冒涜にもなるし…」

総二はいくら会長の頼みでも女の子を殴ることは出来ないといった反応を示すと、なんと会長は俺の方へとロックオンしてきた。

「では丹羽君! 私を思いっきり叩いて下さい!!」

「! い、いや…いくらなんでも…不味いでしょうし…」

「さあどうしたのですか丹羽君! あなたはテイルファイヤーのファンなのでしょう!? ここで私を殴らなければ、いつまでたってもテイルファイヤーみたいになれませんわ!!」

「…いや、でも、ええっ? そこでその話題は関係ないんじゃ…」

「おまっ…ファイヤー派だったのか!?」

ツインテイルズの話題になった途端、これだ。総二の興味は会長からツインテールへと移ってしまったらしい。凄く真剣な目で俺の方を見てきた。

…うん、今そこは重要な所じゃない。この目の前の状況をなんとかすることの方が大切なんだ。それにテイルファイヤー本人が目の前にいる状況で、まさか本気で殴る訳にもいかないし。

「好きっていっても、人並みに好きってだけで、そこまで…」

「駄目ですわ! 丹羽君の愛はそこで終わっていいものではないはずですわ!!」

「………………………」

もうこのままでは拉致が明かない。ここでいくらごねても、いつまでも会長は納得しないだろう。それにこのまま放置しておけば、会長だけでなく総二たちにすら俺への疑いを招くことになるかもしれない。

…俺は蚊すら殺せないのではというほど充分に手加減をして、会長の頭をぺしんと叩いた。

「っ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁお嬢様に何をするかあああああああああああああああ!!!」

「「「「!?」」」」

バーン! と部室内のロッカーの扉が蹴破られ、そこから尊先生が飛び出して来た。随分と長い間そこに隠れていたらしく、顔中汗だくになっており、化粧崩れが始まっていた。

「おのれ、草食系かと思えばとんだ肉食獣ぶりを見せおって! やはりここは教師として、更生させねばならないな! さあ丹羽君、結婚という名の更生レッスンの始まりだぁ!! ついでに観束、貴様にも婚姻届のプレゼントだ!!」

「明らかに、教師がとるべき行動ではないですよね!? というか何時から隠れていたんですか!?」

「昼休みからだ!!」

「仕事してください先生!!」

「心配するな、今日はあいにくの雨で体育教師である私の仕事は全ておじゃんになったから大丈夫だ!!」

全然大丈夫ではない。社会人として力を入れるところを明らかに間違えている尊先生を雇っているこの学園は本当に大丈夫なのだろうか?

「そうだ丹羽君、ここに初めてきたのだ! せっかくだから私と握手をしようではないか!!」

「はぁ!?」

「絶対にしちゃ駄目よ光太郎! こいつ、どこかに朱肉を隠し持っているはずだもの!! そーじもそれにやられたのよ!!」

「それをばらすな津辺君! ネタバレはこの世で最も恥ずべき行為だぞ!!」

「ティッシュ感覚で婚姻届を配るあんたがそれを言えるのかしら!?」

「さあ観束君! 丹羽君が私を叩いたのですから、次は観束君の番ですわ!!」

「ええっ!?」

「今度は私のほっぺにビンタをお願いしますわ!!」

もう部室内はカオスとしか言いようがない状態になっていた。俺はここで静かに勉強をするはずだったのに、何故かツインテール部の面々に振り回されている。

俺目がけて婚姻届を手裏剣代わりに投げる先生とそれをインターセプトして破り捨てる愛香さん。

総二に叩いてくれと懇願する慧理那会長となんとか避けようと交渉に励む総二。

…だが、俺たちは騒ぐだけ騒いでいたせいで、ここにいたはずの人物が消えてしまっていることに気付けなかった。

それに気付けたのは、総二は困った挙句にトゥアールさんへ助け舟を出した時にようやく判明した。

「トゥ、トゥアール!! 頼む、会長をどうにか…トゥアール?」

総二の視線の先には、さっきまでいたはずのトゥアールさんの姿がなく、忽然と姿を消していた。彼女が愛用しているパソコンだけがぽつんとテーブルに置かれている。

「あれ…トゥアール…さん?」

「居ません…わね?」

そこで俺と会長はさっきまでいたはずのトゥアールさんが何故か部室から消えてしまっていることに気付き、きょとんとするのだった。

「ほらほらほらほらほらほらほら!!」

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃああああああ!!」

…残りの2人がこのことに気付くのは、当分時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

同時刻、喫茶アドレシェンツァ地下にある、秘密基地内のとある廊下。

先ほど、光の渦と共にここへ降り立ったレイチェルは少し緊張したような顔で待っていると、同じように目の前に光の渦が現れる。

「レ~イチェ~~~ル!!」

そしてそこから見知った人物がこちら目がけて勢いよくダイブしてきたが、レイチェルはこれを紙一重のタイミングでかわした。…当然、目標を捕えることが出来なかったトゥアールはそのまま壁へと激突した。

「…だ、大丈夫ですかレイチェル? 怪我はありませんか!?」

「いや、あんたの方が大丈夫?」

2つの意味で大丈夫かとレイチェルはトゥアールの心配をしていた。

結構なスピードで激突したはずなのに、何故彼女はピンピンしているのだろうか…。そもそもブルーのオーラピラーを生身で受けて五体満足な時点で色々とおかしいんだけど。もしかしたらテイルギアの装着者はちょっとしたことで死なない身体にでも改造されてしまうのかもしれない。

「…というか来るの早すぎない? あたしもこんなに早く来るとは思っていなかったんだけど」

「レイチェルからの連絡ならば、いつだってワンコール目で出てみますと言ったではないですか!! 駆けつけるのだって同じです!!」

「…………………うん」

レイチェルがトゥアールに連絡をしてから2分くらいしか経っていないのに、もうやってくるとは完全に予想外であった。

(しかも『基地の中で待っていていい』だなんて…不用心にもほどがあるじゃない…)

当初は外で合流した後で基地に行こうとしたのに、まさかトゥアール本人から中で待っていろというメッセージが送られてくるとは思わなかった。それは自分のことを信頼しているという証拠なのか、それとも別の意図があるのか…それは分からないが、やはりトゥアールの自分に対する気持ちは昔と変わらないみたいだ。

「…ところで、どうしてあんた制服なんて着てるの? 新手のプレイ?」

「あっ気づきましたか!? 私、今高校に通っているんですよ~! あなたのお友達トゥアールは、ピッカピカの高校一年生として元気に通学しているんですよ!!」

「こ、高校…?」

レイチェルの顔がほんの僅かだが引きつった。トゥアールが高校に入ろうが何をしようが自分には全く関係ないのだが、元居た世界でのトゥアールの振る舞いを知っているが故に、どうしてもギャップを感じざるを得ないのだ。

「…ピッカピカの1年生って、あんたの実年齢」

「青春はいつだって始められるんですから、問題はありません!!」

「…いや、まあ…別にいいんだけど。あんたが学校に通うとはねぇ…」

それから2人は実質トゥアール専用と化しているスペースの研究室へと移動した。

「どーですか!? これくらい広ければ、なんだって作れますよ!!」

「そうね」

研究室を見て驚いたのは、その広さだった。研究室の一角だけでも、光太郎と住んでいる部屋の広さを軽く超えてしまっている。

研究室には巨大な作業机や大型の機材、スクラップや小型の冷蔵庫までもが置かれており、それぞれの設備だけでもレイチェルの持っている物を上回っていた。

机の上には何に使うのか、時空移動用の船艇の設計図が置きっぱなしにしてあり、部屋の隅には加工用の工具が山積みにあった。

「確かにここなら、加工も難しくはないでしょうね」

「あ、飲み物もありますよ! こっちの世界の飲み物も美味しいから、きっとレイチェルの口にも合うと思うのですがどれがいいですか? ジュースにします、サイダーにします!? そ、れ、と、も…」

「どれもいらない。それにあんたもいらない」

「ええっ、なんてノリが悪い…」

「あたしは遊びに来た訳じゃないの…さっさと作業を終わらせて、さっさと帰るわ…!」

レイチェルは近くにあった機械を起動させ、どこからともなく部品を取り出すとそこにセットして作業に励む。ベルト全体の組み立ては家に帰ってからでも行えるので、ここではこちらでしかできない部品の加工を主に行う。

その間にも、トゥアールはさかんにレイチェルに話しかける。聞かれてもいないのに自分の学校のことや仲間のツインテイルズのことを話し、そしてレイチェルのことも盛んに聞いてきた。

今までどこにいたのか、そして今はどこで暮らしているのか。ちゃんと3食食べれてお風呂に入れる環境で生活しているのか、誰かと一緒に暮らしてはいるのか、そしてファイヤーの変身者は幼女なのかなど。

レイチェルは変な質問の時だけは無視して、真面目な質問には短く答える。トゥアールが一方的に話し、レイチェルが簡単に返事をするやり取りを幾度も繰り返した。

そしてどんなシャンプーを使っているのかという質問の時、レイチェルはあえてなんでもないような口調で質問を返した。

「ねぇ、トゥアール。あたしのこと、嫌い?」

「……」

トゥアールは一瞬だけポカンとした後、笑いながら「嫌いなわけないじゃないですか」と言った。

「どうしたんですかレイチェル? 世界が変わっても、私たちの友情が色あせる訳が…」

「じゃあ…レッドとファイヤーが似ているのは、どうして?」

レイチェルは暗い顔で再度質問する。

「あれはあたしの嫌がらせかなにかなの…?」

レイチェルはまだ子供であったが、並みの大人以上の経験をしながら世の中を渡ってきた身だ。嫌がらせや妬みなど、汚い世界のこともそれなりに知っている。その為、親友の行動の理由を言葉で確認しておきたかった。…たとえ、それが自らの過去を掘り出すことになってもだ。

「だってレイチェル、あなたはあのスケッチブックを描いた張本人じゃないですか」

「…!」

トゥアールの発言は不意打ちだった。彼女は自分と同じかそれ以上に、あれを覚えていたのだから。

 

 

 

 

 

 

レイチェルという少女の過去は、地味で堅実なものだった。というより、飛び級という特殊な境遇を考えればそうするしかなかったのだ。

2桁にも満たない年齢なのに大学教授の鼻をへし折るほどの知識を得ても、レイチェルはあえてそれを表ざたにするようなことはしなかった。目立たず騒がず…今以上に奇怪な目で見られたり、変人扱いされるのが嫌だったからだ。

でも自分の湧き出てくるアイデアや発明をそのまま埋もれさせたくはなく、ある頃からレイチェルはどこへ行くにも赤色のスケッチブックを持ち歩くようになった。そして暇な休み時間や退屈な授業の間、自分の溢れるアイデアをそこへ書き記すようになったのだ。…まあ、中身の大半が一刻も早く記憶の彼方へ消し去りたいような黒歴史だらけのスケッチブックなのだが。

そのスケッチブックにアイデアを描くという行為はレイチェルが大学を卒業し、とある研究所に就職した先でも続いていた。でも、それを決して人に見せるようなことはしなかった。

そしてそんなある日、レイチェルはふと自分のスケッチブックが手元にないことに気付く破目になる。そしてこのスケッチブックをトゥアールという少女が拾ったことで、レイチェルの人生は陽気で騒がしく、落ち着かない日々の幕が開くことになるのだった。

「落し物を届けに来ましたよ」

「…!」

ツインテール姿のトゥアールはいかにも愉快そうな顔でそう言った。彼女の手にはレイチェルの赤いスケッチブックがある。

その頃のトゥアールとレイチェルは今のような関係ではなかった。名前は互いに知っているものの、特に親しくもなく、同じ職場で働いている人間くらいしか認識していなかった。

「…どこに落ちていたの?」

「自動販売機の隣のベンチの下に落ちてましたよ。名前が書いていなかったので文字の癖を確認しようとして、少し中身を検めさせてもらいました。それであなたのだってわかったんです」

勝手に見てごめんなさい、とトゥアールはレイチェルにスケッチブックを返した。それをレイチェルはひったくるように手に取る。

「別に…大したことが書いてある訳じゃないから、いい。けど…このことは誰にも言わないで」

レイチェルは書いてある中身よりも、自分がこんなことをやっていることがばれたことの方が重要だったのだが、そんな言葉にトゥアールは身を乗り出してきた。

「本当にそう思っているのですか?」

「…どういうこと?」

当時、トゥアールは研究所の中でも頭一つや二つ分抜けていた存在であった為、レイチェルはいちゃもんや嫌味でも言いたいのかという顔つきになる。

「使えるアイデア満載じゃないですか」

トゥアールはちょっといいですか、と断って一旦返してくれたスケッチブックを再び開いた。

「例えばここですよ。他者の意識の混合させて、一つの方向へと持っていくっていうアイデア!」

自分の書いたものを他人に読み上げられるというのが嫌なものだ。そんなことをされるのは不当に思えた。

「…そんなこと考えてる奴は頭がおかしいって言いたいの?」

レイチェルは吐き捨てるように言ったが、トゥアールは真剣にかぶりを振る。

「とんでもない、その逆ですよ! 確かに今の技術では不可能かもしれません。でもあなたはこのアイデアを真剣に考えて、仮に今の技術で実現させるにはどうすればできるかを本気で検討してますよね? もしそれができた場合、何に使え、何に応用できるか…このスケッチブックからでもその熱意は十分に分かります」

トゥアールは言葉を一旦止めると、口元を緩ませた。

「不可能に挑戦するという熱意や思いを私は馬鹿になんてしませんよ。だって私は科学者! 不可能に挑戦するのがお仕事なのですから!!」

「!」

「よかったらもう少し話しましょうよ。お昼、まだですよね?」

それが、トゥアールとレイチェルが親しくなったきっかけだった。

トゥアールという少女とつるむことになったレイチェルの生活は広がりを見せた。彼女は優秀な科学者としての顔だけでなく、他の研究所の仲間や時には他の若者を集めてはイベントなんかを行っており、それにレイチェルを誘ったりしてくれたりした。

そして、これが最も大切な事なのだが…トゥアールは何をするのにも全力で楽しんでいた。

そんなトゥアールに振り回されていく内に、レイチェルの方も段々と変化が見られ始める。

最初はうっとおしいと感じていたレイチェルであったものの、どこか真っ直ぐしたトゥアールの性格やその生き方にどこか憧れみたいな感情を抱くようになっていたのだ。

『私は未来永劫、私として生きるのみ! 誰に言われたって、これは譲れませんよ!!』

時たまトゥアールは残念な所を見せるが、その我が道を行く生き方はレイチェルにとってまるで姉みたいな存在になっていく。そして時間と共にその関係は親友と断言できるまでに発展していった。

そんなある日のことだった。

丁度休憩時間の時、トゥアールはレイチェルのスケッチブックのとあるページを夢中に読んでいた。

「…なに見てんのよ、あんたぁ!!」

「あ! いや、これは親友としてチェックを…!」

「人の物勝手に覗くな変態――!!」

レイチェルのビンタにトゥアールは吹っ飛びながら、何故かあははと笑っていた。

トゥアールが夢中に読んでいたページには、とあるツインテール女性のスケッチが描かれていた。

身長は170センチほどで赤色の甲冑を纏い、そのツインテールも甲冑と同じ赤色。凛々しい顔つきと共に、剣と籠手を構えており、ゲームのキャラクターや変身ヒーローみたいなイラストだった。

「レイチェルもこういうの好きなんですねぇ!」

「…うるさいわね」

軽い黒歴史と化しているそれを親友に見られるのは嫌なものだ。レイチェルはスケッチブックをひったくると、すぐさまそれを自分の机に戻した。

「レイチェル、私の目が確かなら、どうしてあのイラストは大人の女性だったんですか?」

「何よ?」

「いえいえ、深い意味はないんですよ。ただ、どうしても気になっちゃってねぇ…!」

トゥアールは面白いものを見つけたみたいな目をしながら、レイチェルの方を向いてきた。…このモードになってしまったトゥアールは果てしなく面倒くさい女になる。正直に言った方がまだ傷は浅く済む。

「…早く、大人になりたいから。そうすれば、あんたみたいに…なれるんでしょ?」

この頃からレイチェルは一向に伸びない背丈を気にしており、早く大きな背や大人びたスタイルに成長したいという思いがあった。それがあのイラストにも反映されていたのだ。

「心配しなくても、レイチェルも背が伸びますよ…野菜嫌いが治りさえすれば! でも今のままじゃ絶対大きくはなれないでしょうね!! というか大きくならないで!!」

「余計なお世話よ!」

キー! と色々と大きくなっているトゥアールをにらみつけるレイチェル。それを微笑ましく見つめるトゥアールは、懐かしげに呟いた。

「私は…レイチェルくらいの齢に戻りたいかなぁ…」

「…………」

『嫌味か貴様』とでも言いたげな憎々しい目でトゥアールをにらむレイチェルであったが、どうやらトゥアールがいいたいことは違うらしい。

「私…同じ年頃の子と遊んだことがないんですよ」

「え?」

「小さいころからあなたと同じように頭がよくって…そのせいで皆、普通に扱ってくれなくて。だから、一日だけでも子供に戻れたらっていつも思うんですよね! そうすれば、合法的に幼女の写真も撮り放題で…!!」

「あー、はいはい」

少しシリアスなことを言ったと思ったら、次にはそれか。まともに聞いてしまって損しちゃったと、レイチェルは呆れた。

「悪いけど、あたしはあんたの考えは理解できないわ。あたしは早く大人になりたいの」

「きっとレイチェルも、大人になれば分かりますよ」

「ふーん、そう?」

残念ながらレイチェルがその言葉の意味を理解するには、まだまだ時間がかかりそうだった。




トゥアールの過去やエピソードは原作でもまだ明かされていないので、完全捏造です。そのため、今後原作の展開次第では矛盾が生じてしまう可能性がありますが…。

子供への憧れを持っているトゥアールと早く大人になりたいレイチェル。もしかしたらこの2人の少女の思いが、テイルギアに影響を…なーんて思っちゃったりしています。レッドの幼女化については…原作では明確な解が出ていないし…もしかしたら更なる捏造が入っちゃうかもしれません。

では次回もお楽しみに!!

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