俺のクラスメイトが全員東方キャラになっていた件 作:マジカル赤褐色
…………地獄の時間が始まった。
体育の時間は俺みたいなクソ陰キャにとっては最悪の時間だ。
とりわけ、バレーボールなんていう単元は。
俺の体育で一番終わりな部分そのタイミングはなんといってもペア決めだ。
親しい友達がいない俺には組む相手はおらんし、話せるやつは友達がいて先にペア作られる。奇跡的にこのクラスは40人偶数だ。俺がぼっちで余ることはないが結局毎日誰かしら体調不良で休むので最後は1人になる。俺の相棒は体育の先生だ。
しかし、今日は違う。俺には霊夢と魔理沙がいる。友達と呼んでも差し支えない最高の頼れる仲間がいる。
だから大丈夫だと思っていたのだが………
(悪いな『』!私は霊夢とペア決めちまったんだ!)
(あんたは他の子と組んで。ごめん)
……………おしまいだ。
霊夢はともかく魔理沙お前は俺から体操服を借りた恩を忘れたのか。
恩を仇で返しやがった。
おかげで俺は素晴らしい余り組だ。
そろそろ俺は今日こそ小学生の頃から溜めていた涙を流しそうだ。
やっぱり俺はぼっちなのだという事を再認識してしまう。
先生はいいとして、この後に組むもう1人のぼっち相方とのコミュニケーションがこの世で最も気まずい。
誰でもいい、俺を助けてくれ………今日は珍しくクラス全員出席。久しぶりに生徒が相方だ。せめて、仲良く話せるような人であってくれ。
……………そう思いながら俺は体育館の中央で1人突っ立ってたのだった。
周りの生徒たちはペアを組んでカゴの中に入ってるバレーボールを意気揚々と持っていく中で俺は手ぶらで中央。
死にそうなほど惨めな自分。
もう死にたいと思っているのは俺は陰キャのくせに見栄があるからだ。
もう終わりかな。大人しく先生と組むか、と思って歩き出そうとしたその時だった。
「失礼、ちょっと良いかしら」
ふいに声をかけられた。
「!?」
後ろから聞こえた声に俺は振り向いたが、そこには誰もいなかった。
俺ついに幻聴が。何もないのを確認して前に向き直った時だった。、
「貴方、ペアはいる?私は相方がいなくて困っていたの。もし貴方も1人なら付き合ってくれるかしら」
どっきゅぅぅぅぅぅぅん!?
いや、意味の違いはともかくとして、俺は今「付き合ってください」って言われたのか!?
しかも、こんな………銀髪の美人さんに!?
その女子はシャープな体型に鋼のような色の髪、そして編んだ両の房につけた緑のリボンが印象に残る可憐であり瀟洒でもある女性。
背後から声がした次のフレームには、時でも止めて瞬間移動したかのように俺の前に現れてきた。
「あ、あぁ。俺、今回もぼっちでさ。こんな俺でよければよ、よろしく………」
「ありがとう。自己紹介するわ、今日貴方のパートナーを務めさせてもらう十六夜咲夜よ。どうぞよろしく」
「『』です、どうも………」
ふ、ふつくしい…………!
やべぇ、人生勝っちまった!あのメイド長が俺のペアだァ!
咲夜さんを独り占めだなんて宝くじ当たってもできないぞ。
嬉しすぎる。我、昇天。
余に悔いなし。おもしろきこともなきよをおもしろく。
「さて。それじゃあ早速、空いているグループに混ぜてもらいましょう」
体育館に建てたポールでバレーをしている生徒たちが複数グループあるが、とりあえず一番空いているところに行くつもりのようだ。しまった相方がこんな美女なのは良いがかえって俺のみっともない姿を見せるのが余計に嫌になってきた。この後この人にすごい冷めた目で俺の運動オンチを蔑まれるわけだ。最高。どうせなら罵詈雑言も浴びせてほしい………というのでは俺は人間のゴミだろう。そうだ今日こそは良いところを見せなくては。言い訳を前もって作るのは良くない。
「あら、咲夜じゃない。ふーん、『』くんと組んだのね」
そこへ裏切り者が現れた。
「霊夢!」
「あんたも咲夜に拾われるなんてツイてるわね」
はいごもっともですクソラッキー。
「なぁなぁ!私ら4人でやらないか?試合!」
バカなんですか、魔理沙さん。俺、運動オンチな上にその編成だと俺だけ男子1人浮いてしまうよ。
「望むところよ、お相手して差し上げるわ」
「咲夜さぁぁん!?」
待て待て待て待て、東方三自機の真ん中にカンケーない一般人混じってるぞ!?
そんな世紀の一戦で俺をぶち込むなんざ空気の崩壊というもn
「それじゃあ始めるわよ」
結局始まってしまった…………
ダメだよなぁ、咲夜さんに全任せになる。俺は活躍することよりも足を引っ張らないことに意識を傾けないといけない。
とにかく、俺の方に来た球はできるだけ取りに行く姿勢を見せないと。
「じゃあ、サーブはこっちからね。行くわよ───てやぁっ!!!」
不意打ちの霊夢サーブはゴムのボールからは絶対に出ないような音を立てて空中から鋭角に放たれ、見えないほどの速さで俺の元へと飛んできた。
「へ?」
突発的な飛来物を躱そうとしたら、ボールは俺のギリギリ後ろに着弾。
ちゅどぉぉぉぉん!!!と音割れしながら体育館の床から何故か土埃のような爆風が巻き起こった。
「何やってるんだ霊夢!?サーブミスじゃないか今の!」
「ゴメン、咲夜相手にムキになってラインギリギリ狙ってカッコつけちゃった………」
いやいや死ぬて。
超次元バレーボールとか絶対ダメだって。万に一つ俺がその球をレシーブすることができても俺の両腕は確実に帰らぬものとなるだろう。
何が運動不足の露呈だ。ナチュラルに人命問題だよこれ。
よかった。俺が悪いんじゃないわ。これ誰がやっても俺と同じ末路だ。
あと俺びっくりしたのがアレで入ってないのとそれがわかる魔理沙ヤバすぎだろってこと。
入った入ってないの問題ではないもはや。
当たったか当たってないかが全てだろう。
「それじゃあ、今度はこちらから行かせてもらいますわ」
咲夜さんはいつの間に手にボールを持っていた。
俺の後ろに着弾したはずのボールをなぜ持っているのか。俺の目にも留まらない速度で拾ってきたのか?
「ふぅぅぅぅぅぅ……………」
ちょっと待って、なんかめちゃくちゃ気ぃ練ってるんですが!?
待って待って待ってこれどうなるんだよおい!?
「しゅっ…………せいっ!!!」
空高くへと投擲されたボールを捉える6メートル近くの跳躍から強烈なサーブがズドォォォン、と音を立てた。
「どわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ボールを叩いたその衝撃で俺は突き飛ばされたようにコートの外までふっとばされた。
いやいやおいおいふざけるなそんなこと許されるかよ!?
起き上がった俺は、相手のコートを見た。
あの球を受けてあの2人は無事だったのか!?
…………そう心配していた俺がバカだった。
向こうのコートでバレーボールが宙をさまよっていた。
そしてその真下にはレシーブの体勢をする魔理沙の姿が。
あの球を受け流したのか!?
ふわりと舞い上がるボールを霊夢はすかさず的確すぎる手の二等辺三角形を作り出し、トスをする。
まずい、真上に飛んだそのボールはスパイク以外に道がない。
バレーボールは3タッチで相手コートへ飛ばすルールだ。レシーブ、トス………この2回。
そしてラスト1回は全力で相手コートに球を送り出す。
この一発で得点になる。
というより、もはやこれは勝ち負けの問題じゃない。
人の生死を問うレベルでの戦いだ。
「魔理沙!!」
「おう、任せろ〜!!!」
こんなふわりふわりと漂うボールは俺でも向こうへ送り出せそうだ。
ましてこんな連中からすれば……………
魔理沙は力を溜めて大ジャンプ。
そして高く大きく腕を振りかぶる。
(やばいやばいやばいやばいやばい………!!!)
あんなの飛んできたら、コートごと咲夜さんがぶっ飛ばされる。
咲夜さんに怪我をさせようもんなら…………俺が相方になったイミがマジでなくなる!
レシーブする動体視力も的確にトスをする距離感覚、あんな連中に点を入れるほどの強烈なスパイクもできない。
なら俺の役目はなんだ。何もできなくて全部咲夜さんに任せっきりか……?
それは駄目だ、咲夜は俺を選んでくれた。
俺しかいなかったとはいえ、先生と組んだり、誰かに混ぜてもらって3人組にでもなれば良かった。
そこをあえて俺を選んでくれた………!!!
彼女の優しさに報いるためにも、俺は俺のできることをやるしかない!!!
あんな球を正確に捉えることは俺にはできない。
だからもっと単純で、俺にでもできる、簡単なこと…………!
「喰らえぇぇぇぇっ!!!」
魔理沙の腕が振り下ろされる。
その前に俺は起き上がって走り出す。
間に合うか?間に合わないかもしれない、けど、必ず間に合わせる!
その球が当たってしまえば、咲夜さんは…………!
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
コートの中に脚が侵入した。目の前の一直線。
球を叩く魔理沙とその先にいる咲夜さん。
俺は守る、俺の…………大事なパートナーを!!!
「恋符『マスタースパイク』!!!」
バコォォォォォォォォン、と爆発音が響き渡り、まるで流星のような豪速球が地面に向かって落下する。
それが当たれば絶対に咲夜さんは大怪我をする。
大事な相方を守れないで………俺になんの存在意義がある!
「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は意を決してラスト一歩の地面を蹴り、両腕を拡げて身長180未満人権のない身体の面積を最大まで拡げてみる。
そしてその状態で魔理沙のスパイクの導線を遮るように咲夜さんの目の前に飛び込んだ。
そんなだから案の定──────
「ごふっ──────ぶおおぉぉぉぉぉ!!!」
その常軌を逸した速度の球は俺の身体を直撃。
球の勢いにまんまと押されていった俺は跳躍も虚しく球と一緒に猛スピードで体育館の床に叩きつけられてネットを越える高さまでバウンドした。
受け身の仕方も知らない俺は体勢を崩した状態で真っ逆さまにボールのように頭から落下する。
(あー、しんだわこれ)
咲夜さんを守ることはできた…………なら後悔はない。
次のターンでは必ず彼女が1点取ってくれる。
それなら俺が命をかけたこのブロックは無駄じゃない。
「時よ、止まれ!!!」
「─────────────」
何か声を聞いた瞬間に俺は目前迫る体育館の床の景色が体育館の天井に切り替わる瞬間を感じた。
あぁ…………間違いない、さっきからの現象の全てはこれだったのか。
そう、咲夜さんは──────
「『』、無事!?」
【時間を止めれる】んだ─────!!!
咲夜さんは俺をお姫様抱っこで抱きかかえて床に音もなく降り立った。
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
霊夢と魔理沙は顔を並べて顎が外れるほどに口を開けて驚愕の雄叫びを上げていた。
俺が防いだボールは俺が地面に落ちた時、俺の腹でバウンドして相手コートに反射。
そして驚いている魔理沙の頭に直撃した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
相手コートで大爆発が起きる。
コート外にまで及ぶほどの爆風は霊夢と魔理沙の叫びすらもかき消してしまった。
「貴方のおかげで助かったわ………。ありがとう、貴方は命の恩人よ」
昔の仮面ラ◯ダーがショッ◯ーを爆殺するかのようなド派手な爆炎を背に咲夜さんはまだ抱きかかえている俺を見下ろして微笑む。
「さ、咲夜さんのほうこそ………俺の最高のパートナーだ………」
その仕草が異次元クラスで格好良くて俺はめちゃくちゃ照れながら意味不明な返しをすることになった。
そうだ、俺はこういうカッコよさに憧れていた。
無力ながらもできることをやり遂げて、大切な人を守る………
それが、体育の授業におけるペアの役割なんだと俺は6.3.3制度の最後の2年を控えた今に悟った。
霊夢「いやいや違うでしょ」
体育って──────最高だ。
あ、今日の授業感想…………か。これ、書くの毎回大変なんだよな。俺いつもはペアおらんしあんまり体育を楽しんだことがなかったから。
感想かぁ…………
今日あった出来事で…………一番の……………感想……………
………下から見上げた咲夜さん最高にエ((((((刺刺刺
俺は今どうするべきか考えている。
俺はこれからの行動は「直感第一で動く」のか「よく考えて動く」のか。
直感第一で動く………つまり、【用意されたシナリオの通りに日々を過ごす】のか、
よく考えて動く………つまり、【全国の
考えて動くタイミング………例えば、終業してから。
まっすぐ家に帰るのか寄り道して帰るのか、それとも学校で少しだけ残ってから帰るのか。
その選択肢を変えることによって、きっと俺のこの先の出会いは変わるかもしれない。
何も考えずに進めば、
ふむ………どうしようか………
そうだ、それを今考えるとしよう。
全国の【俺】に相談してみよう。
直感(作者の考えたシナリオ)の通りに動くのか、よく考えて(毎回アンケート取って次のシナリオを読者の投票で決めて)動くのか。
どうすればいいのだろうか。せっかくの不思議な日々だ。この選択は非常に重要、慎重に考えないと。
俺は──────
俺は今後の展開に対してどう向き合えばよいのだろう。
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神の定めた運命の通りに。
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何人もの【俺】に意見を聴く。