俺のクラスメイトが全員東方キャラになっていた件   作:マジカル赤褐色

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俺たちの担任が寺子屋教師になっていた件

 

 

「………………………………………………」

 

 

俺は『(名前)』。

水入りバケツを両手と頭に、廊下で立ち尽くす高校2年生だ。

いかにも昭和の体罰みたいな状況にいる今の俺には色々な事情があった。

 

それは、俺の学校のクラスメイトたちが東方キャラになる、という。

 

俺は今朝、クラスメイトである早苗さんを保健室に送り、養護教諭である八意永琳にナデナデしてもらってから、保健室の入室許可証を手に自教室までやってきた。

この入室許可証があれば、1時間目の授業ノ遅刻は公欠扱いとなり、成績に響かない。

 

 

そんなわけで俺は自教室までやってきたのだが、そこはまさに異空間と化していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

 

数分前、俺は自教室の扉を開き、最後列、窓側から一席博麗霊夢の座席を越えてその隣りにある自分の座席へと向かおうとした。

 

 

「待たれよ『』。2時間にもわたる遅刻とはどういう了見だ」

 

 

自分の右側、すなわち黒板の方から声がした。

もう3時間目なのか…………色々な出来事があったから2時間目を過ぎてしまったようだ。

たしか3時間目は日本史。俺たちの担任の先生である30代半ばの男の先生が日本史の長話をしてくれる。

顔がいいので人気ではあるし、人当たりも良くていい人なんだがいかんせん授業がおもしろくない。

ここは2年生全員が公式で認めた居眠り時間である。

 

 

「すんません、保健室に行ってました」

 

 

俺は早苗さんを保健室へ送っていた。嘘は言ってないぞ。

 

 

「そうか。遅刻理由書は持参したか?」

 

「…………………あ゙っ、」

 

 

しまった、永琳先生に発行してもらうの忘れてた………!

公遅刻を認めてもらう場合は職員室での遅刻理由書発行が必須。

俺はそれを取るのを完全に忘れてた。地味に遅刻経験がほとんどなかった精勤賞な俺には遅刻理由書の発行という行程が頭の中になかった。

 

 

「お前…………こちらを向け、」

 

「は、はいッッッ!!!!!」

 

 

ブンッ、と首をそちらに向けると俺の顔面に向かって高速で白髪が突撃してきた。

 

 

「オオォォォォォォルルルルルァァァァ、こんの与太郎がァァァァ!!!シネーッ!!!」

 

「ブモォォォォォォァァァァァ!!!!!」

 

 

顔面のど真ん中に正面からやってきただれかの頭頂部がめり込んだ俺は鼻をペシャンコにさせながら教室の扉まで戻るように吹き飛んでいった。

ズガーン、と教室の扉を破壊しながら廊下まで飛行し、最終的には壁に激突してめり込んだ。

 

 

「ぬぉぉぉ!?」

 

キーーーンと音を立てながらベ◯ータみたいに吹っ飛んでいく俺。

バシャーン、と真後ろの窓ガラスが吹き飛んでいき廊下の壁には俺を中心に、ベ◯ータみたいな丸い巨大なクレーターができた。

 

 

「あ…………が…………」

 

 

バッファローに正面から激突されるときっとこんな感覚なのだろう。

 

ぶっ倒れる俺の前に、かつかつと一人の靴音が近づいてくる。

壁から剥がれて地面に仰向けに倒れる俺の見上げる先に、俺を見下ろす一人の女の顔が現れた。

 

 

「『』よ………遅刻理由書も持参せずに堂々の遅刻入室とは大した度胸ではないか。しかも担任である私の授業で。入室の挨拶は90点だったが、状況を加味して最終は⑨点だ」

 

「さ、サーセン…………」

 

 

紺青の裾長な襟ワンピと、ふわふわしている白い髪、そしていま俺に叩きつけたその頭頂には、四角形の上に赤リボン付きの三角錐を乗せた意味不明な形状の冠を被っていた。

 

 

「…………して。なぜ遅刻した。『遅刻&宿題忘れの処刑人・上白沢』と職員室で恐れられているこの私に説得力のある言い訳をしてみろ」

 

 

というわけなので、前回保健室の先生がえーりんになっていたのを期に、うちの担任の先生も東方キャラへと変身したのでした。

 

こちらの方は間違いなく上白沢慧音。

人里の歴史を記録する編纂者という役割を担う幻想郷の重鎮であり、同時に人間の里で子供たちへの教育機関として寺子屋を開く、言うなれば『元祖・東方おねショタ代表』。

そうだよなー…………やっぱ担任が東方化したらそりゃけーね先生だよなぁ…………

 

いやぁ、タイミング悪すぎるわ。

なんで今日なんや。

大人への東方キャラ置換が初登場したの今朝なのになんでその次にこれかな。

 

上白沢慧音といえば、宿題を忘れた生徒におしおきとして猛烈な頭突きを食らわせるという設定がある。

まさか現実で実体験することになるとは思わなかった。

 

現実の幻想郷化の弊害なのか、俺の肉体には変なバフがかかっており、普通だったら絶対死んでるだろっていうダメージでも痛みだけで終わり、無傷で済んでしまうという陰キャには勿体ない鋼の肉体を手に入れた。

昨晩アリスに鋼鉄のハンマーで頭部をぶん殴られても流血一滴なかったのだから間違いない。

だからといっても今のはあまりにも痛かった。

 

 

「こ、東風谷早苗さんを保健室に送っていました………怪我してたので………」

 

 

俺はなんとか立ち上がった。

めちゃくちゃ背中と頭痛い。

 

 

「…………そうか。それで2時間と3時間目の半分まで遅れたと、」

 

「ハイ、」

 

「で。保健室の入室記録はどうなっている」

 

「た、たぶん永琳先生が記録してくれていると思います」

 

 

だ、大丈夫よね?

えーりん、忘れてないよね………?

 

 

「だが、仮にそれが事実だとしても保健室からこの教室まで来るのに150分を要するというのは常識では考えられない。道草を食っていたか、あるいは…………」

 

 

けーね先生はズイッ、と顔を近づけてキスしそうなくらいの至近距離から俺の両眼を睨んできた。

 

 

「【早苗とお前はもともと遅刻していた上に怪我をしてさらに遅れた】…………といったところか」

 

「─────────────」

 

 

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

ぜんっぶお見通しなんですけど…………!!!

 

 

「いやぁまさか…………!迷いの廊下で迷っちゃったんですって…………!」

 

「本当に、遅れていないんだな?」

 

「ハァイ!絶対にです!」

 

「嘘をついていたらどうなると思う?」

 

「どんな罰でも喜んでお受けいたします!」

 

「では私が食らった歴史を後で確認するとしよう」

 

「すみません今日家出た時点で遅刻寸前でした!」

 

「やはりウソではないか───!!!」

 

 

強烈な頭突きがちゅどぉぉぉん、と俺の額を直撃した。

体罰反対────!!!!!()

 

 

「いだだだだだだだだだ………………」

 

「覚悟はできているのだろうな『』…………」

 

「うぐ…………」

 

 

そんな、心臓を鷲掴みにするような手つきをしながらこちらを睨み下ろさないで。ふつうにころされるとおもうじゃん。

 

助けてほしいなーと心で思う俺に容赦のない言葉が襲いかかる。

 

 

「次回の期末テストはマイナス40点スタート!さらにお前限定で本日の課題5倍増し!そして放課後1人で慧音先生補習授業2時間スペシャルだ!」

 

「ヤダァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

歴史マイナス40スタートはやばいって。

人の所業じゃないだろこんなの(もともと上白沢慧音は人間じゃありません)。

 

 

「慧音先生ー、ちょっと、これ。これを………」

 

 

俺は手でQを造ってとりあえずゴマすりに挑戦。

 

 

「私が金で雇えるとでも思ってたのか。侮辱罪でマイナス80点スタートでも良いんだぞ」

 

 

赤点不可避で草も生えない。

 

 

「私が問うのは成績だけではない。いやむしろ、成績よりも人としてのあり方を問う。大遅刻をするに飽き足らず言い訳したりウソをつく、挙句の果てには金で買収しようなど、恥を知れ!」

 

「くっそぉ…………だめかぁ…………」

 

「よいか。言うまでもないが、私はいかなる誘惑にも脅迫にも惑わされない鋼鉄の信念を持って教壇に立っている。全てはお前たち生徒のためだ。たとえ何が起きても、私の意志が折れることは絶対にない。このクラスは私がルールだ。今まで多くのバカをみてきたこの私の指示に従い、言う通りにすれば、お前たちは少なくとも悲しい人生を歩むことだけはない。私がそういう思いでここに立っている気持ち、お前に分かるか………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐー…………ぐー…………」

 

「寝るな与太郎─────!!!!!」

 

「ぐぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

頭部に凄まじい衝撃を感じて俺は飛び起きた。

 

 

「お前ついに私の話の最中に眠りよったな!?」

 

「くそっ、なんでだ…………!さっきまでまったく眠たくなかったし、眠くても寝ちゃダメだって気を張っていたのに変な催眠をかけられたみたいに不思議な力で眠ってしまった…………!」

 

「お前それはどういう真意で言っている?」

 

 

ついに慧音先生が満面の笑顔でキレ始めた。

頭の上にハッシュタグと煙のマークがついている。

 

 

「ど、どうすれば俺は助かりますかね?」

 

「無駄だ。私には買収も暴力も脅迫も、催眠アプリも通用しない。過ちを犯したその時点でお前は取り返しがつかない状態なのだ」

 

 

…………催眠アプリ?

 

 

「私を説得しようとしても無駄だ。お前にはこれくらいが良い薬になる。今回の失敗を糧に、次からはこのようなことがないように、ゆめ忘れることがないように…………」

 

「…………おっ、いたいたー。よっ、慧音ー!」

 

 

慧音先生の声を遮って何者かが現れた。

 

廊下の向こうからやって来た紅白の姿、

 

あの人影は…………!

 

 

「あれは………妹紅?」

 

 

「おーい!『』〜。遅刻理由書忘れてるぞ〜」

 

 

妹紅が1枚の小さな紙切れを持ってやって来た。

あれはまさか、遅刻理由書!?

な、なんで俺のクラス知らない彼女が…………

 

 

「何ぃっ!?妹紅だと!?」

 

 

おや………?慧音先生の様子が………?

 

 

「妹紅、なんでお前にここが、」

 

「いや、ふとお前が遅刻理由書持っていってたかどうかが気になってな。永琳に発行してもらったんだよ。お前に会うためにわざわざ早苗からクラス聞いたんだぞ。これで一つ、借しだからな」

 

「た、助かったぁ……………」

 

 

風来坊は1人でも作っておくもんだな…………

まさかあの出会いがこんな形で帰ってくるなんて。遅刻が延びた理由にはなったが、結果的に遅刻を許してもらえるきっかけにはなった。

 

 

「でもお前はたしか輝夜さんと喧嘩して…………」

 

「あぁ。あんなやつは完膚なきまでにボコボコにしてやった。両手両足縛り付けて、今は女子トイレの用具入れに押し込んでる」

 

 

かわいそうに。

 

 

「へへっ、外に出ないヒキニートごときがこの私に勝てるわけあるか。それで?やっぱ私に助けられたって感じか?」

 

「妹紅ー!ありがとー!」

 

 

やっぱ持つべきものは心の友だ。

 

 

「つーわけでさ慧音、こいつは人助けして遅れたんだよ。ちゃんと養護教諭も遅刻理由書を発行してくれたし、入室記録も残ってるし、ここはセンセーとして心の広い所見せてやるべきじゃないか?」

 

 

妹紅は仕方なさそうな笑いで誤魔化しながら慧音先生を説得しようと試みる。

頑固者の慧音先生は即座に断るかと思ったら、腕組みしながら身体を左右に揺らしてうーん………と唸っている。

 

あ、あれ…………?

 

 

「む…………無理な相談だ…………!誰が何と言おうと…………私は自分の考えを変えないからな!人助けをしたという点については褒めるべきだが、それがなくとも、もともと寝坊で遅刻しているのだから、どのみち遅刻には変わり、ない………!」

 

 

慧音先生は震えながら、あくまでも自分の意見を貫く姿勢を見せようとする。

ただそれについては本当に言い逃れできないのが悔やまれるな。

 

妹紅はそれを聞くと残念そうにうつむく。

 

 

「そうか………私のお願いでも無理かぁ………そ、そうだよな………慧音はみんなのセンセーだもんな。自分のクラスの生徒が遅刻したりして、ほんの一部と言ったって、責任がついて回るんだろうから………」

 

「い、いいや、そういうわけではなくて…………」

 

「ご、ごめんね!なんか変なお願いしちゃって………私のワガママに付き合わせるのはなんか悪いし、やっぱやめにするよ!…………残念だけど、」

 

 

 

「ううぅ……………んんん……………ん゙ん゙ん゙ん゙…………あぁぁぁぁ!!!分かった分かった、もういい!早く入れ!さっさと40秒以内に授業準備して着席しろ………!」

 

「やったやった!慧音大好き♡」

 

 

妹紅は飛び上がって大喜び。

一番飛び上がりたいのは俺なんだがね。

 

 

「助かったよ妹紅………ひとつ借りとく」

 

「へへっ、良いってことよ。お前が理不尽に遅刻食らうのは私も気持ち良くないからな」

 

 

あー、マジ助かるわ。

廊下のヒーローやんこの人。怒涛のサボり魔だけど。

 

 

「慧音もありがとうな。私のワガママを聞いてくれてな………」

 

 

妹紅は慧音先生の前にスタスタと出ると頬に手を添えてナデナデする。

ちょっと待てめっちゃ浮気現場やんこれ。

 

 

「!?ちょ、待ってくれ妹紅!これはちょっとというかかなり清純じゃない!」

 

「えー?何が何が?私は、慧音の優しさに感心しただけなんだけどなぁ。惚れ直したというか?」

 

「わ…………わわわわわわわわわわ…………!!!」

 

 

さっきまでの覇気はどこへやったって質問したくなるレベルで大動揺を見せる慧音先生の耳に妹紅がなんか呟く。

何を言ってたのかは聞こえなかった。

 

 

「あわわわわわわわ………ど、どうしよう………!」

 

「ね?だって放課後なら暇でしょ?人気ないとこだったら私がすぐに見つけてやるからそこでさ、」

 

「だ、ダメだ妹紅ー!ああああああっ♡」

 

 

「………………………………………」

 

 

─────俺は何を見せられてるんだ?

 

 

 

妹紅に視線で問おうとするが、こっちの事は見向きもしない。

 

いいや。もう教室行くかー、続きもうこの2人ほったらかしにしとこ。

 

 

 

「慧音先生思ったよりチョロ…………」

 

「ちょっと待て今聞き捨てならない言葉聞こえたぞもしかして今の言ったの貴様か『』───!!!」

 

 

「げっ…………!!!」

 

「あーあ、せっかく助け舟出してやったのに………」

 

 

「オォォォォラァァァァァ!!!!!」

 

「ぶもぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

4度目の頭突きを食らって俺は再起不能になった。

 

 

「やっぱ貴様は一生廊下に立っておれ!バケツ3個持ちながらな!」

 

「が……………ぐ……………」

 

 

け、慧音先生おそろしや──────

 

 

 

こうして俺は3個のバケツを持ちながら廊下に立たされることになるのだった。

ちなみに怒った慧音先生は教室に消えていき、妹紅も気まずそうに帰ってしまった。

 

 

廊下は俺一人、めっちゃさみしい。

あー…………ひとりが一番落ち着くわ。

 

 

 

 

 

 

─────キーンコーンカーンコーン、

 

 

 

 

 

 

授業おわったか。休み時間だ。

 

そろそろ授業できるかなー。

次の授業は……………とスマホ見て時間割を確認。

 

 

 

「うわっ、次は数学かよ……………」

 

 

4時間目で腹減ってる時に数学か。

これ乗り越えたら飯だと思って元気よくやるしかない。

次の教師も東方キャラになってたりはしないよな。

 

だって、慧音先生はあくまで元々先生だから先生として現実入りする権利があっただけで、まさか他のキャラが先生になるわけ…………

 

 

 

 

「ニャーン!キミキミ!廊下で何してるのー!」

 

「ぐぅぅぅぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

左脇から強烈な突進を受けて転倒。

3つの水入りバケツが廊下にぶちまけられて俺は海のただ中に沈む。

 

 

「何事だ!」

 

 

授業終わりの慧音先生が教室から飛び出てくる。

 

 

「バカモーン!!!遅刻と教員への暴言に飽き足らず学校の廊下までも汚す気か!!!」

 

「ずどぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!」

 

 

俺は何も悪くないのに5回目の頭突きを食らう。

 

 

「はい、これで廊下を拭け。休み時間までに終わらないのなら4時間目も遅刻だからな!」

 

 

ここまでしてさらに顔面に雑巾投げつけてくるのはもう今の時代だったら絶対アウトな教員だと思うんですが。

 

 

「くそっ…………なんでこんな事に…………」

 

 

今廊下で何かに突進されなかったらこんな事には…………

 

 

「こらっ!なに水を散らかしているんだ!悪戯もほどほどにしなさい!」

 

「ひぇーっ!ごめんなさーい!!!」

 

 

その時、廊下を仕方なく雑巾で拭いている俺の前を2つの人影が通っていった。

 

 

一人はすごいスピードで廊下を疾走して奥に消えていったネコのような生き物、

 

そしてもう一人はネコを追いかけるキツネのような黄色い尻尾をたくさん付けた人物。

 

 

 

「───────嘘だろ、」

 

 

 

おいなんか、猛烈に嫌な予感がするんですが!?

 

 

 

わずか休み時間の15分終了後、嫌な予感は的中しました。

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