俺のクラスメイトが全員東方キャラになっていた件 作:マジカル赤褐色
──────俺の名前は『(名前)』。
一人で家に帰る高校2年生だ。
………………明けましておめでとう読者の皆よ。
長い間の連載休止を経て、再び復活してきたわけなのだが、連載休止中はしっかり俺の時間はちゃんと停止していることになっている。
俺は数ヶ月もの間、この道端で止まっていたようだ。
俺は今年もこの変な異変が起きている学校に振り回されることになるわけだが。
去年の冬から、今年の夏にかけて、実に約半年の長い間のサボり…………
これを人は「作者のモチベーション」のせいと言うらしい。
さて、これ以上メタ発言を繰り返すと世界観がブチ壊れるので俺は俺の現実に戻るとして。
…………おっと、俺の現実がうーのこーのって、俺はこれを読んでる君たちの分身だったか………
はい。
よし、ここからは本編が始まる。
新規で読んでくださる読者の皆様、そしてお久しぶりにお会いできた読者の皆様も。
わざわざ時間をいただいてこの物語を読んでいただきありがとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
例の異変のこともあって、今日の俺もしっかりと疲弊していた。
実に半年もの間の連載期間が開いたということで、本作について知らない新規の読者さんたちもいることだろう。
よって、俺の現在置かれている状況を一旦再確認しておくとすると。
現在、俺の通っている学校は幻想郷化しており、生徒や教員が東方キャラに置き換えられる異変が起きている。
また、被害は学校にとどまらず、俺の妹がアリス・マーガトロイドに変わるという現象まで併発しており、俺の周囲はどんどんカオスになっていくのだった。
ちなみに現状この異変を止めるつもりはない。
なんか、異変が起きてからのほうが生活充実してるし。
というか、そもそもこれを止める方法がまるで見当たらない。
…………今日も無事に学業を終えて帰路につく俺だった。
空が橙色と紫に染まる頃、俺は誰もいない住宅街を闊歩する。
「ふぅ…………んで。帰ったらアリスがいるのか、」
異変が続行しているのであれば、帰ると同時にアリスが妹として来てくれるのだ。
俺と妹は不仲なので一切送り迎えになど来てくれないのに、アリスは今朝わざわざ俺を送り出しに来てくれた。
都合のいいことに仲良し兄妹の絆も復活。
「ふっ………まさか家に帰るのが楽しみなんて日が来るなんてな」
だってあんなかわいい妹この世にいないぞ。
「そういや、今日母さんはいつ帰ってくるんだっけ」
うちは親父が単身赴任中でお袋が女手一つで俺たちを育ててくれている。
そのため普段はパート仕事で忙しい。
そんな母のためにも、恩返しになるかは分からないが、俺たち兄妹で仲良く協力して、少しでもお袋に楽をさせてやらなくちゃな。
「ただいまー、」
こうして俺は我が家に帰ってきた。
「おかえり。お兄ちゃん」
すたたたたー、と玄関にアリスがいち早く迎えに来てくれた。
「ただいまアリス。メシの準備はしておくからちょっと待ってな」
昨日はアリスに飯を作らせた。
だったら、今日は俺がお返しする番だ。
俺の得意料理──────
俺の…………得意………料理の……………
うっ、これといって得意料理が………ない…………
「いらないわよ。今日はママ早上がりで帰ってくる日じゃない。聞いてなかったの?」
「あれっ?そうだったか?」
「えぇ。ママ今日は朝出勤だったから」
スーパーのレジのパートだったら確かに朝からいけばそんなもんか。
「っても、母さんだって仕事で忙しいだろ。早帰りの日くらい伸び伸びと休ませてやったらどうだよ」
「まぁ、私もそれはしつこく言ったんだけど、ママ料理するの大好きだから………いつも苦労してるお兄ちゃんと私の喜ぶ顔が見たいんだってさ………」
「苦労してるのは母さんだってのにンなとこに気を遣うなんてな」
「まったくその通りよ………でも、今なんか凄く楽しそうにしてるから茶々入れないであげて」
アリスはもはや呆れて対応を放棄しているようだ。
そうだっけなぁ………お袋は前まで料理するの全然キツそうだったけどな………
お袋と三人で晩飯とはなんだか随分久しぶりな気がするな。
アリスのハンバーグも美味かったが、やはり持つべきは母の味だろうよ。
「ただいま母さん」
俺は荷物置いて着替えた後に居間に降りてきた。
この香りは間違いない。母さんが料理を作ってくれている匂いだ!!!
この芋の香ばしい香りと肉が交差した匂い、そして油の匂い。
これは間違いない。
この世で最もめんどくせぇ庶民食として噂に名高い、コロッケの匂いだ!!!
「あら。『』くん帰ってきたのね〜。おかえりなさい〜。今日は学校楽しかった?」
母さんが聞くだけで泣きそうなくらい優しい声で俺の帰りを喜んでくれた。
…………………幸せだ。
帰ってきたら妹と母におかえりと歓迎される機会なんて、なかなかなかった。
基本的にお袋より俺が早くに帰ってくるからおかえりを言うのは俺のほうだったし、妹は俺のこと超嫌いだからおかえりなんて言ってくれるわけないし。
世の中とは常に不平等で不条理だ。
帰れば親がいておかえりと言ってくれる当たり前が誰にでもあるわけじゃない。
だからこそ、俺はこの状況を当たり前だと思えていることに幸せであるという感覚を忘れない人間でありたいと思う。
中学生のときは反抗することもあったが、それでも結局それを過ぎて達観した心を持ちふとしたときに考えれば、母の愛を噛みしめることができる。
そんなときに人は幸福を感じ──────
「あら?どうしたの『』くん。ごはん出来ているわよ。お皿ちょうだい?お手伝いしないとコロッケ1個減らしちゃうわよ〜」
────────感じ…………
「あぁ、わかったよ母さん。はいこれ、お皿────」
────────────感…………
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
俺は3枚手に乗せた皿をつい離してしまった。
「きゃぁぁっ!危ない!………ちょっと、お兄ちゃん!何してるのよ!お皿急に落としちゃうなんて、」
たまたま偶然通りかかったアリスが刹那の判断で人形たちを向かわせたおかげで、お皿はなんとか床に激突して割れる前にキャッチされた。
「あらあら、たいへん!どうしちゃったの『』くん?気をつけてね?」
「か…………か…………母さん……………!?」
なんと、異変はついに俺のお袋にまで牙を向けてきやがった。
俺のお袋は、長い白髪に赤いローブ、そしてコウモリのような翼を背負った綺麗な女性にすり替わっていたのだ。
「ウソだろ母さんどうしたんだ!?姿が変わってんぞぉぉぉッ!?」
お団子黒髪でちょっと老けた中年女性感バツグンだったはずの俺のお袋は、白髪ロングの若々しい女性になってしまっていた。
「お兄ちゃん何言ってんの………全然ママ普段どおりよ………」
「あら。おかしなこと言うのね『』くん」
「そうよそうよ、言ってやりなさいよママ、」
「『今日のママはいつもより魅力的に見えるんだ』って〜。どうしたの?そんな事言われちゃったらママ嬉しくなっちゃうわ〜♪」
「はい?」
お袋は明るい笑顔でフライパンを振るう手を弾ませる。
フライパンの中にミックスベジタブルと輪切りにしたソーセージが入ってた。
なんかちょっとした小皿のおかずを作ってくれてるらしい。
「あぁ………少し見ないうちに色んな意味で見違えるほど変わったな………」
ハァ…………がちか。
いやー…………嫌な予感はしていたんだが、まさか母親までこの異変に巻き込まれるとは…………
「だから何言ってんのよお兄ちゃん。ごめんねママ、昨日からお兄ちゃんずっとこんな感じなの」
「ねーねー聞いた〜?アリスちゃん。『』くん、今日のママは見違えるほど綺麗に見えるんですって〜。心もイケメンな『』くんのコロッケの数増やしちゃうわよ〜!もちろん、ママの100倍かわいいアリスちゃんのもね」
「うぅ……そうだった………うちのママこういう人だった…………」
アリスと取り巻きの人形が呆れて眉間を押さえる。
「さぁ〜て、できたわよ!
「やったぁ!母さん大好き!」
「もーぅ!嬉しいこと言っちゃだめ!もう母さんの分のコロッケあげちゃう!」
「じゃあお礼に母さんには俺の分のあげる!」
「優しい息子ね〜、さっすがママの誇り!ママは『』くんもアリスちゃんも大好きよ!」
魔界の神、神綺となった俺のお袋………母さんは今のダイニングの中央にフライパンを置くと両腕に俺とアリスを抱き込んでギューってしてきた。
「もうなんなのこの二人のテンション──!!」
流れについていけないアリスの悲鳴が響き渡る。
「それでそれで、『』くんはこの頃、学校ではどう?お勉強うまくいってる?」
────魔界の神、神綺。
俺のマッマ。
それで………神綺といえば他でもない、俺の前にいるこのアリスのママとして浸透している存在だ。
東方Projectで言うと『旧作』に該当する一つ前の世界…………ジ◯ジョでいうと一個前の部にいる人物だが、それでもなおコンテンツの最前線でママキャラの代表格を征く大物だ。
アリスが妹の時点で理屈で言えば自然な流れだが、まさかこのような展開が起こるとは思っていなかった。
「勉強なぁ………勉強はまだテスト先だしわかんないが、さいきん友達は増えてきたような気がする」
「いいわねいいわね〜。お友達ができることは良いことよ。アリスちゃんもお友達とちゃんと遊んでる?」
「な………ど、どうでもいいでしょそんな余計なお世話………私はただでさえ家でゲームばっかりしてるお兄ちゃんの代わりに家のことしなきゃいけなんだから………」
そっけない我が妹はたぶん学校だとあんまり友達がいないのだろう。
だからそんな歳になってもそんな風にお人形取り巻きにしてるんだよ。
─────異変前では友達ゼロの俺が言えたことじゃないが。
家族団欒、仲良く晩御飯中に久しぶりに話に花が咲いたというのにいくらなんでもそれはないだろ。
そんな事を思いながら母さんの顔を伺っていたら──────
「──────(ポロポロ……)」
(なんかメッチャ悲しそうなんですけど──!?)
(なんかメッチャ悲しそうなんですけど──!?)
母さんはガタン、と席を立つと両腕でアリスの身体をがっつりホールドして、アリスの懐に飛び込んでいった。
「うわぁぁぁぁん!!!アリスちゃんごべんね゙〜……!!!ママがお仕事で忙しいばっかりに、アリスちゃんに家のママ役を押し付けちゃってごべんね゙〜……!!!」
「いや…………いやいやいやいやいや!?私そこまで言ってな────」
母さんはどっかの駄女神の顔芸みたいな泣き顔でボッロボロと涙を流している。
いちばん怖いのが、これたぶんガチ泣きなんだよな………
「アリスちゃんの優しさはママがちゃんとわかってるからね゙ー………!!ううっ、アリスちゃんもこんなに立派になったのにママはずっと変わってないわねぇ〜………!!」
子供みたいに泣きじゃくる母さん。
─────あまりのかわりように、仕事のストレスでおかしくなったんじゃないかと一瞬不安になった。
「違うって!……………私がママの……その、あーもう!ママのお手伝いしてママを喜ばせようとしてるだけなんだから!」
「あら〜アリスちゃんそんな風に思ってくれていたのね〜。優しいのね〜。ママ、アリスちゃんのその気持ちだけで明日もガンバれちゃうわ!」
うわぁ!急に落ち着くな!
(ハァ…………少しでも気落ちしたらコレなんだから…………)
ヒステリックママ…………とはなんか違う。
なんだろう、この説明の難しさ。
たぶんこの感覚を説明するのは薬剤師国家試験より難しい。
「…………いや、そういえばそうよ!悪いのはお母さんじゃなくてお兄ちゃんの方よ!いっつも夜ふかししてゲームばっかりして、それで朝寝坊して遅刻寸前に起きて私の手伝いも走って家を出て!たまには私の手伝いもしなさいよー!」
俺のことについて語っているうちにアリスが忘れていた内なる不満を思い出したのか、急に俺の喉元に怒りの矛先を突きつけてきた。
「ちょっ………!!お前、確かにゲームしてるけどさ、アレは遊んでるわけじゃなくてだな……!!将来それを仕事に………!!」
「一般の私立高上がりの平凡な高校生がどうやってプロゲーマーになるのよ!せめて高校時代から専門学校に通ってるならまだしも、別にそこまでしてるわけじゃないでしょ!」
「ったりめぇだろ!俺は【高い学費を母さんに払わせてまで】家の外にわざわざ家でもできるようなゲームしに、遊びに行きたいなんて思ったことないからな!!」
「びぇぇぇぇん!!!『』くん、ママの事を考えて行きたい学校を諦めたのね………!ごべんね゙ー………ママが不甲斐ないせいで『』くんの青春を縛り付けちゃって………!」
母さん大号泣。
「大丈夫!そんな事ない!ウソ!俺はあの学校にいきたくて行ってるんだ!」
「そうよ!お兄ちゃんは行きたい学校のためにお金を出してくれたママに感謝してるだけよ!だから落ち着いて!」
「あらそうなの〜。びっくりしちゃったわ〜。そんなお礼言われちゃったらママ、恥ずかしくて赤くなっちゃうわよ〜」
母親の号泣を止めるためとあらば、緊急の兄妹喧嘩も中止せざるを得ない。
母さんは落ち着いたらしい。
「─────ハァー?わっけわかんない!それに、今遊びに行くなんて言ったわよね!ゲームを遊びと捉えてるその時点でさっきと言ってることムジュンしてますー!異議あり!」
──────兄妹喧嘩、再開。
「テ……メェ………!!いつから兄貴にそんな逆転◯判みてぇな口効くようになったんだこの人形遊びヤロー!」
「家事一つやらないで遊んでばっかりのニートさんに上海のことを人形遊びなんて言われる筋合いなんて毛頭ないんですけどー!」
「うるせーっ!学生の本分は勉学だろうが!学生は定義上ニートに数えられねぇよ!働く意思はちゃんとあんぞ俺は!」
「その割にはゲームばっかりして学生の本分すら満たしてないじゃない!私はふだん家事してるけどそれ以外の時間ちゃんと勉強してますー!お勉強もできないお子ちゃまにお仕事なんてできるわけ」
「野郎ブッ飛ばしてやんよ表出ろ!」
「いいえ結構です!今ここでやってやるわよ!」
──────見事なまでの家庭崩壊。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!今この場で我が究極の拳を貴様に食らわせて、永きに渡るこの宿業に引導を渡してくれる!!!」
「やれるもんならやってみなさいよ、こんのバカお兄ちゃん!!!私の十二の暗黒魔神から受け継いだこの圧倒的な漆黒の魔力を宿した、我が最強の混沌魔法による地獄の業火で灰も残さず焼き尽くしてやるんだから!!!」
「お前そういうキャラじゃねーだろ!!!」
───────リビングで兄妹大激突。
この場でボコして身ぐるみ引っ剥がしてエ◯同人みてぇにしてやるよこのクソいもうt────
「…………………私に勝てるワケないでしょ、」
「…………………すんませんでした、」
【 33 - 4 】
で俺はリビングの床に全身めり込まされて撃沈した。
ギャグノベル補正でタフネスだけが人外クラスになったとはいえ、流石に武力でアリスに勝つことはムリでした。
俺はサイバイ◯ンに爆殺されたヤム◯ャみたいなポーズで床に倒れていた。
…………いや、4点入ったかどうかも怪しい。
史上初の、33-0の完封負けとなった。
「あらあら。にぎやかな子たちね〜」
───────今こそ泣けよ。
なにわろてんねん。
「でもそうね、お仕事の要領でゲームするのは良くないわね〜………」
「そうよそうよ。お兄ちゃんは勉強よりゲームになっちゃってるんだから。ママももっと言ってあげなさ─────」
「そうだー!夜ご飯を食べ終わったら、ママと3人でゲームしましょ!」
「─────はい?」
「─────はい?」
「一般の学生は、ゲームは遊んで楽しんだほうがいいに決まってるわ。せっかく3人揃ってるんだから、みんなで仲良く遊びましょ〜」
大丈夫かなこの人…………
『ママ』としては完成されているかもしれないが、『お母さん』としてはだいぶ終わってる気がする。
(付き合ってあげようよ………もし断ったりしたらママ大号泣よ)
(そうだな…………)
「やったわ〜!またママの勝ちね!」
【 66 - 8 】
で俺とアリスが仲良くボロ負けしました。
「な…………なんで…………アリス負けるんだよ…………」
「いや………私なんかより………なんで、ゲーマーのお兄ちゃんが………あんな完膚なきまでにやられるのよ………」
「うふふ。やっぱりみんなで一緒に遊ぶと楽しいわね〜」
(ほんと何者…………私のママ…………)
(ほんと何者…………俺の母さん………)
母には勝てない…………という理論なのだろうか。
いや、大いに納得できないがもうこの異常性は魔界の神だからってしか説明できないだろう。
流石はアリスの……というか今の俺の母といったところか…………
今日はほんとに疲れた──────
だがしかし、このマッマが、明日以降もこの家に散々なハチャメチャをもたらしていくという事をまだ俺は知らなかった…………